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操作ログデータで見る生成AIツールの現在地

みなさんは普段お仕事やプライベートで「生成AIツール」を使われていますか?
いまや生成AIを使ったツールは数多くリリースされていますが、多くの方が馴染みあるのは、22年の12月に公開となったChatGPTではないかと思います。

OpenAI社が提供しているChatGPTは、チャット形式でAI(人工知能)と対話できるというシンプルなインターフェースのおかげか、瞬く間に認知が拡大し、昨年はTVでも数多く取り上げられ、流行語大賞にもノミネートされていました。

生成AIブームが起きた2023年から約1年、生成AI、ChatGPTは果たして日本に普及したのでしょうか。今回はメディアログパネルデータ、i-SSPのPC・モバイル利用ログをもとに、生成AIツールの現在地を覗いてみましょう。

利用浸透が続くChatGPT、利用は生活者の約4%程度

まずは、生成AIブームの牽引していたChatGPTの利用率から見てみましょう。図表1はPC利用ユーザーのブラウザにおける、1秒以上接触者の推移をまとめたものです。

図表1

PCブラウザにおけるChatGPT利用推移(%)

22年12月の利用開始から利用率は増加していき、23年4月に一度ピークを迎えたものの、その後大きく減少はすることはなく、約3~4%で留まっています。一定ユーザーは定着したことが伺えますが、直近の伸長は鈍化しており、話題は大きかったものの、ボリュームゾーンとしてはノンユーザーが多く占めているようです。

ちなみに、国内におけるChatGPT関連のニュースをこの利用率の推移に重ねると、図表2のようになりました。

図表2

PCブラウザにおけるChatGPT利用推移(%)

最も利用率が高い23年4月には、ChatGPTを提供しているOpenAI社のCEOサムアルトマンが来日し、岸田元首相と会談したことが多くのメディアでも取り上げられました。テレビ番組でChatGPTという言葉を目にする機会が増加したことがアクセスのきっかけとなった可能性があります。

ChatGPTはPCサイトだけではなくモバイルアプリにも拡大し、23年の5月、日本でもiOSアプリでChatGPTがリリースされ、その2か月後の23年7月にはAndroidでもアプリがリリースされました。

AndroidにおけるChatGPTアプリ利用率の推移を見ると、数字は右肩上がりに伸びています(図表3)。

図表3

AndroidにおけるChatGPTアプリ利用水(%)

最近はTVでChatGPTというワードはあまり耳にしなくなりましたが、サイトからアプリへと利用チャネルが拡大し、生成AIはこれから本格的に生活者の身近な存在になっていくのかもしれません。

ChatGPTのライバルは?OpenAIに追従するGoogleとMicrosoft

ここまではChatGPTの利用のみにスポットを当てていましたが、生成AIツールを提供しているのはOpenAIのみではありません。

Windowsを展開しているMicrosoftでは、OpenAI社が開発したGPT-4と自社の検索エンジン「Bing」を組み合わせた「Bing Chat」がリリースされ、その後2023年12月より、Microsoft Copilotと名前を新たにしました。Office365アプリとの連携ができるMicrosoft Copilotはビジネス利用との親和性が高く、その名の通りユーザーの副操縦士として生成AIを使って業務の効率化に役立てることが可能です。

ChatGPTを早くから使っていた人の中には、高性能な返答がされるGPT-4を無料で使用できることから、PCの奥底で眠っていたBingを突然使い始めるという 経験をした方もいるのではないでしょうか。

そしてGoogleが提供しているGemini。元々は23年3月に「Google Bard」という名前で発表がされていましたが、24年2月に「Gemini」というサービス名に統一されました。テキストだけでなく、画像、音声、動画など、さまざまな種類のデータを理解し処理することができ、Google検索と連携してリアルタイムな回答を返し、Gmailと連携してメールの検索や要約も可能です。

Googleが提供しているAndroidスマートフォンではGoogleアシスタントに代わって、このGeminiが音声アシスタントとして提供され、AIをより生活の身近な存在として活用させる工夫を行っています。

そんな2つのサービスを先ほどのChatGPTと同じく、i-SSPのPCブラウザ利用で見てみるとこのような推移になっていました(図表4)。

図表4

PCブラウザにおける生成AIツール 利用推移(%)

Copilot・Gemini、一定のアクセスはされていますが、特にCopilotは24年に入ってからChatGPTに迫る勢いで利用率が上昇しています。このブラウザでの生成AI利用を、Windowsで提供されているEdgeブラウザ利用者のみに絞り込んでみると、Copilotユーザーの特徴が顕著に現れます(図表5)。

図表5

Microsoft Edgeにおける生成AIサイト接触推移(%)

24年の春頃からEdgeブラウザにおけるCopilotユーザーはChatGPTに肉薄していき、7~8月にかけて利用率が大幅に伸びました。直近ではChatGPTよりもCopilotのほうが利用率は高いという結果になっています。自身のメインブラウザにあわせて、合う生成AIツールが使われている可能性が見えてきました。

では、同じように、Googleが提供しているモバイルOSのAndroidにおけるGeminiアプリの利用率をChatGPTアプリと比較してみましょう(図表6)。

図表6

Androidにおける生成AIアプリ利用推移(%)

こちらはCopilotとは異なり、まだGeminiアプリはChatGPTアプリの利用率を上回ってはいないようです。しかし、GeminiはGoogleが提供しているOSとの親和性の高さが売りでもある生成AIであるため、これからの拡大は十分考えられるかと思います。

では次章からはさらに利用ユーザーにスポットを当てて、どのような人がいつ生成AIツールを使っているのか、ログデータをもとに見ていきましょう。

生成AIを使いこなすのはどんな人?生活者属性で見る生成AI

i-SSPでは、そのメディアログを行った生活者の属性情報を確認できるので、ここからは生活者の属性情報も加えながら生成AIツールの利用者を深掘りしていきましょう。

まずは「いつ使っているか」を図表7の1時間単位でChatGPT利用の推移を表した、時間帯別の利用率グラフをご覧ください。

図表7

PCブラウザにおけるChatGPT利用時間帯別推移(%)

利用の値は小さいですが、平休日それぞれの利用率の推移をみる限り、平日と休日で利用ピークは3回訪れており、折れ線グラフの重なりから平日でも休日でも利用タイミングに大きな違いはないことがわかります。

この利用時間帯のグラフを学生と正社員・公務員の利用に限定して、それぞれについて見てみましょう(図表8)。

図表8

PCブラウザにおけるChatGPT利用時間帯別推移_職業別(%)

こうしてみると、学生は夜間よりも午前中の利用が高く、正社員・公務員は夜間、特に19~20時の利用が高いことがわかります。日中の学業の傍らChatGPTを使っている学生と、帰宅後に趣味の中でChatGPTを使っている会社員、という違いが見えてきます。

このように職業やライフスタイルによる背景を考えてみると、生成AIツールの使われ方も想像できてきました。

続いてChatGPT、Copilot、Gemini それぞれの利用者属性を確認してみましょう(図表9)。

図表9

ChatGPT、Copilot、Gemini それぞれの利用者属性

整理をしてみると、どのツールも使っている方は男性が過半数となっていますが、その構成はツールによって異なっています。Geminiは最も男性が多くの割合を占め、続いてChatGPT、Copilotの順です。年代別構成比で見ても各社のツールによってボリュームゾーンは異なり、20代が多いChatGPT、高年齢、特に50代が多いCopilot、各年代でバランスが取れているGemini。生成AIサービスごとに利用者属性構成比に違いがあることが分かります。

一方職種別では、自由職・学生・技術職のユーザー利用率が高いChatGPTに比べ、GeminiとCopilotは研究・営業職の利用率が高いという共通点があり、機能性なのかUIなのか環境なのか、自身の職種によって優先している生成AIの機能(要素)があるのかもしれません。

使用ユーザーの違いは各ツールの方向性にも影響していくため、ユーザーもこれらの要素を元に利用ツールを考えていくと自分にあった生成AIツールを選択することが出来るのではないでしょうか。

性格的特徴から考える生成AI利用者

前章では、モニター属性を元に生成AI利用者の深掘りをし、性年代などの特徴を捉えました。この章ではインテージの様々なデータソースを横断して分析し 、生成AI利用者の性格的特徴を確認して、まとめに入りたいと思います。

以下の内容は、PCブラウザにて24年以降にChatGPT、Copilot、Geminiいずれかの接触があった人で、全体値よりも高く得点がでていた生活価値観に関するアンケート項目の内容になります。

生成AIツール利用ユーザー 生活価値観・メディア利用

中でも特に傾向として高く出ていたのは、パーソナリティの「新しいものが好き」という部分。これらの人は流行の中で自分の生活に役立ちそうなものをいち早く試し、使い方を学び、他者よりも効率よく過ごしたい欲求があるようです。

生成AI、ChatGPTなどを使うためにはプロンプトと呼ばれる指示文が必要で、それを目的に合わせて上手く作れる人が生成AIをより使いこなせる印象があります。生成AI利用者はただ流行に乗るだけではなく、それを人よりも早く使いこなしてある程度優位を持ち、自分のパーソナリティを効率的に確立したいという欲求があるのかもしれません。

最後に、インテージでの生成AI利用検証の一環で作成された、「データを生成AIに読み込ませて、元データからペルソナを描くツール」 の検証結果をご紹介します。
以下は今回の対象、i-SSPログを元に抽出した「生成AIツール利用者」の人物像を生成AIに書いてもらったものです。

生成AIツール利用者の人物像は、若く、未婚の男性で、一人または三人家族で構成されています。
彼らは正社員(管理職以外)で、マンションに住み、車を所有していないことが特徴的です。
また、比較的高収入で金融資産も多く、健康に対する意識も高いことが伺えます。
彼らは自己実現と自己表現に重きを置き、リスクを恐れず、自分自身を進化させることを重視しています。
彼らは自由な時間を重視し、自己啓発やスキルアップに関心が高いことがわかります。また、自由で個性的な生活を好む傾向が見受けられます。
彼らは先進技術に対して積極的で、自分で選択し、先進的な人と思われたいという意識が強いことがわかります。
彼らは家事に対してあまり時間をかけたくない、または家事が苦手な傾向があります。
また、食事に対しても時間をかけず、一人で食事をすることが多い傾向があります。
彼らは金融に対する理解が深く、効率的なライフスタイルを重視する傾向があると言えます。
商品の価格比較には積極的で、情報収集や学習にも積極的であることがわかります。

章の冒頭の内容も合わせて、生成AIツール利用者の「テック系に強い人」という特徴が表れているようです。逆の見方をするならば、まだ生成AIのメリットはそういった最新技術に慣れ親しんだ人たちにしか届いていないとも言い換えられます。今後生成AIの有用性をより、社会へ浸透させるなら、技術的な障壁の排除や利用用途の提示をサービス側で実施をして利用ハードルを下げることが必要なのかもしれません。

増え続けるツールと多様化する使い方

今回はログデータやモニター属性、アンケートデータも用いて生成AIツール利用者の分析を行いました。近頃はあまりテレビで生成AIの話題をあまり耳にしなくなったような気がしますが、急激ではなくとも着実に、その利便性はユーザーに伝わってきていることが分かりました。

生成AI系のツールは、今回紹介した3つ以外にも沢山リリースされ続けています。Anthropic社が開発した対話型生成AI「Claude」は、ChatGPTにも劣らない精度の回答力を持ちながら、安全性と倫理を重視し、有害なコンテンツ生成を抑制するガイドラインをアピールしユーザーを呼び込んでいます。また、AIと検索技術を組み合わせたPerplexity AI社が提供する「Perplexity」は、ユーザーからの疑問にデータソースも含めて回答をすることで、精度を担保しながらより深く検索行動を提供することでAIによるインターネット検索の新しい方向性を打ち出しました。

これらの生成AIツールもSSPのWebブラウザログでは着々と利用率を伸ばしています(図表10)。

図表10

PCブラウザにおける生成AIツール利用推移(%)

ChatGPTが生成AIの有用性を世間に示し、その浸透が進む中、生成AIは「AI」という大きな力をベースに、ユーザーがやりたいことの方向性に合わせて進化を続けています。まだ話題になったばかりで生成AIツールの利用は生活者の一部のみですが、成長が著しい分野ならではの爆発力に期待ができます。

著者プロフィール

脇田 光(わきた ひかる)プロフィール画像
脇田 光(わきた ひかる)
株式会社インテージ データマネジメント事業本部 コンシューマーデータマネジメント部

2016年大学卒業後出版社の営業を経験、その後ネットリサーチを主力とした調査会社で集計業務に従事し、2022年2月にインテージに入社。
パネル調査「i-SSP(インテージシングルソースパネル)」のテレビ視聴調査リニューアルプロジェクトに参画しながら、社内外への情報発信・運用効率化など、パネルデータの利活用を促す業務を担当。

株式会社インテージ データマネジメント事業本部 コンシューマーデータマネジメント部

2016年大学卒業後出版社の営業を経験、その後ネットリサーチを主力とした調査会社で集計業務に従事し、2022年2月にインテージに入社。
パネル調査「i-SSP(インテージシングルソースパネル)」のテレビ視聴調査リニューアルプロジェクトに参画しながら、社内外への情報発信・運用効率化など、パネルデータの利活用を促す業務を担当。

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