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生活者の隠れたニーズをあぶり出す、アイディア開発のためのリサーチとは?

新しい商品やサービスを開発するには、生活者の声に耳を傾けることが重要です。
ネットリサーチで大勢の人に調査をかけることで、どのようなニーズが強いのかを測ることはできます。一方で、想定される仮説をもとに調査票を作成する従来型のアスキング調査だけでは、生活者自身が気づいていないような“隠れた声”は拾うことができず、コモディティ化した市場を打破するような新しい開発アイディアを生み出すことは困難です。

 

生活者の隠れた声を俯瞰的に捉えるリサーチ手法

生活者の”隠れた声”を探る上で有効な手段の一つに、1to1インタビュー形式で行う「PAC分析」という調査手法があります。PAC分析はもともと臨床心理学などに用いられていた手法で、個人の内面を探り出して分析するものです。
この調査では、まず、対象者にテーマに紐づく複数のワードを自由連想で出してもらいます。次にワード同士の距離感を対象者自身に評定してもらい、その距離によってワード同志の関係性を図式化します。さらに対話を通してその図を解釈していくことで、言語化されていなかった内的世界を明らかにしていきます。

ただ、この結果はあくまで一人の人間の価値構造です。商品やサービスを開発する上では、多数の生活者から声を広く拾う必要があります。1to1インタビューという定性的なアプローチで行われていたPAC分析を、多数の対象者に対するネットリサーチという定量的なアプローチで行うことができれば、生活者の“隠れた声”、“声にならない声”を広く俯瞰的に捉えることができると期待されます。

図1はインテージが約500人の生活者にネットリサーチを行い、PAC分析の手順と同様に対象者に「トイレ」というテーマに関する自由連想ワードを複数(ここでは12ワード)挙げてもらい、それぞれの距離の近さを評価してもらった結果を、統計的に処理したマップです。多数のワードがちりばめられ、生活者の声を広く捉えていることがわかります。

生活者の価値構造を発見するためのマップということで、インテージでは「マインドディスカバリーマップ」と呼んでいますが、ここから実際にどのような“隠れた声”、“声にならない声”が捉えられるのでしょうか。「マインドディスカバリーマップ」を読み解く、インテージ独自開発ソリューション【デ・サインリサーチプログラム】でワークショップを自主企画で実施し分析を行いました。

図1 マインドディスカバリーマップの例

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アイディア探索のプロセス~トイレに対する“当たり前”を問い直す

図2と図3は「トイレ」について「排泄以外」で思い浮かんだワードを自由連想で答えてもらい、男性と女性それぞれについて作成したマインドディスカバリーマップです。近くにあるワード同士は生活者にとって近い意味を持っています。また、中心部にあるワードは多数の連想に繋がる、“軸”となる言葉です。このワード同士の距離や配置の背景に、生活者の“声にならない声”、“世の中のインサイト”が潜んでいると考えられます。

図2 男性の「トイレ」のマインドディスカバリーマップ
30~40代既婚子あり男性(n=489) データ:インテージネットリサーチ自主企画調査

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図3 女性の「トイレ」のマインドディスカバリーマップ
30~40代既婚子あり女性(n=563) データ:インテージネットリサーチ自主企画調査

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このマップからは例えばこんな発見がありました。

まず、「カレンダー」というワードが男女それぞれのマップにありますが、位置(意味)は真逆の場所にあります。女性にとっては「香り」や「造花」、「ポスター」などと同じ文脈上にあることから、トイレにあるカレンダーは“飾り”であると考えられます。
しかし男性のマップでは、カレンダーは「頑張る」、「狭い」、「怖い」などちょっとネガティブなエリアにあり、「気持ちいい」「ぼーっとする」の真逆にあります。このワードの分布からは、トイレの中のカレンダーは、男性にとって“プレッシャー”になるのではないかと推測できます。

また、女性のマップでは「いつも綺麗にしたい」が中央にあるとともに、近くには「金運」「明るい」「アロマオイル」「盛り塩」、少し下に「トイレの神様」が表出しています。これらのワード群からは、女性にとってトイレとは、幸せに近く、神の領域にまで繋がる空間であると推測することができます。
このようにマップを読み解いていくことで、トイレという日常的で当たり前な場所が、無意識下ではどんな意味で捉えられているのかが見えてきます。

この結果の読み解きにおいて重要なことがあります。
「マインドディスカバリーマップ」の解釈は見る人の視点によって異なり、決まった回答はありません。情報量の多いこのマップから生活者の価値構造を捉えるためには、”複数の人の多様な観点”でデータを読み、意味を問い直し、ディスカッションを繰り返して新たな解釈を生んでいく、というプロセスが肝となります。

もう一つ、問いの立て方も重要となってきます。当たり前になっていることを生活者にそのまま訊いても新しい発見はありません。そこでトイレを「排泄以外」という視点で捉えて連想される言葉を答えてもらう、という制約を設けています。その上で、自由連想してもらうワードの数についても、「12」と出し切るにはなかなか難しい数を設定し、対象者にとことん考えてもらうことで、一つ一つのワードを丁寧に集めています。

アイディア開発事例~50代女性にとって髪のツヤは“鍛えて手に入れる”もの?

次に紹介するのは「マインドディスカバリーマップ」を読み解いて得られた生活者のニーズに当てた、プロダクト案の開発例です。

図4は、「女性のキレイ/美しくいること」を50代女性に質問したものです。これを見ていくと、例えば、中央から右下にかけ「健康」、「努力」、「元気」、「運動」、「ジョギング」などという文脈がありますが、ここに、唐突に「髪のツヤ」というワードが入っています。このファクトをベースに、「50代の女性は『髪のツヤって鍛えなきゃダメ』と思っているらしい……」という発見が得られます。

図4 50代女性にとってのキレイ、美しい
50代女性(n=551) データ:インテージネットリサーチ自主企画調査

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そこから、「健康美の商品カテゴリーの中に『髪のツヤ』はあるか?」、「こうしたニーズを叶える商品を作ることはできないだろうか?」とワークショップを積み重ね、例えば図4のように「50代からの“つや髪”習慣サポートサプリ」といった新たなプロダクト開発案が生まれました。

図5 「鍛える髪ツヤ」のプロダクト案例
(インテージ社内ワークショップより)

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この例の様に、生活者の声を紡いだファクトを基にディスカッションを繰り返して得られたアイディアは、根拠あるアイディエーションの結果とも言えます。

商品やサービスは生活者の願望を実現するツールです。
生活者の声を聞き、“生活者がなりたい姿”をかなえる新しい商品やサービスを考えていく。そのためには、あえて“こうなりたいはず”という仮説を立てずにファクトを眺め、当たり前を問い直すことが求められています。

「マインドディスカバリーマップ」のその他事例

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