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物価高への対応から読み解く、3つの生活者タイプとは?~物価高と生活のリアル~

今、私たちの生活は物価高により大きく変わっています。いつもと同じ商品を購入しても支払いが以前よりも多く、外食や日用品などにおける支出の工夫が必要となり、将来の見通しにも影響が及んでいます。
こうした変化の中で、生活者の物価高への対応はどのようなグループに分けられ、その違いはどのように現れるのでしょうか。物価研究で著名なナウキャスト・渡辺努先生とインテージ、インテージリサーチの3社共同で実施しているアンケート調査の結果を基にみていきます。

1. 物価高と私たちの賃金のリアル

まず、物価高と実質賃金の現状をみてみましょう。総務省統計局・消費者物価指数₂は、2022年はじめの時点では2020年平均と同程度の物価水準でしたが、その後上昇を続け、2025年12月時点では2020年平均比で約13%の物価上昇となっています。一方、厚生労働省・毎月勤労統計調査に基づく実質賃金指数(物価上昇を差し引いた実質賃金の前年比増減)では、近年前年比マイナス圏での推移が中心となっています。最低賃金の上昇、春闘における賃上げなど、賃金上昇もみられますが、生活者の購買力は低下が続いており、昨今における生活環境の厳しさがうかがえます。

図表1

消費者物価指数・実質賃金指数の推移(2022年1月~2025年12月)

2. 物価高への対応から生まれる3つのグループ

では私たち生活者は、現在の物価高にどう向き合い、どう対応しているのでしょうか。本記事ではインテージの消費者パネルSCI®のモニターが回答した、「もしいつもの商品がいつものスーパーで10%値上がりしたらどうするか」という、物価上昇時の対応7パターンへの当てはまり度合いを用いてグループを分け、グループ間の違いを分析します。


「もしいつもの商品がいつものスーパーで10%値上がりしたらどうするか」

・対応パターン
維持                                 :今までと同じように買い続ける
節約(量・頻度)            :量や頻度を落として節約する
節約(質を下げる)        :質は落ちるが値段の安いブランドにする
節約(同価格・店変更) :いつもの価格で売っている店を探す
拒否(店に行かない)     :値上げした店には今後行かない
共有(知人)                   :その店で値上げしたことを周りに知らせる
共有(SNS)                   :その店で値上げしたことをSNSに書く
・選択肢
よく当てはまる/当てはまる/あまり当てはまらない/まったく当てはまらない
・調査期間 2025年11月~2026年1月の各月


回答結果を用いて潜在クラス分析という手法を基にした基準で生活者を分類(※解説参照)したところ、物価高への対応は3つのグループに分けられ、各グループの持つ特徴は、以下の通りであることがわかりました

図表2

各グループの特徴・日常行動シーン

ハードリアクション層(グループ1)のように家庭をもち働き盛りが多いグループは値上げに敏感であり、物価高への対応として値上げした店を避ける・値上げについて人やSNSに共有するなどの行動がみられます。一方、生活設計型・徹底節約層(グループ2)、現実受容型・マイルド対応層(グループ3)のような主婦(夫)や仕事が落ち着き始めた人が多いグループでは、値上げを節約で工夫・受容するなどして対応しており、知人への共有・SNSでの共有はみられません。
※各グループの属性はおおまかな傾向のため参考情報

また、各グループの割合は、ハードリアクション層が10%程度、生活設計型・徹底節約層が50%弱、現実受容型・マイルド対応層が40%程度であることがわかりました。

図表3

各グループ所属割合(期間計:2025年11月~2026年1月調査)

3. グループ別にみる賃上げ状況の違い

値上げへの対応の違いから3つのグループが作られることがわかりましたが、これらはどういった背景の違いを持つのでしょうか。ここでは、値上げへの対応の違いに賃上げ状況が影響している可能性がある、という仮説を基に、各グループの賃上げ状況を確認します。
「あなたはここ数年で賃上げを経験したか」という設問では、各グループの特徴でも確認した通り、生活設計型・徹底節約層、現実受容型・マイルド対応層で「賃金を受け取る職についていない」と回答した割合が高く、主婦(夫)やリタイア層が全体の4分の1以上であることがわかります。

図表4

グループ別賃上げ経験(「賃金を受け取る職についていない」を含む)

また「賃金を受け取る職についていない」を除いた、グループ間における有職者での賃上げ経験の違いをみると、ハードリアクション層が最も賃上げ経験が少なく、次いで生活設計型・徹底節約層、現実受容型・マイルド対応層の順であることが確認できます。
これらの違いから、ハードリアクション層の有職者では賃上げ経験が他と比べて少ないために物価高に対して敏感であり、生活設計型・徹底節約層、現実受容型・マイルド対応層と賃上げ経験が多くなるほど、物価高に対する対応も弱まっていく可能性が考えられます。

図表5

グループ別賃上げ経験(「賃金を受け取る職についていない」を除く)

4. グループ別にみる購買行動の違い

値上げへの対応の違いで構成されたグループには、賃上げ状況でも違いがあることがわかりました。では、実際に今までの値上げ時における購買行動で、グループ間でどのような違いがあったのか、生活必需品であるトイレットペーパーを例にSCI®を用いて実際の購買行動を確認します。

トイレットペーパーは物価高の影響を受け、製造・販売を行う製紙メーカー各社で、2024年2月に、2024年4月~5月以降の出荷・納品分から現行価格より5~10%以上の値上げを公表4 5、2025年2月に2025年4月以降の出荷・納品分から現行価格より10%以上の値上げを公表6 7していました。これを受けてそれぞれのグループはどのように購買行動を変えてきたのでしょうか。

購入率をみてみると、全体では製紙メーカー各社の値上げ発表翌月(2024年3月、2025年3月)のタイミングで値上げ前の買い溜めをする傾向(図表6、ブルー部分)がみられ、実際に値上げをしたタイミングで購入率が減少していく傾向(図表6、ピンク部分)がみられます。グループ別では、2024年3月の買い溜めでは、ハードリアクション層は前月比4.6%増、生活設計型・徹底節約層は前月比3.2%増、現実受容型・マイルド対応層は前月比1.1%増であり、各グループの値上げへの対応の違いが購入率の差という形で出ているといえます。

一方2025年3月の買い溜めでは、ハードリアクション層は前月比2.1%増、生活設計型・徹底節約層は前月比3.6%増、現実受容型・マイルド対応層は前月比2.5%増であり、ハードリアクション層で買い溜めが低下していることがわかります。全体における購入率の低下傾向と2024年・2025年の買い溜めによる購入率の増加幅の違いが生まれた要因としては、ハードリアクション層をはじめとした値上げに敏感な層で、ふるさと納税の返礼品などを活用し、購入そのものを控えている影響の可能性が考えられます。

図表6

グループ別購入率推移(トイレットペーパー)

実際に購入したトイレットペーパーの個数単価推移をみてみると、全体では、製紙メーカーから値上げ発表があったタイミングで個数単価がやや低くなり(図表7、ブルー部分)、値上げをしたタイミング直後は上昇しておらず(図表7、ピンク部分)、それ以降緩やかに上昇しているものの、10%以上の個数単価の上昇はみられないことわかります。これらは、個数の少ない商品や低価格帯の商品に切り替えるなど、支出を抑える行動が取られていると考えられます。
グループ別では、現実受容型・マイルド対応層のように、物価高の局面でも買い物の方法を大きく変えず、賃上げ経験割合が高いグループほど個数単価が高い商品を選び、ハードリアクション層のような賃上げ経験割合が低いグループほど個数単価が低い商品を選ぶことがデータから確認できます。

図表7

グループ別個数単価推移(トイレットペーパー)

4. さいごに

本分析から、生活者は、物価高に対する行動によって、3つのグループに分けられ、グループごとに、賃上げの状況も異なること、生活必需品であっても購買行動の差が表れていることが明らかになりました。データから生活者を分類し、聴取した状況と実際の行動を掛け合わせてみることで、物価高における生活のリアルがみえたのではないでしょうか。
これらのデータは、メーカーでは値上げ時の離脱や低価格帯へのシフトを踏まえた商品戦略の再整理、自治体・府省庁では賃上げの浸透度の差に応じた支援設計・政策の実行の重要性などがみえてくるかもしれません。
本分析でのグループ分け、グループ別の状況や実際の購買データが、生活をよりリアルに、多面的にみるきっかけになれば幸いです。

※解説:潜在クラス分析(潜在クラスモデル)
多くの質的な観測(顕在)変数間にある複雑な関連を、背後に質的な潜在変数があることを仮定し、潜在的なグループで単純にまとめることで潜在構造を読み解く手法8。なお本記事では、潜在クラス分析により3つに分かれたグループから特徴を分析し、その結果を再現できるような閾値を設定してグループ分けを行った。


この分析は、以下のデータを用いて行いました。

SCI®(全国消費者パネル調査)
全国15歳~79歳の男女70,000人の消費者から継続的に収集している日々の買い物データです。食品、飲料、日用雑貨品、化粧品、医薬品、タバコなど、バーコードが付与された商品について、「誰が・いつ・どこで・何を・いくつ・いくらで、購入したのか」という消費者の購買状況を知ることができます。
※SCIでは、統計的な処理を行っており、調査モニター個人を特定できる情報は一切公開しておりません。

調査概要
調査名   :物価に関するアンケート調査
調査内容:現在・将来の物価/賃金の認識、物価上昇時の行動、日々の消費行動、幸福度とその要因等
調査対象:ネットモニターおよび SCI® モニター
調査期間:2025年9月〜2026年8月予定
期間詳細:本分析に用いた2025年11月~2026年1月調査での調査期間は下記の通り
2025年11月調査(2025年11月21日~27日)
2025年12月調査(2025年12月19日~25日) 2026年1月調査(2026年1月23日~29日)


■参考文献

  1. 「企業・家計、インフレ2%超え定着 ナウキャストなど新サービス」『日本経済新聞』、2025年12月15日。
  2. 総務省統計局「消費者物価指数(CPI)」(2026年2月20日閲覧)
  3. 厚生労働省「毎月勤労統計調査(全国調査・地方調査)」(2026年2月20日閲覧)
  4. 日本製紙クレシア(2024)「製品の価格改定に関するお知らせ」『ニュースリリース』日本製紙グループ。(2026年2月24日閲覧)
  5. 日本製紙クレシア(2025)「製品の価格改定に関するお知らせ」『ニュースリリース』日本製紙グループ。(2026年2月24日閲覧)
  6. 大王製紙(2024)「家庭用・業務用紙製品の価格改定について」『ニュースリリース』。(2026年2月24日閲覧)
  7. 大王製紙(2025)「家庭用・業務用紙製品の価格改定について」『ニュースリリース』。(2026年2月24日閲覧)
  8. 三輪哲(2009)「潜在クラスモデル入門」『理論と方法』数理社会学会、24(2)、pp.345-356。

著者プロフィール

城 宏樹(じょう ひろき)プロフィール画像
城 宏樹(じょう ひろき)
株式会社インテージリサーチ 事業開発室
(兼 株式会社インテージ マーケティングソリューション本部 EBPM推進室)

2023年大学院修士課程修了後、インテージリサーチに新卒で入社。政府統計に関する調査研究案件、インテージグループの各種データや民間データを社会課題の解決に活かす「社会的データ利活用」、公的統計と民間データを合わせる「統計エコシステム」の構築になどに従事。

株式会社インテージリサーチ 事業開発室
(兼 株式会社インテージ マーケティングソリューション本部 EBPM推進室)

2023年大学院修士課程修了後、インテージリサーチに新卒で入社。政府統計に関する調査研究案件、インテージグループの各種データや民間データを社会課題の解決に活かす「社会的データ利活用」、公的統計と民間データを合わせる「統計エコシステム」の構築になどに従事。

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