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新型コロナの影響で、消費者の移動手段に対する意識が変化

この記事は、日刊自動車新聞とインテージの共同調査結果を基に、2020年6月5日に日刊自動車新聞に掲載された記事を、使用許諾を得て掲載したものです。
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「公共交通機関は感染リスクが高いが、マイカーは安全―」。新型コロナウイルスの感染拡大により、移動手段に対する消費者の意識にも変化が生じていることが市場調査会社のインテージと日刊自動車新聞の共同調査で分かった。人と人との距離を保つことがあらゆる場面でも求められるようになった今、個人の空間を保つことができるマイカーが見直される気運がある。

調査は大型連休明けの5月11~14日に全国の18~79歳の男女を対象としてインターネットで実施し、マイカー保有者8158人を含む1万303人から回答を得た。

マイカー保有者に対し、大型連休期間に車の利用が減ったかどうかを聞いたところ、「減った」と回答した人は71%に上った。理由は「不要不急の外出を控えた」「感染防止のため」「行き先がない(お店がやっていない)」などで、政府や自治体による外出自粛要請や休業要請が車での外出抑制にもつながったとみられる。

国土交通省のまとめによると、4月25日~5月6日の連休期間中、高速道路4社の一日当たりの平均交通量は、前年同期比で70%減少した。調査結果はこれを裏付けた格好だ。

新型コロナの感染拡大後は、外出自粛要請により、外出そのものが大きく減少した。(図表1)

図表1covid19-mobility_01.png

感染拡大前後の外出頻度を聞いたところ、感染拡大前に比べ5割以上減った人は小学1~6年生の子どもがいる人で81%に上り、単身者でも63%に達した。「不要不急の外出をしない」「自粛」「感染が怖い」といった回答のほか、「在宅ワークが増えたため」「仕事.学校が休みになった」ことも理由に挙がった。

交通手段の選び方にも変化が表れている。(図表2)

図表2covid19-mobility_02.png

マイカー保有者に各交通手段の利用割合を聞いたところ、マイカーは感染拡大前の63.8%から、感染拡大後は67.3%へ3.5㌽増加した。一方、電車やバスは減り、特に電車の利用は感染拡大前の112.3%から5.5%へ6.8㌽減少した。

4月7日に緊急事態宣言が発令された7都府県では、電車利用の減少が顕著だった。感染拡大前の電車利用率は21.9%だったが、感染拡大後は9.6%と12.3㌽減少した。一方、マイカー利用や徒歩が増加し、マイカーは45.8%から51.6%へ5.8㌽上昇した。電車やバスなどの公共交通機関は人との距離を取りにくく、通勤などで車を使う人が増えたとみられる。また、企業などが在宅勤務やテレワークを推奨したことも公共交通機関の利用減少につながった。

各交通手段の感染リスクについて、実際にどう思っているかを聞いたところ(図表3)、「公共交通機関の利用は感染リスクが高い」と思う人が全体の85%に上った。

図表3covid19-mobility_03.png

一方、「マイカーでの移動は感染の恐れがないので安全だ」と考える人は60%で、感染リスクの面では、公共交通よりもマイカーに安心感を覚えている人が多い。

同じ車でもレンタカーやカーシェアリングといった共同利用の車は感染リスクが高いと思う人が少なくないことも分かった。レンタカーでは51%、カーシェアリングでは58%の人が感染リスクが高いと考えている。

レンタカーやカーシェアリングは「所有から利用へ」の流れの中で利用者が増えている。サービスの特性上、不特定多数のユーザーが1台の車を利用することから、ハンドルなどへの接触によって感染する可能性が高いと考えている人が多いとみられる。

車を持つことへの意識にも変化が表れた。感染への恐れから、車を保有していない人(2145人)の32%が「マイカーがあれば良かった」とし、10%が「車の保有は考えていなかったが検討してみたい」と答えた。保有を検討したいとした人のうち37%は、実際にインターネットや雑誌などで情報を探し始めた。車なら感染リスクを避け長距離を移動できることから、未就学児や小学生の子どものいる人では車で遠出をしたいと考える人が5割以上あった。

マイカーが見直される一方、経済の先行き不安や収入の減少により、車などの耐久消費財の需要にすでに影響が出ているとみられる。実際に新型コロナの感染拡大が車の購入に影響したか聞いたところ、代替えのタイミングが到来していない人も含めた全体では83.5%が「影響がない(なかった)」と答えた。

一方、8.0%が「購入時期を遅くする(遅くした)」、5.9%が「購入を中止する(した)」と回答。「新規購入を検討していたが見送った」(1.3%)を加えると、15.2%の人の購入計画にマイナス影響があった。

車の購入に影響があったと回答した1157人に購入時の検討要素(複数回答)を聞いたところ(図表4)、「軽自動車を候補に入れる(入れた)」(23.9%)、「より燃費の良い車を検討に入れる(入れた)」(21.8%)、「国産車を候補に入れる(入れた)」(16.4%)など、購入価格、維持費ともに安くしたいという意向が表れた。

図表4covid19-mobility_04.png

また11.4%の人は車を手放すことを検討している。購入予算については63%が「影響はない(なかった)」とした一方、34.2%が「予算を減らす(減らした)」と答えた。

調査からは新型コロナの蔓延によって人が移動の制約を受け、それによって移動量のみならず、移動手段の選び方も変化したことが分かった。中でも電車.バスといった公共交通機関は、外出自粛要請や施設.店舗の休業といった外的要因に加え、感染を恐れる意識から利用を避ける傾向にある。感染という思いがけないファクターが入り込んだことによって、車を持つことに改めて意識が向いている。

新車販売台数は19年10月の消費税増税以降、減少が続いている。4月以降はコロナ影響も加わり、減少幅が拡大している。しかし、コロナ禍を経験し社会は大きく変容している。在宅勤務が定着し、地方に転居する人が増えるとも言われており、車の需要動向が変化する可能性がある。

経済の先行き不安から、より安価で維持費の安い車を求める傾向も強まるとみられ、メーカーの商品戦略にも少なからず影響しそうだ。


調査概要は以下の通り。
【自主企画調査(ネットリサーチ)】

調査地域:日本全国
対象者条件:18~79 歳の男女
標本抽出方法:弊社マイティモニターより抽出しアンケート配信
回収割付:2015年度実施国勢調査から推定されたエリア×性年代の人口構成比に合わせて回収
標本サイズ: n=10,303
調査実施時期:2020年5月11日(月)~5月14日(木)
調査項目:外出頻度、移動手段、新型コロナウイルスの意識/価値観への影響、自動車購入への影響、ゴールデンウィーク期間のクルマの利用 など


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