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自治体・返礼品ランキングからみるふるさと納税 ~ふるさと納税実態調査②~

今年も残すところあとわずかとなり、2023年のふるさと納税の締切りが迫っています。前回の記事「これからどうなる?ふるさと納税~ふるさと納税実態調査①~」では、多くの生活者が、ふるさと納税を始めるきっかけや寄附先自治体の選択において、返礼品を重視することがわかりました。そこで、第2弾では、返礼品が具体的にどのように自治体選びにつながるのかを深堀りします。今回も「ふるさと納税実態調査」の結果を見てみましょう。

12022年版ふるさと納税の寄附先自治体トップ20

図1の左側の地図と中央の表は総務省が発表している「令和4年度におけるふるさと納税受入額の多い20団体(注1)」です。1位は宮崎県都城市、続いて北海道紋別市、根室市、白糠町、5位が大阪府泉佐野市でした。

生活者サイドから人気の自治体を見てみましょう。「ふるさと納税実態調査」では、2022年1月~12月にふるさと納税を利用した10,816人を対象に、「ふるさと納税で寄附した自治体名」を聞きました。
図1の右の表は「最も多くの金額を寄附した自治体」のランキングです。1,167自治体が挙げられた中、上位20の自治体を一番の寄附先に選んだ人数は27.9%と、全体の3割弱を占めていました。生活者ひとりひとりにとっての「一番人気」が、わずか2%程度の少数の自治体に集中していることがわかります。

図1の右の表で赤色に網掛けしているのは、総務省の納税受入額ランキングにも入った自治体です。1位の宮崎県都城市、2位の北海道紋別市は順位も一致しました。また、今回調査した「最も多く寄附した自治体」の上位7自治体は、すべて、総務省の納税受入額ランキングの10位以内の自治体でした。

図1

ふるさと納税寄付先自治体人気ランキング

地図に載っている自治体の名前や地理的位置を眺めてみると、特産品が浮かんできます。「令和3年市町村別農業産出額(推計)」(注2)によると、1位の宮崎県都城市は農業産出額が全国1位で、そのうち約8割を畜産部門が占めています。肉用牛と豚は全国1位、ブロイラーが全国2位でした。また、北海道と言えば海産物が有名ですが、右側の「最も多くの金額を寄附した自治体」のランキングでは7自治体がランクインしています。肉や海産物といった、高額な特産品を返礼品としている自治体が、上位であることがわかります。

2.ふるさと納税といえば、これ!~2022年の返礼品ランキング~

次に、ふるさと納税で人気の返礼品のジャンルを調査結果から見てみましょう。図2は、2022年1月~12月にふるさと納税を利用した10,816人を対象に、「ふるさと納税で選んだ返礼品のジャンル」を全て回答してもらった結果です。

1位から「肉」、「魚介・海産物」、「米」、「果物」、「加工食品」、「スイーツ・お菓子」と続き、6位まで上位を食品が占めています。食品以外では、「日用品」が最も高く7位でした。

前述の総務省ランキング1位の宮崎県都城市の特産品と返礼品ランキング1位の「肉」、総務省ランキング2位~4位の北海道紋別市、根室市、白糠町の特産品と返礼品ランキング2位の「魚介・海産物」、といったように上位の寄附先自治体の特産品と返礼品が結びついています。一方、返礼品ランキングで3位の「米」は、「令和3年市町村別農業産出額(推計)」(注2)によると、産出額1位が新潟県新潟市で、新潟県長岡市、秋田県大仙市、新潟県上越市、山形県鶴岡市、と続きます。この5市町村は、図1の寄附先ランキングの上位に入っていないことから、「米」は「肉」や「魚介・海産物」の様に寄附先自治体の集中はなく、色々な自治体が選ばれていることが考えられます。

図2

2022年版ふるさと納税の返礼品ジャンルランキング

3.寄附先の自治体人気度と返礼品人気度から見えること

寄附先自治体と返礼品ジャンルの上位の顔ぶれから、「肉」や「魚介・海産物」の魅力的な特産物がある自治体が人気を集めている様子が見えてきました。改めて「返礼品の選択」と「寄附先自治体の選択」との関係を見てみましょう。
人気自治体の強みが刺さっているとみられる「上位の自治体に最も多く寄附をした人」と「上位<以外>の自治体に最も多く寄附をした人」の比較を通して探ってみたいと思います。

図3の縦軸は、上位20の自治体に最も多く寄附した人による各返礼品ジャンルの選択率、横軸は上位<以外>の自治体に最も多く寄附した人による各返礼品ジャンルの選択率です。
バブルの大きさは、各返礼品ジャンルを選んだ人数を示し、大きいほど人気が高いジャンルとなります。
青色の点線は45度線で、バブルがこの線よりも上にあると、「上位自治体に最も多く寄附した人」に、より好まれているということを表します。

図3

寄付先自治体選択と返礼品ジャンル選択の関係

45度線より上にある返礼品のジャンルは、「肉」、「魚介・海産物」、「米」といった生鮮食品、そして「加工食品」です。これらは図2の返礼品人気ジャンルランキングのトップ5に入っています。返礼品ランキング上位の食品を好む人が、人気が高い自治体に集中しがちな様子が読み取れます。特に「肉」と「魚介・海産物」は、上位自治体に最も多く寄附した人とそうでない人との差が、それぞれ約18ポイント、約20ポイントと大きくなりました。

次に、45度線より下にある、「上位<以外>の自治体に最も多く寄附した人」に、より好まれているのは「日用品」、「スイーツ・お菓子」、「飲料(アルコール)」といった、人気ランキングで6位~8位のジャンルでした。「日用品」の品目は多種多様で、トイレットペーパーや洗剤などの普段使っている商品が含まれるため、食品に比べ商品自体に地域差が出にくく、寄附先が分散した結果と言えそうです。また、「スイーツ・お菓子」や「飲料(アルコール)」は嗜好品でバラエティが豊富なため、特定の自治体に人気が集中しにくいと考えられます。

一方で、45度線上に位置する「果物」は、図2の返礼品ランキングで4位と人気は高いですが、上位の自治体を選ぶ人と上位以外の自治体を選ぶ人の選択率には差がありませんでした。これは「果物」は多種類で旬があり、返礼品とする自治体も多いため、特定の種類、自治体に人気が集中しにくいためと考えられます。

4.寄附先自治体の人気度と選択理由から見えること

寄附先として人気の高い自治体を選ぶ人とそうでない人で、自治体を選ぶ時の理由に違いはあるのでしょうか。図4は、図3と同様に上位20の自治体に最も多く寄附した人とそれ以外の人に分け、「寄附先自治体の選択で最も重視した理由」について調べた結果です。バブルの大きさは各理由を選んだ人数を示します。人気の高い自治体を選ぶ人とそうでない人に関わらず、圧倒的に「返礼品が魅力的」が最も重視されていることがわかります。

ここで、先ほどと同様に「上位の自治体に最も多く寄附した人」に特徴的な理由を見てみましょう。バブルが青色の45度線よりも上にある理由に注目すると、「返礼品が魅力的」、「返礼品のコスパ(価格と内容量のバランス)が良かった」、「返礼品のポイント付与率が高かった」となり、いずれも返礼品に関する項目でした。人気の高い自治体では、返礼品を重視する利用者が多いといえます。

一方、バブルが45度線より下にある「上位<以外>の自治体に最も多く寄附をした人」に特徴的な理由は、「自分が普段から使う商品が返礼品にあった」でした。この結果は、図3で、「日用品」を選ぶ割合がより高かったことと同じ傾向と考えられます。加えて、「寄附先の自治体を応援したい」、「寄附先の自治体と関わりがある」といった、ふるさと納税の第二の理念である「関係のある地域や応援したい地域に寄附すること」(注3)に沿った理由の回答割合も高くなっていました。

図4

寄付先自治体選択と選択理由の関係

今回の分析では、生活者の寄附先自治体ランキング、返礼品ジャンルランキングと、寄附先自治体を選ぶ理由のパターンを重ねることで、人気の寄附先自治体の特徴が明らかになりました。

地域によるブランドや質の違いがあり、数量や重量で様々なニーズに応えやすい食品は、ふるさと納税の利用者に人気が高く、特に「肉」や「魚介・海産物」といった主菜となり得て、かつ価格が高い品目を有することは、自治体にとって強みといえます。

また、「普段使う日用品」や「魅力的なスイーツ・お酒」で寄附先を選ぶ、「ふるさと納税の理念に沿った理由」で寄附先を選ぶ、といった人は必ずしも上位の自治体に寄付するわけではないこともわかりました。地域の取組みや特産品の魅力を判りやすく届け、これらの動機に訴えることで、どの自治体にも寄附先になる機会があるといえそうです。

ふるさと納税の利用者に、地域の魅力ある特産品を選んで楽しんでもらいつつ、自治体が地域産業の活性化にも役立てるためには、どのような工夫ができるのでしょうか。ふるさと納税の意義は大切にしつつ、制度を利用している自治体、利用者にとって最善となる制度の在り方は何か、ふるさと納税を利用している生活者の意識・意向にヒントがあると考え、今後も生活者の声を聴いていきたいと思います。


注1: 総務省 ふるさと納税に関する現況調査結果(令和5年度実施)
  (参考)令和4年度におけるふるさと納税受入額の多い20団体(P. 11)
注2: 農林水産省 令和3年市町村別農業産出額(推計)
注3: 総務省 ふるさと納税の理念


【調査概要】
(スクリーニング)
調査方法:Web調査
調査地域:日本全国
対象者条件:20~64歳男女/有職者/個人年収300万円以上(※)
標本サイズ:n=50,788(令和2年「国勢調査」と令和元年「賃金構造基本統計調査」から算出した人口構成比(性年代×エリア×有職者×個人年収300万円以上)に準拠して回収)
調査実施時期:2023年9月1日(金)~2023年9月6日(水)
(※)総務省の「全額(2,000円を除く)控除されるふるさと納税額(年間上限)の目安」に従い個人年収300万円以上を対象者条件と設定した。
https://www.soumu.go.jp/main_content/000408217.pdf

(本調査)
調査方法:Web調査
調査地域:日本全国
対象者条件:スクリーニング回答者のうち、2022年1月~12月にふるさと納税制度で寄附を行ったと回答した方
標本サイズ:n=10,816
調査実施時期:2023年9月8日(金)~2023年9月12日(火)

著者プロフィール

小西 葉子(こにし ようこ)プロフィール画像
小西 葉子(こにし ようこ)
独立行政法人経済産業研究所(RIETI)上席研究員
中小企業応援士 
一般社団法人日本統計学会 理事
統計委員会臨時委員

名古屋大学大学院にて博士号(経済学)を取得し、2014年より現職。2016年から経済産業省の「ビッグデータを活用した新指標開発プロジェクト」に携わり、コロナ禍にはインテージ社をはじめとする民間企業と協業し、消費動向把握とその発信を積極的に行った。計量経済学の知見を活かし、消費、観光、医療、物流、省エネ政策等、幅広い分野の研究を行う。
https://www.rieti.go.jp/users/konishi-yoko/

独立行政法人経済産業研究所(RIETI)上席研究員
中小企業応援士 
一般社団法人日本統計学会 理事
統計委員会臨時委員

名古屋大学大学院にて博士号(経済学)を取得し、2014年より現職。2016年から経済産業省の「ビッグデータを活用した新指標開発プロジェクト」に携わり、コロナ禍にはインテージ社をはじめとする民間企業と協業し、消費動向把握とその発信を積極的に行った。計量経済学の知見を活かし、消費、観光、医療、物流、省エネ政策等、幅広い分野の研究を行う。
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