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生活者インデックスデータ

アプリで変わる テレビの使われかた

近年、テレビ受像機をインターネットに接続し、YouTube、Netflixといった動画配信サービスを視聴する人が増えています。「スマートテレビはどれだけ普及した? 普及に伴う“テレビの見かた”の変化」でも紹介した通り、2021年4月の時点で、全国でおおよそ3人に1人がスマートテレビ(インターネットに接続可能なテレビ受像機)をインターネットに接続して利用しています。

スマートテレビでは、地上波やBS、CSといったテレビ放送だけではなくインターネット経由で様々な動画配信サービスなどのアプリを視聴することが可能です。スマートテレビを利用する視聴者にとって、テレビ受像機は既に放送のみを視聴するデバイスではなく、“様々な動画を大画面で視聴するためのデバイス” になっていると言えるでしょう。

今後ますます多くのテレビ受像機がインターネットに接続され、スマートテレビでのアプリ視聴が普及した場合、従来型の放送の視聴はどのような影響を受け、生活者のテレビの使い方はどう変わっていくのでしょうか。

この記事では、マーケティング利用の許可を得て収集されたインテージのスマートテレビ視聴データMedia Gauge® TVの視聴ログデータを分析し、複雑化するテレビ受像機の利用実態の“今” と“これから” を考えていきたいと思います。

急速に普及するスマートテレビでのアプリ視聴

まず、スマートテレビでのアプリ視聴が現在までどのように普及してきたかを見てみましょう。図表1はスマートテレビの利用時間全体に対する放送、アプリ、その他(録画視聴、ゲーム機やChromecast等のストリーミングデバイスの利用など)の1日あたりの平均視聴時間の推移です。
図表1

データから、放送の視聴時間に置き換わる形でアプリの視聴が急速に普及していることがわかります。テレビの利用時間全体は2019年までおおよそ8時間弱で推移しており大きな変化がないものの、放送の視聴時間は年々減少し、アプリの視聴時間がそれに置き換わる形で増加し続けています。

コロナ禍に入った2020年はテレビ放送の視聴時間が微増だったのに対し、アプリの視聴時間はそれ以上に増加し、スマートテレビの利用時間の約20%にまで達しています。その他にはChromecastなどのストリーミングデバイス経由でのアプリ視聴も含まれるため、それも含めればアプリの視聴時間はさらに大きいと考えられます。

複雑化するテレビの使われ方

このようにテレビ受像機に放送とアプリという異なるサービスが混在するようになったことは、図表2のようなメディア視聴環境の変化として捉えることができるでしょう。
図表2

これまでは主に放送を視聴するデバイスとして利用されてきたテレビ受像機でしたが、インターネットに結線されることで放送と動画配信サービスという異なる2つのサービスを視聴できるようになっています。  

図表1のデータからは、これまで主に放送だけが視聴されてきたテレビ受像機に“オンデマンド視聴” や“レコメンド” といった特性を持つ動画配信サービスが進出し、テレビ放送の視聴の一部を置き換えていることがわかります。この置き換えの様子をスマートテレビの視聴ログデータから見ていきましょう。

“テレビ放送の視聴”と置き換わる“アプリの視聴”

ここからは、独立U 局(キー局の系列ネットワークに属さない放送局)やケーブルテレビなどを除いてテレビ放送のコンテンツが均質な東京、神奈川、埼玉、千葉の4エリアの、約9万台のスマートテレビ端末に限定し、アプリの視聴量の増加がテレビ放送の視聴に与える影響を見ていきます。
分析対象のアプリとしては、特に利用率の高い動画共有サービス(アプリA)と定額制で動画を配信するSVODサービス(アプリB)に着目し、これらのアプリの利用時間が増加した端末での、テレビ放送に関する視聴傾向の変化を分析します。

具体的には、それぞれのアプリの1日あたりの利用時間が1時間以上の端末をヘビーユーザー端末と定義し、2020年1〜3月から2021年1〜3月で新しくヘビーユーザー端末になった端末を“ヘビー化端末” と定義しました。このヘビー化端末と全体の端末で放送の視 聴傾向の変化を比較することで、それぞれのアプリの視聴量増加が放送の視聴に与える影響を見ていきます。アプリA、アプリBのヘビー化端末数は以下の図表3のとおりです。

図表3

図表4は、アプリA、アプリBのヘビー化端末それぞれにおけるテレビ放送の接触率の変化を、番組ジャンルごとにみた結果です。

図表4

バラエティ番組からデータを解釈します。分析対象のテレビ端末全体では、2020年から2021年でバラエティ番組の平均接触率は4.05%から4.14%へと微増しているのに対し、アプリAのヘビー化端末は4.19%から3.92%へと低下しています。この結果は、アプリAを1日1時間以上使うようになった端末ではバラエティ番組の接触率が低下しているということを意味しており、動画共有サービスのアプリAの視聴がバラエティ番組の視聴を代替していることが考えられます。
一方でSVODサービスであるアプリBのヘビー化端末は変化が小さく、バラエティ番組の視聴をあまり代替していないと言えます。

情報・ワイドショー番組はバラエティ番組と同様の傾向です。アプリAのヘビー化端末は接触率の低下が大きいものの、アプリBのヘビー化端末は比較的小さい減少でした。動画共有サービスには様々なジャンルの動画が投稿されていますが、スマートテレビで動画共有サービスを視聴することは、バラエティ番組や情報・ワイドショー番組の視聴を代替しているということがうかがえます。

ドラマや映画では違った結果が見られました。アプリAのヘビー化端末以上にアプリBのヘビー化端末の接触率が大きく低下しています。ドラマや映画を得意領域とするSVODサービスのアプリBの視聴は、やはり放送でのドラマ・映画の視聴を代替しやすいようです。ドラマや映画といった番組ジャンルは動画配信サービスの持つオンデマンド視聴やレコメンドといった特性と相性がいいということも、放送から動画配信サービスへという代替が起きやすい一因として考えられるでしょう。

リアルタイム視聴というテレビ放送の特性と相性がよいと考えられるニュース・報道番組ではどうでしょうか。ニュース・報道番組はアプリAヘビー化端末ではわずかに低下、アプリBヘビー化端末では微増となりました。全体の端末ではニュース・報道番組は接触率が微増していることも考慮すると、ニュース・報道番組がアプリAの視聴に代替されづらいジャンルとは言い切れないでしょう。放送局自身が動画共有サービスでニュースを配信する動きも活発になっていますから、動画共有サービスのニュースをスマートテレビで視聴することが放送でのニュースの視聴を代替していることも可能性として考えられます。

テレビの使われ方のこれから

この記事では、スマートテレビでのアプリ視聴の普及とアプリ視聴量の増加がテレビ放送の視聴に与える影響を見てきました。アプリの視聴は既にスマートテレビの利用時間の約20%にまで達しています。またスマートテレビのさらなる普及やユーザービリティの進化、スマートテレビ向けのアプリの増加など、様々な要因によってスマートテレビでのアプリの視聴は今後さらに普及していくと考えられます。テレビ番組を制作、放送する放送局はもちろん、テレビ番組に広告を出稿する広告主、そこに関わる広告代理店など、テレビに関わる様々なプレーヤーは急速に進むメディア視聴環境の変化に先回りして対応していく必要があるでしょう。これまでは主にパソコンやスマホ向けに事業を行ってきた動画配信領域のプレーヤーから見れば、メディア視聴環境の変化は自社の事業をテレビというデバイスに拡張するチャンスでもあります。

では、今後テレビでのアプリの視聴がさらに普及することで生活者のテレビの使い方はどのように変わっていくのでしょうか。この記事の分析からは、アプリの視聴量の増加が放送の視聴に与える影響は、アプリの種類や番組ジャンルごとに異なっていることがわかりました。様々なジャンルの動画が投稿される動画共有サービスは幅広い番組ジャンルの視聴を代替していることが示唆された一方で、SVODサービスの視聴が与える影響はドラマ・映画に限定されていました。アプリ視聴の普及によるテレビの使われ方の変化は、これから生活者がスマートテレビでどのようなサービスを利用するようになるか次第であるといえそうです。

“お気に入りの番組を見る”、“他者と話題を共有する” 、“時計の代わり” など、生活者がテレビを利用する目的には様々なものがあると考えられます。今後さらにスマートテレビでのアプリ視聴が普及していく過程では、これまで主にテレビ放送が満たしてきたこれらの目的の一部が様々なアプリによって代替されていくでしょう。スマートテレビでのアプリは必ずしも動画配信サービスだけではありませんから、新しいアプリはこれまではなかった全く新しいテレビの使い方を普及させるかもしれません。

テレビに関わる様々なプレーヤーがこのような環境変化に先回りして対応していくためには、今後スマートテレビでどのようなアプリや機能が普及するのかを注視しながら、それがテレビの使い方にどのような影響を与えるかを考えていくことが重要になるでしょう。この分析がその一助になれば幸いです。

※この記事はMarkeZine69号に掲載された寄稿記事(『アプリで変わるテレビの使われかた』)を再構成したものです。

Media Gauge® TV
複数のテレビメーカーから収集した、ネットに結線されたスマートテレビ約299万台(2021年8月時点)の視聴ログをクレンジングし、統一フォーマットで標準化・構造化した視聴データ。マーケティング利用許諾を得て、匿名化されているもので、どのテレビで、いつ、どんな操作がされていたかがわかります。 うち約100万台(2021年3月時点)がアプリも含めての分析が可能です。

著者プロフィール

山津 貴之(やまつ たかゆき)プロフィール画像
山津 貴之(やまつ たかゆき)
事業開発本部 次世代消費者パネル事業開発部部 アナリスト
筑波大学大学院 ビジネス科学研究群 経営学学位プログラム 在学中
2014年に大学卒業後インテージへ入社。
小売店パネルの運用部署にてパネルデータの品質管理を担当。機械学習を用いたデータクリーニングロジックを開発。
2017年からはスマートテレビ視聴ログを用いた商品”Media Gauge”の新規事業開発を担当。データベースや調査設計等の基盤構築から、視聴データ分析による広告主や放送局等での活用支援まで幅広い領域に携わる。
2021年から、インテージグループR&Dセンターおよび所属大学院にて、スマートテレビでの放送とアプリの視聴実態について研究を開始。
趣味は自転車旅と自転車通勤。

事業開発本部 次世代消費者パネル事業開発部部 アナリスト
筑波大学大学院 ビジネス科学研究群 経営学学位プログラム 在学中
2014年に大学卒業後インテージへ入社。
小売店パネルの運用部署にてパネルデータの品質管理を担当。機械学習を用いたデータクリーニングロジックを開発。
2017年からはスマートテレビ視聴ログを用いた商品”Media Gauge”の新規事業開発を担当。データベースや調査設計等の基盤構築から、視聴データ分析による広告主や放送局等での活用支援まで幅広い領域に携わる。
2021年から、インテージグループR&Dセンターおよび所属大学院にて、スマートテレビでの放送とアプリの視聴実態について研究を開始。
趣味は自転車旅と自転車通勤。

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