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生成AIへの期待と実情~生成AI利用実態調査 ビジネスパーソン編②

近年、生成AI技術の誕生と進化は、私たちの日常生活、ビジネスに様々な変化をもたらしています。この背景のもと、インテージでは生成AIの現状と将来性の可能性を明らかにするため、生活者およびビジネスパーソンを対象とした定量調査を実施しました。生成AIと社会の関係性を多角的に理解し、その可能性と未来像を具体化する一助となることを目指しています。

このシリーズでは「ビジネスパーソン」を対象とした調査結果を全3回にわたりお届けします。
第2回は、ビジネス領域で生成AIがどのように利用されているのか、また導入に際しての障壁や課題についてより詳細に捉えます。

1. 期待は高いが、実現度は限定的

まずは、生成AIがどのような目的で利用されているかを確認します(図表1)。「テキスト生成」や「テキスト処理」といった「文章関連」のタスクが上位に位置し、また、「アイディア出し」「データ分析」も一定の割合を占めていることから、業務効率化・意思決定支援のシーンでも利用されていることが、示唆されます。

図表1

生成AIの利用目的

では、生成AIによるタスク処理は、日々の業務にどの程度定着しているのでしょうか。利用率が上位である「テキスト関連」や「情報収集・検索」は高頻度で利用される傾向があり、日常的な業務サポートとして定着していることがわかります(図表2)。

図表2

利用目的別 利用頻度

次に生成AIに対する期待と、それに対してどの程度成果を得られているか(達成率)を比較します(図表3)。期待度が高い順に上位10項目の結果を掲載しています。

図表3

生成AIに対する期待と達成状況

生成AIへの期待は 「時間短縮」「自動化」「コスト削減」などの「業務効率化」と、「アイディア創出」「データの価値最大化」などの「創造性向上」の両面に対するニーズがあります。目下の「作業」の効率化と、中長期的な「業務改善」が期待されているのでしょう。
ところが、上位の期待 に対し成果が得られていると回答した割合は2~3割程度にとどまっています。生成AIの活用(貢献)が想定通り進んでいないことが考えられます。

2. 生成AIに業務置き換えの可能性、拡大の兆し

日々の業務において一定の利用率を得ている生成AIですが、業務のどの程度まで代替可能なのでしょうか。
「今後生成AIが発展・普及した場合に、あなたの現在の業務が置き換えられると思う程度」を予想し、回答を「極小(0-25%)」「小(26-49%)」「中(50%)」「大(51-75%)」「極大(76-100%)」の5段階の置き換え度合いに分類しました(図表4)。

図表4

今後の生成AIの業務置換予想

回答のベースは、既に生成AIを導入している先駆的なビジネスパーソンとなっていますが、 生成AIによる業務の置き換え度合いを「大 ・極大」と予想する人は少数にとどまり、「職位によらず一定の業務はなくならない」との見方が多くを占めているようです。一方で、「極小」と予想したビジネスパーソンの割合は職位が高いほど大きく減少しています。職位の高いビジネスパーソンでは、生成AIの能力や将来性を深く理解し、自身の意思決定をサポートするツールとして有効活用できる可能性を認識していることが、背景にあると考えられます。

同様に、業界別の置換度予想を見てみましょう(図表5)。

図表5

業種別 今後の生成AIの業務置換予想

「ソフトウェア・情報サービス業」「金融業」などの、情報処理や分析業務が中心の業種は生成AIによる業務置換の可能性が高い傾向といえます。一方で、「建設・不動産業」「公務員・団体職員」などの現場作業や対人業務が多い業種は、5割近くが「極小」と回答する結果となりました。業種ごとに生成AIで対応できる業務、自動化が可能になる範囲が異なることがわかります。

3. スキル・人材・情報不足が障壁に、具体的な活用イメージ・事例呈示が必要

少し視点を変えて、生成AIが今後、より活用・導入を促進させるための要因、またはそれらを阻む障壁について見てみます。
まずは「導入しているものの活用ができていない」要因ですが(図表6)、上位は「スキル・リテラシー不足」「利用に関する情報不足」などがあげられ、生成AIの活用には、利用者(従業員)の利用サポート・スキルアップ・情報提供(事例の提示、デモなど)が求められていることがわかります。

図表6

生成AIの非活用要因

次に、「生成AIの導入を検討している」と回答した方に注目します。生成AIの導入目的の上位は「文章関連・情報検索」「テキスト生成」でそれぞれ約3割程ですが、「特にない」が5割を占め、生成AIへの関心はあるものの、具体的な活用イメージや適用課題が明確になっていない層が一定数存在していることがわかります(図表7)。このことから、生成AIに関する情報や具体的な活用事例などの呈示が十分になされていないことが、導入の障壁として影響している可能性が考えれられます。ビジネス領域に限らず、日常生活においても生成AIがもたらす利便性の向上、物事の効率化を実感する成功体験が、導入促進につながるでしょう。

図表7

生成AIの利用目的

最後に、生成AIを「未導入」と回答した層の傾向を見てみましょう。導入していない主な要因は、「専門知識を持つ人材の不足」「生成AIを導入するべき業務が分からない」が上位に挙げられています(図表8)。しかし、最も多かった回答は「分からない」で全体の6割を占めており、ここからも、導入に向けた具体的なイメージや道筋が依然として描けていない層が大多数であることが明らかです。具体的な活用事例の呈示や、導入プロセスに関する分かりやすいガイドラインの提供が必要だといえるでしょう。

図表8

生成AI非導入の要因

生成AIによる業務の効率化や創造性の向上への期待が高まる一方、実務への導入は限定的であり、期待と現実の間に大きな乖離が見られます。積極的な利活用が見込まれる業種や職種が存在しますが、全体として生成AIに対する情報や対応可能なスキルが不十分であるのが現実です。これらの課題を解決することで、生成AIはより広範な領域で活用されるでしょう。業務の生産性向上、意思決定の高度化が、社会全体の経済成長につながる可能性もみえてきます。
第3回は、生成AIのサービス別に利用状況を分析します。
一連の生成AI実態調査の結果はこちらからご覧いただけます。あわせて、「生活者」視点の調査結果もご一読ください。


この記事は、インテージの生成AI実態調査プロジェクトにて行った調査結果をご紹介しました。
本プロジェクトでは、インテージの豊富な調査ノウハウとパネルデータを活用し、生成AI市場の現状と展望を包括的な視点で探究しています。
今後も定期的な調査・分析を継続し、新たな知見と、より深い価値ある情報をご提供する予定です。ぜひご期待ください。


調査概要_ビジネスパーソン編
【調査概要】
(スクリーニング)
調査方法:Web調査
調査地域:日本全国
対象者条件:20~65歳男女、会社員・自営業などの有職者(パート・アルバイトは含めず)
標本サイズ:n=20,498
調査実施時期:2024年10月25日(金)~2024年10月28日(月)

(本調査)
調査方法:Web調査
調査地域:日本全国
対象者条件:スクリーニング回答者のうち、ビジネス(組織・個人)で生成AIを導入済/検討予定の方
標本サイズ:n=2,083
ウェイトバック:なし
調査実施時期:2024年10月31日(木)~2024年11月5日(火)

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