arrow-leftarrow-rightarrow-smallarrow-topblankclosedownloadeventfbfilehamberger-lineicon_crownicon_lighticon_noteindex-title-newindex-title-rankingmailmessagepickupreport-bannerreportsearchtimetw

実務で解説 生活者中心のビジネスマネジメントのためのマーケティングリサーチ 第9回
コンセプト受容性調査を実践的に製品開発に活かす

これまで「実務で解説 生活者起点で考えるマーケティングフレームの使い方」と題して、生活者の意識や行動に基づくマーケティングフレームの使い方を解説してきました。多くのポジティブなご意見をいただいた一方、「具体的なリサーチ設計について知りたい」という声もありました。本連載では、その要望に応え、生活者中心のマーケティングリサーチについて考えていきます。

第8回では、新商品のコンセプトを作成した後、受容性調査を行い、簡易的に需要を予測する方法をご紹介しました。 購入意向者数以外にも、ビジネスを左右する要素は数多くありますが、それらの中には事業者/メーカー のマーケティング計画によって決まるものも少なからずあります。コンセプト受容性調査結果と事業者/メーカーの計画によって決まる要素をかけ合わせることで、売上のポテンシャルを金額ベースの数値として算出することが可能になります。

新商品のコンセプトはもちろん、簡易的に需要を予測するためだけに作成するのではありません。第7回 でご紹介したように、コンセプト作成の主な目的は、コミュニケーション開発、パッケージデザイン、製品設計の起点とすることです。コンセプトを作成することによって、コミュニケーション、パッケージデザイン、製品性能に一貫性を持った商品開発が可能になります。

今回は、新商品のコンセプトを作成後、製品設計に落とし込む方法についてご紹介します。

1. 生活者は期待を持って、商品を購入する

第7回で作成したコンセプトを、以下に示します。この商品コンセプトの受容性は、生活者に諮る必要がありますが、ここでは、高い受容性が確認されたものとします。


朝食は、家族みんなが集まる貴重な時間だから、
準備は簡単に済ませて、
コミュニケーションをたくさん取りたいですよね

〇〇ブランドのヨーグルトなら
家族みんなが集まる朝食の貴重な時間に、
コミュニケーションをたくさん取ることができます

それは、フタを開けてすぐに食べられるだけでなく
フタの裏に『今日の運勢』が書いてあるので
会話のきっかけを作ることができるからです


ヨーグルトを含む食品、飲料、日用雑貨品などの商材の場合、購入前に製品を使用して、その性能を実際に体感・実感することは、稀だと思います。 もちろん、店頭での試食や試飲、試供品の配布なども可能なので、製品性能を確認することがまったくできない訳ではありませんが、購入者の大半は、製品性能を確認せずに、購入の意思決定をしていると思います。 

この時、生活者は様々な商品(≒考慮集合に入る商品)の中から、一つの商品を選ぶという行為を行っています。その選び方は、人それぞれではあると思いますが、図1のような概念で捉えると、できるだけ価値の高いものを選んでいるのではないかと考えられます。広義のパフォーマンスとは、コンセプトで示したヨーグルトで例えると、ヨーグルトとしての基本性能(お腹を満たす、など)だけでなく、今日の運勢がわかるといった付加的な性能など、生活者が獲得するすべてのものを含みます。

図1

価値とは?

生活者がお店で一つの商品を選ぶとき、実際のパフォーマンスをすべて確認することはできないので、その商品のパフォーマンスに対する期待値を設定し、価格に対する期待値の大きさで、価値を評価していると考えることもできます。価格が低く、期待値が大きいと価値が高いということになります。期待値は、その商品に関する情報を基に形成されるものであり、開発段階においては、商品コンセプトに書かれた情報によって形成される期待値を満たすことが製品設計の基本になります(※)。

※商品開発の実務では、製品が先行して開発され、コンセプトを後から作成する場合も少なからずあると思います。その場合は、製品が提供できるパフォーマンスを超えない範囲でコンセプトを作成し、期待値をコントロールします。

2. 生活者がコンセプトから想起する期待を理解する

先述のヨーグルトのコンセプトで考えてみたいと思います。いわゆる機能的な訴求は「フタを開けてすぐに食べられる」と「フタの裏に『今日の運勢』が書いてある」の2点になり、少なくともこれらについて、なにかしらの期待値を持つことが考えられ、それを満たすように製品設計することになります。

「フタを開けてすぐに食べられる」から、「フタ」のある製品形態を期待されると考えられるので、ハサミを使って開けるパウチ状の形態は期待外れとなるかもしれません。また、フタの“裏”に『今日の運勢』が書いてあるので、小径のスパウトやドリンク状のヨーグルも期待外れになる可能性が高いかもしれません。

「すぐに食べられる」は、生活者によって期待が異なることが考えられます。開けた直後にスプーンですくって食べることを期待されるかもしれませんし、家族とコミュニケーションを取る時間がある前提であれば、それほど急いで食べることを期待していないかもしれません。前者の場合は、別添のヨーグルトソースが、期待外れの要因になるかもしれませんが、後者の場合は、別添ヨーグルトソースをかける時間も含めて「すぐに食べられる」の範疇に入るかもしれません。同じ文章を読んでも、生活者によって期待値が異なると考えられる場合は、コンセプト作成段階で、それを確認しておくのが大事になります。

3. コンセプト受容性調査で期待を確認する

コンセプト受容性調査で、そのコンセプトの商品に期待する製品特徴を聴取する設問を追加することで、製品に対する期待を定量的に確認することもできます。

図2

コンセプト受容性を活用した期待の確認

図2は、紙おむつを想定したコンセプト受容性調査における、コンセプト受容度(購入意向者と非購入意向者)別に集計した、新商品に対する期待点のアウトプットイメージです。「吸収後もさらさらしていること」や「すばやく吸収すること」などは意向に関係なくスコアが高いことから、紙おむつとして必要なパフォーマンスであることが示唆されます。「ずれにくい、よれにくいこと」 や「体にフィットすること」は、購入意向者のスコアが比較的高く、非購入意向者との差が大きいことから、購入意向者がコンセプトから期待する特徴的な製品性能であると解釈することができます。

「ずれにくい、よれにくいこと」や「体にフィットすること」を期待して購入された商品が、使用後“ずれやすく”、“体にもフィットしない”と評価されると、再購入は期待できないと考えられますので、製品設計の段階から、生活者の期待値を理解し、その期待を満たせる製品に仕上げることで、ビジネスの成功確率を上げることができると考えられます。

4. まとめ

生活者が商品を選ぶ際は、その商品に関する情報を基に、期待値を持って購入していると考えられます。製品は、その期待値を満たすように設計することが重要になります。期待値は生活者によって異なりますが、コンセプト作成段階でそれを理解し、コンセプト受容性調査で定量的に検証することも可能です。製品設計を始める前に、コンセプトを作成し検証することで、ビジネスの成功確率を上げることにチャレンジしてみませんか?

※)調査結果は、調査設計や分析手法によって大きく左右されます。本記事でご紹介したコンセプト受容性調査にご興味のある方がいらっしゃいましたら、こちらよりお問い合わせ頂くか、営業担当までご連絡ください。

著者プロフィール

平井 公一 株式会社インテージ マーケティング企画推進部 プリンシパル・コンサルタントプロフィール画像
平井 公一 株式会社インテージ マーケティング企画推進部 プリンシパル・コンサルタント
大阪府立大学大学院工学研究科修了後、1995年P&G入社。研究開発本部で、新ブランドの立ち上げ、既存商品のリニューアルなど、消費者理解をベースにした幅広い商品開発を経験。2010年(株)インテージに入社し、2013年にはインテージ・シンガポールPTE.LTD.取締役に就任。大手PB商品企画・開発会社マーケティング部長を経て、2016年(株)インテージコンサルティング(現、インテージ)に加入。 日用消費財、耐久消費財、流通・サービスなど、幅広い業界で、生活者起点のマーケティング活動を支援。

大阪府立大学大学院工学研究科修了後、1995年P&G入社。研究開発本部で、新ブランドの立ち上げ、既存商品のリニューアルなど、消費者理解をベースにした幅広い商品開発を経験。2010年(株)インテージに入社し、2013年にはインテージ・シンガポールPTE.LTD.取締役に就任。大手PB商品企画・開発会社マーケティング部長を経て、2016年(株)インテージコンサルティング(現、インテージ)に加入。 日用消費財、耐久消費財、流通・サービスなど、幅広い業界で、生活者起点のマーケティング活動を支援。

転載・引用について

◆本レポートの著作権は、株式会社インテージが保有します。
 下記の禁止事項・注意点を確認の上、転載・引用の際は出典を明記ください 。
「出典:インテージ 「知るギャラリー」●年●月●日公開記事」

◆禁止事項:
・内容の一部または全部の改変
・内容の一部または全部の販売・出版
・公序良俗に反する利用や違法行為につながる利用
・企業・商品・サービスの宣伝・販促を目的としたパネルデータ(*)の転載・引用
(*パネルデータ:「SRI+」「SCI」「SLI」「キッチンダイアリー」「Car-kit」「MAT-kit」「Media Gauge」「i-SSP」など)

◆その他注意点:
・本レポートを利用することにより生じたいかなるトラブル、損失、損害等について、当社は一切の責任を負いません
・この利用ルールは、著作権法上認められている引用などの利用について、制限するものではありません

◆転載・引用についてのお問い合わせはこちら