中国市場における「明日」の消費者 中国Z世代の消費者研究
※この記事は、2023年3月9日に実施したセミナー「【中国】来るべき訪日消費と中国Z世代セミナー」の内容の一部を再構成したものです。
Z世代とは、1995年-2005年に生まれた、現在(23年3月時点)17-28歳の年代である。中国、日本にかぎらず、世界的にもこれからのメイン消費者となる世代といえよう。
では中国において、その重要性はどのようなものか?中国におけるZ世代の人口は2.6億人と圧倒的な人口ボリュームを持つ。今後彼らが就職社会に参入するにつれ、新世代のメイン消費層として影響力を持つことは必至である。
この記事では、国内外の熱い注目を集める中国Z世代についてご紹介する。
具体的には、
・生活スタイル・人間関係
・消費意識・観念
・情報チャネル・購買ルート
にわけて分析し、Z世代の人物像を深掘りしていく。
中国Z世代の生活スタイル・人間関係
中国Z世代の生活スタイル・人間関係において、キーワードとなるのは「私」である。とはいえ、「自分重視」はZ世代各国共通の傾向であるため、中国Z世代の独自性を具体的にみていこう。
まずは最も近しい人間関係である、親との関係について見たものが下図である。
伝統的に中国は垂直的な親子関係であったが、現在は、平等な関係になりつつある。さらに、闇雲に反発するのではなく、聞くべきところは聞くべき、と考えている点も特徴だ。その意味ではいたずらに自己主張するというよりは相互に尊重する関係を求めている、ともいえよう。
結婚感も変化している。結婚への憧れをもつ人は少数派となり、相互に尊重できるなら結婚する、という形が主流派である。
もちろん、仕事との関係も変わる。彼らにとって、仕事と自分との関係、上司と自分との関係も「平等」であり、私生活や情緒面とのバランスの上に成り立つものである。
これらの結果からは、「私」を重視するがゆえに「平等」・「尊重」を求める姿が浮かんでくる。
「平等」と「尊重」が彼らの基礎的な考えとして、彼らは誰と、どうやって人付き合いをしていくのか?もちろん、デジタルネイティブとも称されるZ世代のこと、彼らの社交の舞台は主にSNSである。
では、SNSで誰と繋がりたいか? 特徴的だったのは「共通言語のある仲間」に発信したい、というニーズである。インタビュー調査においても、「わかってない人にシェアしても意味がない」という発言が出ており、同じ言語を話す仲間からの「イイネ」と、何もわかっていない人からの「イイネ」は価値が違うことがうかがえる。すなわち、「イイネ」についても量だけでなく質が求められているといえよう。
さて、人間関係が平等でなおかつ尊重しあえる必要がある、ということになれば、当然、人間関係も「誰とでも付き合う」のではなく、「好きな人と付き合う」関係になる。とはいえ、すべての面で自分と趣味が一致したり、理解されたりするのは求めるべくもない。そこで、彼らは自分の趣味嗜好のキーにして、それぞれの趣味ごとに小規模なグループに所属する傾向にある。これは、従来型のソーシャルランク的人付き合いとは一線を画するといえよう。
中国Z世代の消費意識・観念
つづけて、彼らはどういった消費行動をとっているのかを見ていきたい。見えてきたのは、「自分イズム」=自分の美意識・ルールにもとづいて消費する傾向であった。
まず、どういう考え方で消費をしているのか?Z世代の購入重視点から、キーワードを並べたものが下記である。
それぞれは個別に説明するが、彼らが重視するのは上記のような要素を通じて、消費がきちんと自分の生活の質が向上するのか?という点だ。では、具体的に見ていこう。
中国Z世代の購入重視点① 一番重要なのは「趣味に合致していること」
購入重視点としてTOPに出てきたのは「自分の趣味に合致していること」である。彼らの行動は「自分」がベースとなるため、消費についてもまずは自分の価値観と合致しているか?が重要となる。
「趣味」の内容としては、IPや支持しているKOLなどが挙げられる。ここ数年で流行したブラインドボックスなどは、趣味消費の典型といえよう。(※ブラインドボックス:高級なカプセルトイのようなもので、中身が見えない状態で購入する)
中国Z世代の購入重視点② コスパだけはもう古い。「クオリティパフォーマンス」重視。
購入するカテゴリは趣味優先として、ではどうやって商品を選んでいるのか?続いてのキーワードは「クオリティパフォーマンス」である。商品選択においても、「品質」が上位に上がっているが、一方で、これは従来型の「品質」とは異なる、少々幅広い複合的概念である。
Z世代のインタビューの中で、彼らの重視する「クオリティ」を解説させたところ、「商品の品質」にかぎらず、見た目・テクノロジー・などを通じて、生活への影響を多角的に見ていた。商品購入重視点に上がっている各種項目も、相互に関連しているといえよう。
特色のあるキーワードである、「テクノロジー感」・「見た目のデザイン」については後述するが、彼らが着目するのは商品というよりも、 商品によって自分の生活の品質が向上するかどうか、である。(具体的には、生活が便利になる、それ自体が面白い、SNSでイイネをゲットできるなど)
では、各要素が具体的にどのように作用するのか?見ていこう。
■商品のクオリティを担保するもの:まず「見た目」(顔面偏差値)
クオリティを構成するものの一つはまず見た目である。Z世代の42%が購入するときに「顔値」(顔面偏差値)=見た目を気にしている。
うまく取り入れているブランドには、中国国産化粧品ブランドの「花西子(ファーシーズ)」があげられよう。彼らの高い「顔面偏差値」は購入の満足だけでなく、自分のセンスを示すシグナルにもなっている。
■商品のクオリティを担保するもの:「テクノロジー感」による利便性や面白さ
続けて、テクノロジー感も41%に重視されている。これは我々が普段インタビューをしていてもジャンルを問わず、頻出するワードである。一方で、実際にインタビューなどで深掘りしてみると、実は細かな成分や詳しい技術については知らないことが多い。
結局、彼らがいうところのテクノロジー感とは、テクノロジーそのものではなく、もっと実利的なものである。主には、それ自体が面白いか、それによって生活が便利になるものである。
中国Z世代の購入重視点③ Z世代にアピールする「体験」型マーケティング
では、Z世代にはどういったマーケティングが好まれているのか?彼らの32%が、オフライン・オンライン活動に代表されるようなサービス体験を購買重視点にあげており、ポップアップストアなどは特に人気である。
こういったチャネルの役割は、販売や情報伝達ではなく、体験の提供である。Z世代の消費は「自分イズム」がベースであり、まず好きになってもらわないと購入のステージには進みづらい。各種体験型のマーケティングはそれによって、ブランドへの「好き」を醸成するものであり、逆にそこをクリアすれば、彼らは積極的にシェアをしてくれる。
先に人間関係の「平等化」について触れたが、ある種、企業と消費者の関係も平等化しているといえるのかもしれない。
中国Z世代の情報チャネル・購買ルート
つづいて、情報・購買のチャネルについて見ていこう。
Z世代はいうまでもなくデジタルネイティブである。1日に約5時間もオンラインであり、基本的には空き時間には常にオンラインと考えて良い。その間、彼らは様々なアプリを使いわけて情報収集を行っている。
チャネル面での今後にむけたトピックスとしては、抖音(日本語名TikTok)が躍進し、その販売力を強めていることが挙げられる。過去、TikTokは販売フェーズでは外部プラットフォームへと送客する間接販売形式であったが、20年10月に、抖音モールを開設。直接販売に乗り出した。TikTok内でシームレスに商品が購入できるようになったことで、GMV(Gross Merchandize Volume)が急成長をしている。
単純な購買プラットフォームとしてのTikTokがあがってきた…という点も重要であるが、興味→購買のサイクルがTikTok内で完結してしまう点も見落とせない。下記は、Z世代からの販売におけるTikTokのイメージであるが、全面的で、クイックに、真実の情報にアクセスできると考えられているほか、キュレーションでぴったりの情報をあたえてくれると思われている。
いままでAIDMA・AISASなどのステップを踏んでいたものが、今後はTikTokの30秒のショートムービーに凝縮されかねない点は、消費者へのアプローチの仕方として注意が必要である。
おわりに:明日の顧客、Z世代を捉えるために
ここまで、
・生活スタイル・人間関係
・消費意識・観念
・情報チャネル・購買ルート
という3つの観点から、中国のZ世代を見てきた。
では、今後のマーケティングはどのような点がポイントになるだろうか?我々としては以下の2点が挙げられると考えている。
ひとつ目は、まずZ世代の仲間になるということだ。
Z世代の人間関係キーワードは平等・尊重、および「同じ言語を喋る人」との小グループ化であり、消費においても自分イズムで趣味嗜好が最優先されている。そんな彼らにアプローチするためには、彼らの趣味嗜好に合致するブランドであることを示すこと、言い換えるとどう販売するか?を考える前に、まずどう仲間になっていくか?を考えることが重要である。
2つ目に重要なのはやはりスピードである。
短期的には、TikTokに代表される、認知→購買までのサイクルの加速化対応がまず急務である。また、中長期的には刻々とかわっていくZ世代の趣味嗜好をきちんと抑え、スピーディに対応することが重要になってこよう。
以上、中国のZ世代を概説した。紙面の都合上割愛したものの、最新の施策や考え方についても、ご興味あれば弊社営業担当までご連絡いただけると幸いである。
この記事は、インテージチャイナ(英徳知聯合市場諮詢(上海)有限公司)にメンバーが執筆しました。インテージチャイナはインテージの中国事業所として、2002年に開設、20年以上にわたって現地の情報を調査・分析・レポート。日本・中国双方に知見を持つメンバーが、日々企業様のサポートを行っています。
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