カーディーラーに求められるサービスとは?顧客満足度(CS)調査から見えた重要ポイント
※この記事は、日刊自動車新聞の“インテージ生活者インサイト”コーナーにインテージのアナリスト三浦太郎が寄稿した連載を再構成したものです。
この数年、CASEやMaaSといったキーワードが注目され、新しい技術やサービスに関する開発競争に各社がしのぎを削っている自動車業界。また、「車の情報はどうやって調べる?行動ログデータから見えたデジタル時代の情報収集」で見られたように、車の選び方も変わってきています。
一方で、最終的に車を購入し、購入後のアフターフォローを依頼する場となっているカーディーラーは、変わらず企業と顧客との接点として重要な役割を果たしています。多くの企業が旧来より顧客満足度(Customer Satisfaction:以下CS)を経営指標として取り入れている自動車業界において、この顧客接点である「カーディーラーの顧客満足度(CS)」は特に重要な指標です。ではどのような要素がカーディーラーの顧客満足度(CS)を上げるのでしょうか。
この記事では、インテージの自主企画調査および、310万人の累積回答者を誇る自動車に関する調査「Car-kit®」を用いて「カーディーラーの顧客満足度(CS)」について分析を行った結果を紹介します。
カーディーラーにおける顧客満足度の重要性
新車購入者1万人(全国、18~69歳の男女)を対象に、現在保有している自動車を購入したディーラーのCSを調査しました。CSは「7:大変満足」~「1:大変不満」の7段階で回答してもらっています。
はじめに購入からの経過期間や車の保有者の年代によって、CSの高さがどう違うのかを比べました。(図表1)
図表1
購入から時間がたつにつれて、そして年齢を重ねるにつれて、CSが低下しているのがわかります。
前者からは、伸び続ける保有期間の中でディーラーとの接点が少なくなっていることが推測でき、各社が力を入れるアフターマーケット領域での集客が重要であることがあらためて見えてきます。
また、若年層でCSが高い人の中には、理由としては「特に不満点がないので」という回答が複数見られました。自動車の購入経験がまだ乏しいためか、「ディーラーに対して何を求めるか」や「ディーラーの提供サービスの相場感」が固まっていない状態、とも言えそうです。
続いてCSとディーラーの継続利用意向の関係を見てみましょう。
次に新車を購入する際、もしくは次に車検を行う際に、現在保有している自動車を購入したディーラーを利用したいかという質問に対する回答が図表2です。
図表2
7段階で最も高い満足度(大変満足)を逃すと、再購入や車検利用の際にもこのディーラーをとても利用したい、という強い気持ちは得がたいことがわかります。点検・修理での利用についても同様の傾向が見られました。
この結果からは、ディーラーが既存顧客を維持するためには「満足か不満かで言ったら満足」程度のものではなく、最も高い「大変満足」という評価を獲得することが、重要であるとことがわかります。逆に言えば、「大変満足」を得ることで、再購入時だけではなく車検や点検・修理といったアフターマーケット領域における収益の維持拡大も期待できるということです。
顧客満足度アップのために重要な要素とは?
では、ディーラーがCSにおいて「大変満足」を獲得する上では、どのようなことをすればいいのでしょうか。CSを高めるうえで重要な要素について、自主企画調査の結果をもとに分析してみました。
調査では、カーディーラーの満足度にかかわる要素として、「スタッフによるお出迎え/お見送り」「整備内容の説明」などの25項目に対して、それぞれの満足度を「7:大変満足」~「1:大変不満」の7段階で回答してもらいました。
図表3はCSとの相関係数※と満足度が高い項目のTOP5です。相関係数が高い要素ほど、「満足度を上げることがCSを上げることにつながりやすい」要素と言えます。
図表3
CSとの相関係数が高いのは「購入後も変わらない気配り」「スタッフへの相談のしやすさ」「スタッフの商品知識、専門知識」などの“スタッフ・人”に関わるものでした。また、満足度が高いものは「スタッフの挨拶」「スタッフの身だしなみ」「店内の清潔さ」の順となっていました。
もう少し詳しく見てみましょう。図表4は横軸にCSと各要素の満足度の相関係数を、縦軸に要素ごとの評価の平均値をプロットしたものです。
図表4
右上エリアにプロットされているのは、相関係数と満足度がともに全25項目の平均よりも高い要素です。例えば、「挨拶」や「スタッフへの相談しやすさ」。これらは、CSを高める上で各ディーラーが満たし、伸ばしていくべき要素です。これらの評価を落とすことは、他のディーラーに顧客が流出するリスクを高めます。
右下エリアにプロットされているのは、相関係数が平均よりも高く、満足度が平均よりも低い要素です。例えば、「購入後のお礼や調子伺いの電話や訪問の頻度」、「気軽に立ち寄りやすい雰囲気(例:外から見たときに店内が明るい)」、「購入後も変わらない気配り(例:納車後に、使用の上で不明な機能や装備点がないかの連絡してくれる)」。これらは、CSに結び付きやすいのに、現時点では平均的な満足度が低い要素です。これらを満たすことは、他のディーラーに対する差別化につながりやすいため、CSを高めるために何から着手するかわからないといった場合に優先的に対処すべきです。また、これらは店舗スタッフの教育や日々の心がけで改善できる部分ですので、取り組みやすく継続しやすい施策と言えます。
顧客ロイヤルティ向上のために
働き方改革が叫ばれる一方で、先進技術の説明、メンテナンスパックの案内、残クレなどの金融商品の提案と、ディーラーの業務は日々増加しています。先述の様にロイヤルティの維持・向上に直結する重要項目に絞り、優先的に施策強化、実施へつなげることはますます求められていきそうです。
最後に、カーディーラーやスタッフにしてもらったことで、うれしかったエピソードを自由回答で聞いた結果を一部紹介します。
図表5
やはり通底するのは“スタッフ・人”の魅力であり、売らんかな、ではない顧客視点での誠実な対応のようです。
※「相関」とは二つ以上の変数があるときに、一方の変数が増えるにつれてもう一方の変数も増える(またはその逆)関係のことであり、「相関係数」とはその強さを「−1から1」までの範囲で表現したものです。
詳しくはこちらで解説
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今回の分析は、インテージの提供するCar-kit(自動車パネル)を用いて行いました。
【Car-kit®(自動車パネル)】
株式会社インテージが毎月約60万人から前月の自動車情報を取得しているシンジケートデータです。現有車や次期意向などを聴取する市場動向把握調査と、契約者に対して購入理由や購入時の重視点などを聴取する契約者調査の2部構成で実施しております。
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