

近ごろ「ウェルビーイング(Well-being)」を企業ミッションや商品コンセプトに掲げる例が増えている。健康に配慮した商品や、環境負荷を抑えたサービスなど、生活者の“よりよい暮らし”に寄与する取り組みは、もはや珍しくない。
一方で、「健康に良い」「環境に配慮している」といった従来の文脈だけでは、生活者の行動変容や購買につながりにくくなっていると感じるマーケターも多いのではないだろうか。ウェルビーイングは重要だと感じていても、「結局、どんな状態を指すのか」「何を提供すればいいのか」が曖昧なままでは、商品やサービスの価値として設計することは難しい。
インテージでは、2022年から生活者のウェルビーイングに着目し、生活者の意識や、ビジネスへの展開に関して調査を重ねてきた。(生活者が求めるウェルビーイング(Well-being)な暮らしとは(2024年2月))
本記事では、インテージが実施した最新調査データをもとに、生活者自身がどのような状態をウェルビーイングと認識しているのか、生活者をウェルビーイングに導くには商品・サービスをどう設計するといいのか、そのヒントとなる情報を伝えていきたい。
ウェルビーイングとは:
「病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態(well-being)にあること(日本WHO協会:訳)」
ウェルビーイングという用語自体を知っているか、また内容を知っているかを聞いた結果が図表1である。
2025年12月の調査では「ウェルビーイングを聞いたことがある程度」の人まで含めると用語の認知は47.0%であった。2023年から微増の状態が続いている。
図表1

用語認知の傾向を年代別に確認すると、15~29歳では56.0%、50~69歳では41.3%であり14.7ポイントの差がついた。特に15~29歳では「内容まで含めて知っている」が13.6%となっていた。
若年層の認知が高い背景としてSNSや教育などによる認知の広がりと、不確実な時代を生きるなかで、メンタルヘルスなど様々な課題が自分事化し、ウェルビーイングの必然性を実感しているからではないかと考える。
用語認知者のうち「内容まで含めて知っている」+「何となくどういうものかイメージできる」に対象者を絞り、「現在ウェルビーイングの状態であるか」を確認したところ図表2となった。
「とてもウェルビーイングな状態である」12.6%、「ウェルビーイングな状態にある」54.7%となり、現在ウェルビーイングな状態である人は合計67.3%であった。
2024年12月と比較すると、6.0ポイント増加している。
図表2

次にOECDのウェルビーイング測定のため各指標
生活満足度:現在の生活全般にとても満足している(10点)⇔まったく満足していない(0点)
人生に価値:人生で行なっていることに、非常に価値があると感じる(10点)⇔まったく価値がないと感じる(0点)
将来に希望:将来についての希望が、完全に希望に満ちている(10点)⇔まったく希望がない(0点)
心身の痛み:身体的/心理的痛みが、まったく感じなかった(10点)⇔想像できる中でもっとも強い痛みだった(0点)
これらを用いて、4つの指標それぞれに対して11段階中TOP2(9点、10点)を回答した人が、現在ウェルビーイングな状態であるかを確認したのが図表3である。
図表3

「とてもウェルビーイングな状態である」と回答した人は、生活満足度が高い人では48.3%、人生の価値を高く感じている人では43.7%、将来に希望を感じている人では51.6%となった。一方、心身の痛みを感じていない人に関しては、19.7%にとどまった。
このことから、ウェルビーイングな状態とは、「現在」の生活に満足し、「過去」人生で自身が成してきたことに価値を認め、「将来」に希望を持つことで成り立っていると考えられる。
ウェルビーイングとは、現時点が“好い”だけでなく、過去、現在、未来においても、“好い”状態が継続されることにより、生活者が実感することができるのであろう。
では、ウェルビーイングを実現するためには、実際の生活の中で、生活者はどのような要素が大切だと考えているのだろうか(図表4)。
1位は「健康である」53.7%、次に「家族が幸せである」49.6%、「自分が幸せである」49.0%、次いで「穏やかに暮らせる」47.8%、「自分の居場所がある」47.8%となった。
2024年12月と比較すると、上位15位では順位の入れ替わりはあるものの、各項目の顔ぶれに変化はなかった。
2024年12月から増加したのは10位の「相談相手がいる」3.0ポイント増、5位の「自分の居場所がある」2.5ポイント増となった。
社会の中での周りの人との関わりに関する項目が昨年より微増しているようである。
図表4

さらに、年代別にウェルビーイングな状態であるために大切な要素を確認したのが図表5である。
「健康」「幸福」「お金」の各要素は各年代共に上位に位置する。
「自分の意思で選択ができる」は、15~29歳で6位、30~49歳で8位、50~69歳で7位と、いずれの年代でも上位にランクインしている。
商品サービスの購入や、将来の選択など、自分の意思で選択するには、「お金」に余裕があること、また「健康」な状態であることが重要になってくる。まさに「自分の意思で選択できること」は、生活者がウェルビーイングな状態であることを代弁しているのではなかろうか。
図表5

次に、年代別に特徴的な要素を確認すると15~29歳では「ありたいと考える姿を目指している」38.8%が15位に、30~49歳では「自己実現できている」32.2%が12位に入っている。ウェルビーイングな状態であるための大切な要素は、年代(ライフスタイル)と共に変化していくことが確認できる。
続いて 、マーケターや企画担当者にとって興味深い商品やサービスとウェルビーイングの接続を探っていきたい。
近年、お客様のウェルビーイングに貢献することを目標やミッションに掲げる企業が増えてきた。
では、生活者はどのような商品やサービスを、ウェルビーイングな商品とイメージするのだろうか。(図表6、図表7)
図表6

自動車では「移動のストレスを減らし、心を穏やかに」「家族の時間を豊かにする」など、車内でリラックスすることが、ウェルビーイングとつながっている。
家電は「長く使える」「家事の負担を軽減する」などが、住宅設備・住宅では、「光熱費などの省エネ」「安心・安全の確保」などが上位に入った。
耐久財では共通して「自然や環境への悪影響が少ない」ことや、「地球環境への貢献」など環境面での対応がウェルビーイングにつながるとの回答を得た。
図表7

食品・飲料においては「栄養バランス」「心を落ち着かせる」、洗剤・水回り商品では「節水」「リサイクル容器」が、化粧品・ヘアケアでは「肌・頭皮の健やかさ」「ストレスや環境ダメージから守る」などが、ウェルビーイングをイメージする商品として選ばれた。
消耗品においても、環境への配慮が共通して上位に挙げられた一方、日々の健康をサポートする商品が多くを占めた。
共通で「リラックス」「環境負荷の軽減」が、また耐久財では「豊かな時間」 が、消耗品では「健やかさ」が、生活者が求めるウェルビーイングな商品のキーワードとなるのではなかろうか。
既に生活者のウェルビーイングの状態の把握が指標として活用されている分野としては、自治体の街づくり(EBPM※)があり、“地域幸福度(Well-Being)指標(LWCI※)”が用いられている。
今回はその中から、地域でウェルビーイングな生活を実現するうえで重要な要素を確認した(図表8)。
1位は、「医療機関が充実している」46.9%、2位は「自宅には、心地よい居場所がある(居住空間)」43.5%、3位が「学びたいことを学べる機会がある」42.9%となった。
生活者は街のウェルビーイングとして、“住みやすさ(利便性)”、“居住空間の良さ(居住性)”、“活躍/成長の機会”を挙げた。
この他に「適切な収入を得るための機会がある」40.6%。「防犯対策(交番・街灯・防犯カメラ・住民の見守りなど)が整っており、治安がよい」40.3%、「暮らしている地域の空気や水は澄んでいてきれいだと感じる(自然)」40.2%など、防犯や治安、自然環境などが上位に挙がった。 地域社会でのウェルビーイングは、利便性や、活躍/成長の機会、自然環境/景観、子育て、防災/防犯など、地域住民が望む様々な要素をバランス良く整えていくことが望まれている。
図表8

※EBPM:Evidence-Based Policy Making
※LWCI:Liveable Well-Being City
ウェルビーイング に注目した商品やサービスを展開するには、“健康軸“のみで語るのではなく、生活者がよりよく生きるために重視する要素に翻訳し、具体的に自社が生活者のウェルビーイングのために何が支援できるか、詳細に設計することが大事である。
ウェルビーイングな状態になるための重視点として、全世代で「自分の意思で選択できる」が上位に入り、選択の自由は「健康」と「お金の余裕」に支えられている点も示された。
また、15~29歳では「ありたいと考える姿を目指している」、30~49歳では「自己実現ができている」、50~69歳では「他者や社会の幸せを願うことができる」など、年代・ライフスタイルに応じた特徴も見えてきた。
商品開発の観点では、耐久財は「豊かな時間の提供」「移動・家事ストレスの低減」「環境負荷の低減」、消耗品は「日々の健康サポート」「リラックス」が、生活者のウェルビーイングに向けたキーワードとなるだろう。
“健康”だけで語らず、「選べることの大切さ」「安心できる居場所」「家族や社会との時間」など、生活者の文脈に合わせた価値設計を行うことが、ウェルビーイングを生活者と共に目指すビジネスには有効ではないだろうか。
※今回の調査で明らかになった詳細なデータやチャートは、無料のダウンロードレポートでご覧いただけます。レポートのみにて提供している項目は以下です。ぜひ、ダウンロードしてご覧ください。
<ダウンロードレポートのみ記載事項>
・ウェルビーイングな状態は、どのような“時”か?
・お金、時間、心の「ゆとり」の実感とウェルビーイングの関係
・ウェルビーイングであるための重視点(2025年比較、年代別比較)
・ウェルビーイングな【車】とは(詳細)
・ウェルビーイングな【家電製品】とは(詳細)
・ウェルビーイングな【住宅・住宅設備・インテリア】とは(詳細)
・ウェルビーイングな【食品・飲料】とは(詳細)
・ウェルビーイングな【洗剤・水回り商品】とは(詳細)
・ウェルビーイングな【化粧品・ヘアケア】とは(詳細)
OECDの以下指標の調査結果に関しての集計の準備があります。ご希望の方は、弊社営業担当又は問い合わせフォームまでお問合せください。
主観的幸福感測定中核モジュール(4種)
ドメイン評価拡張モジュール(10種)
ユーダイモニア拡張モジュール(4種)
【インテージのネットリサーチによる自主調査データ】
調査概要
調査地域:日本全国
対象者条件:15~69歳男女個人
標本抽出方法:マイティモニターより適格者を抽出
標本サイズ:スクリーニングn=10479 本調査n=5434
ウェイトバック集計:なし※
※国勢調査に基づき性別・年代・地域を人口構成に合わせて回収
調査実施時期: 2025年12月19日(金)~2025年12月22日(月)
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