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気候変動と暮らす ~生活者の意識と備え~

「夏が前よりも暑くなった気がする」「地球温暖化の影響だ」「温室効果ガスのせいだ」「異常気象だ」などの言葉がよく聞かれ、昔とは違う気候になったのではないかと思う。
実際に、最高気温が35℃を超える「猛暑日」は、1990年代半ば以降、特に増加傾向が顕著であり、2018年には記録的な猛暑となった。全国で観測史上最高となる41.1℃を記録したほか、猛暑日の日数もその年までの過去最多を更新するなど、短期間で気温の上昇や極端な高温が頻発した(※1)
こうした状況を受けて、日本では気候変動の影響やその対応を整理し、気候変動適応法が2018年12月に施行された。これに伴って、国・自治体・事業者・生活者がそれぞれの立場で適応策を進めることが求められている。(※2)

インテージで行った自主調査結果をみると、SDGs17の目標のうち「気候変動に具体的な対策を」は優先的に取り組むべきこととして過去3年間連続で3位が続いており(2024年12月調査で24.0%)、生活者にとって「取り組むべきこと」であるという認識は高い。

生活者は気候変動によって日常生活にどのような影響を受けており、どう対応しているのだろうか。実態を把握するため調査を実施した。結果をもとに生活者の意識や影響を読み解き、生活者の立場として、企業の立場として、対応策(適応策)を見出していきたい。
※1 国土交通省気象庁「気候変動ポータル 大雨や猛暑日など(極端現象)のこれまでの変化」
※2 環境省 気候変動適応法

1. 生活者にとっての「気候変動」とは?

はじめに、気候変動への関心の高さを見てみたい。関心がある社会課題・テーマを調査した結果、トップは「物価上昇、生活費高騰(45.6%)」であった(図表1)。関税引き上げ、米価を始めとした物価上昇が注目を集めている影響が大きそうだ。そして「気候変動(31.4%)」は30項目ある課題・テーマの中で第2位に位置しており、生活者の高い関心を集めていることがわかる。

図表1

「関心がある課題・テーマ」ランキング

続いて、気候変動に関する意識の程度を問うと「(非常に+やや)意識している」が55.9%と半数を超える。年代が上がるごとに意識は高くなる傾向がみてとれる。(図表2)

図表2

気候変動に関する意識<年代別>

高齢者、ペットと同居している場合にも生活者の意識は高くなる。高齢者やペットと同居している場合は、室温や脱水などに気を配る必要があるため、意識が高くなるのかもしれない。(図表3)

図表3

気候変動に関する意識<同意している人・動物別>

2. 「気候変動」、私たちの暮らしにどう影響?

「気候変動」への意識が高いことがわかったが、実生活にどの程度影響していると捉えているのだろうか。気候変動が生活に「(非常に+やや)影響がある」と回答したのは63.6%。「影響がある」との回答は年代が上がるにつれて高くなる。図表2で見た「気候変動」への関心の高さと相まっているのだろうか。(図表4)

図表4

「気候変動」生活への影響程度<年代別>

地域別にみると、四国を始めとして西日本で「影響がある」との回答が相対的に高い。これらのエリアで特に線状降水帯の発生による大雨や台風の上陸が報じられていたことが思い出される。(図表5)

図表5

「気候変動」生活への影響程度<地域別>

では、「影響がある」とされていたのは、実生活でどのような気候変動の影響を受けたからだろうか。どの地域も「猛暑・酷暑」が最も高い傾向は変わらなかったが(図表6)、2位以降を見るとやはり九州や京阪神では「大雨」「台風」が他地域よりも高めに出るなど地域差が出ていた。「影響がある」が相対的に高かった四国は、「ゲリラ豪雨」が高めだった。

図表6

あなたの生活に営業した気候変動Top5

近年、毎年のように「気候変動」の影響による暑さや大雨が報道されている。その中で、生活者が考える「今年(2025年)起きそうなこと」はどういったことだろうか。気候変動と直接的な結びつきが強い季節や自然現象だけではなく、異常気象による農作物の値上がりなど間接的な影響がある日々の生活に関する項目も織り交ぜて23項目について尋ねた。
「日々の生活」では、食料品、電気、ガス代が上がることが注目されている。季節では、「夏はより暑くなる(62.6%)」と予想しているようである。また自然現象では、「急な大雨が増える(49.3%)」「大雨が増える(44.0%)」に関して注目しているようである。
これらは、共に気候変動と関係性の高い事象であり、生活者は、今年も様々な影響を受けると考えているようである。(図表7)

図表7

今年(2025年)起きそうなこと

3. そのとき、どう備える?生活者のリアルな対策と本音

生活者の63.6%が気候変動に関して「生活に影響がある」と答えているが、なんらかの備えを考えているのだろうか。「備えておく」のは、ほぼ4人に3人(74.1%)。「気になることに対して備えておく(43.5%)」が大半だが、「できることは多少お金がかかっても備えておく」と、お金を出してまで積極的に対策をするのは、10.9%に留まっている。(図表8)

図表8

気候変動への備え(単一回答)

「気になることに対して備えておく(43.5%)」と回答した理由をワードクラウドでみると、「災害」や「地震」「防災グッズ」ワードが目立ち、気候変動によって引き起こされる災害への備えが気になっている様子がうかがえる。一方、「なにもしない(19.5%)」と回答した人では、「なんとなく」「考える」「興味」ワードが目立つ。自由回答(FA)を確認すると、何かに向けて備えることの急務感が相対的に低そうだとうかがえる。また、何もしないのは、何をしていいかがわからないため、というのも一定数いることがわかる。(図表9)

図表9

気候変動への備え回答理由

具体的にはどのようなことを気候変動対策として実施しているのだろうか。
図表10は「気候変動、気候危機対策だと思って行っていること」「今後、新たに気候変動、気候危機対策としてやりたいこと」をそれぞれ聞いた結果である。生活者が気候変動対策として行っていることのトップは「省エネを心がける(27.0%)」で、今後の対策としても14.2%でトップとなっている。行っている対策としては、「ものを長く使う」「リサイクル」が続くほか、「省エネエアコンを使う」「家電を買うときは省エネかどうか確かめる」などが挙がり、エネルギー消費量を減らすことを対策として取り組んでいることがうかがえる。
「断熱対策をする」は、「気候変動対策だと思って行っている」人は6.1%と比較的少ないが、「今後、気候変動対策として行いたい」と考えている人は、9.1%と相対的に高くなっていた。(図表10)

図表10

気候変動対策 上位10項目(実施中・意向)

図表11は気候変動に関する意見を7段階で聞いたTOP3(まったくそう思う+そう思う+どちらかといえばそう思う)の結果である。「気候変動は今後も続く」は82.8%と高かったが、「国際的な対策や企業が行う対策が十分だ」との意見は2割に満たなかった。 では、生活者は自分ができることとしてどの程度捉えているのだろうか。「気候変動に関して自分ができることはある」に対しては45.9%と半数近くにのぼり、国や企業の対策だけに頼らず、自分たちにできることにも取り組もうとしているといえる。

図表11

気候変動に関する意見への同意

4. まとめ

生活者は、「気候変動」に関心があり、影響を受けていることがわかった。何もせずに政府や自治体、企業に対策を任せるのではなく、生活の中で暑さや大雨の影響を受けながら、自分にできることとして「省エネ機器の購入」「省エネ活動(室内温度など)」などの日々の努力を積み重ねて対応している姿が浮かび上がった。高齢者やペットといった配慮が必要な同居者がいる場合は対応の必要性はなおさらである。
WMO(世界気象機関)は、世界の年間平均気温は、観測史上最高となった2024年の記録が2029年までに80%の確率で更新されると予測している。(※3)生活者一人一人の省エネなどの日々の努力だけでは、「気候変動」を緩和には限界があり、企業も一体となって取り組むことが重要だといえる。企業では省エネ商品・サービスの改良と併せて、生活者と共に地球市民として「気候変動」にどう対応するか、商品やサービスがどのように有効か、をコミュニケーションし、生活者の行動の後押しをすることが期待される。

※3 World Meteorological Organization (WMO) 世界気象機関


※今回の調査で明らかになった詳細なデータやチャートは、無料のダウンロードレポートでご覧いただけます。レポートにて提供している項目は以下です。ぜひ、ダウンロードしてください。
また、レポートにない項目も聴取しています。興味のある方は担当営業または記事担当者にご連絡ください。

<ダウンロードレポート掲載項目>
・30の課題・テーマの中での気候変動の位置づけ(関心、意識して購入/利用する商品・サービス、今後取り組みたい)
・項目のうち、「気候変動」の影響を受けていると思うこと
・直近2~3年の間の自然現象で気になっていること、生活に影響したこと
・今年起きそうなこと、今後起きそうなこと
・(参考)気候変動・気候危機に関するワード・トレンド(2022~2024年)
・生活者が現在行っていることと気候変動対策(現在と今後)
・気候変動に関する意見への「そう思う」程度(7段階)
・気候変動関連で生活者に響く言葉


調査概要
調査地域:日本全国
対象者条件:20~79歳男女個人
標本抽出方法:マイティモニターより適格者を抽出
標本サイズ:スクリーニング・本調査一体型:n=3214
(性年代、エリア別に人口構成比に合わせて回収)
ウエイトバック集計はなし
調査実施時期: 2025年5月16日(金)~2025年5月18日(日)

著者プロフィール

未来共創センター 志賀 直生(しが なお)プロフィール画像
未来共創センター 志賀 直生(しが なお)
大学卒業後、マーケット・インテリジェンス、マーケティング・リサーチ担当として、情報とデータをもとにした市場分析、戦略立案に従事し、インテージには2020年に中途入社。
担当した業界は、外食産業、飲料、化粧品、日用品、医療機器、金融、サービス業界、電機、環境エネルギー、通信と幅広い。市場調査会社、事業会社の両方に所属した経験を生かしてクライアントの課題解決を支援している。
2024年より未来共創センターに所属し、生活者にとって心地よい社会をクライアントと創ることを念頭に活動に取り組んでいる。
MBTIはINFJ型。

大学卒業後、マーケット・インテリジェンス、マーケティング・リサーチ担当として、情報とデータをもとにした市場分析、戦略立案に従事し、インテージには2020年に中途入社。
担当した業界は、外食産業、飲料、化粧品、日用品、医療機器、金融、サービス業界、電機、環境エネルギー、通信と幅広い。市場調査会社、事業会社の両方に所属した経験を生かしてクライアントの課題解決を支援している。
2024年より未来共創センターに所属し、生活者にとって心地よい社会をクライアントと創ることを念頭に活動に取り組んでいる。
MBTIはINFJ型。

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