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生活者インデックスデータ

アナロジーでアイデア発想 生活価値の転換

コモディティ化した市場では、既にニーズに応えた様々な商品が発売されており、実態からニーズを抽出する調査をやりつくしているのが現状です。新奇性を備え、かつニーズにかなったアイディアをどう生み出したら良いのでしょうか。

アイディアを生み出す方法は多く存在しますが、その中でも斬新なアイディアにつながりやすいのがアナロジーです。アナロジーとは類推のことで、特定の事物に基づく情報を、他の特定の事物へ、それらの間の何らかの類似に基づいて適用する認知過程のことをさします。 この記事では、インテージクオリスの代表取締役社長 小島賢一が、このアナロジーからアイディアを導き出す手法について解説します。

「類推」から新しいアイディアを導き出す「マインド・アナロジー」

インテージクオリスでは数多くの生活者インタビューを実施しています。しかし、本当に欲しいもの、潜在ニーズを言語化することは難しいものです。今は気づいていないものに導こうとするには、顕在化しているお気に入りのモノから発想すると、思わぬニーズが発見され、新しいアイディアが生まれるのではないか。この考え方をもとに、弊社ではアナロジーを用いた新たな視点で生活者理解を深め、潜在ニーズを引き出すインタビュー手法として「マインド・アナロジー」を独自開発しました。

生活の中で特にお気に入りのモノ・コトは、なぜそれが自分にとって価値があるものなのか、ニーズ構造を整理しやすいものです。そのニーズ構造をもとに、別のカテゴリーでそれらを実現するならば、どのようなことが考えられるのかという「類推」をします。他カテゴリーのニーズ構造からターゲットカテゴリーに転換するプロセスを踏むことで、新奇性だけでなく、生活者のニーズにかなったアイディアを生み出すことができるのです。

たとえば、新しい洗剤のアイディアを考える際に、“お気に入りの傘”でニーズ構造を整理し、それをもとに洗剤のアイディアを考えると図表1のようなことが挙げられます。

図表1

「衣類用洗剤」の新商品アイディアを発想する

形状が工夫されていて雨に濡れにくい傘(お気に入りのモノ)についてニーズ構造を整理すると、お気に入りの理由は「手や足元に雨がかからない」(中位概念)、それを実現する機能は「体をカバーする形状」(下位概念)であり、雨がかからないとストレスがなくなる(上位概念)、ということが分かりました。その構造から衣類用洗剤を類推すると、「雨がかからない→汚れがつかない」ということが思いつき、「汚れがつかないコーティングがされる洗剤」という機能アイディアにつながりました。

事例:プレミアム・アルコールの新しいアイディア

現状のプレミアム・アルコールはブランド力のある銘柄が想起されやすい傾向があります。そのような市場でも、新しい価値を訴求し、高くても売れるアルコールのアイディアをマインド・アナロジーによって抽出するための自主調査を実施しました。

マインド・アナロジーでは、お気に入りのモノ・コトの理由をしっかり語れて、アイディア発想ができる人に調査対象者として参加いただくことが重要です。本調査では、「週に1回以上プレミアム・アルコールを飲用」「アルコールに対する好意度が高い」「他カテゴリーでお気に入りのモノの良さを語れる」人を条件に、事前アンケートの自由回答を参考にして男女各4名を選抜しました。

インタビューの流れは以下の通りです(図表2)。

図表2

インタビューの流れ

他カテゴリーからの発想によるアイディアの傾向

8名のインタビューの結果をもとに、現状のプレミアム・アルコールとアナロジー発想の価値の違いを示したのが図表3です。

図表3

現状のプレミアム・アルコールについてのお気に入りの理由は外見=パッケージから想起されることと、味の優位性がほとんどで、その結果、高級感や特別感につながっていました。

一方、アナロジー発想では、他のカテゴリーで価値と感じた「楽しい」「自己表現」「リラックス」といった上位概念からの発想が多く見られ、中身=飲料の見た目や成分、味の特徴において詳細な要素が挙がりやすい傾向が見られました。この比較からも、普段のアルコールを考える思考では考えにくい、アナロジーによる発想の転換により新しい視点が付与されやすくなるといえるでしょう。

図表4は、発想されたアイディアの一例です。より差別化が図れそうである「変化が起こる」「見た目の特別観」「パッケージ」の観点でのアナロジー例を抜粋しました。

図表4

たとえば40代の専業主婦の女性は、ママ友とのコミュニケーションを大切にしており、お気に入りのモノもコミュニケーションに起因するものが挙げられていました。スイスの時計は装着方法が変わっており、バンドを変えられるなどの特徴から、時計について話しかけられやすいとのことです。また、ネイルは季節に合わせたデザインにすることで注目され、コミュニケーションに役立っているとのことでした。人とのコミュニケーションという生活価値からアルコールを考えると、「パッケージにシールがついていたら子供とのコミュニケーションになる」「おみくじ入りだと飲むときのネタになり、話がはずむ」といった発想につながり、新しいアルコールに期待を寄せる様子が見られました。

新奇性と生活者ニーズを兼ね備えたアイディアとその後のステップ

対象となるカテゴリーのことを分析し、アイディアを考えるには限界がありますが、他のカテゴリーの「お気に入りのモノ・コトに感じる価値構造」をもとに転換させる方法からは思わぬアイディアが生まれやすいことが事例からも分かります。アイディアは「きっかけ」であり、そのきっかけを様々なカテゴリーから転換しカタチにしていきます。しかしそれだけでは、生活者が求めているかどうかわかりません。そのため、ターゲットとなる生活者の言葉で抽出し、かつ思い入れの強いモノやコトを題材にする必要があります。新奇性と生活者ニーズを兼ね備えたアイディアだからこそ、生活者自身が思いついたことにワクワクするのです。

一方、生活者から出てきたアイディアは漠然とし過ぎている、実現が難しい、ターゲットやシーンが限定され過ぎているなど、課題があるものも少なくありません。これまでにないものほどハードルが高いのは自然なことです。それらを否定するだけではせっかくの新しい種が芽を出せずに終わってしまいます。

アナロジーをきっかけに生活者がアイディアを発想したように、今度はそのアイディアをもとに商品企画の関係者でワークショップを実施し、実現できるコンセプトやスペックに落とし込む必要があります。ワークショップの実施方法については割愛しますが、このワークショップでもアナロジーの考え方を取り入れることで、常識と思っている固定観念が払しょくされ、実現に近づくこともあります。新しいことを考える様々なシーンでアナロジーの考え方は有効であり、インテージクオリスでは、今後も体系化しながら活用の幅を広げていきたいと考えています。


※この記事はMarkeZine65号に掲載された寄稿記事(「アナロジーでアイディア発想 生活価値の転換」)を再構成したものです。

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