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2014年の消費増税時を振り返る データから見えた消費への影響と小売店の対策とは?

※本記事は2014年12月に発行した『インテージ消費税増税影響分析プロジェクト』のレポートを再構成しています


2019年10月に予定されている消費増税。実務的な運用の課題はまだ検討が続いていますが、消費にはどのような影響が想定されるのでしょうか。

この記事では、前回の2014年4月の5%から8%への消費増税時、買い物の場所である小売店がどのような動きをとり、生活者の消費行動にどのような変化が見られたのかを、データで振り返ってみました。

増税直前の駆け込み需要 その規模は?

まずはインテージの消費者パネルデータSCIを用いて2014年4月の「消費増税前」の生活者の消費行動を見てみましょう。これまで、図表1のように増税が行われてきましたが、ここでは、さらに前の増税となる1997年、3%から5%への増税時と比較してみました。

図表1

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2014年3月と1997年3月は曜日の並びが同じだったため、週別の動きを並べて比較してみます。97年の増税直前週の生活必需品(飲食料品・雑貨・化粧品)の購買額は、前年と比較して16.9%増加しました。これに対して14年の増税直前週の購買額は対前年42.8%の増加と、97年の増税時を大きく上回りました。(図表2)

図表2

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この購買額が大幅に増加したとき、特に購買量が増えたのが日用雑貨品です。図表3は購買量の前年比が高い順番にカテゴリーを並べたものです。比較的長期のストックが可能なものが多く、上位には日用雑貨品が集中。その後に調味料や飲料が続いていました。

図表3

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14年の増税前に購買額が大幅に増加した原因を探るため、生活者の買い物の仕方を分析したところ、14年の3月に「まとめ買い」を行った人の割合が97年3月の24.9%から29.7%に増えていたことがわかりました。(図表4)

このまとめ買いを行った人たちは、3月に一人当たり平均46品目を買っていました。97年は37品目。17年間で市場環境が変わった影響を差し引いてもその品目数は1.08倍と、買うものの「幅」を広げていたことになります。一方で、一つ一つの品目でまとめて買う量を増やしていて、前年より買う量が増えた品目を数えると、133品目ありました。これは、97年の95品目から1.4倍と、買うものそれぞれの「まとめ買い量」も増やしていたことになります。

図表4

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このように消費者のまとめ買いが増えた裏で、小売店はどのような工夫をしていたのでしょうか。当時のお店の取り組みが見える材料として、インテージチラシインデックスのデータを用いてスーパーのチラシのうたい文句を調べたところ、増税直前の週に発行されたチラシの89%に「税」「まとめ」といった文言が入り、ほとんどのチラシに増税関連ワードが掲載されていました。(図表5)

図表5

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具体的には、増税2週間前となる3/17週は「食卓の必需品はお早めに」「毎日使うもの」「日持ちするもの」など、どのようなものをストック買いするかを提案するワードや「計画的に」、「今のうち」といったワードが散見されました。また、直前となる3/24週には「あと〇日」、「ラストチャンス」といった言葉が目立つようになっていました。

このような小売店のキャンペーンが生活者の購買行動に影響を及ぼしたかどうかを確認するために、消費増税前に購入した品目の購買きっかけをアンケート調査したところ、関連したセールを店頭やチラシで見て行った衝動的なまとめ買いは、様々な品目で見られました。(図表6)

図表6

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特に清涼飲料や炭酸飲料などの飲料系は店頭セールによってまとめ買いが促進され、柔軟剤や洗濯用洗剤などの日用雑貨やまとめ買いセールが多い乾物などはセールのチラシによってもまとめ買いが促進されたことがわかります。

一方、増税前に「駆け込み需要」という言葉が使われた新聞や雑誌の記事の数は、97年よりも14年の方が多い※1という調査結果もあります。報道を通しても駆け込み消費、まとめ買いといった空気が高まっていたと考えられます。
増税の引き上げ幅が3%と97年より大きかったことや、マスコミや店頭でもまとめ買いを促進する動きが目立ったことで、生活者の購買意欲が強くかき立てられ、駆け込みでの消費が増えたといえそうです。

19年10月の消費増税時は、飲食料品の多くが増税対象外の品目となる見込みです。つまり「今のうちにまとめ買いをしておくべきもの」は前回の増税時と比べて少なくなります。この結果、まとめ買いは同様に起きるのでしょうか?その対象は何になるのでしょうか?
18年11月段階の意識調査の結果は「2019年の消費税増税 軽減税率導入で消費への影響は?」でご紹介しています。

増税後の消費落ち込みに備える小売店の工夫

97年の増税時、まとめ買いによる駆け込み需要の後、反動で市場が落ち込む現象が見られました。それを経験した小売店は、14年に消費増税が施行された直後、どのような施策を実施したのでしょうか。買い物に出かける前と買い物をするその場の2つのタイミングで、小売店がどのような施策をしていたのかを見てみましょう。

まず、買い物前に目にするチラシに登場する言葉から、どのようなキャンペーンを実施して生活者に何を訴えていたかを見てみました。(図表7)前年の13年にも価格を訴求するワードはすべてのチラシに見られていましたが、増税直後も同様にすべてのチラシで見られました。ここでは使われていた価格訴求ワードは「価格据え置き」「価格引き下げ」といったもの。増税による消費者負担を抑える工夫が見られます。また、前年と比べて「お花見」「行楽」「新学期」といった季節イベントに関する言葉が増えていました。季節イベントを訴求することで、来店を促す工夫をしていた様子がうかがわれます。

図表7

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次に買い物の現場である店頭で目にする「価格表示の仕方」に注目してみます。97年の消費増税の後、2004年に商品の価格を税込みで表示することが小売店に義務付けられました、さらに14年の増税に伴って税込みと税抜きの両方を併記して表示することが可能になりました。小売店は、税込みと比較して安い金額を生活者に提示することが選択できるようになったわけです。
この法改正の結果、店頭の価格表示がどう変わったのかをインテージの全国店頭プロモーション調査付帯調査の結果から見てみました。増税直前は56%が税込表示だったのに対し、増税後、税込み価格が上がった2週後には税込みのみの表示が2%とほとんどなくなり、28%だった併記表示が76%を占めるようになっていました。さらに併記した税抜き価格を下げて集客を狙うチェーンも見られました。(図表8)

図表8

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このように、消費者の目に触れる価格を抑えたり、イベントを訴求して売り場を活性化するなど、小売店が消費意欲を喚起しようと工夫している様子が見られます。

増税後に見られた生活者の変化は?

最後に、14年の「消費増税後」に生活者の消費行動にどのような動きが見られたのかを確認してみましょう。
消費増税後半年間、生活必需品全体の購買金額・数量の前年比がどのように推移したかを見ると、増税直後に購買金額、量ともに前年割れした後、5月末までは順調に回復しましたが、6月から回復が停滞しています。この傾向はどの品目でも見られましたが、特に飲料の回復が遅かったようです。(図表9)

図表9

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このデータを年代で比較すると、年代が上になるほど直前の駆け込み消費が多く、回復は早いという傾向が見られました。(図表10)

図表10

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この購買金額・購買量の動きの要因を、生活者の心理と行動の両面から探っていきましょう。

まずは生活者の心理にどのような変化があったのかを振り返ります。増税後半年経った11月の時点で、「去年と比べて生活のゆとりがなくなった」人は56%と半数を超えていました。特に子育て世代である40代に多く、30~40代は生活が苦しいと感じる人も多くなっています。(図表11)

図表11

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また、「増税によって中長期にかけて個人消費が落ち込む」と感じる人が、増税直後の4~5月は42%程度でしたが、時間を追うごとに徐々に増加して11月には60%に達し、じわじわと負担を実感してきた様子がうかがえます。(図表12)

図表12

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さらに、同時期の内閣府の消費動向調査でも、1年後の物価が上昇すると予想する人が増加傾向にありました。(図表13)増税に加えて物価上昇の懸念も相まって、負担感と先行きへの不安が広がっていったようです。

図表13

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次に生活者の消費行動を、「1回の買い物の量」と「買い物に行く回数」という2つの要素に分けて見てみます。14年6-10月における1回の買い物金額はほぼ前年並みと変わらなかった一方、買い物に行く回数は、前年を下回っていました。(図表14)

図表14

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このように、増税後半年経っても半数が「生活のゆとりが少なくなった」と感じていたり、時間が経つにつれて中長期的な不安を感じる人が増えるといった生活者心理の変化を背景に、買い物の回数が減り、購買の回復が停滞していたようです。

2019年10月に予定されている次回の消費増税の時も、生活者の心理の変化が購買行動に影響を与えることが予測されます。既に飲食料品の多くの8%据え置きや、キャッシュレス決済をした場合に2%分をポイントで還元するなどといった施策が検討されています。これらの施策が購買心理の悪化をいかにやわらげられるかが、消費の停滞を避けるためのカギとなりそうです。

※1 日経ビジネスオンライン(外部サイトリンク) https://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20140306/260650/


今回の分析は、インテージの保有するSCI(全国個人消費者パネル調査)、インテージチラシインデックス、全国店頭プロモーション調査付帯調査、自主企画のインターネット調査のデータをもとに行いました。

SCI(全国個人消費者パネル調査)
全国15歳~79歳の男女52,500人のパネルモニターによる食品(生鮮・惣菜・弁当などを除く)・飲料・日用雑貨品・医薬品に関する消費者市場動向のトラッキングサービスです。 このデータからは、「いつ」「どこで」「誰が」「何を」「いくらで買った」のかがわかります。消費者の顔を詳細に捉え、消費者を起点としたブランドマーケティングや店頭マーケティングにご活用いただけます。

【インテージチラシインデックス】
全国約27,000店舗の折り込みチラシの掲載状況を捉えるデータです。いつ・どこで・何がいくらで掲載されたのかといった商品別の掲載状況のほか、チラシ画像やタイトル情報を収集しています。小売店における施策実施状況の把握にご活用いただけます。

SPI(全国店頭プロモーション調査)
全国小売店パネル調査(SRI)の対象店と共通の店舗(全国370店)にて、調査員が毎週末収集している店頭販促状況データです。店頭プロモーション実施状況の把握や効果の測定にご活用いただけるほか、追加調査で「販促ツール」「什器」有無など詳細な店頭実態を捉えることも可能です。

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