
人の流れは、そのエリアの特性を映し出します。
このシリーズでは、特定のエリアの人の流れを、データで見ていきます。
今月は西武鉄道の沿線エリアに注目します。
コロナ前と比べて、まちの顔はどのように変わってきているのでしょうか。
西武鉄道は、東京北西部から埼玉南西部にかけての12路線、総延長176.6kmにおよぶ鉄道網を運営する、首都圏の主要私鉄のひとつです。 また同時に、各沿線でバス・タクシー・旅行・観光・商業・不動産開発などを運営する事業会社でもあります。 沿線には、プロ野球・西武埼玉ライオンズの本拠地である西武球場のほか西武園ゆうえんち、ワーナーブラザーズスタジオツアー東京(旧としまえん)、ムーミンバレーパークなど、観光資源となるスポーツ・レジャー施設が多い印象ですが、家賃相場が比較的安価な割に都心へのアクセスがよいことや、武蔵野台地の堅い地盤による災害への強さもあって、ファミリー世帯に人気の居住エリアともなっています。 今回の分析では、12路線の全85駅についてそれぞれ駅をおおむね中心とする1㎞四方を駅周辺エリアと定義し、モバイル空間統計によるエリア滞在者の総数および性年代別・居住地別内訳を、路線別に合算集計したものをご紹介します。 |
はじめに、2024年10月の平休日・14時台での路線別エリア滞在者数を、コロナ前の2019年10月と比較してみました。
まず、主要幹線である新宿線・池袋線の2路線で、平休日ともに西武線全体の7割を占めています。
西武沿線全体ではコロナ前と比較して平日で0.4%、休日で1.6%の増加ですが、これは新宿線の駅周辺での平日滞在者数が減少していることによるもので、休日については主要2路線とも2、3%程度の増加となっています。
支線については、平休日ともに増加している多摩湖線・国分寺線・豊島線と平日のみ増加している有楽町線、平休日ともに減少している拝島線など、路線によって増減の度合いがやや異なっています。
さらに、駅別の増減ランキングを見てみると、平日は主要2路線の急行・準急停車駅を中心に10%前後の増加となっている駅が上位に並んでいますが、休日ではスポーツ・レジャー施設の最寄り駅や他路線との乗換駅が上位に顔を出しているのがわかります。
特に滞在者数の伸びが顕著なのが、新宿線と池袋線の結節点でもある所沢です。
2020年に東口・グランエミオ所沢の第Ⅱ期開業、2021年に現ベルーナドームのボールパーク化と西武園ゆうえんちのリニューアルオープン、2024年9月には西口に広域集客型商業施設エミテラス所沢が誕生と、沿線地域開発が継続的に進められてきた成果といえます。
https://www.seiburealestate.co.jp/tokorozawa/
時間帯推移をみると、
平日は、主要2路線とも通勤・通学時間帯の朝7-8時台、夕方18-19時台にピークタイムがあります。
支線沿線ではどの路線も日中にやや滞在者数が減少しており、流出状況にあることがわかります。
休日は、主要2路線とも昼前10-12時台からゆるやかに増加しますが、新宿線は18-19時台に滞在者数が最大になるのに対して、池袋線は18時以降で減少に転じています。
この傾向はそのまま西武新宿駅と池袋駅の周辺エリアの差でもあるようで、やはり歌舞伎町に近い新宿の方が夜遅くまで人通りが多いということでしょうか。
支線沿線では、西武球場や西武園ゆうえんちへのルートとなる国分寺線・多摩湖線、練馬城址公園たワーナーブラザーズスタジオツアー東京へのルートとなる豊島線で、日中にやや流入が若干増えているようです。
2024年10月、14時台での性年代構成をみると、平日では、路線による性年代構成比の差異はさほど大きくない印象ですが、新宿線では20-30代の若年層比率が男女ともにやや高めなのに対し、池袋線では女性のみがやや高めで男性はむしろやや低めの傾向が見られます。
支線では、多摩湖線・国分寺線・拝島線・多摩川線で若年層の構成比が低く50-60代のシニア層が高めですが、有楽町線・豊島線など都心に近い沿線では男女ともに30ー40代の構成比が高めとなっています。
休日も平日の各路線の傾向をおおむね継承していますが、池袋線の若年層構成比は男女ともにやや高めに出ています。
競艇場に向かう多摩川線で男性・ミドル層の構成比がやや高くなっていたり、2023年にワーナーブラザーズスタジオツアー東京が開業した豊島線で若年層の構成比がやや高めになっていたりするのも面白い特徴です。
2024年10月、14時台での沿線滞在者の居住地分布をみると、全体の7割を東京在住者が占めており、ついで埼玉県からの流入が平休日とも20%強となっています。
1都3県外からの流入はわずかに3%弱で、平休日とも地元や近距離移動の利用者が中心であることがわかります
主要2路線では、乗り換え路線の関係もあり池袋線での埼玉県民の比率が約3割で、新宿線の2割強よりも若干高めとなっています。
支線については、沿線区域がほとんど東京都下のため東京在住者の比率が約9割と高くなっていますが、なかでも有楽町線は他の沿線に比べて休日になると埼玉県民比率が大幅に減少しており、平日の通勤・通学者の流入が多いことが推察されます。
市区町村別の滞在者数をみると、平休日とも上位10市区町村までの顔ぶれは同じですが、5年前からの伸び率が10%以上と特に大きかったのは以下の市区町村となっています
・滞在者数の居住地 上位10市区町村
練馬区、所沢市、東村山市、中野区、小平市、新宿区、西東京市、豊島区、杉並区、国分寺市
・5年前からの増減率が10%以上の市区町村
平日 国分寺市、東村山市、練馬区、所沢市、清瀬市、中野区、西東京市、小平市、新宿区
休日 所沢市、東村山市、国分寺市、小金井市
今回は“私鉄沿線シリーズ”として、西武鉄道の各路線エリアについての人口構造分析の入り口を覗いてみました。
新宿線・池袋線の主要2路線についても人口特性にやや違いが見えましたが、特に支線については、該当する集客施設によって利用者のプロファイルにも相応の特徴が見られそうなこともわかりました。
モバイル空間統計では基本属性(性年代・居住地)に加えて、ドコモ会員アンケート等から推定した詳細属性(デモグラフィクス、意識・価値観、利用サービス等)というオプションが用意されていますので、これらを併用すれば各路線や駅単位での利用者プロファイルがさらに鮮明に描出できると考えています。
データについて:
【モバイル空間統計®・国内人口分布統計(リアルタイム版)】
※モバイル空間統計®は、株式会社NTTドコモの登録商標です。
ドコモの携帯電話ネットワークのしくみを使用して作成される人口の統計情報です。
集団の人数のみをあらわす人口統計情報であるため、お客様個人を特定することはできません。
インテージは「モバイル空間統計」の1次販売店です。
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