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顧客の「生の声」にアジャイルに寄り添うために
~ビッグデータを活用して、顧客とメーカーの距離を縮める~

※この記事では、2022年11月22日に開催されたオンラインセミナー「インテージ×RnI共催 アジャイルなマーケティングを実践するために~気軽に実購買者の「生の声」を聴いてみよう!~」の内容を再構成してお届けします。

CX(顧客体験価値)、DX(デジタル・トランスフォーメーション)の必要性が叫ばれる中、消費財メーカーのマーケティング担当者はまず何から手をつければ良いのでしょうか? この記事ではそのヒントの一つをお届けします。買い物・家計簿アプリから集まる口コミから商品評価や利用シーンを素早く理解し、購買ログ起点で抽出・選定した顧客と対面して「生の声」を聴く。そうやって把握したCX(顧客体験価値)を打ち手につなげる取組みを、事例を用いてご紹介します。

アジャイル・マーケティング時代の顧客との接し方

アジャイル(Agile)とは、「機敏な、素早い」といった意味の英語です。10年ほど前に出版された『リーン・スタートアップ』(エリック・リース著)で、事業を小規模にスタートし、顧客反応に応じて柔軟に調整しながら素早く改良する手法が紹介されたのがきっかけで、アジャイルという形容詞が様々な領域で使われるようになりました。アジャイル開発、アジャイル経営、アジャイル組織… そして、アジャイル・マーケティング。

トレンドの変化が早く、顧客ニーズを一括りに捉えにくい時代背景もあり、アジャイル・マーケティングという概念は多くの人々から共感を得ているのだと思います。直訳すると「機敏なマーケティング」ですが、機敏なのはさることながら、本質的には顧客に寄り添い、アクションや軌道修正を繰り返すという地道な取組みが肝要です。

消費財のマーケティングにおいては、リサーチやデータ分析等を通じて顧客に寄り添うことは以前から行なわれています。しかし、メーカーのマーケティング担当者が顧客に寄り添い、得られた声をアジャイルにアクションへと活かすノウハウは発展途上にあると言えるのではないでしょうか。

購買ログ起点のインタビューで顧客の「生の声」を正しく、素早く捉える

顧客に寄り添って「生の声」を吸い上げる方法の一つに1on1インタビューがありますが、これをアジャイルに進めるためには解決すべき課題がいくつかあります。その中でも難題の一つが、自社品や競合品を確実に買った経験がある人を素早く探しだすという点です。

通常、商品の顧客にインタビューをしたくてリクルートする場合、顧客の記憶に頼ったアンケートにより、どんな商品をいつ・どこで買ったか確認して対象者を抽出・選定します。
アンケートでは、ずらりと並んだ商品の選択肢から、購入商品を正しく回答しなければなりません。ところが、有名な「エビングハウスの忘却曲線」にもある通り、人間の記憶はあまり頼りになりません。1時間経つと、記憶していることの56%は忘れるとも言われています。また弊社の自主調査では、消費財の買い物の半数以上はそもそも店頭での思いつきで意思決定されており、それらの買い物はさらに記憶に残らないことが想定されます(図表1)。

図表1

顧客の「生の声」にアジャイルに寄り添うために

定性調査を何回か実施したことがある人なら、インタビュー中に「この対象者、本当に買っているのだろうか…」という疑念を抱いた経験もあるのではないでしょうか。

以上の課題の解決に有効なのが、購買ログに基づく対象者リクルートです。いつ・どこで・何を買ったという購買行動のログデータを用いて対象者を抽出すれば、「自社品や競合品を確実に買った人を素早く探しだす」という難題を解決できるのです。
ここからは、インテージグループの一社である株式会社リサーチ・アンド・イノベーションが運営する買い物・家計簿アプリ「CODE」の購買ログを元に対象者リクルートを行ったインタビューの事例を通じて、マーケティング担当者が直接「生の声」を捉える価値を考えてみます。

食品メーカーの事例

前述した購買ログ起点での1on1インタビューの事例と共に、実際に商品のユーザーと対話した食品メーカーの方々の感想から、この手法の強みを整理します。

味の素株式会社様の場合

概要:
調味料のとある新商品について、発売直後の購入者実態を知る目的で購買ログ起点のオンラインインタビューを実施。同社のカテゴリー担当者様が自ら対象者と対話しました。

実施後の感想:
「実際の購入者の生の声を聴くことができた」
「(インタビュアーが自分なので)聴きたいこと、関心があることを重点的に聴けるのはよかった」
「様々なエリア・ライフステージの方に気軽にインタビューできるのはよい。エリアごとの特徴把握などにもいいかもしれない」

新商品を確実に買った人の「生の声」を、自らの裁量で聴けた点について、高い評価が得られました。また今回は調味料の購入者だけに、小さな子供をもつお母さんも対象になりました。実際に調査会場に足を運ぶとなると時間的な制約から参加が難しいですが、オンラインインタビューのため、自宅にいながら隙間時間を使って協力いただくことが叶いました。この点はコロナ禍以前には考えられなかった定性調査のDXの賜物です。

ハウス食品グループ本社様の場合

概要:
新型コロナ感染拡大をきっかけに家庭内の調理機会が増え、伸長したスパイス市場。そこに同社が投入したスパイス系調味料の購入・利用実態を明らかにすべく、商品開発担当者様が対象者と対話しました。

実施後の感想:
「リピート購入者から「(開発した新商品が)ありがたい」というコメントを直接いただけたことで、製品企画のモチベーションが上った」
「会話のコミュニケーションの中で、都度、直接確認できるので、細かいニュアンス等も詳しく聴けて良かった」
「会話の中で、開発担当として気になった点を更に突っ込んで話を聴くことができ、想定していないような使い方や、こだわりポイントを知り得た」

今回対象としたスパイス系調味料は出現率が高くありませんでしたが、購買ログのビッグデータ(※)から複数回の購入履歴があることを確認し、対象者を入念に抽出・選定したことが奏功したようです。また、味の素の担当者様の感想と同様に、オンラインで1on1の対話形式ゆえ、自らの裁量で商品にまつわる顧客体験をつぶさに聴ける点に、新鮮味が感じられるとの評価でした(図表2)。
※買い物・家計簿アプリ「CODE」の月間買物登録者は約30万人

図表2

購買ログ起点のインタビューの模様

口コミ・評価データで素早く仮説を立てる

顧客の「生の声」にアジャイルに寄り添うためにもう一つ有効な手段があります。それは口コミ・評価データの活用です。口コミといっても、SNSのように匿名性が高く自然発生的な発言だと、得られる情報に限界があります。そのため、性年代や居住エリア等の属性が把握できている(※)生活者から、購入した商品への「生の声」を集めることが肝要です。
※「CODE」アプリのユーザー登録時に属性情報を取得しています

「CODE」では図表3のような流れで、実際に購入した商品のリアルな口コミ・評価を収集しています。

図表3

「CODE」による口コミ・評価データ収集

この商品の口コミ・評価データを用いてどのようなことができるのか、「CODE」から取得したデータを用いてとある栄養食品Aに関する仮説構築を行った例をご紹介します。

まずはワードクラウドで口コミ本文内の頻出単語をみていきます(図表4)。
「栄養」が大きく出てくるあたりが特徴的です。「温め」という食べ方に関するものや、「チアシード」といった原料、「プチプチ」「パサパサ」のような食感に関する擬音語もみられます。

図表4

栄養食品A 口コミ・評価データ分析

次に、この商品に高い評価点(5点満点で4.0以上)をつけた人、低い評価点(5点満点で3.5点以下)をつけた人に分けて、口コミを読み込みます。
高評価のポイントは、栄養面、手軽さ、そして食感でした。一方、高い評価点をつけた人でも味については「悪くない」といった反応で、栄養食品の味には過度な期待をしない方が良いと自分に言い聞かせるような口コミも。パッケージについては、何のフレーバーか分かりづらい等の苦言がありました(図表5-1)。
低評価の口コミは、味や食感について「期待はずれだった」という点に集中しています。味や価格の観点から、他の栄養バランス食品で良いのでは?との結論に至る人も見受けられます(図表5-2)。

図表5-1

栄養食品A 評価4.0以上の口コミ

図表5-2

栄養食品A 評価3.5以下の口コミ

これらを踏まえると、とくに調査を実施しなくても、この商品のマーケティングアクションに関するおおまかな仮説をすぐに立てられます(図表6)。

図表6

栄養食品Aのマーケティングアクション仮説(例)

こうした仮説をもとに、前述の様にメーカーのマーケティング担当者が商品購入者と対話することで、検証すべきポイントが明確になり、アクションに直結する示唆を得やすくなります。

ビッグデータを活用して、顧客とメーカーの距離を縮める

以上、購買ログを活用した1on1インタビューや、口コミ・評価のデータ分析の事例をご紹介しました。

1on1インタビューもデータ分析も、それ自体は特に目新しさはありません。 しかしながら、日々集まってくるビッグデータを活用することにより、口コミ・評価から素早く仮説構築した上で、より確実なターゲット(実購買者)にアプローチし、メーカーのマーケティング担当者が対話を通じて顧客体験を共有する、といったことが可能になっています。地味かもしれませんが、実は昨今のデジタル技術の進展なしには成し得なかったことです。

流行のビジネス用語を使って言い換えますと、
購買+口コミ・評価のビッグデータ活用×オンラインインタビューのDX(デジタル・トランスフォーメーション)により、CX(顧客体験価値)をアジャイルに把握し、マーケティングに活用できるようになった
と表現できると思います。

「記事のタイトルに偽りはなかった」と、ご納得いただけたら幸いです。


買いログ®Talk
株式会社リサーチ・アンド・イノベーションが運営する、いつ、どこで、だれが、何を、何と一緒に購入しているのか、といった日々の買い物データを収集、蓄積した買いログ®のデータベースから、対象商品を購入したモニターを抽出し、インタビューできるサービスです。2023年にはユーザーがモニター抽出をセルフで実施してインタビューできるサービスをリリース予定です。

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