
ファミコンが発売されて早40年。そして2010年代以降はスマートフォンの普及が進むとともにスマホゲームも浸透し、今では大人の趣味としてもすっかり定着しているゲームですが、現在、どのくらいの人が楽しんでいるのでしょうか。最近では、YouTubeをはじめとした動画配信・ストリーミングサービスの人気を背景にPCでゲームを遊ぶ人も増えているようにも感じられます。
それぞれのユーザー動向やユーザーの重なりなど、インテージが所有するIP(知的財産)に関する調査データベース IPファン-kitのデータを用いていまのゲームの利用実態を調べてみました。
はじめに、ゲーム人口の推移を見てみましょう。図表1はスマホゲーム、家庭用ゲーム、PCゲームで年に1日以上遊ぶ人の割合を2021年から並べたものです。
図表1
24年5月調査時点で、15-59歳の男女のうち54.0%が、年に1日以上何らかのゲームをプレイしており、その人口は3,551万人と推計されます。21年5月調査時点では55.3%(推計3,681万人)だったのに対して微減していました。特に20代以下の層で利用率が低下しており、母集団となる人口も減少していることから、若年のゲーム人口は減少傾向がみられています。
詳細について見ていく前に、まず「スマホゲーム」、「家庭用ゲーム」、「PCゲーム」についての特徴を整理してみました(図表2)。
図表2
どのデバイスでも遊べるタイトルもありますが、それぞれの特徴を活かした楽しみ方があります。
では、それぞれについて、ユーザー人口の推移を見てみましょう。スマホゲームと家庭用ゲームは全体でみると微減傾向、PCゲームは微増傾向が見られました(図表3)。
図表3
年代別にデータを見てみましょう。
スマホゲームは30代以下でユーザーが減った一方で、50代ではユーザーが増えるといった動きが見られます。
また、20代では、スマホゲーム、家庭用ゲームともにユーザーが減り、PCゲームのユーザーは増加と、独自の動きが見られました。
特徴が異なる3つのデバイスですが、ユーザーは使い分けをしているのでしょうか? それぞれのユーザーの重なりを表したのが図表4です。
図表4
ゲームユーザー全体の半数弱はスマホゲームのみをプレイする層となっています。家庭用ゲームのみ、PCゲームのみをプレイするといったユーザーは少なく、他のゲームとの併用者が多くみられます。 手軽に遊べるスマホゲームは併用されやすいことが分かります。
最近はスマホゲーム、家庭用ゲーム、PCゲーム共にオンラインでプレイし、より強いキャラクター・武器・装備の入手や、衣装やアクセサリーなど見た目のカスタマイズ、 プレイするステージの追加など、様々なオプションに対して課金するタイプが増えています。
そこで、課金の実態についても、最近の変化を追ってみました。
まず前提として、それぞれのゲームがどの程度プレイされているものなのかを見てみましょう。図表5はそれぞれを年1日以上プレイするユーザーにおけるプレイ頻度の分布です。
図表5
週1日以上プレイする人の割合は、いつでもどこでもできるスマホゲームで85%と特に高く、日常の行動として定着している様子がうかがえます。基本的に家の固定された環境でプレイすることが多い家庭用ゲームとPCゲームで比較すると、PCゲームの方が週1日以上プレイするユーザーの割合が高く、64%となっていました。本格的な装備が必要なPCゲームはよりヘビーなユーザーが多いようです。
ちなみに、2021年と2024年とで比較してみると、週1日以上プレイするユーザーの構成比は、家庭用ゲームで4ポイント減少、PCゲームで4ポイント増加しており、PCゲームのヘビー化が進んでいるように推測されます。
では、課金を行っている人はそれぞれどのくらいいるのでしょうか。図表6は年1日 以上ゲームをプレイするユーザーの支出率 (PU[Paid User]率)の推移です。
図表6
3つのデバイス間で比較すると、最も支出率が高いのは家庭用ゲームで、60%程度となっています。家庭用ゲームの支出率はこの4年であまり変わっていないのですが、この間伸び続けているのがPCゲームです。徐々に家庭用ゲームに近づいてきています。PCゲームが伸びている背景として、YouTubeやTwitchをはじめとした動画配信・ストリーミングサービスの人気から、ゲームを遊べるデバイスを検討する際にPCが身近になっていること、高性能なPCが比較的安価に手に入りやすくなっていること、 PCの特徴である高解像度・高画質、自由なカスタマイズ性、同時に複数のツールが使えることが、昨今人気のマルチプレイゲームを遊ぶ環境としてマッチしていることが後押ししていると考えられます。
年代別にみると、スマホゲームは20-40代を中心に増加傾向、家庭用ゲームは20代以下で減少し40-50代で増加傾向と、年代による傾向の違いが見られたのですが、PCゲームはどの年代でも支出率が高まっていました。
ここまで、支出するユーザーの割合を見てきましたが、課金額に変化はあるのでしょうか。支出率の伸びが顕著だったPCゲームに注目し、1か月の課金額の推移を見てみました(図表7)。
図表7
左側の分布図を見ると「500円以下」の金額帯が減少し、「~1,000円」「~3,000円」や「~20,000円」「30,001円以上」の金額帯が増加していることがわかります。また、平均金額も増加傾向が見られました。ユーザー増、支出ユーザー増、支出額増と、ゲーム人口全体の中での規模は小さいものの、PCゲームの市場規模が拡大している様子がうかがえます。
はじめに確認した通り、若年層のゲーム人口は減少傾向が見られました。20代においては、PCゲームへのスイッチ、ヘビー化、といった動きもある一方で、スマホゲームや家庭用ゲームのユーザー減の影響が大きい形です。この変化について、少し考えてみたいと思います。
背景の1つとして、動画・音楽・リアルエンタメ(遊園地・レジャー施設・ライブ・イベントなど)といったエンタメコンテンツが飽和している中で、生活者の“タイム・パフォーマンス(タイパ)”への意識が高まっていることが考えられます。
図表8は、以前知るギャラリーの記事「Z世代に限らないタイパ意識 ~2つの行動タイプとその背景~」でご紹介した、タイム・パフォーマンスに関する世代別の意識調査の結果です。
図表8
特に若年層は、単に忙しくて時間がないとは別に「一定時間の中で、できるだけ多くのことを楽しみたい、経験したい」というバラエティ型のタイパ意識を持つ特徴があり、具体的な行動としては「映画を倍速でみる」「音楽はサビだけ聞く」「事前に要約やネタバレを閲覧する」といった例があります。
そんな若年層のタイパ重視の実態を踏まえると、ゲームから離脱している要因として以下のような仮説が考えられます。
「同時に他のことをするのに向かない」「集中力を要する」「受動的に楽しめない」
「一度のプレイ時間が長く拘束される(隙間時間で遊びにくい)」
「ひたすら周回するなど、楽しみや達成感を得るまでにある程度の時間を要する」
「一度離脱すると、復帰する心理的ハードルができる」など
ユーザーの減少傾向がみられた若年層を新たに獲得していくためには、こうした障壁を減らしていくことがポイントになってくるのではないでしょうか。2025年6月2日にNintendo Switch2が発売されることが発表され、ゲーム市場は一段と盛り上がりをみせています。知るギャラリーでは引き続き、ゲーム市場の動向や消費者の価値観の変化についても追っていきたいと思います。
この記事では、今のゲームユーザーの実態を、この数年の変化と共に分析しました。ご紹介しきれなかったデータはこちらよりダウンロードいただけます。スマホや家庭用ゲームの課金額はどうなっているのか、など、ご興味のある方は是非ダウンロードしてご覧ください。
今回の分析は、IP(知的財産)に関する調査データベース IPファン-kitのデータを用いて行いました。30万人のアンケートモニターに対し、マンガ・アニメ・ゲームを中心とした様々なIPについて聴取しており、浸透状況やファン・ユーザーの特徴を横断的に把握できるデータベースです。といった。詳細はこちら よりご覧ください。
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