国をあげて推し進めるEVシフト 買いたいと思っている人はどのくらい?
大型のスーパーやショッピングモールの駐車場など、街中でちらほらと見かけるようになった電気自動車への充電設備。自動車業界では世界的に次世代自動車の普及競争が激しくなってきています。各自動車メーカーも開発にしのぎを削る中、政府は今年7月に「2050年までに世界で販売する日本車すべてを電動車にし、ガソリンだけで走る車をなくす」という目標を打ち出しました。
電動車は図表1の様に分類される、環境に配慮した動力源タイプの車です。
図表1
政府は前述の目標達成に向け、電動車に不可欠な電池やモーターの技術開発や、電池の材料となる希少金属の安定的な調達などで民間企業を後押しするようです。また、減税や補助金といった取り組みによって、私たち生活者にも電動車を購入しやすくしてくれています。
国を挙げて取り組んでいる「電動車シフト」ですが、生活者は電動車へどの程度関心を寄せているのでしょうか。
インテージが毎月約60万人から前月の自動車情報を取得しているシンジケートデータ「Car-kit」では、生活者がどのような自動車を保有しているのか、買い替えるときにはどのような車種を検討するつもりなのか、といった自動車に関する実態や意識を調べています。
さらにこのCar-kitに生活意識・価値観やさまざまな商品・サービスの購買・利用状況やメディア・情報の受発信行動といったデータを重ね合わせ、各車種のユーザーや購入検討者を立体的かつ細密に描写することができる、生活者360°Viewerという分析サービスを提供しています。
これらを使って、電動車を取り巻く生活者の意識や実態を追ってみましょう。
今、電動車の購入を検討している人はどのくらい?
まずは電動車を「買いたい気持ち」の変化を追ってみます。
図表2は車を次に買い替えるときに、どのタイプの動力源を搭載した自動車を検討するかを複数回答で答えてもらった結果です。
図表2
電動車の中でも、発売後20年を経て既に市民権を得ているガソリンハイブリッド車は約半数の人が購入を検討したいと答えているのに対し、直近の次世代電動車として期待されているプラグインハイブリッド車や電気自動車を検討したいと答えている人はどちらも1割前後。まだ一部の人たちに限られています。とはいえ購入を検討している人はじわじわと増えていることもわかります。
このデータを年代別に見てみましょう。下記のグラフはプラグインハイブリッド車もしくは、電気自動車を検討している人の割合を年代別にみたものです。(図表3)
いずれの年代でも増加傾向にありますが、60代の増加が特に顕著です。
図表3
「電気自動車・プラグインハイブリッド車」を買いたい人はどんな人?
次世代型の電動車として、少ないながら購入検討する人が増えつつある、電気自動車とプラグインハイブリッド車。ここからは、電気自動車またはプラグインハイブリッド車を検討するとしている人たち(以下EV or PHEV購入意向者)を、ガソリン車またはガソリンハイブリッド車だけを検討している人たち(以下HEV or ガソリン購入意向者)と比較することで見えてきた、「EV or PHEV購入意向者」の特徴を紹介します。
まず、「EV or PHEV購入意向者」の価値観や意識特性の特徴を見ていきましょう。
「HEV or ガソリン購入意向者」と生活価値観を比較すると、「EV or PHEV購入意向者」の方が「環境意識が高い」人が多いのは想像に難くありませんが、同時に「新しいものはまず試す」といった新しいものへの好奇心が高い人が多い傾向も見られました。(図表4)
図表4
具体的には、自動車に先進性を求めるだけでなく、一般的な消費行動においても「新しいものを積極的に取り入れたい」という意識が高い人が多く、さらに「技術の先端をいく製品をいち早く生活に取り入れる」ことを望んでいる人が多い傾向がみられました。
この消費行動における考え方の基準には、「技術の進歩で世の中はより良くなっていく」「最新の技術がわかる先進的な人と思われたい」といった価値観が背景にあると考えられます。科学技術を信頼するとともに先進的でありたいとの自尊感情を持っている姿が浮かび上がってきます。
このような価値観や考え方は、次世代自動車である電気自動車やプラグインハイブリッド車と親和性が高いといえるのではないでしょうか。
また、これらの価値観に基づく行動を実現するためと推測されますが、情報収集も活発で、テレビで視聴するコンテンツは「HEV or ガソリン購入意向者」よりもニュースや報道番組の視聴時間が長く、バラエティ番組の視聴時間は短いとの結果になっています。(図表5)
図表5
さらに、様々な情報源を使い分けたり、入手した情報を自身で取捨選択するといった情報処理能力が高い人が多い傾向も見られました。
このほか、「EV or PHEV購入意向者」は「知識や教養を身に着ける時間」や「芸術・文化を楽しむ時間」さらに「身体を動かす時間」を大切にしている人が多く、「自分磨きにお金を使う」ことに積極的な人物像が見えてきます。(図表6)
図表6
自分自身を高め続けているという自覚が、そんな自分にふさわしい先進的な自動車を選びたいという気持ちにつながっているのかもしれません。
加えて、「EV or PHEV購入意向者」の特徴として、「人との交流に積極的である」人が多いという傾向も特筆すべきポイントです。「家族だけでなく社会とのつながりも大切にしたい」「人や社会のために役に立ちたい」と考えている人が多いとの調査結果が得られています。(図表7)
図表7
「社会の役に立ちたい」と考え、そのために必要な知識や体力を備えたいとの思いが、前述の「自分磨き」にもつながっている、とも考えられます。
他にも、お金に関する項目を見てみると、「EV or PHEV購入意向者」は「投資などにお金を使う」人が多いという傾向も見られました。
これまで述べてきたように、「EV or PHEV購入意向者」は先進的であったり、情報処理能力が高いといった価値観や行動特性を持っていることがわかりました。彼らは人との交流を大事にする傾向があるため、初期ユーザーとして取り込むことができれば、優秀なインフルエンサーとなってくれる可能性を秘めているとも言えそうです。
今後EVやPHEVが普及するにしたがい、購入意向層も変化していくと思われます。継続的にウォッチし続け、マーケティング活動に活用していく必要がありそうです。
この記事で紹介した「生活者360°Viewer」のサービスを用いた「EV or PHEV購入意向者」の詳細なプロフィールデータは、サンプルレポートとして無料でダウンロードしていただけます。
今回の分析は、インテージの提供するCar-kit(自動車パネル)のデータと生活者360°Viewerによる出力結果を用いて行いました。
株式会社インテージが毎月約60万人から前月の自動車情報を取得しているシンジケートデータです。現有車や次期意向などを聴取する市場動向把握調査と、契約者に対して購入理由や購入時の重視点などを聴取する契約者調査の2部構成で実施しております。
多面的で精緻なターゲット像を描き出すことにより、生活者理解に基づいた商品・サービス開発やコミュニケーション・プランニングを支援する分析サービスです。インテージの持つさまざまなパネルデータを横断・連携した15,000項目におよぶ膨大なデータから、各お客様企業のマーケティング課題に応じて柔軟にターゲット・セグメントを設定することが可能です。
※さまざまなパネルデータを横断・連携するという性質上、出力結果のサンプルサイズはデータによって異なります。
転載・引用について
◆本レポートの著作権は、株式会社インテージが保有します。
下記の禁止事項・注意点を確認の上、転載・引用の際は出典を明記ください 。
「出典:インテージ 「知るギャラリー」●年●月●日公開記事」
◆禁止事項:
・内容の一部または全部の改変
・内容の一部または全部の販売・出版
・公序良俗に反する利用や違法行為につながる利用
・企業・商品・サービスの宣伝・販促を目的としたパネルデータ(*)の転載・引用
(*パネルデータ:「SRI+」「SCI」「SLI」「キッチンダイアリー」「Car-kit」「MAT-kit」「Media Gauge」「i-SSP」など)
◆その他注意点:
・本レポートを利用することにより生じたいかなるトラブル、損失、損害等について、当社は一切の責任を負いません
・この利用ルールは、著作権法上認められている引用などの利用について、制限するものではありません
◆転載・引用についてのお問い合わせはこちら