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ログで見る生成AI利用の変遷~生成AI利用実態調査2回目  生活者編③

生成AIの登場は、テクノロジーの世界にとどまらず、私たちの暮らしや社会、そして価値観にも大きな影響を及ぼしつつあります。インテージでは、生成AIが日常生活およびビジネスシーンでどのように受け入れられ、活用されているのかを明らかにするため、2024年10月に全国の生活者・ビジネスパーソンを対象とした初回調査を実施しました。それから約半年が経過した2025年3月、2回目の同調査を行い、生成AIに対する認知・理解・利用の実態がどのように変化したのかを改めて確認しました。

このシリーズでは「生活者編」「ビジネスパーソン編」、それぞれの視点から生成AIの現状と変化をお届けします。これまでの生活者編第1回、第2回では、アンケート調査を通じて人々の意識から生成AIの現在地を読み解いてきました。最終回となる今回は、メディア接触に関するログデータの分析を通じて、生成AI利用のトレンドや直近の利用実態により詳細に迫ります。

1. 生成AI利用は直近1年で大きく成長、Gemini・Copilotにも選択肢が広がる

今回の分析では、生成AIサービスの利用の多くを占める主要な3つのサービス(ChatGPT、Microsoft Copilot、Gemini)を対象として利用率の集計を行いました。まず初めに、PCのブラウザを通じた3サービスの利用率推移を見ていきましょう(図表1)。
なお、Copilotについては、2024年7月から2025年2月の期間では、ブラウザの挙動に由来する特定ページへのアクセス増加に伴い、本来の利用状況よりも高い利用率が計測されました。そのため、該当期間中のCopilotおよび3サービス合計での利用率は参考値として扱っています。2025年3月では、当該要因の影響は解消され、実際に近い利用率が示されていると考えられます。

図表1

生成AI利用率推移(PCブラウザ)

PCブラウザにおける生成AIの利用は拡大を続けており、2025年3月時点における主要3サービス合算での利用率は9.1%に達しました。時系列でその推移を確認していくと、2022年末の ChatGPTリリース直後から利用率は急激に増加し、2023年4月に一度ピークを迎えました。そこから約1年間横ばいで推移しましたが、2024年春頃から再び上昇に転じ、それ以降は以前のピークを上回る高い水準が続いています。
サービス別に見ても、2025年3月における利用率は、ChatGPTで5.8%、Geminiで2.2%、Copilotで2.1%となっており、いずれのサービスでも1年前と比較して利用率は増加しています。リリース当初から市場をけん引していたChatGPTに加え、現在ではGeminiやCopilotも存在感を増しており、これらのサービスも市場全体の成長を後押ししていることがうかがえます。

次に、同じ3つの生成AIサービスについて、スマートフォン(Android)アプリを通じた利用率の推移(図表2)を見ていきます。

図表2

生成Ai利用率推移(スマートフォン(Android)アプリ)

生成AIのAndroidアプリは、ChatGPTがWebブラウザ版から一足遅れて2023年7月に提供開始となりました。リリース以降、しばらくは利用率の横ばいが続きますが、PCブラウザ版と同様に2024年の春頃から上昇傾向に転じ、2025年3月時点で5.7%に達しました。
サービス別に見ると、スマートフォンアプリにおいてもChatGPTが他のサービスを大きく引き離し、2025年3月における利用率は4.3%となりました。次いで、Gemini(1.4%)、Copilot(0.6%)となっており、これらのサービスも直近でわずかながら利用率の上昇が見られます。
連載の第一回記事でアンケート結果から分析したように、スマートフォンでは情報検索の利用率が高いなど、デバイス特有の生成AI活用法も見受けられます。現時点ではPCブラウザが先行しているものの、スマートフォンならではの利便性と活用シーンがさらに開拓されれば、将来的にPCを追い抜き、生成AIへの主要なアクセス方法となるかもしれません。

このように、PCブラウザ・スマートフォンアプリともに、生成AIの利用は直近1年間で拡大傾向にあることが確認されました。また、サービス別に見ると、依然としてChatGPTが利用の中心ではあるものの、CopilotやGeminiも徐々にユーザー数を伸ばしていることが明らかになりました。

2. 世代別に見るAI活用:10-20代のトレンドと全世代への浸透

本章では、第一章で概観した生成AIの利用率推移を性年代別に分解し、さらに詳しく分析していきます。
まず、PCブラウザにおける性年代別の利用率推移を示します(図表3)。

図表3

性年代別 生成AI利用率推移(PCブラウザ)

図表3を見ると、全期間を通じた傾向として、男女ともに10-20代の利用率がほかの年代よりも高く、また、同年代間の比較においては男性が女性を上回っていることが確認できます。
10-20代では男女ともに、3月・9月に利用が減少する周期的な利用傾向が見られています。これは、学生を多く含むこの層において、学業スケジュールと連動した動きが反映されているものと考えられます。
一方、10-20代と比較すると、30-40代および50-60代は男女ともに利用率の推移が緩やかであることが見て取れます。中でも、男性30-40代と男性50-60代は2023年の4月にピークを迎えその後若干減少するという、図表1と同じようなパターンがみられています。これらの層には、最初期のブームに乗ってChatGPTを利用してみたものの、定着には至らなかったユーザーが多いのかもしれません。
このように、性年代によって推移に若干の違いは見られたものの、すべての年代で2024年春ごろから利用率は上昇しており、生成AIの利用が幅広い層にまで広がりつつある様子がうかがえます。

次に、スマートフォンアプリにおける性年代別の利用率推移を見ていきましょう(図表4)。

図表4

性年代別 生成AI利用率推移(スマートフォン(Android)アプリ)

スマートフォンアプリ経由の生成AI利用においても、PCブラウザと同様の傾向が見られ、男女ともに10-20代の利用率が他の年代より高く、同年代内では男性が女性を上回っています。PCブラウザと比較すると、全期間を通じていずれの性年代でも利用率の変動が比較的小さく、着実に利用者を増やし続けていることが分かります。
その一方で、PCブラウザのような10-20代の周期的な利用が、スマートフォンアプリでは確認されませんでした。この違いは、PCブラウザ版が学業スケジュールと連動して活用されることが多いのに対し、スマートフォンアプリ版はより日常的なシーンで継続的に活用されている可能性を示唆しています。実際に、第1回の記事においては、スマートフォンを通じた生成AIの利用目的として「ネットニュース記事の要約」「移動・交通手段の提案・相談」「悩み相談・カウンセリング」が特徴的であることをアンケート結果から紹介しました。これら、日常的に気軽にやり取りするような用途は、現時点では発展途上ですが、一度定着すればその後も継続利用してくれる可能性を秘めているでしょう。
ここまでの分析から、生成AIの利用率推移を性年代別に見ると、男女ともに特に10-20代が先行しつつも、幅広い年代で徐々に浸透が進んでいることが明らかになりました。また、PCブラウザとスマートフォンアプリを比較すると、特に10-20代の利用トレンドには違いがみられ、PCブラウザでは主に学業関連の用途に、スマートフォンアプリではより日常的な用途に活用されていることが推察される結果となりました。

3. サービス別ユーザープロファイル:CopilotとGeminiで異なる利用像

これまでの章では、主要な生成AIサービスの利用率や性年代別の利用率の推移を確認してきました。本章ではさらに一歩進み、直近2025年3月におけるPCブラウザを通じた各サービス利用者の特徴について深掘りしていきます。
はじめに、主要3サービス利用者の性年代構成比、および利用時のブラウザ比率を見ていきましょう(図表5)。

図表5

3サービスいずれかを利用したユーザー全体では、第二章で示したように、利用率の高い男性や10-20代の占める割合が高くなっています。利用ブラウザに目を向けると、Chromeを通じた利用者が56.7%、Edgeを通じた利用者が44.5%という構成になっています。

個別サービスごとに見ていくと、最もシェアの大きいChatGPTの利用者は、性年代構成比・利用ブラウザ比率ともに、生成AIサービス全体の傾向と近いことが分かります。特に、男女ともに10-20代の構成比が他のサービスより高く、若年層を中心に支持を集めていることがうかがえます。

ChatGPTとは対照的に、Copilotの利用者は男女ともに50-60代の構成比が最も高く、また女性の割合が約4割を占めるなど、幅広い性年代から利用されている様子がわかります。また、利用ブラウザにおいては、Edgeが91.1%とChromeを大きく上回りました。EdgeではTOP画面へのCopilotボタンの配置や、検索結果へのCopilotの回答の表示など、Copilotへの導線が強化されています。このように、Windowsの標準ブラウザであるEdge上で手軽にアクセスできる環境が、テクノロジーへの関心が低い層も含めた多くの世代に利用を広げている一因かもしれません。

Geminiは、比較的様々な年代からバランスよく支持されていますが、3サービスの中でもっとも男性の割合が高く、8割近くを占めていることが特徴的です。また、Chromeを通じた利用者が80.1%を占めていることも特徴的です。Copilotと同様に、Geminiも「AIによる概要」をGoogle検索の結果とともに表示するなど、検索ユーザーに対して身近に感じてもらうための取り組みを進めています。

次に、各生成AIサービスの併用状況について見ていきましょう。図表6は、各サービスのユーザーの重なりを表すベン図と、併用率(当該サービスユーザーのうち、他の2サービスも利用しているユーザーの割合)をまとめたものです。ベン図では、それぞれの円の大きさが各サービスのユーザーボリュームに、また、それぞれの円の重なった部分の面積が、両方のサービスを併用するユーザーボリュームに対応しています。

図表6

生成Aiサービス利用者の重なり(PCブラウザ)

左側のベン図からは、図表1で確認されたように、ChatGPTの利用者数が最も多く、次いでCopilotとGeminiがほぼ同じ程度ユーザー規模であることが改めて見て取れます。また、サービス同士の重なりは比較的小さく、複数のサービスを併用しているユーザーは限定的であることも分かります。その中でも、ChatGPTとGeminiの2つを併用するユーザーが全体の0.7%で最も多く、また全体の0.03%と非常に少数ではあるものの3サービスすべてを併用しているユーザーも存在しています。
続いて、右側の表からは、ChatGPTユーザーの15.3%、Copilotユーザーの16.1%、そしてGeminiユーザーの37.2%が他の2サービスも併用していることが分かります。GeminiユーザーはChatGPTを中心に他サービスと併用する割合が高くなっており、結果の比較や目的に応じた使い分けなど、より進んだ使い方をしている可能性が示唆されます。一方、Geminiとユーザー規模が近いCopilotですが、併用率はGeminiほど高くありません。Copilotについては図表5で見たように他サービスとユーザー層が異なることや、内部ではChatGPTと同じGPTモデルを利用しておりChatGPTと併用する必然性が低いことが併用率の低さに影響していると考えられます。

ここまでで、各サービスのユーザーの特徴について見てきました。CopilotとGeminiは直近のユーザー規模は同程度であるものの、CopilotはEdgeを利用する幅広い層から支持されているのに対し、GeminiはChrome利用の男性が多く、ChatGPTを中心とした他サービスとの併用率が高いなど、その利用者層や利用の仕方には違いもみられました。

以上の分析結果から、①PCブラウザ・スマートフォンアプリの双方において、直近1年間での生成AI利用率は上昇傾向にあり、ChatGPT以外にCopilotとGeminiも利用者数を伸ばしていること、②男性および10-20代が全体の利用をリードしつつも、すべての性年代で徐々に利用が浸透してきていること③Copilotは幅広い層にも浸透している一方、Geminiは男性比率が高く併用率も高いなど、サービスごとの利用者像にも差が見られること、がわかりました。あわせて、「ビジネスパーソン」視点の調査結果もご一読ください。

この記事は、インテージの生成AI実態調査プロジェクトにて行った調査結果をご紹介しました。
本プロジェクトでは、インテージの豊富な調査ノウハウとパネルデータを活用し、生成AI市場の現状と展望を包括的な視点で探究しています。
今後も定期的な調査・分析を継続し、新たな知見と、より深い価値ある情報をご提供する予定です。ぜひご期待ください。


調査概要_生活者編
【i-SSP®(インテージシングルソースパネル®)】
当社の主力サービスであるSCI®(全国消費者パネル調査)を基盤に、同一対象者から新たにパソコン・スマートフォンからのウェブサイト閲覧やテレビ視聴情報に関するデータを収集するものです。当データから、パソコン・スマートフォン・テレビそれぞれの利用傾向や接触率はもちろん、同一対象者から収集している購買データとあわせて分析することで、消費行動と情報接触の関係性や、広告の効果を明らかにすることが可能となります。

著者プロフィール

遠藤 帆乃佳(えんどう ほのか)プロフィール画像
遠藤 帆乃佳(えんどう ほのか)
株式会社インテージ
エクスペリエンス・デザイン本部 プラットフォーム・データ・ビジネス部

2024年インテージに入社。大学ではデータ解析について学んでいた。
現在は、プラットフォーマー担当のリサーチャーとして市場調査や広告効果測定、データ分析業務などに携わっている。

株式会社インテージ
エクスペリエンス・デザイン本部 プラットフォーム・データ・ビジネス部

2024年インテージに入社。大学ではデータ解析について学んでいた。
現在は、プラットフォーマー担当のリサーチャーとして市場調査や広告効果測定、データ分析業務などに携わっている。

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