CX(顧客体験)起点で考える
コミュニケーション戦略の重要性
自社の商品やサービスを積極的に宣伝しているにも関わらず、「思ったように成果が生まれていない」という状況に陥ったことはありませんか。その原因は、顧客との「エンゲージメント(絆)」がうまく構築できていないからかもしれません。この記事では、顧客との適切なコミュニケーションを実行し、エンゲージメントを構築するために不可欠なコミュニケーション戦略の重要性について解説します。
目次
CXマネジメントプロセスにおけるコミュニケーション戦略について
企業が効率的にマーケティング活動を行ううえで、顧客とのコミュニケーション戦略は必ず設計する必要があります。その際に重要となるのが、「CX(顧客体験)起点」で考えることです。
図はインテージで整理し、サービスとしても提供しているCXマネジメントのプロセスです。
CXマネジメントのプロセスは、現状を正しく捉える「問い直す」、顧客が期待する体験価値を創出し伝える「生み出す・届ける」、継続的なモニタリングや改善アクションをし続ける「磨き込む」という3つのフェーズで考えます。この「生み出す・届ける」の中で、特に顧客とのコミュニケーションを設計するプロセスを、インテージでは「エンゲージメントデザイン」と名付けています。
エンゲージメントデザインには、顧客とのコミュニケーションにおける「ターゲット設定」「戦略立案・実行」「効果測定」の3つのプロセスがあります。これらを実行することで、自社の商品やサービスを「誰に」「何を」「どうやって」伝えるべきかを明確に設計でき、実行後の効果も適切に評価できるようになります。
この一連の流れを実施・継続することで、顧客体験を高め続けていくことができるのです。
エンゲージメントデザインは「プロモーション」ではなく「コミュニケーション」
インテージでは、顧客のロイヤルティ形成やファン化をめざすうえで、「プロモーション」ではなく「コミュニケーション」が重要だと考えています。
プロモーションは自社の商品・サービスを顧客に届ける手法として有効ですが、企業からの一方通行の発信であり、情報が流れていってしまう「フロー型」という特徴もあり、顧客との関係構築が思うように進まない可能性があります。
一方、コミュニケーションを軸に考えると、さまざまな接点において顧客との双方向のやりとりが生まれるため、持続的に関係性や情報を積み重ねていくことができます。
そして、顧客との関係性やコミュニケーションの状態を図る指標となるのが「エンゲージメント」です。だからこそ、コミュニケーション戦略を「エンゲージメント」構築を想定してデザインすることが重要になってきます。
「組織間の壁」が顧客とのコミュニケーションの障壁に
次に、顧客とのコミュニケーションがうまくいかない原因について考察していきます。
主な原因の一つとして、企業内で部署間の連携が取れていないケースが考えられます。コミュニケーション戦略を考えるのは、マーケティング部や広告宣伝部の役割だと認識されているかもしれません。しかし本来は、経営企画部や営業部、開発部など、すべての部署が検討すべき事柄です。その理由は、どの部署であっても顧客を意識したうえで経営方針の決定や商品・サービスを開発しており、部署ごとの考えが存在しているはずだからです。そのため、部署間で考えを擦り合わせることは非常に大切ですし、コミュニケーションを考える部署や担当者も実態を把握したうえで戦略設計を行う必要があります。このプロセスを踏まないと、本来届けたいと考えていたターゲット像やメッセージ、提供価値から乖離してしまう懸念が生まれます。
もちろん、マーケティング部や広告宣伝部が独自に考えたコミュニケーションでも、成果を生み出すことはできます。しかしこれらの部署は「短期で」「わかりやすい」成果を求められやすいため、マーケティング戦略とコミュニケーション戦略に一貫性がなかったり、マーケティングKPIとコミュニケーションKPIが連動していなかったり、という事態を招く可能性があります。
以上の問題は、CXマネジメントプロセス全体でも、コミュニケーション戦略の領域でも起こりうることなので、十分に気を配る必要があります。
「Who」「What」「How」を明確に
上記の話にも深く関わりますが、コミュニケーションにおける「Who(誰に)」「What(何を)」「How(どうやって)」が漠然としてしまっているケースも問題です。当たり前の話ですが、「Who」や「What」が曖昧なままでは、「How」は設計できません。しかし現実には「若年層」「女性」など非常に曖昧なコミュニケーションターゲットを設定しているケースが散見されます。効果的なコミュニケーション戦略をデザインするためには、コミュニケーションターゲットの「価値観」や「求めている体験」「抱えている課題」などを明確にすることと、訴求すべき価値を一貫して設定することが必要です。
以下の図は、インテージが整理したコミュニケーション戦略デザインの標準的なワークフローです。まずは「01 コミュニケーション戦略立案に向けた実態整理」を実行してマーケットの状況や競合との差別化ポイントなどを明らかにし、そのうえで「02 コミュニケーションターゲット設定」「03 ターゲットのインサイト発掘」から「04 コミュニケーションメッセージ策定」をした上で「05 コミュニケーションプランニング」を実行していきます。この図からも、実態を整理したうえで「Who」と「What」を明らかにし、「How」を考える必要があることがわかると思います。
また、実際に自社の顧客データを蓄積・活用している場合でも注意が必要です。なぜなら、自社の顧客データを重視するあまり、未顧客に対する視点が抜け落ちてしまう可能性があるからです。だからこそ、自社の顧客データだけに頼るのではなく、「Who」と「What」を掛け合わせてコミュニケーションターゲットの仮説を立てることが重要になるのです。
コミュニケーションを成功させる鍵は「オリエンシート」のつくり込み
これらの問題を解決するうえで効果的なのが、「オリエンシート」をつくり込むことです。オリエンシートは「サービス提供・制作」「メディア運用」「プロモーション」などのコミュニケーションを実行するうえでの土台となるもので、社内外の関係者間における「戦略の一貫性」を担保する非常に重要な資料ですが、どのようにつくり込めばいいか悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
以下の図は、インテージ独自のオリエンシートの見本です。「サービスコンセプト」「マーケティング施策」「プロモーション施策」「プロモーションターゲット」「提案依頼書」の5つに分けて考えることで、明確なコミュニケーション戦略を設計することができます。オリエンシートづくりに悩んでいる方は、まずはインテージ版オリエンシートを参考に、一つひとつの項目を明記できる状態をめざすと、コミュニケーション戦略がクリアになると思います。
まとめ
今回は、顧客とのエンゲージメント構築に不可欠なコミュニケーション戦略の重要性をお伝えしてきました。改めて要点を下記に整理します。
- コミュニケーション戦略は「エンゲージメント」構築を想定してデザインする
- コミュニケーションにおける「ターゲット設定」「戦略立案・実行」「効果測定」を実行することがエンゲージメントの構築につながる
- エンゲージメントの構築は一方通行型の「プロモーション」ではなく双方のやりとりが生まれる「コミュニケーション」で考えることが重要
- エンゲージメント構築が進まない主な要因として「組織間の壁」と「Who、What、Howの曖昧さ」が考えられる
- オリエンシートをつくり込むことで、一環したコミュニケーション戦略を描くことができる
今回の記事が、読者のみなさまの今後の活動に役立てば幸いです。
【エンゲージメントデザインサービス】
顧客とのコミュニケーションをエンゲージメント起点でデザインしていくためのフローとサービスをご用意しています。
貴社が提供している商品・サービスを「誰に」「何を」「どれくらい」届けるかを設計し、実行します。また、実行後の効果を適切に評価することで、次のアクションに繋げます。
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