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ビジネスにおける生成AIによる情報収集の行動変化と実務貢献

2022年後半の登場から約3年が経過した現在、生成AIはすでに私たちの日常生活やビジネスに、様々な側面から影響を与え始めています。インテージでは、その利用実態を明らかにするべく継続的な調査を実施し、急速な進化を続ける生成AIの現在地について、最新のデータに基づいた詳細な分析を行っています。
このシリーズ では生活者とビジネスパーソン、それぞれの視点から生成AIの現状と変化をお届けします 。連載第3回は、「ビジネスパーソン編」を全2回で構成しており、第2回となる今回は、利用目的、特に情報収集・検索行動の変化の観点から、ビジネスシーンにおける生成AIの利用実態を深堀りしていきます。あわせて生活者編 もぜひご一読ください。

1. 生成AIの広がりと限界:汎用的利用の拡大と、専門領域の停滞

本章では、これまでの3回(2024年10月、2025年3月、2025年10月)の調査結果をもとに、生成AIがどのような目的で利用されているかを確認します。(図表1)

図表1

生成AIの利用目的

いずれの利用目的も増加傾向にありますが、依然として「情報収集・探索」(46.6%)が最多となっています。次いで、第1回調査から一貫して「テキスト生成」(36.0%)、「テキスト処理」(35.1%)が上位を占めています。生成AIは「情報収集」と「テキスト生成・処理」といった、インプット・アウトプット効率化 を中心とした汎用領域で主に活用されているといえます。
一方で「データ分析」(17.0%)、「コード生成」(11.6%)といった、専門性・機密性の高い領域においては、利用率の伸びが鈍化しています。これらの領域では、実務上のニーズやセキュリティ要件といった課題から、浸透が停滞している可能性があります。

次に、利用経験者の中で、生成AIが日々の業務にどの程度定着しているかを見ていきます(図表2)。

図表2

生成AIの利用頻度(利用目的別)

「情報収集・検索」で生成AIを使う人の約8割が週1日以上、約4割が週4日以上利用しており、ヘビーユーザーが多く存在することが分かります。「テキスト生成」(67.5%)や「テキスト処理」(75.1%)も高頻度で利用されている傾向が見られます。これらの汎用的な機能は、高い利用率(図表1)と高い利用頻度(図表2)の両面から、日常的な業務サポートとして定着しつつある ことがわかります。
利用率の伸びが停滞している「データ分析」「コード生成」でも、週1日以上利用が半数以上、週4日以上利用が2割を超えています。専門領域では、特定の業務で生成AIを使いこなすヘビーユーザーによる活用が進んでいると考えられます。

2. 検索だけじゃない、AIが変えた“調べ方”

では、生成AIの活用が特に進んでいる「情報収集・探索」について、ビジネスパーソンの実際の情報収集・検索行動にどのように変化をもたらしているのでしょうか。情報の深さに応じた5つのシーンごとに探っていきます (図表3)。

図表3

情報収集・検索時のシーン(情報の深度別)

シーン別で実態を見てみましょう。図表4は、業務で情報収集・検索を行う際に利用するインターネット上の情報源の利用率上位5つまでを示したものです。

図表4

情報収集・検索時に利用するインターネット上の情報源(MA、情報の深度別)

いずれのシーンにおいても「公式サイト」と「検索結果のタイトルや説明文」がトップ2に入っており、信頼性の高い公式サイトや、そこへ誘導する検索結果のタイトル・説明文といった従来の情報源が依然として高い利用率を示しています。
一方で、生成AIサービスもすべてのシーンで上位5 項目に入り、特に「基本的な知識を浅く理解する」(21.6%、3位)や「事例やノウハウを調べる」(26.3%、3位)では2割超と存在感を示しています。つまり、従来手法を基盤としつつ、生成AIが検索行動に組み込まれ始めており、「検索+AI」というハイブリッド型の情報収集が進行しているといえます 。

では、生成AIが様々な情報収集シーンで利用されるなかで、従来の検索手法と比較してどのように変化しているのでしょうか。過去1年間における生成AIサービスの利用割合の変化を見てみましょう(図表5)。

図表5

情報収集・検索時の生成AI利用割合変化

過去1年間に「利用が増えた」人の割合(「増加した」「やや増加した」)は、「最新の情報を得る」以外のすべてのシーンで半数近くに達しています。特に「基本的な知識を浅く理解する」では5割に上りました。このことから、情報収集・検索における生成AIサービスの利用 割合は全体的に増加傾向にあり、従来の検索手法を補完する形で活用が広がっています 。
ただし、「最新の情報を得る」シーンでは 増加傾向が比較的低い水準にとどまっています。依然として検索結果・Webサイトなどの従来の検索手法と、リアルタイム性の高いSNSが主流であることが考えられます。

続いて、生成AIがどのように評価されているのかを分析します。
ここでは、情報収集・検索における生成AIの利用経験者を対象に、情報深度別に利用して「良かった点(ポジティブ要因)」および「課題・不満を感じた点(ネガティブ要因)」をそれぞれ尋ねました。まずは、ポジティブ・ネガティブ要因の全体平均上位5項目を整理した結果 を示します(図表6)。

図表6

情報収集・検索時の生成AI利用に関する評価(TOTAL)

ポジティブ要因は、「さまざまな情報が要約して整理されていた」「情報の出典や根拠が明示されていた」など、情報の構造化や整理性に関する評価が上位に挙がりました。ネガティブ要因では「出力内容の真偽確認に手間がかかった」「質問の意図をうまく伝えにくかった」など、操作上の難しさや精度面への懸念が共通して見られます。

ここでは、各情報深度(シーン)における評価を定量的に比較します(図表7)。評価スコアは、各シーンにおいて、ポジティブ評価上位5項目の平均割合から、ネガティブ評価下位5項目の平均割合を差し引いた差分です。この評価スコアが高いほど、このシーンにおける生成AIサービス利用への満足度が高いと読み取れます。

図表7

情報収集・検索時の生成AI利用に関する評価(情報の深度別)

各シーンを比較すると、「基本的な知識を浅く理解する」の評価が高く、「専門的・限定的な情報を深く調べる」は他のシーンの評価には及んでいないことがわかりました。
詳しくみると、「基本的な知識を浅く理解する」といった深度が中程度のシーンでは、生成AIが従来の検索を補完しつつ、知識整理や実務ノウハウの把握に役立っています。一方、「専門的・限定的な情報を深く調べる」シーンでは、出力の信頼性や正確性への課題意識が根強いことがうかがえます。つまり、生成AIは現状、「情報の整理・要約支援」に強みを発揮しているものの、「高度で専門的な情報探索」にはまだ改善の余地があるといえます。

次章では、このような評価の背景にある具体的な活用シーンと成果を整理し、ビジネスにおける生成AIの位置づけの変化を見ていきます。

3. 生成AIの成果と課題:効率化は進むが、大きな変革はこれから

ビジネスパーソンが生成AIに対する期待(図表8)と、それに対する達成率(図表9)を比較します。

図表8

生成AI利用に対する期待

生成AIに対する期待値は、「時間短縮」が51.9%と過半数に達しており、第1回調査から継続して最も高い期待項目です。次いで、「ルーチンワークの自動化」(29.9%)、「アイディア創出・改善」(28.9%)、「コンテンツ作成の効率化」(26.4%)が上位に入っています。しかし、「時間短縮」と比較すると、その期待度の差分の大きさから、創造的な業務や定型業務の自動化といった領域では、依然として期待の高まりが限定的であることがうかがえます。

図表8の期待項目に対応し、達成率を見ると、一部の効率化に関する項目では明確な成果が表れていました。(図表9)

図表9

生成AI利用に対する期待の達成率

最も期待されていた「時間短縮」は達成率が4割を突破しています 。また、「アイディア創出・改善」と「コンテンツ作成の効率化」も、達成率がいずれも3割に達し、前回調査より上昇しています。生成AIがこれらの領域で一定の成果を生み始めていることが考えられます。
一方、多くの項目では達成率が1~2割台にとどまり、期待が2番目に大きい「ルーチンワークの自動化」は、達成率が22.7%と期待に届いていません。さらに、「人件費削減」の達成率は第2回調査から減少傾向にあります。この背景には、生成AIの利用には複雑な指示出しや結果の確認が欠かせず、人的確認・検証が時間短縮効果を相殺している状況が発生していると考えられます。
したがって、生成AIは業務への影響はまだ限定的であり、さらなる成果を得るためには、生成AI出力品質の向上に加え、利用者側の対話・検証スキルの習熟が引き続き重要な鍵となるでしょう。

以上の調査結果から、生成AIについて以下の点が明らかとなりました。
①情報収集など汎用的な領域では利用が定着している
②生成AIは様々な情報収集シーンにおける従来の検索手法を補完する効率化ツールとして活用されている
③生成AIは時間短縮など効率化ツールとしては期待される役割を達成しつつあるが 、それ以外の広範な影響はまだ限定的である
今後、生成AIは情報収集の効率化に留まらず、より実務に根差した役割を担うツールへと進化していくことが期待されます。
あわせて、「生活者」視点の調査結果もご一読ください。

この記事は、インテージの生成AI実態調査プロジェクトにて行った調査結果をご紹介しました。
本プロジェクトでは、インテージの豊富な調査ノウハウとパネルデータを活用し、生成AI市場の現状と展望を包括的な視点で探究しています。
今後も定期的な調査・分析を通じ、生成AIと社会の関係性の変化を長期的に観察することで、新たな知見とより深い価値ある情報をご提供する予定です。ぜひご期待ください。


調査概要_ビジネスパーソン編
【調査概要】
(スクリーニング)
調査方法:Web調査
調査地域:日本全国
対象者条件:20~65歳男女、会社員・自営業などの有職者(パート・アルバイトは含めず)
標本サイズ:n=20,790
調査実施時期:2025年10月17日(金)~2025年10月20日(月)

(本調査)
調査方法:Web調査
調査地域:日本全国
対象者条件:スクリーニング回答者のうち、ビジネス(組織・個人)で生成AIを導入済/検討予定の方
標本サイズ:n=2,115
ウェイトバック:あり
調査実施時期:2025年10月21日(火)~2025年10月23日(水)

著者プロフィール

廖 婉伊(リョウ ワンイ)プロフィール画像
廖 婉伊(リョウ ワンイ)
株式会社インテージ
マーケティングパートナー第2本部 企画営業4部

2025年インテージへ入社。
メディア・プラットフォーマー担当のリサーチャーとして、市場調査や広告効果検証などに携わる。

株式会社インテージ
マーケティングパートナー第2本部 企画営業4部

2025年インテージへ入社。
メディア・プラットフォーマー担当のリサーチャーとして、市場調査や広告効果検証などに携わる。

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