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生成AIの現状評価と使用者のニーズ~生成AI利用実態調査 生活者編③

近年、生成AI技術の誕生と進化は、私たちの日常生活、ビジネスに様々な変化をもたらしつつあります。このような背景のもと、インテージでは生成AIの現状と将来の可能性を明らかにするため、生活者およびビジネスパーソンを対象とした定量調査を実施しました。本調査を通じて、生成AIの利活用状況や便益、課題を多面的に捉え、生成AIを活用したよりよい社会を実現するための一助となることを目指します。

このシリーズでは「生活者」を対象とした調査結果を全4回にわたりお届けします。第1回では日常生活における生成AIの利用概況を、第2回では利活用の進む学生に着目し、その特徴を詳しく見てきました。第3回となる今回は、生活者が現在の生成AIに抱いているイメージを解き明かし、今後の生成AIサービスに求める改善の声やニーズに迫ります。

1. ポジティブなイメージが優勢、将来性への高い期待

はじめに、生成AIに対して生活者がどのようなイメージを抱いているかについて調査した結果をまとめました(図表1)。ここでは、生成AIに対する受け止めを分かりやすく示すため、「ポジティブ」⇔「ネガティブ」のように対照的な選択肢AとBを提示し、どちらの考えに近いかを聴取しています。

図表1

生成AIイメージ

生成AIの総合的な評価としては、過半数の56.1%が「ポジティブなイメージに近い」、または「どちらかといえばポジティブなイメージに近い」と回答しており、肯定的な見方がやや優勢であることが示されました。また、他の項目に目を向けると、それぞれ「信頼できない」「未来的な存在である」「社会に貢献する」「進化し続ける」というイメージが半数を越える結果となりました。「社会に貢献する」という意見と「社会を混乱させる」という意見はほぼ同数であり、拮抗状態にあります。また、全体的に「どちらかといえば~」という中間的な回答の割合が高いことから、生成AIに対する生活者のイメージはいまだ定まっていないことが分かります。その中でも、「進化し続ける」寄りの回答は71.4%を占め、生活者は生成AIに強い将来性を感じていることが読み取れます。

これらの結果を結び付けて考えると、「今はまだ信頼のおけない未来的な存在であるが、将来的には進化を続け、社会を変革させる可能性を秘めている」という、生成AIに対する期待と不安が共存する、生活者の姿が浮かび上がってきます。

続いて、生成AIの利用経験者に対し、実際の利用を通じて得られた感想を調査しました(図表2)。

図表2

生成AIを利用した感想

「使いやすい」⇔「使いにくい」といった、対照的な選択肢においては、すべてポジティブな回答がネガティブな回答を上回っています。23.5%のユーザーが「日常生活が便利になった」と実感していることから、現ユーザーの間では日常生活に落とし込んだ有効活用がすでに始まっているようです。
また、「今後の可能性に期待できる」という感想が34.3%と最も多く挙がっていることは、図表1の結果とも一致しています。生成AIは、現ユーザーの期待に一定応えることができていることから、利用後も変わらず将来性への期待を持ち続けているようです。

2. 日常利用の具体像見えず、求められる強力なユースケース

次に、利用経験者は生成AIをどのような目的で活用したいと考えているか、そのニーズを調査しました(図表3)。ここでは、横軸に「今までに生成AIを活用したことがある」割合、縦軸に「今までに活用したことはないが、今後生成AIを活用してみたい」割合を示しています。これにより、各目的の現在の利用状況と今後の可能性のポジションを確認することができます。

図表3

現在の利用目的と今後利用したい目的

まず、横軸に沿って今までの利用状況を比較すると、「文章の作成・改善」「情報収集のサポート」「翻訳」「文章の要約」が25%前後と突出して高いことが読み取れます。連載の第1回で述べたように、これまでの生成AIは、対話型の生成AIチャットが得意とする一般的なテキスト処理や情報収集を主目的として利用されてきたことが分かります。

一方、縦軸に目を向けると、いずれの目的においても今後の利用意向は15%未満にとどまる結果となりました。コンテンツ生成、日常生活におけるタスクの効率化、趣味の充実など、多様な選択肢を提示しましたが、今後の利用意向が突出して高いような目的は見られていません。

第一章の結果と合わせて考えると、生成AIの将来性に対する期待は高まっているものの、その可能性を日常生活の中でどう活かせるか、具体的な利用像を描けているユーザーはまだ多くないことが確認されました。これまでの生成AIの利用目的と、ユーザーが日常的に必要としていることの間のギャップが、具体化を阻む要因として考えられます。この目的のギャップを解消し、生成AIの利用を促進する鍵の一つとしては、潜在的なニーズに焦点を当てた強力なユースケースの創出が挙げられます。すなわち、生成AIができることを断片的に伝えるだけでなく、それがどのようにユーザーの生活を豊かにするのか、具体的で共感されやすいシーンを探り、生活者へと提案していくことが、今後ますます求められるでしょう。

3. 特定機能より基本性能、「使いやすさ」の向上がカギ

ここからは、今後の生成AIサービスに求められるニーズについて、2つのデータをもとに考察していきます。
一つ目に、利用経験者を対象として、生成AIサービスを利用する際に重視する点を調査しました(図表4)。

図表4

生成AI利用者の重視点

重視点として最も多かった回答は、「無料で使えること」で、43.9%に上りました。最近では、高性能モデルの利用や無制限利用が可能になる有料プランが増加していますが、依然として無料であることを利用の前提として捉えているユーザーは多いようです。これらのユーザーに対し価格に見合う明確なメリットを理解させなければ、現状では有料サービスの普及は難しいと考えられます。

「無料で使えること」に続いては、「操作しやすい・使いやすいこと」という回答が多く、これは「セキュリティ」「信頼性・正確性」「品質」「応答速度」といった、生成AIの安全性や性能に関する項目よりも上に位置しています。現時点で、数多くの対話型生成AIがリリースされていますが、一般のユーザーにとって、サービス間の性能差を明確に認識することは困難な状況です。そのため、現状では、性能面よりも、実際に使って実感しやすい操作性の良さや使いやすさを重視する声が多く、一般ユーザーへの普及における重要な要素となっています。

二つ目として、「生成AIがどのように改善されたら、より利用したいと思うか」、生成AIの利用を促進するための改善点について確認しました(図表5)。図表4は利用者に限定した現在の重視点であったのに対し、図表5は認知者全体を対象とした仮定的な質問です。そのため、図表5の方が、より将来的・潜在的なニーズが反映されていると解釈することができそうです。

図表5

生成AI認知者の利用を促進するための改善点

改善点の上位には、「セキュリティやプライバシーに関する不安が解消されたら」「使い方がわかりやすくなったら」「生成結果の信頼性が向上したら」が並びます。これらの結果は、図表4の結果とも類似しており、特定の機能よりも、基本的な性能向上へのニーズが高いことを示しています。優れた推論能力やマルチモーダルへの対応など、特定の機能に秀でたモデルはすでに実現が始まっていますが、現段階では、特定の機能追加よりも、基本的な性能や使いやすさの向上が、利用促進のための重要な要因となっているようです。
加えて、「特にない」または「改善されても利用したいと思わない」と回答したユーザーが4割以上を占めることにも注意が必要です。生成AIの幅広い普及には、これらの無関心層や拒否層への対策も不可欠となります。

以上の調査結果から、生成AIについて①イメージはまだ明確ではないものの、その将来性への期待から総合的にはポジティブに捉えられていること、②これまでの利用目的は限定的であり、活用促進には日常生活における強力なユースケースの提示が求められていること、③現在は無料であることを前提として、特定の機能追加よりもシンプルな使いやすさが求められていることが分かりました。次回は、生成AIのサービスごとの認知や利用の実態を分析していきます。
一連の生成AI実態調査の結果はこちらからご覧いただけます。あわせて、「ビジネスパーソン」視点の調査結果もご一読ください。


この記事は、インテージの生成AI実態調査プロジェクトにて行った調査結果をご紹介しました。
本プロジェクトでは、インテージの豊富な調査ノウハウとパネルデータを活用し、生成AI市場の現状と展望を包括的な視点で探究しています。
今後も定期的な調査・分析を継続し、新たな知見と、より深い価値ある情報をご提供する予定です。ぜひご期待ください。


シリーズでお届けしてきた「生成AI利用実態調査 生活者編」のExcelデータを無料でダウンロードいただけます。レポーティング等にご活用ください。


調査概要_生活者編
【調査概要】
(スクリーニング)
調査方法:Web調査
調査地域:日本全国
対象者条件:18~75歳男女
標本サイズ:n=21,255(性別・年代・地域を母集団準拠で回収)
調査実施時期:2024年10月28日(月)~2024年10月31日(木)

(本調査)
調査方法:Web調査
調査地域:日本全国
対象者条件:スクリーニング回答者のうち、生成AI経験者の方
標本サイズ:n=2,156
ウェイトバック:生成AI利用経験者のスクリーニング構成比にあわせてウェイトバック
調査実施時期:2024年10月31日(木)~2024年11月4日(火)

著者プロフィール

松田 陽介(マツダ ヨウスケ)プロフィール画像
松田 陽介(マツダ ヨウスケ)
株式会社インテージ
エクスペリエンス・デザイン本部 プラットフォーム・データ・ビジネス部 データアナリスト

2022年にインテージへ入社。
メディア・プラットフォーマー担当のデータアナリスト兼リサーチャーとして、広告コミュニケーションやデジタル領域を中心とした調査とデータ解析に携わる。

株式会社インテージ
エクスペリエンス・デザイン本部 プラットフォーム・データ・ビジネス部 データアナリスト

2022年にインテージへ入社。
メディア・プラットフォーマー担当のデータアナリスト兼リサーチャーとして、広告コミュニケーションやデジタル領域を中心とした調査とデータ解析に携わる。

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