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生活者インデックスデータ

バーチャル家庭訪問で海外のインサイト発掘

コロナ禍でのグローバルリサーチ

長引くコロナ禍において、海外出張や海外視察のままならない状況が続いています。また、渡航した駐在員も海外現地の医療体制の逼迫を受けて、日本に一時帰国する例が相次いでいます。そのため、海外出張や海外駐在員を介した、海外生活者に関する生の情報の取得が難しくなっています。
その一方で、新興国におけるインターネットアクセスや識字率の低さという壁が立ちはだかっていたグローバルリサーチにおいて、インタビューはリモートに、書き取り式のアンケート調査はオンラインアンケートに切り替わるなどデジタル化が加速しています。

このような環境下において、いち早くコロナ禍の影響を脱し、経済的な成長を続ける国が中国です。中国の1 人あたりGDP は2020 年時点で約10,000USD(世界銀行)となっています。ただ、このような平均を示した数字だけで中国の生活者を捉えると、経済発展著しい中国の生活者の実態を見誤ることにつながります。
そこで、この記事では、デジタル化されたリサーチ手法を用いて得られた、住居内の360 度画像データから、中国生活者の暮らしぶりを覗いてみたいと思います。特に、中国でも最も経済発展を遂げている上海の生活者に注目します。

360度画像データを用いたバーチャル家庭訪問

海外向けの製品やサービスの開発に際し、訪問調査は従来から有効な手法として用いられてきました。居住環境を実際に見ることで、製品やサービスが使われるシーンをリアルに捉え、その土地の生活に沿った開発に繋げることができます。

一方、デジタル技術の発展により、3Dカメラによって画像を撮影し、その空間をWeb上で再現して自由に見る、といったことが容易にできるようになりました。コロナ禍ですっかり定着したバーチャル内見もその例です。
リサーチにおいても、この技術を使って海外の生活者の居住環境を同意の上で撮影することで、訪問調査の様に“生活の場”を体感できる「バーチャル家庭訪問」が可能となりました。もちろん、現地を実際に訪れることでしか得られないものはありますが、生活空間の全体感が掴みやすかったり、多くの関係者で共有できたり、さらにコスト面でも大きなメリットがあります。
ここからは実際に上海の生活者をバーチャル家庭訪問して得られたデータから、実態をみていきたいと思います。

上海のバーチャル家庭訪問にみるインサイトと商機

中国で「家」と言えば、慣習的に結婚する際に男性側(男性の家族)が自家用車とあわせて用意します。近年、上海や北京といった1級都市では住宅価格の上昇が特に激しく、住宅を手に入れるのには多額の費用が必要になりますが、それでもやはり結婚するとなると男性側は両親の力も借りながら住宅購入のために数十%の頭金を用意し、住宅ローンを組み、結婚生活のための住居を必死に用意しようとします。

では、このように購入される中国の住宅はどのようなもので、そこに暮らす人はどう生活しているのでしょうか。インテージの保有する海外生活者データベース「Consumer Life Panorama」※ 1に登録されている住居内の360 度パノラマ画像を用いながら、上海の生活者のプロファイリング分析をしてみましょう。
このデータベースには約500 人の海外生活者が登録されており、そのうちの約100人が中国の、うち67人上海の生活者です。そのため、従来は定性的にしかできなかった「画像を用いたプロファイリング分析」を定量的に行うことも可能になっています。

まず、日本人が上海の家庭を訪問して気づくのが間取りの違いです。日本では玄関が一段上がった構造になっている上に、室内が見えない作りになっていることがほとんどですが、中国では玄関に段差はなく、玄関を開けるとすぐ部屋が広がる造りとなっています(写真1)。実際に弊社のデータベース内に登録されている上海の67人の住居においても日本式の玄関のある家庭はありません。

写真1

玄関の段差については、従来上海の生活者は部屋の中でも靴を履いて過ごしていたため、日本のように靴を脱ぐ場所としての玄関の役割が必要でなかったことが影響していると考えられます(ただし、都市化とともに現代型のマンションが普及したことで、上海の生活者も最近は玄関で靴を脱ぐようになっています)。
また、日本人はプライバシーを重視することもあってか、玄関を開けてすぐに室内が丸見えになることに大きな抵抗感があると思われます。一方で、上海の生活者は玄関から室内が見えないようにすることよりも、リビングや寝室の広さを優先して室内で快適に過ごすことにより関心があると考えられます。

さて、玄関直結のリビングに踏み入れると、日本では見慣れない冷蔵庫がリビングに置かれていることに気が付きます(写真2)。上海の67人の住居を見ても、約60%の家庭ではリビング・ダイニングに冷蔵庫を設置していることが確認できます。

写真2

日本ではキッチンに冷蔵庫を設置することが一般的であり、また冷蔵庫を設置するためのスペースもキッチン内に確保されています。一方で、上海では家族が集まるソファやダイニングテーブルの近くに冷蔵庫を設置する家庭をしばしば見かけます。
中にはキッチンに置きたくてもスペースの関係でどうしても置けなかった家庭もあるかもしれませんが、家族が集まって時間を過ごすリビングやダイニングに置くことで、食事やくつろぐ際に食材や飲み物などが取り出しやすくなるため、あえてリビングやダイニングに冷蔵庫を設置する家庭も見受けられます。

何より、リビングやダイニングに冷蔵庫を設置するとなると、キッチンに設置する場合になかった生活者のニーズが潜在的に眠っている可能性もあります。
たとえば、リビングやダイニングに冷蔵庫を設置するとなると、家族だけでなく友人を自宅に招いた際にも、そのサイズから非常によく目に留まることになります。そのため、上海の冷蔵庫には見せるインテリアとしての役割が潜在的に眠っている可能性があります。
また、冷蔵庫の中を見てみると「スキンケア用品」「冷却シート」「医薬品」「サプリメント」といった食材以外のものを冷やしている家庭が10%程度いることが弊社のデータベースで確認できます(写真3)。10%程度ではありますが、中国の人口を踏まえると見逃せない10%でもあります。このように、冷蔵庫には食材を冷やす以上の価値が眠っている可能性もあります。

写真3

さらに、上海では、盒馬鮮生(フーマー)に代表されるように食材の即日宅配やミールキットの広がりも見られています。買いだめた食材を冷やすという冷蔵庫の従来の使い方に大きな変化を与えるかもしれません。

海外マーケティングのヒントを探る

様々なマーケティングリサーチ手法の中で、家庭訪問調査というのは生活者の普段の生活ぶりを直接的に確認することができ、製品・サービスの使われ方やその背景にある生活者の考え方など深い気づきを与えてくれる手法です。そして、深い生活者理解があったからこそ生まれた革新的な製品やサービスをいくつも目の当たりにしてきました。

一方で、コロナ禍において、最も実施することが難しいマーケティングリサーチの1つが、海外渡航をして行う家庭訪問調査でもあります。もしかしたら、日本人が海外の生活者の家庭をフィジカルに訪問することができるようになるのは、何年も先のことになってしまうかもしれません。

だからこそ、そこにはイノベーションが求められます。インテージは、今後もコロナ禍の海外市場においても商品開発やマーケティングアクションにつながる生活者理解を、テクノロジーを活用して追求していきたいと考えています。

※この記事はMarkeZine70号に掲載された寄稿記事(『バーチャル家庭訪問で海外のインサイト発掘』)を再構成したものです。

【Consumer Life Panorama】
日本にいながら海外生活者の家庭をバーチャルホームビジットできるウェブサイト型サービス。豊富な写真データを用いながら、「住環境」や「1日の生活の流れ」「スマホアプリの使い分け」といったターゲット像のプロファイリングを鮮明に描写します。12か国500名に及ぶ世界の生活者がデータベースに登録されており、豊富な生活者情報を基に商品・サービス開発を始め、マーケティングの諸施策の立案と実行を支援します。
2021年秋には日本国内版もリリース。従来のデプスインタビューと組み合わせ、これまでにない解像度で生活者を捉え、新たな発見に結びつけます。

デモサイトはこちら(表示されるログインボタンを押すと見られます)

バーチャルホームビジット 】
世界中の消費者の住居の様子を360度画像で閲覧できるウェブサイト型サービスです。遠隔地の消費者の家を疑似的に訪問できます。
新商品の企画や開発をする際、ターゲットとする消費者のリアルな生活実態を見ることで、様々な気付きを得られます。

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