日本のマーケターの思い描く2025年の“ありたい姿”とは?
2025年の近未来、日本のマーケターは、自身のマーケターとしての“ありたい姿”をどのように描くのでしょうか。
インテージでは独自のリサーチ&創発プログラム「デ・サインリサーチ」により、マーケター2,000人の意識の中にある未来を「マインドディスカバリーマップ」として見える化し、マーケターが描く2025年のマーケティングへの期待についてのインサイトを得ました。
この記事では、「ミレニアル世代のマーケターが思い描く2025年とは」で紹介した世界のミレニアルマーケターの調査結果に続き、日本のミレニアル世代を中心とする若年層マーケター(以下 ミレニアルマーケター)と、よりキャリアの長いシニアマーケターのマップから、それぞれの特徴をご紹介します。
日本のマーケターが思い描く2025年とは
図表1は、世界20カ国のミレニアル世代を中心とする若年層マーケター(20-35歳)500人、シニアマーケター(40-55歳)500人、日本の若年層マーケター500人、シニアマーケター500人の計2,000人に、「成功したマーケターとしての自身が、世界屈指のビジネス誌にインタビューされている状況」を想像してもらい、どのようなキーワードでそのインタビューに答えるかを自由連想で挙げてもらった結果です。
図表1
想起されたワードランキングでは、日本のミレニアルマーケター、シニアマーケターのいずれにおいても、多くの企業名が挙がるなかで「AI」がトップであり、期待が寄せられていることがわかります。世界のマーケターでは「AI」はランキング外であり、日本と世界のマーケターの違いが、連想量からも見て取れます。
では、それぞれのワードはどのような意味で捉えられているのでしょうか。図表2のマップ上に布置されているポジションから、その意味を読み解くことができます。
マップを読む際には、ワード同士の距離に着目し、その関係性を解釈していきます。ワード同士が近ければ、関係性・意味合いとしても近く、反対に遠ければ、関係性・意味合いが遠いと読みます。また、マップの中心は連想の“ハブ” と呼ばれ、相対的に様々なキーワードと関係が近いワードが集まり、テーマにおける一つの答えが表出する場所となります。
ここからは、日本のミレニアルマーケターとシニアマーケターのマップの比較から、マーケティング業界への期待の描写に明確に世代差が表れた、3つの文脈(連想の中心、戦略、社会課題)について紹介します。
図表2
図表2の左側のミレニアルマーケターの期待連想のハブ(中心)で、まず目につくのが、「ペルソナ」、「Instagram」。2025年のマーケティング活動に欠かせないツールとなっているとも読めますが、「共感」も近くにあるので、マーケター自らが共感できるヒトの像、生活者にも共感される“顔が見える”ロールモデルを創りたいという期待を読み取ることができます。「象徴となる人を描く」ことが課題解決の鍵と捉えているのかもしれません。
一方、シニアマーケターのマップの期待のハブ(中心)には、「品質」、「高品質」、「商品」があり、これらのワード群からプロダクトの品質を追求する姿勢が見て取れます。同じく、「先進性」、「挑戦」も近隣に出現していることから、「品質と先進性を兼ね備えた商品やサービスの創造に挑戦したい」、先進的なモノづくりへの期待が集結しているといえます。
ミレニアルマーケターは、“象徴となるヒト”、シニアマーケターは“高品質なプロダクトやサービス”と、近未来への期待が描写される“対象”が異なるようです。
2025年への期待構造にある「戦略」の意味とは
2025年のマーケティングを語るとき、日本マーケターにとって「戦略」とは何を意味するのでしょう。図表3は、各世代のマップ中での「戦略」の現れ方を示したものです。
図表3
ミレニアルマーケターのマップでは北東に位置する「戦略」は、周辺に「シーズ」、「顧客」、「市場」、「グローバル」、「先進的」、「トレンド」、「最先端」があり、市場を開拓していく意味合いのエリアにあります。また、ミレニアルマーケターで最も多い連想ワードである「AI」もこのエリアに出現しており、IoTや最先端技術を駆使し、グローバル展開を狙い、顧客獲得、市場戦略を緻密に行っていきたい期待が表れています。
一方、働き方改革や、自己実現のエリアに「戦略」が出現しているシニアマーケターのマップでは、ハブ(中心)にある「成功」から「戦略」へと同じベクトルのワードを繋げると、「楽しさ」、「笑顔」、「達成感」の先に「戦略」が登場しています。また、「人脈」、「フィーリング」、「やりがい」も周辺にあることから、「フィーリングが合う仲間と人脈構築」が「戦略」と紐づいていると読み取れます。
シニアマーケターにとっての2025年の「戦略」は、個人の達成感や笑顔のため、働き甲斐を求め、働き方改革の実現を思い描くこと。その連想と共に「フィーリングが合う仲間と人脈構築」があることから、これらのワードは、戦略を語るときに重要な要素なのかもしれません。シニアマーケターが20~35歳くらいだった時代には、“飲みにケーション”も今より多く実施されていました。そのような活動によって培われた人脈作りこそ、「戦略だ」という意識が底堅いという印象を受けます。
ミレニアルマーケターは「テクノロジーの進化と顧客“戦略”」、シニアマーケターは「自ら/周囲の関係性や働き方を構築する”戦略”」と、同じ「戦略」という言葉を一つとっても、全く異なる意味を持つことが分かります。
2025年の社会課題への意識
最後に、社会課題を切り口に、その連想構造をみてみましょう(図表4)。
図表4
ミレニアルマーケターのマップでは、社会課題関連ワードがマップ全体に出現しており、今後のマーケティング活動において社会貢献の視点はあらゆる領域で切り離せないと考えているようです。また、北方向にある「環境問題」、「エコ」、「少子化」の周辺には、「SNSの活用」があり、社会課題の問題提起や、社会活動への参画手段のひとつとしてSNSを位置付けているとも解釈できます。その先には、「文化」もあり、ミレニアルマーケターにとって身近な発信ツールであるSNSと環境問題をつなげた新たな文化の創造に期待が込められているのかもしれません。
シニアマーケターのマップでは、社会課題についてグローバル課題か、国内課題かの区別を意識している構造がみてとれます。グローバル課題のエリアには「SDGs」、「環境問題」、「リサイクル」、国内課題では「高齢化」、「少子化」、「社会貢献」、「健康」が出現しています。また、「社会貢献」がIT技術やIT企業で形成されたエリアと対極に現れていることから、意識上のつながりが薄いものと捉えられている点が特徴的です。日本国内の社会課題とITを結合させる活動が、新たな事業創造のヒントとも言えるのかもしれません。
新型コロナウイルス感染症の拡大により、企業のマーケティングプランは、コロナショック以前に描いていたものからの再立案、変革が求められています。しかし、Withコロナの時代を見据え、新たなマーケティング戦略を練り、実行に移すことは容易ではありません。一方で、苦難な時であるからこそ、マーケターとしての“ありたい姿”が改めて問われているとも言えるでしょう。
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ミレニアル世代のマーケターが思い描く2025年とは
この記事は、インテージの「デ・サインリサーチ」というリサーチ&ワークショッププログラムの自主企画結果をもとにしています。
調査概要
※この記事はMarkeZine56号に掲載された寄稿記事(「ミレニアルマーケターが思い描く2025年」)を再構成したものです。
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