

2022年後半の登場から約3年が経過した現在、生成AIはすでに私たちの日常生活やビジネスに、様々な側面から影響を与え始めています。インテージでは、その利用実態を明らかにするべく継続的な調査を実施し、急速な進化を続ける生成AIの現在地について、最新のデータに基づいた詳細な分析を行っています。
このシリーズでは生活者とビジネスパーソン、それぞれの視点から生成AIの現状と変化をお届けします。連載第3回は、「生活者編」を全2回で構成しており、第2回となる今回は、検索ツールとしての利用に焦点を当てて解明します。「ビジネスパーソン編」もあわせてご一読ください。
はじめに、全国 18~75 歳の生活者を対象としたアンケート調査から、人々は現在どのような目的で生成AIを活用しているのかを見ていきましょう(図表1)。
図表1

2025年の3月と10月の調査結果を比較すると、利用目的の上位項目に大きな変動はなく、「情報収集・調べもの」「文章の作成」「文章の要約」「翻訳」の4項目が突出しています。前回の記事で触れたような「悩み相談」も増加傾向にはありますが、全体的には依然としてテキスト処理に関連するタスクが主要な用途となっています。
その中で特筆すべきは、トップの「情報収集・調べもの」です。半年間で27.0%から37.2%へと10ポイント以上伸長し、他の用途を大きく引き離す結果となりました。以前はハルシネーション(事実に基づかない情報)のリスクから利用に慎重な姿勢もうかがえましたが、最近ではWeb検索を通じて最新の情報を参照し、ソース付きで回答する機能も一般化しました。また、検索エンジンやブラウザへと統合され、従来型検索の延長線上で生成AIの検索結果に自然に触れる機会が増えたことも、利用拡大の要因であると考えられます。
このように生成AI検索が増加する中で、ユーザーは具体的にどのような情報を調べているのでしょうか。図表2は、縦軸を「調べものをしている割合」、横軸を「調べものが不便・面倒に思う割合」として、さまざまな情報ジャンルを散布図で表現しています。各プロットの色は生成AIの活用度を表します。
図表2

この図からは、ジャンルによって生成AIの活用度に差があり、特に生成AIの活用度が高い青色点は、チャートの上部と右側の2つの領域に分かれていることが確認できます。
チャートの上部、すなわち調べものをする人が多いジャンルとしては、「ニュース」「移動・交通手段」など、日常生活におけるタスクが挙げられます。ここでは、日常的に高頻度で行う検索行動を、生成AIによる要約などを通じて効率化したいニーズがあるのではないでしょうか。
反対に、チャートの右側、すなわち調べものが不便・面倒だと感じられているジャンルには「資産形成・投資」「学習・自己啓発」が含まれます。調べものにおける負荷が高いこれらのジャンルにおいては、専門性の高い難解な情報を生成AIの力でかみ砕いて理解を深める使用方法が想像できます。
次に示す図表3は、生成AIの活用度が高いいくつかのジャンルにおいて、生成AI検索、従来型検索(通常の検索結果画面やWebサイト)、SNS検索の3カテゴリの利用状況を比較したものです。
図表3

従来型検索はすべてのジャンルで8割程度の利用率となり、依然として情報収集方法の主流であることが確認できます。また、SNS検索はエンタメ領域で利用率が最も高く、単に情報を集めるだけでなく、それを共有するコミュニティとしての側面も強いことが推察されます。 対する生成AI検索は、現時点ではメジャーな検索方法とは言えません。しかし、他ジャンルでの利用率は20%台であるのに対し、「健康」での利用率は41.4%と突出して高く、他の検索とは異なる独自の利用傾向を示しました。また、アンケートの自由回答からは、「健康」と関連した下記のような利用方法が見られました。
・セカンドオピニオンについての相談に乗ってもらった(40代男性)
・身体の不調を相談した時寄り添ってくれる(60代女性)
・健康関連、薬やサプリの飲み合わせ等(70代男性)
(原文ママ)
これらの回答から、生成AIは単なる検索ツールにとどまらず、相談相手としての役割も果たしていることがうかがえます。対話形式の生成AIは、細かい症状や個別の状況を伝えやすく、よりパーソナライズされた情報を得られることが活用の背景にあるのかもしれません。
一方で、情報の正確性が重要視される健康分野においては、生成AIによる誤診・誤情報は直接的な健康被害にも発展し得る重大な問題です。その利便性とリスクを両面から理解し、安全な利用の枠組みを社会全体で確立することが求められます。
ここからは、具体的な情報ジャンルではなく、情報収集のシーンや深度ごとに、検索ツールとしての生成AIの利用実態を分析していきます。図表4は、直近1か月の検索行動において、生成AI検索と従来型検索のどちらをより多く使っているかを図示したものです。
図表4

全体を通して、「生成AI検索の方が多い」と「生成AI検索と従来型検索が同じくらい」を合わせた回答者は、多くのシーンで約半数に達していることが分かります。生活者全体の一般的な普及率においてはまだ途上ですが、生成AIを活用している層に限れば、すでに従来型検索と併用して高頻度で活用しているユーザーも多いようです。
次にシーン別に比較すると、「基本的な知識の浅い理解」で生成AIの活用割合が最も多く(38.5%)、それよりも簡易的な「最新の情報検索」では相対的に活用割合が少ない(27.9%)ことが分かります。タイムリーなニュースや速報性は従来の検索エンジンが有意な一方、「概要を知りたい」「ざっくり理解したい」といった情報の整理・要約が求められる場面では、生成AIが持つ価値を発揮しやすく、その存在感が増しつつあるようです。
このように生成AIの活用が進む中、その入り口となる機能も多様化しています。通常のチャット機能(ChatGPT等のサイト内で行う対話)に加え、網羅的な情報収集とレポーティングを行うDeep Research(ディープリサーチ)機能も情報収集での活用が可能です。また、検索結果の概要機能や対話検索機能を通じて、特定のサイトを経由しなくてもブラウザのトップページから生成AIへアクセスすることも可能になっています。
図表5は、情報の深度ごとに利用している生成AI機能を聴取したものです。
図表5

全てのシーンで通常のチャット機能の利用が最も多く、依然として生成AI利用のスタンダードであることが分かります。
次いで、検索結果の概要機能の利用率が高い結果となりました。従来型検索の結果の中に自然に表示されることから目に触れる機会も多く、生成AIの利用の一手段となっているようです。また、生成AIと知らずに無意識に利用している方も一定数存在すると考えられるため、実際の利用率はこれよりも高いと推測されます。
Deep Research機能の利用率は全体的に低水準です。時間をかけて網羅的な検索を実施するDeep Researchは、日常的な調べものにはオーバースペックであり、浸透が進んでいない様子がうかがえます。しかし、情報の深度が増すにつれて利用率はわずかに上昇しているため、利用シーンは限定的ながらも独自のポジションを確立しつつあるのかもしれません。
ここまでで、最新情報は検索エンジン、情報の整理・要約は生成AIといったイメージがユーザーの間で形成されつつあることが分かりました。 また、タスクに応じてAIの機能を選択する動きも見られ、実用化と多様化が徐々に進展していると言えそうです。
以上の調査結果から、生活者の生成AI利用について
① 直近半年間で、「情報収集・調べもののサポート」のための利用が増加していること
② 調べ物の手段は従来型検索が依然として中心であるものの、生成AI検索は特に健康ジャンルでの利用が進むなど独自の特徴も見られていること
③ 生成AI利用者においては従来型検索と併用した高頻度ユーザーも一定程度見られ、タスクごとに機能を選択する動きもうかがえること
が確認できました。
あわせて、「ビジネスパーソン」視点の調査結果もご一読ください。
この記事は、インテージの生成AI実態調査プロジェクトにて行った調査結果をご紹介しました。
本プロジェクトでは、インテージの豊富な調査ノウハウとパネルデータを活用し、生成AI市場の現状と展望を包括的な視点で探究しています。
今後も定期的な調査・分析を通じ、生成AIと社会の関係性の変化を長期的に観察することで、新たな知見とより深い価値ある情報をご提供する予定です。ぜひご期待ください。
調査概要_生活者編
【調査概要】
(スクリーニング)
調査方法:Web調査
調査地域:日本全国
対象者条件:18~75歳男女
標本サイズ:
(第1回)n=21,255
(第2回)n=21,013
(第 3 回)n=21,093
(性別・年代・地域を母集団準拠で回収)
調査実施時期:
(第1回)2024年10月28日(月)~2024年10月31日(木)
(第2回)2025年3月17日 (月)~2025年3月21日(金)
(第 3 回)2025 年 10 月 21 日(火)~2025 年 10 月 24 日 (金)
(本調査)
調査方法:Web調査
調査地域:日本全国
対象者条件:スクリーニング回答者のうち、生成AI利用経験者の方
標本サイズ:
(第1回)n=2,156
(第2回)n=2,125
(第3回)n=2,098
ウェイトバック:生成AI利用経験者のスクリーニング構成比にあわせてウェイトバック
調査実施時期:
(第1回)2024年10月31日(木)~2024年11月5日(火)
(第2回)2025年3月24日(月)~2025年3月26日(水)
(第3回)2025 年 10 月 27日(月)~2025 年 10 月 29 日 (水)
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