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テレビと購買の関係性~鍋つゆのデータから~

暑かった夏はどこへやら、気が付けばすっかり気温が下がり、過ごしやすい涼しい日もあれば、北風が冷たく震えるような日もあるような季節になりました。この時期になると食べたくなるものの一つと言えば、やはり鍋でしょう。テレビでは鍋のCMが流れ、スーパーなどの店頭でも鍋の素や鍋つゆの姿が目立つようになりました。ではいったいいつ頃からテレビCMが放映されるようになり、それが売上にどう関係しているのか、インテージが保有するメディア接触データや売上・購買のデータから紐解いていきましょう。

CMと売り上げの時系列推移

まずは気温が下がり始めた今年の9月から2か月間の関東における「鍋つゆ」や「鍋の素」のCMの放映本数と、店頭での売り上げ、そして平均気温(東京)の推移をグラフ化しました。(図表1)

図表1

販売金額・CM本数・平均気温の推移

9月の下旬に入り、気温は一段階下がりましたが、これに合わせるようにCMの放映本数も増えていき、同様に販売金額も上昇傾向がみられました。10月に入りぐっと平均気温が下がったところ(8日~10日の3連休付近)で、販売金額が大きく伸びていますが、この直前にあたる9月最終週や10月初週の平日に集中的にCMが放映されていることを見ると、生活者に自然と「寒いから鍋を食べよう」という意識を芽生えさせる効果があったのかもしれません。

なお、グラフを見ているとCMの凹凸と販売金額の凹凸が相関していないように見えますが、これは販売金額が伸びやすいのは買い物に行くことが多い土日祝日なのに対し、鍋つゆのCMはメインの購買層である主婦層やパート層に合わせて平日に放映することが多いためで、平日の間にCMを見た人が休みの日のお買い物で、店で並んでいる商品を改めて見て購入する、という流れも想像できます。

しかしやはり、気温低下の要因も大きいため、どの程度CMの効果があったのかは図表1だけからはうかがい知れません。そこで、実際にCMを見た人がその商品を買ったのかどうかを見てみました。

テレビと購買の関係性

図表2はこの間にCM放映の多かった「鍋つゆ」「鍋の素」の4ブランドについて、CMに接触した人としていない人の購入金額の違いです。

図表2

テレビと購買の関係性

ブランドごとに差異はあれど、CMに接触している人はたしかに鍋つゆをたくさん購入していることが分かります。しかし、これだけで「CMを見たから購買した」とは言えないのがデータの難しいところです。このデータは見方を変えれば「鍋つゆを購入する人はそもそもテレビをよく見るから、必然的にCMにも当たりやすいのではないか」という仮説を立てることもできます。実際そうなのかをデータから検証してみましょう。

図表3

セグメント別テレビ視聴状況

一日のテレビの視聴の流れを見てみると、鍋つゆ購入者は生活者全体(TOTAL)と比べてテレビを見ていることがわかります。(図表3)これによって、「鍋つゆを購入する人はそもそもテレビをよく見るから、必然的にCMにも当たりやすいのではないか」という当初の仮説は確かにそうだと言えそうですが、一方でこれだけテレビをよく見る層に対してCMで商品をアピールしていくのが効率的だということもできるでしょう。

また、グラフを細かく見ていくと、鍋つゆ購入者には特徴的な視聴形態があることが分かります。全体的に深夜や早朝を除いてテレビを見ている率が高いのですが、特に夜の時間に着目してみると、一般的には21時台を頂点としたなだらかな山が形成されるのに対して、鍋つゆ購入者は21時台が際立っておらず、19時~21時までがなだらかな頂点を形成していることが分かります。これはつまり、一般に比べて鍋つゆを購入する人は夜にテレビを見始めるのが早く、また見ている時間も比較的長い、つまり「ゴールデンタイムが長い」と言えそうです。

このことから想像できるのは、家族でリビングに集まって鍋を囲みながら、ついているテレビを見ている一家だんらんの様子ではないでしょうか。一人早く食べ終わっていても、最後の〆を待つために食卓でほかの家族が鍋の中の具材を片付けるのを待ちながら、テレビを見ているのかもしれません。このことを裏付けるように、鍋つゆ購入者は比較的単身者が少なく、「夫婦のみ」で暮らしている方や「子供と同居している」方の割合が高いこともデータから分かっています。(図表4)

図表4

鍋つゆ購入者の家族構成

また、図表2の各ブランドのCMの出稿データを詳細に見てみると、CMを視聴した人の購入が特に伸びていた、つまりCM効果が大きかったとみられるブランドAとDはゴールデンタイムにもCMを多く流していましたが、視聴した人の購入の伸びが比較的小さかったブランドBとCはゴールデンタイムのCMがブランドAとDに比べて半分以下と、本数が少なかったこともわかりました。鍋つゆ購入者の視聴習慣に合わせたCMの放映が、CMの効果に影響したのかもしれません。

以上、鍋つゆのテレビCMと購買の関係性を両面からデータで観察しました。CMに当たる人は鍋つゆを購入しやすく、鍋つゆを買う人はテレビをよく見ている。どちらが原因でどちらが結果か、はっきりとは分かりませんが、少なくとも両者の関係性が強いことは間違いないでしょう。その中でも鍋つゆ購入者はゴールデンタイムのテレビ視聴が多く、その時間帯に合わせて放映されたCMの方が売上に貢献していそうだということからは、鍋つゆというカテゴリーにおいてCMと購買の相性がとても良いことが伺えました。このように、生活者データから商品ごとにターゲットを理解して、それに合わせた広告戦略を打つことで、効果が最大化できるのではないでしょうか。


著者プロフィール

事業開発本部 テレビ動画事業推進部 林田涼(はやしだ りょう)プロフィール画像
事業開発本部 テレビ動画事業推進部 林田涼(はやしだ りょう)
2018年インテージ入社。
メディア企業様向けのマーケティングデータ活用支援に従事した後、現在はスマートテレビデータやクロスメディアデータの集計分析を担当。
各種メディアへのデータ提供や寄稿・セミナー等での登壇も行う。

2018年インテージ入社。
メディア企業様向けのマーケティングデータ活用支援に従事した後、現在はスマートテレビデータやクロスメディアデータの集計分析を担当。
各種メディアへのデータ提供や寄稿・セミナー等での登壇も行う。

今回の分析には全国CMマスタとSRI+、i-SSP、SCIを用いました。
【全国CMマスタ】
全国47都道府県の全地上波テレビにおけるテレビCMの出稿情報(どの局で、いつ、どのようなテレビCMが放送されたか)をデータベース化したものです。これにより、競合も含めたテレビCMの出稿状況を日本全国で把握することができます。

【SRI+®(全国小売店パネル調査)】
国内小売店パネルNo1※1 のサンプル設計数とチェーンカバレッジを誇る、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、ホームセンター・ディスカウントストア、ドラッグストア、専門店など全国約6,000店舗より継続的に、日々の販売情報を収集している小売店販売データです。
※SRI+では、統計的な処理を行っており、調査モニター店舗を特定できる情報は一切公開しておりません
※1 2021年6月現在

【i-SSP®(インテージシングルソースパネル®)】
インテージSCI(全国個人消費者パネル調査)を基盤に、同一対象者から新たにパソコン・スマートフォン・タブレット端末からのウェブサイト閲覧やテレビ視聴情報に関して収集したデータです。当データにより、テレビ・パソコン・スマートフォン・タブレット端末それぞれの利用傾向や接触率はもちろん、同一対象者から収集している購買データとあわせて分析することで、消費行動と情報接触の関係性や、広告の効果を明らかにすることが可能となります。また、調査対象者に別途アンケート調査を実施することにより、意識・価値観や耐久財・サービス財の購買状況を聴取し、あわせて分析することも可能です。
※ シングルソースパネル®は株式会社インテージの登録商標です。

【SCI®(全国消費者パネル調査)】
全国15歳~79歳の男女53,600人の消費者から継続的に収集している日々の買い物データです。食品、飲料、日用雑貨品、化粧品、医薬品、タバコなど、バーコードが付与された商品について、「誰が・いつ・どこで・何を・いくつ・いくらで、購入したのか」という消費者の購買状況を知ることができます。 ※SCIでは、統計的な処理を行っており、調査モニター個人を特定できる情報は一切公開しておりません

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