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食品+飲料+酒類 156カテゴリのコーホート分析から読み解く変化の裏付け

以前、こちらの知るギャラリーでご紹介した「2030年における 食品+飲料+酒類の市場規模は 10%弱縮小」の衝撃。消費者パネルSCI*1のデータでコーホート分析を行い予測した、将来の市場規模について読み解きました。

簡単にポイントを振り返ると、以下の3点になります。
1.食品+飲料+酒類の市場規模は人口の減少率よりも大幅に縮小する
2.少子高齢化の影響度はカテゴリによって異なる
3.「世代」「加齢」「時代」の効果に加え、他の事象や背景も併せて読み解くことで気づきを得られる

“これから”に対する気づきを得るには、“これまで”に起きている変化の裏付けを把握することが重要です。
そこで、この記事では、食品+飲料+酒類156カテゴリの中から、
・菓子(チューインガム、キャンディ、錠菓、グミ)
・乳飲料(乳酸菌飲料、飲むヨーグルト、乳酸飲料、豆乳)
・ビール類(ビール、発泡酒、新ジャンル)
といった代替性が高いカテゴリの変化に着目して、“これまで”変化してきた要因を「世代」と「時代」の効果から読み解いていこうと思います。

156カテゴリの位置づけ

はじめに、食品+飲料+酒類156カテゴリの位置づけを俯瞰的に見ていきます。
図表1は各カテゴリについて、3効果(世代、加齢、時代)の相対的な大きさを示した三角グラフです。かみ砕くと、「頂点に近いほど、その効果が他の効果よりも大きい」と読み取ります。例えば、「煮干し」は「世代」効果が加齢や時代の効果に比べて非常に大きいカテゴリだと分かります。

図表1

カテゴリーの位置づけ

図表1を見て気づくのが、「加齢」効果が他の効果よりも大きな左下の三角形ゾーンに、多くのカテゴリが集中していることです。これは年齢を重ねることで起こる変化(ライフステージ、飲食の嗜好、体型や体質など)に影響を受けるカテゴリが多いということです。

また、今回とりあげるカテゴリを比較してみると、新ジャンルや乳酸菌飲料の「世代」効果が大きかったり、チューインガム、乳酸飲料、飲むヨーグルトの「時代」効果が大きかったりと、ポジションに違いがみられます。この違いがどんな要因で起こるのか、詳しく読み解いていこうと思います。

世代の定義

ここで、コーホート分析の結果を読み取る時に必要な、前提となる「世代の定義」を押さえておきましょう。世の中には様々な定義がありますが、今回は図表2の定義に沿ってコメントしていきます。

図表2

世代の定義

では、本題であるピックアップした3つのケースについて、それぞれ具体的に見ていきたいと思います。

菓子のケース

図表3はチューインガム、キャンディ、錠菓、グミ4カテゴリの「世代」効果を示したグラフです。その世代の数値がプラスであれば平均よりも購入金額が多い、逆にマイナスであれば平均よりも購入金額が少ないことを表しています。例えば、「チューインガム」は1947~49年生まれの団塊世代により多く購入されているカテゴリだと分かります。

図表3

菓子の世代効果

口寂しさの解消、リフレッシュ、リラックスなどを求めて口にする4カテゴリですが、それぞれ需要を支えている世代が異なっています。
・「チューインガム」は前述の通り団塊世代に
・「キャンディ」は1952~60年生まれのシラケ世代と1961~65年生まれの新人類に
・「錠菓」は1966~70年生まれのバブル世代、1971~74年生まれの団塊ジュニア、1975~82年生まれのポスト団塊ジュニアに
・「グミ」は1983~94年生まれのさとり世代に
より多く購入されています。
これらはカテゴリが新たに発売されて広く浸透した時期と、その時の年齢に影響を受けた結果です。

図表4は菓子4カテゴリの「時代」効果を示したグラフです。読み取り方は世代効果と同様です。

図表4

菓子の時代効果

・「チューインガム」は2012~22年の長期にわたり続落
・「キャンディ」は2016年にマイナスになって以降は横ばい~減少で推移
・「錠菓」は2016年にプラスになって以降は増加したが、コロナ禍の影響で2019年をピークに減少
・「グミ」は2013年から続伸し、ヒット商品の影響で2022年に急増
これらはライフスタイルや価値観の変化、厄災、ブームやヒット商品などの影響を受けた結果です。

ここまでの結果から世代と時代を合わせてみると、「チューインガム」が不調で、「グミ」が好調なことが分かります。
「チューインガム」が不調の背景には、体臭や口臭の消臭、つり革や便座の除菌など、長期的に進行していたキレイ好きや衛生意識がコロナ禍で高まり、口の中に入れていたものを吐き出したり、噛み終わったゴミを持ち歩いたりする行為が避けられていることが挙げられます。
「グミ」が好調の背景には、味・フレーバーだけではなく食感、形、色など食べる楽しみが広がったり、美容・健康によい成分を付け加えたり、小腹を満たせるが罪悪感は少なかったりとメリットが多いことが挙げられます。さらに、「癒し・温もり・繋がり」を求める行動がコロナ禍で増え、Z世代を中心にSNSで話題になったヒット商品も生まれています。
また、2023年3月に大手食品メーカーがガム事業から撤退し、4月にロングセラーブランドをグミに転換したことは、「ガム」や「グミ」における競争地位・シェアも踏まえると納得できます。

乳飲料のケース

図表5は乳酸菌飲料、飲むヨーグルト、乳酸飲料、豆乳4カテゴリの「世代」効果を示したグラフです。

図表5

乳飲料の世代効果

・「乳酸菌飲料(ヤクルト、R-1、ピルクルなど)」は1936~45年生まれのキネマ世代に
・「飲むヨーグルト」と「豆乳」は1952~60年生まれのシラケ世代と1961~65年生まれの新人類に
・「乳酸飲料(カルピスやiMuseなど)」は世代効果が小さいですが、強いて言えば1961~65年生まれの新人類から1975~82年生まれのポスト団塊ジュニアまでの幅広い世代に
より多く購入されています。
これらも菓子と同様に、「時代背景」と「その時の年齢」に影響を受けた結果です。

図表6は4カテゴリの「時代」効果を示したグラフです。

図表6

乳飲料の時代効果

・「乳酸菌飲料」は2020年にプラスになって以降、驚異的なヒット商品の影響で急増
・「飲むヨーグルト」は2012年から続伸しましたが、乳酸菌飲料の影響で2020年をピークに減少
・「豆乳」は2012年から続伸しましたが、2020年以降は横ばい
・「乳酸飲料」も2012年から続伸しましたが、2018年以降は横ばい
といった傾向がみられます。

世代と時代を合わせてみると、「飲むヨーグルト」が不調で、「乳酸菌飲料」が好調なことが分かります。
「乳酸菌飲料」が好調の背景には、コロナ禍で強まったストレス社会による閉塞感が考えられます。日中の活動量が減ったり生活リズムが乱れたりしたことで体調を崩した人もいました。そこで、予防のため日常的に体調を整えたいと考える人が増えたことが挙げられます。結果として、「免疫力の向上」「睡眠の質向上」「ストレスの緩和」「腸内環境の改善」など健康によい効果が付加された機能性表示食品の売れ行きが好調でした。
代替性という点では、乳飲料において従来の「動物性」カテゴリから、「豆乳」以外にも「アーモンドミルク」や「オーツミルク」なども含めた「植物性」へのスイッチがさらに加速していると思われたのですが、その動きは落ち着いているようです。

ビール類のケース

図表7はビール、発泡酒、新ジャンルの3カテゴリの「世代」効果を示したグラフです。

図表7

ビール類の世代効果

ビール類は共通して、1947~49年生まれの団塊世代と1952~60年生まれのシラケ世代により多く購入されています。第二次世界大戦後、復興~高度経済成長と共に現在の日本を創り上げた世代に、より親しまれていることが伺えます。

図表8はビール類3カテゴリの「時代」効果を示したグラフです。

図表8

ビール類の時代効果

・2013年はビール各社が「新ジャンル」の新商品を投入したことでピークに
・2015~16年はプレミアムビールが好調で「ビール」が浮上
・2018~19年はヒット商品が「新ジャンル」を牽引し、2020年のコロナ禍で加速
・2020年10月の酒税改正に伴って、2021年以降は「ビール」が急増し、「新ジャンル」が激減
・「発泡酒」は2012~22年の長期にわたり続落
といった傾向がみられます。

世代効果と時代効果を合わせてみると、好調なカテゴリが入れ替わっていることが分かります。 入れ替わりの背景には、「失われた30年」と言われる景気停滞や増加の一途をたどる「国民負担率」(税金と社会保障の負担率の合計)の影響を受けて可処分所得が減少したことで、長期的に進行してきた節約意識がコロナ禍で高まり、日々の楽しみとしてビール類で晩酌する人が今まで以上にコスパを吟味したことが挙げられます。特に2021年以降は、酒税改正に伴う価格改定で「新ジャンル」よりも「ビール」の方がコスパがよいと考えられていることが伺えます。

今回はコーホート分析の結果を用いて、代替性が高いカテゴリ間の世代効果、時代効果の変化から、市場で起きている変化の裏付けを読み解いてきました。3つの効果に分解することで、何となく感覚的に分かっていたことを周辺カテゴリも含めて定量的に明らかにできたり、3つの効果に加えて他の事象や背景も併せて読み解くことで気づきが得られたりと、この手法のメリットを感じていただけたのではないでしょうか。
食品+飲料+酒類156カテゴリについては、コーホート分析の結果に加えて、2030年の市場予測も既にご用意しております。もし関心がありましたら是非、インテージの営業担当まで相談いただければと思います。


※1 SCI®(全国消費者パネル調査):全国の15~79歳の男女5万人から、JANコードが付与されている消費財の購入履歴を収集したデータ

参考資料:
PRESIDENT WOMAN:https://president.jp/articles/-/41074
阪本 節郎, 原田 曜平 (著) 日本初! たった1冊で誰とでもうまく付き合える世代論の教科書
HR BLOG:https://motifyhr.jp/blog/onboarding/generation-z/

著者プロフィール

株式会社インテージ カスタマービジネスドライブ本部 事業デザイン部 トップ・アナリシス・デザイナー 鶴田 育緒(つるた いくお)プロフィール画像
株式会社インテージ カスタマービジネスドライブ本部 事業デザイン部 トップ・アナリシス・デザイナー 鶴田 育緒(つるた いくお)
株式会社インテージに入社以来、パネル/アドホック/データサイエンス/コンサルティングなどリサーチ&アナリシスすべての分野で、ソリューションや分析メニューの開発を担当する傍ら、幅広い業界・150社を超える企業に対して、プロジェクト型のマーケティング支援・分析に従事。

株式会社インテージに入社以来、パネル/アドホック/データサイエンス/コンサルティングなどリサーチ&アナリシスすべての分野で、ソリューションや分析メニューの開発を担当する傍ら、幅広い業界・150社を超える企業に対して、プロジェクト型のマーケティング支援・分析に従事。

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