テレビ局におけるデータ活用の現在と未来
コロナ禍で不確実性の増すVUCAの時代、テレビ広告を取り巻く環境も変わっています。そんな中、より効果的に消費者に広告を届け、テレビ広告の価値を上げるために、テレビ局もデータを活用した様々な取り組みを始めています。
この記事では、テレビ局におけるデータ活用についてご紹介します。
テレビ広告セールスの現状と新しいテレビデータ
はじめに、テレビ広告の現状を確認してみましょう。2020年度の上期のテレビ営業収入は、対前年同期比で20%以上の下落となりました。(民放連研究所による)
下期には下落幅は小さくなり、2021年には回復が見込まれていますが、テレビ広告セールスがコロナ禍によって大きく影響を受けたことがわかります。
図表はローカルテレビ局のテレビ営業収入の内訳を示したものです。
9割近くをタイムCMとスポットCMの売上が占めています。
また、最も多くを占めている「東京等支社スポット」の出稿は減少傾向にあります。その一つの要因として、三大広域圏以外のローカル局エリアでは視聴データが不足していて、代理店や広告主がスポット枠の価値を正しく判断できない、ということがあるようです。
ただ、最近はテレビに関して多様なデータが取得できる環境が整ってきました。例えば、スマートテレビのログデータ。インターネットに接続されている「ネット結線テレビ」は年々増加し、2020年6月の段階で国内の約半数のテレビがインターネット接続されているという調査データもあります。(出典:CCI 国内動画配信サービス詳細レポート)
ネット結線テレビからは、日々膨大なデータが収集されています。このため、視聴者数が少ない時間帯のデータ分析や、エリア別の視聴データ分析も可能となり、データ不足という課題は解消されます。
さらに、その膨大なデータに対してスマートフォンのユーザー情報を個人特定できない形で推定して紐づけることで、視聴層を推測し、番組接触層のプロフィールを描くことも可能になっています。
テレビ局によるテレビデータ活用事例
新しいテレビデータが実際にどのように活用されるのか、テレビ局での活用について紹介します。特に多いのがプランニングにおける活用です。いくつか、テレビデータの活用イメージを見ていきましょう。
活用例①タイムCMのセールス強化
図表は各局の番組接触者の特性をまとめたものです。広告ターゲットにフィットした広告枠を探索し、タイムCMのセールス資料として提示することで、広告主に対して広告枠の価値を訴求する、といったことができます。
このようなデータ活用自体は以前から行われていましたが、前述の通り、データ不足という課題がありました。新しいテレビデータは、その膨大なデータ量で、「視聴者が少なく、細かいターゲットを深堀できない番組」や、「ローカル局などデータ整備が十分でない地域」におけるタイムCMのセールス強化も可能にしています。
活用例②スポットCMのセールス強化
図表は広告主のターゲット層に効率よくリーチできるスポットCM枠を探索し、提案するためのツールの画面です。
年齢や職業をはじめ、様々な属性情報からターゲットを設定し、そのターゲットがよくテレビを見ている「ターゲット接触率の高い時間帯」がいつなのか、視聴層におけるターゲットの割合が大きい「ターゲット含有率の高い時間帯」がいつなのかが可視化されます。このようなデータを基に、広告主にとって価値の高い広告枠を提案することができます。
活用例③番組制作・編成にあたっての参考情報
テレビ局によるテレビデータの活用は広告セールス以外でも行われています。図表はある番組において、どのタイミングで視聴者がどれだけ流出したのか、15秒ごとに追ったデータです。
番組内容と照らし合わせることで、どのコンテンツでチャンネルにとどまったか、逆にどのコンテンツで離れたか、という番組への接触レスポンスを細かく分析し、視聴を誘引しやすいコンテンツの方向性を追求するといった活用がされています。
他にも、番組制作におけるテレビデータの活用としては、
- 放送時間帯のテレビ接触者のプロファイリングを通して視聴ポテンシャルの高い番組ターゲットを理解し、その層のニーズにあった企画を立てる
- 番組ターゲットや番組接触者が他に自局のどのような番組を見ているのかを捉えて、番宣計画を最適化する
といった事例が生まれています。
テレビ局におけるデータ活用の未来
ここまで、プランニングにおけるデータ活用例を紹介してきましたが、今は広告効果検証においても活用が進んできています。プランニングと比べると試行錯誤の段階にありますが、GRPと広告主側の保有するデータを組み合わせることでCM効果の推定モデルを作成し、その推定モデルを基に「ターゲットの接触率が高い枠にスポットCMを出稿するということが可能になっています。
また、インフォマーシャルとレシートをスキャンするとポイントがもらえるアプリを組み合わせて店頭への送客・購買喚起施策を実施し、WEB広告のように出稿から購買までの効果検証を行うといった取り組みをしているテレビ局もあります。
広告主における広告効果検証ニーズが高まっている一方で、より効果的なテレビ広告の届け方を探索し、広告の価値を高めて広告主に提供したいという想いでテレビ局側の取り組みも進められているようです。
WEB広告がこれまでの狭すぎるターゲティングから広げていこうという動きに転じているの対し、テレビ広告はターゲットを絞って効率的に当てに行こうという動きを見せています。また、これまでの予約型広告から運用型広告へという動きも進んでおり、WEB広告の運用に近づいています。より効率的でスピード感のある運用へ、テレビデータの活用はますます進んでいきそうです。
この記事に関係するインテージのデータサービス
【Media Gauge® TV】
複数のテレビメーカーから収集した、ネットに結線されたスマートテレビの録画機の視聴ログ※をクレンジングし、統一フォーマットで標準化・構造化した視聴データです。都道府県別にとどまらず、一部エリアでは市区町村別でもデータを見ることが可能です。
インテージでは現在、各放送局別(地上波・BC・CS)、各地域別(市区町村など)のテレビ視聴データを提供しています。テレビ:219万台(2020年9月時点 最新の台数はこちら)
※マーケティング利用許諾を得て、匿名化されているもので、どのテレビ・録画機で、いつ、どんな操作がされていたかがわかります。
【Media Gauge® Dynamic Panel®】
Media Gauge® Dynamic Panel®とは、Media Gauge® TVと、株式会社ドコモ・インサイトマーケティング(以下DIM)が所有するdi-PiNK(DMP)を推計して紐づけ、推定在宅情報や性年代などの属性を利用して人ベースに分解し、指定されたターゲットごとに統計処理を行うことで視聴者データを算出するサービスです。Media Gauge® TVとdi-PiNKの推定紐付けは、インテージがDIMに委託し、DIM内で加工・集計を行っています。DIMは個人情報を保有しない事業者であり、Media Gauge® Dynamic Panel®データが個人情報に結び付けられることはありません。また、Media Gauge® Dynamic Panel®の提供物は、匿名化・統計化されたレポートとなります。
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