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売上効果から考えるテレビCMの出稿検討法~実在3ブランドのケーススタディ

メディアの多様化が進んでいる今日においても、依然としてテレビCMは日用消費財の売上に大きく貢献しています。しかし、テレビCMの売上効果を可視化することは難しく、弊社のもとにも「テレビCMの売上効果が可視化できないため、テレビCMへの適正な投資額がわからない」というご相談を多くの広告主から寄せられています。原材料費の高騰や円安による利益圧迫が続いている今日において、その課題は重要性を増しているのではないでしょうか。

この記事では、「ロングセラー」「育成対象」といったポジションにあるブランドを例に、データを基にそれぞれの出稿量を判断する方法について考えていきます。さらに、しばらく出稿しておらず、認知が徐々に下がってきているブランドにおいて、テレビCMを再出稿する際のポイントについても考えてみます。

テレビCMの売上効果を可視化する

テレビCMの効果を可視化する上で必要となるデータは「テレビCMの接触量」と「売上」ですが、それだけでは効果を明らかにすることができません。なぜなら、売上には「店頭配荷」や「価格」、「カテゴリトレンド」といった、テレビCM以外の要因が含まれているからです。

読者の方の中にも、テレビCMの売上を説明できなかった経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

そのためインテージでは、保有する大量のデータを用いて、テレビCM接触量と売上だけでなく、販売店率や販売SKU数等の店頭、価格情報といったデータを加え、これらの影響を排除したテレビCM効果が抽出できる分析モデルを開発しました。

図表1

この分析モデルを活用した分析ツール「テレウリ」では、約220カテゴリ、約3400ブランドのテレビCMの売上効果が可視化できるようになっています。

次章では、様々なポジションにあるブランドの出稿量をどのように決めていくことができるのか、この「テレウリ」のアウトプットを用いて考えていきたいと思います。

出稿量判断のケーススタディ

ここでは、とある企業の3つのブランドについて考えます。
それぞれ、以下のような状況にあります。

成熟ブランドA:20年のロングセラー/自社の代表ブランド
育成ブランドB:2年前に発売され育成対象となっている新ブランド/認知や配荷は低い
再興ブランドC:10年前まではテレビCMを多く出稿していたが、ここ数年は出稿がなく、認知が徐々に下がってきている/カテゴリーリーダー

ケーススタディを進めるにあたり、各ブランドの目標成長率を下記と仮定して、目標達成を考えていきたいと思います。
成熟ブランドA:目標成長率:102%
育成ブランドB:目標成長率:110%
再興ブランドC:目標成長率:101%

現状を基に出稿量を見直すケース

まずはブランドAとBのデータを見てみましょう。
図表2は「ブランドの売上」を横軸に、「1GRPで得られる売上」を縦軸に、各ブランドをプロットしたものです。これにより、対象ブランドの市場におけるポジションと、テレビCMによるリターンの大きさを競合と比較できます。

図表2

また、図表3は「出稿量(推定GRP)」を横軸に、「ブランドの売上全体に占めるテレビCMが貢献した割合」を縦軸に各ブランドをプロットしています。競合やカテゴリ全体と比較することで、現在の出稿効率の良し悪しを判断することが可能です。

図表3

この2つのチャートから、成熟ブランドAと育成ブランドBの出稿量判断をしてみましょう。
まず成熟ブランドAは売上規模が大きく、出稿1GRPあたりで得られる金額リターンも大きいため、出稿量は現状維持すべきと判断することができます(図表2より)。ただし、貢献割合はカテゴリ全体の傾向や競合と比較しても低いことが読み取れます(図表3より)。つまり、出稿効率が悪いと言えます。

この要因としては、出稿枠などの問題により、カテゴリの購買層に効率よくテレビCMを届けられていない、もしくはクリエイティブに問題があるといった仮説が考えられます。したがって出稿枠やクリエイティブなどの質を改善出来れば、同じ出稿量でも成果が向上できるのでは?という議論へ繋げることが可能です。

次に育成ブランドBです。現段階では育成中であり、認知が低く店頭配荷も少ないことからテレビCMを見た人が店頭で購入できる機会も限られます。そのため、テレビCMによる金額リターンは成熟ブランドAと比較して小さいことが読み取れます(図表2より)。しかし、戦略上、育成ブランドBは高い成長が求められているため、可視化した売上効果から目標達成に必要な出稿量を算出し、その量まで増やすといった判断が可能になります。

図表4

具体的には育成ブランドBの現状(図表4)から、目標売上達成のために、現状の出稿量から年間500GRP増やすという判断ができます。また、テレビCM貢献割合はカテゴリ全体の傾向値より高いため、育成ブランドBの出稿や表現の質は問題ないと判断できるでしょう(図表3より)。

このように自社や競合、カテゴリ全体のテレビCM売上効果が分かれば、投資自体の必要性や出稿量、出稿質の課題について根拠を持った議論が可能になります。

新たにCM出稿をするケース

ここまでは、既にテレビCMの出稿があるブランドを前提に出稿量判断のケーススタディを行ってきましたが、「担当ブランドでテレビCMを行いたいが、売上の見込みや投資対効果を求められても、過去のデータがないため説明ができない」といったお悩みも多くお伺いしてきました。
今回のケーススタディでは、再興ブランドCが上記の課題に当てはまるかと思います。

再興ブランドCのように過去データがない場合、売上が同規模の他社ブランドXやカテゴリ全体の傾向を参考にすることで、再興ブランドCがある一定量を出稿した場合にどれほどのリターンを得られるのかを試算することが可能です。

図表5

図表5は図表3と同じく出稿量とブランドの売上への影響度を示す貢献割合です。
もし再興ブランドCがテレビCMを出稿する場合、他社ブランドXとカテゴリ全体の推移の幅に収まる可能性が高いため、現状の売上と、出稿量に応じた「想定される貢献割合」から売上リターンのシミュレーションが可能となります。

このように近年出稿がないブランドでも、データによる根拠を持った上で、テレビCM出稿に向けての上申をすることができます。

まとめ

ブランドA・Bのケースのように出稿量策定の議論をする際には、自社のみならず、カテゴリ全体や競合含め、様々な観点から俯瞰して出稿量と売上の関係を把握することがポイントです。カテゴリの傾向を把握することができれば、各ブランドの現在のポジションや全社の成長方針に合わせて、テレビCMにどれほど投資を行うべきかを判断することができます。

またそれだけではなく、ブランドCのケースのようにテレビCMを出稿していないブランドでも、出稿した場合の売上効果シミュレーションができるなど、どのようなブランドでもテレビCM投資の必要性や投資量検討が可能となります。

利益創出のためのコスト最適化が求められる今、テレビCMにおいてもこうした手法を駆使しながら定量的な投資判断をしてみてはいかがでしょうか。

著者プロフィール

株式会社インテージ カスタマービジネスドライブ本部  マーケティング戦略部 坂本 雄大プロフィール画像
株式会社インテージ カスタマービジネスドライブ本部 マーケティング戦略部 坂本 雄大
2019年大学卒業後、食品メーカーに就職し、アイス商品の営業を経験。
その後2022年10月にインテージに入社。
パネル調査「i-SSP(インテージシングルソースパネル)」を活用した広告のプランニング、効果検証の支援に従事。

2019年大学卒業後、食品メーカーに就職し、アイス商品の営業を経験。
その後2022年10月にインテージに入社。
パネル調査「i-SSP(インテージシングルソースパネル)」を活用した広告のプランニング、効果検証の支援に従事。

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