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生成AIの利用実態から見えた現在地と将来の展望 ~生成AI利用実態調査 総集編

近年、生成AI技術の誕生と進化は、私たちの日常生活、ビジネスに様々な変化をもたらしつつあります。このような背景のもと、インテージでは生成AIの現状と将来の可能性を明らかにするため、生活者およびビジネスパーソンを対象とした定量調査を実施しました。本調査を通じて、生成AIの利活用状況や便益、課題を多面的に捉え、今後の社会に与える影響をより深く理解するための一助となることを目指します。
このシリーズでは、ログデータ・生活者アンケート・ビジネスパーソンアンケートの分析結果を統合した多角的なアプローチで、生成AIの今日の利用実態と今後の展望について探求してきました。最終回となる今回は、シリーズの総集編としてこれまでの調査で得られた知見を凝縮し、生成AIの可能性を最大限に活用するためのヒントをお届けします。

1. 生成AIの認知と利用実態:認知は広がるも利用は限定的

はじめに、生成AIの普及状況を把握するため、その認知度・理解度を聴取した結果を図表1にまとめます。

図表1

生成AIの認知度・理解度

「聞いたことがある程度で、意味はあまり知らない」という回答まで含めた生成AIの認知度は、生活者で81.9%、ビジネスパーソンで81.8%となり、いずれも8割を超え高い水準を示しています。一方で、「意味まで理解している」人は生活者で10.1%、ビジネスパーソンで13.5%にとどまり、単語自体の認知度の高さとは対照的にその理解が浸透していない現状が明らかになりました。
続いて、生成AIの認知者を対象に、その利用状況をまとめました(図表2)。

図表2

生成AIの利用・導入状況

日常生活における利用経験率(「日常的に利用している」「時々利用している」「試しに利用したことがある」の合計)は16.1%、自身の業務における生成AIの導入率(「導入され活用が進んでいる」「導入されているが活用は進んでいない」の合計)は11.6%となりました。この結果から、日常生活・ビジネスシーンともに、現時点での生成AIの利活用は限定的であることが確認できます。80%以上の人が知ってはいるものの、実際に利用している人はごく少数であり、生成AIの認知と利用の間には大きなギャップがあることが示唆されます。

この傾向は、PCの利用ログデータからも裏付けられます。図表3は、インテージの保有するメディアログ、「i-SSP®」を用いて、PCユーザーのブラウザにおける生成AIの月間利用率の推移を集計したものです。ここでは、利用率上位3サービスであるChat GPT、Microsoft Copilot、Geminiを対象としています。

図表3

生成AIの利用率推移

2022年11月のChatGPT登場直後から利用率は上昇を始め、2023年春に5%を超えました。 そこから約1年は伸び悩みを見せますが、2024年の4月から再び上昇に転じ、2024年9月時点では8.6%となりました。このように、生成AIの利用率は足元では緩やかな増加傾向にありますが、依然として利用率は1割に満たず、一般的に普及しているとは言い難い状況です。

一方で、さらに深掘りしていくと、生成AIをいち早く取り入れ、使いこなしている先進的なユーザー層の存在も見えてきます。日常生活においては、学生が主に学業目的で積極的に利用しているようです。また、ビジネスシーンでは、大企業に勤務する上位役職者ほど情報感度が高く、率先して活用を試みている様子がうかがえます。これらの結果については、それぞれ生活者編 第2回ビジネスパーソン編 第1回で詳しく解説していますので、併せてぜひご覧ください。

2. 生成AIサービス別の浸透度:市場をけん引するChatGPTと拡大を狙う各社サービス

ChatGPTのリリースから2年以上が経過し、市場にはさまざまな生成AIサービスが登場しています。このような状況下で、ユーザーはどのようなサービスを選択しているのでしょうか。まずは、生成AIの利用経験がある生活者を対象に、各生成AIサービスの認知率・利用率を見ていきましょう(図表4)。

図表4

生成AIサービス認知率・利用率(生活者)

ChatGPTの認知率は69.4%、利用率は54.2%となり、他のサービスを大きく上回る結果となりました。対話型のチャット生成AIとしては、Microsoft CopilotとGeminiが認知率・利用率ともに拮抗し、ChatGPTに続く構図となっています。また、それら以外のサービスとしては、Yahoo!、X、LINEなど、普段から利用されている身近なサービスに搭載された生成AI機能が上位に位置しています。このことから、既存サービスへの生成AI機能の統合が、ユーザーの試用を促す導入手法として一定の効果を示していると推察されます。

次に、生成AIを業務へと導入済のビジネスパーソンにおける、生成AIサービスの認知率・利用率をみていきます(図表5)。

図表5

生成AIサービス認知率・利用率(ビジネスパーソン)

ビジネスシーンにおける認知・利用状況においても、生活者調査と類似した結果が確認されました。ChatGPTの認知率(66.5%)と利用率(38.0%)が突出して高く、Microsoft CopilotとGeminiがそれに続いています。また、勤務先独自のチャットAIツールは導入率(※勤務先ツールは認知率の代わりに導入率を聴取)に対する利用率が相対的に高く、企業が独自に導入したツールは積極的に活用される傾向があることが分かります。

これらの結果から、対話型の生成AI市場において、先行者利益を享受するChatGPTが日常生活とビジネスシーンの両面で広く浸透していることが分かります。これに続くMicrosoft CopilotとGeminiは、認知率で近い水準にあり、TVCMを活用したブランド訴求、ウェブ検索機能やオフィスソフトとの連携など、類似したアプローチで生活者への浸透を図っています。しかしながら、日本製のサービスも含むその他の対話型の生成AIは、現時点では広く一般に普及するには至っていない状況です。
サービス別のより詳細な比較については、生活者編 第4回ビジネスパーソン編 第3回も併せてご一読ください。

3. 生成AIの利用目的と利用までの障壁:身近なユースケースの創出がカギ

では、これらの生成AIサービスは、具体的にどのような目的で利用されているのでしょうか。図表6は、日常生活とビジネス、それぞれのシーンにおける生成AIの主な利用目的を示したものです。

図表6

生成AIの利用目的

この結果からは、日常生活とビジネスシーンの双方において、「文章の作成・改善」「文章の要約」「翻訳」「情報収集」といった、対話型生成AIの基本的な機能が多く活用されていることが確認できます。

一方、これまでに生成AIを利用していない・導入していないノンユーザー層には、どのような障壁があるのでしょうか。その実態を探るべく、非利用理由・非導入理由を調査しました(図表7)。

図表7

生成AIの非利用・非導入理由

日常生活における非利用理由では「特にない」、ビジネスにおける非導入理由では「分からない」という回答が最も多く、それぞれ41.8%と58.5%となりました。この結果からは、生成AIの具体的な活用イメージが定着しておらず、その利活用を「自分ごと化」していない姿が浮かび上がってきます。次いで、日常生活では、「利用シーンが分からない」や 「利用方法が分からない」という回答が多く、生成AIに対する具体的な懸念や性能面での不満よりも理解の不足が大きな障壁となっていることが分かります。また、ビジネスシーンでは、「導入するべき業務が分からない」や「進め方が分からない」など、生活者と同じような導入に関する不明点 が多く挙がったことに加えて、人材の不足という回答が見られた点も特徴的です。

これらの結果から、日常生活とビジネスシーンに共通して、生成AI自体の性能面における課題よりも、むしろ基礎的な情報の不足が利用・導入を阻む主要因となっていることが確認できます。生成AIに関連したニュースでは、先進的な取り組みや使用例に注目が集まる一方で、今まさに多くの人々が直面している現実的な課題を解決・代替する事例は依然として不足しています。今後は、生成AIの基本的な情報提供に加え、ユーザーにとって身近で共感性の高いユースケースを創出することが、社会全体における利用促進のために不可欠であると言えるでしょう。

4. 生成AIの現状評価:将来性への期待と多面的なパーセプション

現時点では、生成AIの利用は限定的である一方、大きな期待が寄せられていることも明らかになっています。図表8は、生成AIに対するイメージをさまざまな角度から調査した結果です。対照的な選択肢AとBを示し、どちらの考えに近いかを聴取することで、生成AIに対する印象を明確に示しています。

図表8

生成AIイメージ

「近い」「どちらかといえば近い」という回答をまとめると、「信頼できない」という意見が過半数を占めており、生成AIに対する社会的な信頼は未だ形成されていないことがうかがえます。また、「社会に貢献する」と「社会を混乱させる」という回答は拮抗しており、社会の変革に対する期待と不安は同程度存在することが示されます。一方で、「進化し続ける」という回答は71.4%と過半数を大きく超えています。否定的なイメージが一定数存在するにもかかわらず、総合的には「ポジティブなイメージ」がやや優勢になっているのは、進化を続ける生成AIの将来性に対する期待の表れとも解釈できるでしょう。

また、生成AIの特徴に対する認識もさまざまです。図表9は「従来のAIにはできないが、生成AIならできると思うこと」を自由回答の形式で聴取した結果です。ここでは、生活者調査、ビジネスパーソン調査の回答結果を統合し、共起ネットワークとして可視化しています。この図で、円が大きい単語ほど出現回数が多く、単語間を結ぶ線が太いほど同時に出現している(共起している)関連が深い単語であることを示しています。なお、ここでは、期待されている役割や観点を明確化するため、「生成」や「作成」などの頻出単語は除いています。

図表9

生成AIならできると思うこと

ネットワーク全体を俯瞰すると、出現頻度が高く、多くの単語と共起されているのは、「文章-画像-動画-データ-学習」などの、生成行為そのものに関連した単語でした(グループ1)。
その他にも、いくつか関連性が高い表現のグループが複数存在することから、生成AIについての認識や説明は多面的であることが確認できます。グループ2では「回答-質問-答える」の単語が独立して集まっており、現状の対話型チャットAIの基本的な活用方法を反映しています。グループ3には「新しい」を中心に「アイデア-情報-生み出す」といった表現が共起されています。、ここでは、いわゆる壁打ちの相手として対話し、新たな発想や視点を得るために生成AIを活用していることが想像できます。また、「人間-近い-感情-理解」などの表現からなるグループ4は、生成AIの知性という点に着目したものと推測できます。生成AIは確率的な言語モデルに過ぎませんが、言語や文脈を人間のように理解し、特定の領域では人間以上の能力を発揮するとも言われています。こうした、知性を感じさせる能力を生成AIの特徴として捉えている人もいるようです。

以上のように、生成AIに対する評価は賛否両論であるものの、総合的にはポジティブに捉えられており、また、その認識は多種多様であることが分かりました。生成AIの理解形成は未だ道半ばであるため、人々が生成AIに対して抱く認識(パーセプション)を把握することは、今後の普及を考える上で極めて重要であると言えるでしょう。

本シリーズで見てきたように、日常生活とビジネスシーンの双方で、生成AIの利活用は発展途上にあり、その浸透と社会実装には多くの課題が残されています。また、生成AIを取り巻く環境は今後も急速な変化を続け、技術の進歩とともに人々の認識も日々変容していくことが予想されます。生成AIの真の活用を実現するためには、技術動向と生活者動向の両面を的確に捉え、変化に適応していくことが重要であると考えます。

インテージでは、生成AI市場の急速な成長と変革を見据え、引き続き調査・分析に取り組んでまいります。 記事の内容やデータ、今回掲載した内容以外のデータや、当調査に関する詳細についてご興味をお持ちの方は、ぜひお気軽にお問合せください。


シリーズでお届けしてきた「生成AI利用実態調査」のExcelデータを無料でダウンロードいただけます。レポーティング等にご活用ください。


調査概要_生活者編
【調査概要】
(スクリーニング)
調査方法:Web調査
調査地域:日本全国
対象者条件:18~75歳男女
標本サイズ:n=21,255(性別・年代・地域を母集団準拠で回収)
調査実施時期:2024年10月28日(月)~2024年10月31日(木)

(本調査)
調査方法:Web調査
調査地域:日本全国
対象者条件:スクリーニング回答者のうち、生成AI経験者の方
標本サイズ:n=2,156
ウェイトバック:生成AI利用経験者のスクリーニング構成比にあわせてウェイトバック
調査実施時期:2024年10月31日(木)~2024年11月4日(火)

調査概要_ビジネスパーソン編
【調査概要】
(スクリーニング)
調査方法:Web調査
調査地域:日本全国
対象者条件:20~65歳男女、会社員・自営業などの有職者(パート・アルバイトは含めず)
標本サイズ:n=20,498
調査実施時期:2024年10月25日(金)~2024年10月28日(月)

(本調査)
調査方法:Web調査
調査地域:日本全国
対象者条件:スクリーニング回答者のうち、ビジネス(組織・個人)で生成AIを導入済/検討予定の方
標本サイズ:n=2,083
ウェイトバック:なし
調査実施時期:2024年10月31日(木)~2024年11月5日(火)

【i-SSP®(インテージシングルソースパネル®)】
当社の主力サービスであるSCI®(全国消費者パネル調査)を基盤に、同一対象者から新たにパソコン・スマートフォンからのウェブサイト閲覧やテレビ視聴情報に関するデータを収集するものです。当データから、パソコン・スマートフォン・テレビそれぞれの利用傾向や接触率はもちろん、同一対象者から収集している購買データとあわせて分析することで、消費行動と情報接触の関係性や、広告の効果を明らかにすることが可能となります。

著者プロフィール

松田 陽介(マツダ ヨウスケ)プロフィール画像
松田 陽介(マツダ ヨウスケ)
株式会社インテージ
エクスペリエンス・デザイン本部 プラットフォーム・データ・ビジネス部 データアナリスト

2022年にインテージへ入社。
メディア・プラットフォーマー担当のデータアナリスト兼リサーチャーとして、広告コミュニケーションやデジタル領域を中心とした調査とデータ解析に携わる。

株式会社インテージ
エクスペリエンス・デザイン本部 プラットフォーム・データ・ビジネス部 データアナリスト

2022年にインテージへ入社。
メディア・プラットフォーマー担当のデータアナリスト兼リサーチャーとして、広告コミュニケーションやデジタル領域を中心とした調査とデータ解析に携わる。

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「出典:インテージ「知るギャラリー」●年●月●日公開記事」

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