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生活者インデックスデータ

Z世代・アルファ世代のリアル-テックネイティブな未来の消費者を紐解く②
~テックネイティブの消費者行動モデル

今後の消費の中心として注目を集めるZ世代と、その次に来る“生まれたときからデジタルに慣れ親しんでいる”アルファ世代。インテージでは、Z世代リサーチ研究分科会(1) を中心に複数の部署やグループ会社で連携し、産業能率大学の小々馬敦先生(2)とZ世代・アルファ世代といった“テックネイティブ”の情報接触・価値観・消費行動を明らかにするための共同研究を行っています。

知るギャラリーでは、この共同研究の結果を6回にわたって、お伝えしています。第1回「消費価値観から得る、未来の消費者理解のヒント」では、彼ら・彼女らが“欲しいもの”から消費価値観を探りました。
第2回となる今回のコラムでは、Z世代に即した新しい「消費者行動モデル」の妥当性と、消費行動や考え方の世代差に関する検証結果について、インテージ 先端技術部の穴澤がお伝えします。

消費者行動モデルの変遷

「消費者行動モデル」とは消費者の認知から購入までの行動を、一連のプロセスとしてフレームワーク化する考え方で、マーケティングの世界において広く用いられています。このコラムを読まれている方の中にも、「AISAS(アイサス)」という言葉を見聞きしたことのある方は多いのではないでしょうか。

「AISAS」とは株式会社電通が2004年に提唱した、インターネットが普及した社会での購買行動を表現した消費者行動モデルです[1]。認知(Attention)、興味(Interest)、検索(Search)、購買(Action)、共有(Share)という一連のプロセスの頭文字を取って名付けられました。AISASでは商品を認知して興味を示した後、購入する前にインターネットで情報を検索して、商品情報やクチコミを調べた上で購買します。更に、購買して得られた体験をクチコミとしてインターネット上で共有することを想定しています。

AISASを代表例として、インターネットの発達とともに様々なモデルが提唱されてきました。そのような中で、産業能率大学小々馬敦研究室はZ世代の消費者行動モデルの基盤として以下のような仮説を提唱しています[2]。
小々馬研究室の仮説では、以前は自分が購入したモノやブランドをブログなどでアピールして「自己主張すること」「他者からの承認を得ること」が、情報発信の主な目的でしたが、Z世代は自身の体験を共有して「共感し合う・高め合う」ことが情報発信の目的であるとされています。理由としては、Z世代は多様性の時代にあって自分らしさ、アイデンティティに自信がない人が多く、自己肯定感に対するニーズが高まっていると考えられるためです。この結果、Z世代はインフルエンサーや周囲の人の情報発信に敏感で、そうした人たちの「○○が良かった」という声に共感・反応します。そして自らも購入したモノ・得られた体験を周囲に発信し、役に立ったという自己有用感を得ることで「幸福を高め合う」ゴールに向かうと推察されています。

このような仮説の下で提唱された、Z世代を想定した新しい消費者行動モデルが「EIEEB」です。EIEEBモデルでは、まず消費者は膨大なインターネット上の情報の中から、ある素敵なものに偶然に遭遇(Encounter)して、やりたいことが見つかり、情報を調べ(Inspire)ます。その後、情報を自分で調べたという実感を持つことで背中を押され(Encourage)、実際に購入(Event)します。そして購入した商品や得られた経験をSNSで周囲に共有しあい、高め合う(Boost Up)と想定されています。

図表1

テックネイティブであるZ世代にとってはSNS=世間であり、彼らはSNSによる情報収集、情報発信を当たり前の行動として使いこなしています。インターネットの普及期にAISASが提唱され広まったように、Z世代の消費者行動モデルを検証、確立するのは、今後の生活者理解において重要な意味を持つと考えられます。

EIEEBモデルの検証結果

EIEEBモデルは統計的に成立するか

小々馬研究室と協議の下、EIEEBモデルのフレームワークに沿った定量的聴取項目を51項目作成し、Z世代(12~24歳)、ミレニアル世代(25~40歳)、さらにX世代(41~50歳)の各世代に聴取しました。まず共分散構造分析(3)という統計的分析手法を用いて、EIEEBモデルが想定する仮説、因果関係を図表2の関係図(パス図)で表し、Z世代の51項目のデータ(N=390)を関係図に当てはめました。
その分析結果から、EIEEBモデル全体が統計的に適切(4)なモデルであり、成立すると確認されました (RMSEA<.10)。同様に、ミレニアル世代(N=416)、X世代(N=360)についても同様の検証を行ったところ、その2世代についてもEIEEBモデルが統計的に適切なモデルであると確認されました。「偶然の情報接触から情報探索を経て、調べた実感を得て興味を自覚してから購入し、モノや体験を情報発信することで自己有用感を感じる」という消費のプロセスは、Z世代だけでなく上の世代についても当てはまりうるようです。

図表2

以上のように聴取項目、モデルの妥当性を確認した上で、各聴取項目について世代間の比較を行った結果、Z世代の消費に関する特徴が見えてきました。

認知~情報探索段階(Encounter~Inspire)

図表3は、ネットでの情報収集について聴取した結果です。

図表3

通販サイトや価格比較サイトといった、ゼロ年代から存在している媒体で情報収集する割合が、Z世代はミレニアル世代、X世代に比べて低いことが分かります。Z世代はTwitter, Instagram, Tiktokのような SNSの保持率が高く(第一回を参考)、それらのSNSが情報収集の役割を大きく果たしていると考えられます。

また図表4からは、Z世代がSNSのタイムラインを受動的に眺めているだけではなく、気になった商品・サービスについては自発的に情報探索を行う傾向が強いと分かります。

図表4

例えば、Instagramのタイムラインで流れてきたインフルエンサーや知人の投稿を見て、ある商品に興味を持ち、ある人はそのままSNSで、また違う人は検索エンジンや通販サイトで商品情報を深堀りして調べる、といった経路が考えられます。

購入段階(Encourage~Event)

図表5は、満足感、安さなど買い物をするときの動機・基準をいくつか聴取した中で、特に世代差が見られた項目を示しています。

図表5

Z世代は「好きな有名人が持っているもの(有名人=芸能人、タレントとは限らない)」という基準で買う傾向が上の世代よりも強く、好きなインフルエンサーや動画投稿者、配信者、タレントなどの投稿を見て買うものを決めるシーンが多いと考えられます。そしてZ世代のこのような購買は、近年浸透していると言われる「推し消費(推し活)」の意味合いを強く含んでいると思われます。応援したい相手(推し)にお金を使いたい、という消費の仕方はZ世代の間で今後も広がっていくでしょう。

さらに、先述の各世代の共分散構造分析の結果から、購買動機と購買後の情報発信意欲(5)の間に統計的に有意な関係が認められるかを検証しました(図表6)。

図表6

Z世代はいずれの購買動機でもその後の情報発信と有意な関係があり、「Z世代はどのような動機で購入しても、その後情報発信に繋がる傾向にある」と考えられます。対してミレニアル世代、X世代を見ると、情報発信との有意な関係が見られないケースもいくつか見られ、Z世代程には購買と情報発信が結びついていないと思われます。Z世代の多くにとっては買うことと発信することは一連のプロセスになっており、周囲の発信に合わせて自身もSNSで体験をシェアしているのではないでしょうか。

情報発信段階(Boost Up)

図表7は、購入後の情報発信のモチベーションについて、「情報発信をすることで周囲から信頼される」と感じている割合です。Z世代が最も多いことが分かります。

図表7

一方で“当てはまらない”とする人も5割以上おり、自己主張や他者からの反応(コメントや”いいね”など)といった他の動機も未だにあると想像されますが、Z世代と上の世代とでは、情報発信の動機が確実に変わってきていると思われます。

最後に

今回は、Z世代を想定した新しい消費者行動モデルを検証した結果をお伝えしました。SNS社会の消費行動を理解するにあたっては、EIEEBモデルというフレームは統計的にも妥当であることが実証され、さらに各設問への回答結果から、Z世代が上の世代と比較してよりEIEEBモデルに関わる消費者行動が先行していることがわかりました。

EIEEBモデルから想定される消費プロセスは、SNSでの情報接触で出会ったインフルエンサーや配信者などの発信に対する「共感」が主な出発点であるといえます。そして共感した相手(“推し”とも言われます)を「応援」するために消費活動を行い、最後に周囲と「高め合う」ための情報発信を行っていると考えられます。これらの3つの心理に共通するのは利他的な思いであるという点です。自分だけの幸せ、肯定感を満たすのではなく、周囲と一緒に幸福感を高め合い、それが何度も繰り返され循環していくというのが、EIEEBモデルの最も重要な考え方です。今後、若年層向けの広告コミュニケーションやブランディングを行うにあたっては、彼らからの「共感」を集め、「応援したい」と感じ、その体験や感想を互いに贈り合うというムーブメントを巻き起こすようなマーケティングを目指すべきなのかもしれません。

次回は、インスタ買い・YouTube買い・Tiktok買いといった、SNSから生まれる購買行動について紹介します。


(1)【Z世代リサーチ研究分科会】
インテージグループR&Dセンターの分科会の一つ。マーケティング活動に資するZ世代の特性を理解し、グループの事業発展に繋がるZ世代の調査法・調査結果の活用法の確立を目指しています。これまでさまざまな形でZ世代にまつわるプロジェクトに関わったメンバーが集まり、社内外の知見の収集や自主調査の実施など精力的に活動を始めています。
(2)【小々馬敦先生】
産業能率大学経営学部マーケティング学科教授。ゼミの取り組みでは「Z世代の生活価値観」からマーケティングのニューノーマルを探究することを行っています。2015年から若者の価値観変容を追跡調査し、日本マーケティング協会と学生と社会人の対話「ミライ・マーケティング研究会」を開催するなど、精力的に若者のリアルについて研究されています。
(3)【共分散構造分析】
構造方程式モデリング(Structual Equation Modeling;SEM)とも呼ばれる、多変量データ解析手法の一つです。「どの要素がどの要素に影響を与える」という分析者の複数の仮説をパス図と呼ばれる関係図にまとめて落とし込み、要素間の影響の強さを推定します[3]。本記事の調査のような、購入意欲など消費者意識を聴取したアンケートデータの場合、この解析手法が用いられることが多いです。
(4)【統計的に適切なモデルかどうかの検証】
共分散構造分析では、RMSEA(Root Mean Square Error of Approximation)という指標をデータから算出して、分析したモデルが良いモデル=データからは観測できない真のモデルに適合しているモデルかどうかの判定に使用します。本記事では、RMSEA<0.1を基準にモデルを判定しています。
(5)【購買動機と購買後の情報発信意欲】
購買動機:「Q.あなたが自由に商品やサービスを買うときの基準」を図表5の各項目について、「1:当てはまる~4:当てはまらない」の選択肢で定量的に聴取しています
情報発信意欲:「Q.商品やサービスを買った後の情報発信頻度」を、①スマートフォン・タブレット ②PC ③SNS ④クチコミのそれぞれについて「1:とても頻繫に行う~7:全く行わない」で聴取した後、①~④の点数を因子分析[4]で縮約して1つの指標としています。


【参考文献】
1 日経ネットマーケティング,2008, AISAS
2 産業能率大学 小々馬敦研究室,2021, 2021年に描くマーケティングのニューノーマル~令和の所徳倍増計画~
3 インテージ,2017, テコ入れすべきマーケティング要素を可視化する『構造方程式モデリング』~課題解決!データサイエンス
4 インテージ,因子分析とは


【調査概要】
期間:2022年1月28日から2022年2月7日
対象者:12歳から50歳までの5407人(内訳:Z世代1942人、ミレニアル世代1981人、X世代1284人)
※アルファ世代については、自由に購買できる裁量が小さいと考えられるため調査対象外
調査方法:インテージのネットリサーチによる自主調査
12歳~15歳は、承諾した保護者の聞き取りによる代理回答を加えた

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