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多様化する生成AIのビジネス利用~生成AI利用実態調査2回目 ビジネスパーソン編②

生成AIの登場は、テクノロジーの世界にとどまらず、私たちの暮らしや価値観、そして社会にも大きな影響を及ぼしつつあります。インテージでは、生成AIが生活者および社会にどのように受け入れられ、活用されているのかを明らかにするため、2024年10月に全国の生活者・ビジネスパーソンを対象とした初回調査を実施しました。

それから約半年が経過した2025年3月、同様の対象で2回目の調査を行い、生成AIに対する認知・理解・利用(導入)の実態がどのように変化したのかを改めて確認しました。前回と同様、生活者・ビジネスパーソンの双方を対象に、幅広い設問で多様な層の実態を捉えつつ、継続調査ならではの視点から、生成AIと社会との関係性の変化を長期的に見つめていきます。

このシリーズでは「生活者編」「ビジネスパーソン編」、それぞれの視点から生成AIの現状と変化をお届けします。ビジネスパーソン編は全2回で構成しており、第2回となる今回は、デバイスや目的の観点から、ビジネスシーンにおける生成AIの利用実態を深堀りしていきます。

1. デバイス別の生成AI利用状況:PC中心の一方でスマホ独自の活用スタイルも

先行記事(生活者編第一回) では、日常生活における生成AIの利用デバイスとして、スマートフォンがPCを上回っているという結果をご紹介しました。生成AIは進化を続け、カメラやマイクを通じて入出力できるマルチモーダルなモデルや、手軽に利用できるスマートフォン用アプリが登場したことにより、日常における生成AI利用の場は広がっていると考えられます。それでは、ビジネスシーンではどうでしょうか?この章では、業務における生成AIの利用実態をデバイスの観点から調査し、PC、スマートフォン、タブレット端末ごとに利用状況とその背景を探ります。
まず初めに、ビジネスシーンにおけるデバイス別の生成AI利用経験率を示します(図表1)。

図表1

業務における生成AIの利用経験率(デバイス別)

ビジネスシーンにおける生成AIの利用経験率はPCで最も多く12.7%、次いでスマートフォン(8.5%)、タブレット端末(6.6%)の順となりました。スマートフォンからの利用も一定数存在するものの、PCが主要な利用デバイスであることがわかります。このように日常生活(スマートフォン優位)とビジネスシーン(PC優位)で利用デバイスに違いが見られる要因としては、二点が考えられます。

第一に、生成AI利用に限らず 、ビジネスシーンにおけるデバイス利用率の面でスマートフォンよりもPCの方が勝っていることです。多くのビジネスパーソンにとって、PCは主要な業務ツールであり、PCを用いて日常的に作業を行う中で生成AIを利用する機会が多いと考えられます。
第二に、会社支給デバイスの利用制限です。会社から支給されるスマートフォンやタブレット端末では、セキュリティの観点からアプリのインストールが制限されている場合があります。
ChatGPT、Google Gemini、Microsoft Copilotといった主要な生成AIサービスはスマートフォンアプリを提供していますが、企業によってはインストールが許可されず、利用できないケースも想定されます。
これらの要因が、日常生活とは異なる、ビジネスシーン特有のデバイス利用傾向を生み出していると考えられます。

次に、デバイスごとにどの生成AIサービスが利用されているのかを見ていきましょう。図表2は、各デバイスで生成AIを利用したことがあるビジネスパーソンを対象に、サービスごとの利用経験率を示したものです。

図表2

生成AIサービスの利用経験率(デバイス別)

まず目立つのは ChatGPT (GPT)の圧倒的な利用率の高さです。 PC(71.2%)、スマートフォン(71.4%)、タブレット(70.8%)と、 いずれのデバイスでも利用経験率は70%を超え、デバイスによる差はほとんど見られません。まさに生成AIの代名詞として、デバイスを問わず広く浸透している様子がうかがえます。

次に利用経験率が高いサービスとして、Microsoft Copilot、会社独自のチャットAIが続きます。これらはChatGPTとは対照的に、PCにおける利用経験率が他デバイスよりもやや高い点が特徴的です。CopilotはウェブブラウザであるEdgeに統合されていることや、会社独自のチャットAIは会社のツールや業務システムと連携している場合が多いことなど、PC作業との親和性の高さが一つの要因となっていることが推測されます。

続くGoogle Geminiは、スマートフォンにおける利用経験率が最も高く、また、デバイス間の差異が比較的小さいことが特徴的です。Geminiはスマートフォンを通じた生成AIの活用を訴求するTVCMなどを展開しており、こうした日常生活におけるスマートフォン利用を意識したアプローチが、ビジネスシーンにおいてもスマートフォンからの利用を後押ししている可能性が考えられます。

最後に、それぞれのデバイスからどのような目的で生成AIが利用されているのかについて、その違いを見ていきます(図表3)。

図表3

生成AIの利用目的(デバイス別)

最も利用が多い目的は「情報収集・探索」であり、PC(57.6%)とスマートフォン(54.7%) の両デバイスで同程度利用されていることが分かりました。「情報収集・探索」では、必ずしも長文の入出力が必要なく、時にはカメラやマイクで手軽に情報をインプットしたい場面もあるため、スマートフォンの利便性が活かされ、PCと同様に活用が進んでいると考えられます。

一方、「テキスト生成」(PC:53.2%)「テキスト処理」(PC:40.5%)「アイデア出し・壁打ち」(PC:33.4%)「スライド資料や書類の作成」(PC:31.7%)といった利用目的においては、PCがスマートフォン・タブレット端末を大きく上回っています。これらの業務では、長く複雑な指示や試行錯誤、生成内容の編集・修正が求められる点が共通しており、キーボード入力や広い画面の点でスマートフォンよりも有利なPCでの利用が中心になっている可能性があります。

以上のデータから、ビジネスシーンにおいては依然としてPCを通じた生成AI利用者が最も多いことが明らかになりました。一方で、スマートフォンからは「情報収集・検索」のための利用が多くみられるなど、業務環境やタスクの性質に応じた独自の活用も見られます。複雑なタスクは引き続きPCで、PCが使えないシーンや手軽なタスクではスマートフォンで、といった形で、今後はさらにデバイスによる使い分けが進むことが考えられます。

2. 業務におけるポテンシャル:業務実態と活用状況から探るインサイト

前章までで、サービスやデバイスなど、生成AIを取り巻く環境は広がりを見せていることが分かりました。では、ビジネスの現場では、今後どのような業務での活用と発展が期待されるのでしょうか? ここからは視点を変え、普段の業務内容と生成AIの活用状況から、その可能性を探ります。
図表4では、横軸を「普段その業務を実施している割合」、縦軸を各業務の実施者における「その業務での生成AI活用割合」として、生成AI関連する業務を散布図上に表現しました。

図表4

各業務の実施率と生成AI活用率

図表4では、右に位置しているほど多くの人が実施しており、上に位置しているほど現在生成AIが活用されている業務です。すなわち、右下に位置する業務ほど、業務改善ニーズのボリュームと、今後の活用浸透による伸びしろが大きいことが示唆されます。

この図において、最も左上に位置している「コード・プログラムの作成・補助・チェック」は、業務を実施している人は限られるものの、既に生成AIの有効活用が進んでいる業務です。開発ツールへと統合・最適化されることで、コードの自動生成・補完・バグ修正など、チャットよりもさらに直接的に業務を支援可能な生成AIサービスが提供されていることが背景にあると考えられます。

それとは対照的に、右下に位置している「スライド資料や書類の作成」は多くの方が業務を実施している一方で生成AIの活用は進んでいない、これからの発展が期待される領域であると言えるでしょう。現状の生成AIは、テキストや画像を高い品質で生成できても、ビジネスで求められる特定のフォーマットへの整形や調整にはまだ課題があり、多くで人間の作業を必要とします。加えて、機密性の高いデータをAIに入力することへのセキュリティリスクも、活用を妨げる一因となっています。これらの課題が解決されれば、多くのビジネスパーソンが生成AIによる効率化の恩恵を受けられるようになるはずです。

さらに、生成AIの普及は既存業務の効率化のみならず、新規業務への参入障壁を下げる可能性も秘めています。例えば、画像生成AIの進化により、デザインスキルがない人でも多様なコンテンツを作成できるようになりつつあります(それと同時に、著作権などの問題も浮き彫りになっていることにも注意が必要です) 。また、我々が普段話しているような言葉(自然言語)でデータ分析を指示できるようになれば、プログラミング知識がないビジネスパーソンでも、データに基づいた意思決定をより手軽に行えるようになるかもしれません。生成AIの利用がさらに浸透する中で、私たちの働き方や求められるスキルも、今後大きく変化していくことが予想されます。

3. 生成AI利用の「きっかけ」分析:普及に向けた組織的アプローチの重要性

便利なツールや環境を整えても、それだけで生成AIの利用が組織全体に広がるわけではありません。 より実践的な利用促進のヒントを得るために、現在業務で生成AIを利用している方に、使い始めたきっかけを尋ねました(図表5)。

図表5

生成AIの利用きっかけ

利用のきっかけとしては、「社内で推奨された」ことが最も多く挙げられ ました(24.3% )。他にも「社内で利用されていた(16.4%)」などの社内環境・働きかけがきっかけとなっているケースが見られました。一方で、「業務を効率化したかった(17.7%)」「自分で興味を持ち、試してみた(15.8%)」といった自発的な動機・ニーズが上位に並びました。こうした傾向は 、新しい技術を積極的に取り入れていくアーリーアダプター層の特徴を強く反映したものと考えられます。
このように、現時点では「組織的な後押し」と「個人の意欲」の両方が、生成AIの利用を後押ししているようです。今後さらに普及を進めるためには、個人にとどまらず、組織的な取り組みの重要性がさらに高まっていくことが想像されます。
したがって、生成AIサービスを提供する企業、社内での活用を推進したい企業の双方が、単にツールを提供するだけでなく、現場の利用モチベーションを高めるための仕組みやサポートが、今後の普及の鍵となります。前回の調査から判明した参入障壁(「導入すべき業務がない・分からない」「人材の不足」「導入の進め方が分からない」など)に対応するためにも、具体的な活用イメージや適用課題を明確にできるような情報提供と丁寧なサポートが、引き続き重要となってくるでしょう。

以上の調査結果から、生成AIについて①ビジネス利用ではPCが中心だが、スマートフォンにも独自の活用スタイルが見られること②業務によって活用度合いは異なり、特に「資料作成」で今後の活用ポテンシャルが見込まれること③利用開始には社内での推奨など組織的な後押しが有効であり、今後の普及においてもその重要性が高いことが分かりました。

この記事は、インテージの生成AI実態調査プロジェクトにて行った調査結果をご紹介しました。
本プロジェクトでは、インテージの豊富な調査ノウハウとパネルデータを活用し、生成AI市場の現状と展望を包括的な視点で探究しています。
今後も定期的な調査・分析を継続し、新たな知見と、より深い価値ある情報をご提供する予定です。ぜひご期待ください。


【調査概要】
(スクリーニング)
調査方法:Web調査
調査地域:日本全国
対象者条件:20~65歳男女、会社員・自営業などの有職者(パート・アルバイトは含めず)
標本サイズ:n=20,137
調査実施時期:2025年3月14日(金)~2025年3月17日(月)

(本調査)
調査方法:Web調査
調査地域:日本全国
対象者条件:スクリーニング回答者のうち、ビジネス(組織・個人)で生成AIを導入済/検討予定の方
標本サイズ:n=2,179
ウェイトバック:なし
調査実施時期:2025年3月24日(月)~2025年3月26日(水)

著者プロフィール

松田 陽介(マツダ ヨウスケ)プロフィール画像
松田 陽介(マツダ ヨウスケ)
株式会社インテージ
エクスペリエンス・デザイン本部 プラットフォーム・データ・ビジネス部 データアナリスト

2022年にインテージへ入社。
メディア・プラットフォーマー担当のデータアナリスト兼リサーチャーとして、広告コミュニケーションやデジタル領域を中心とした調査とデータ解析に携わる。

株式会社インテージ
エクスペリエンス・デザイン本部 プラットフォーム・データ・ビジネス部 データアナリスト

2022年にインテージへ入社。
メディア・プラットフォーマー担当のデータアナリスト兼リサーチャーとして、広告コミュニケーションやデジタル領域を中心とした調査とデータ解析に携わる。

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