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海外オンライン調査を実施するうえでの心得~調査票作成の工夫編~

本記事では、海外でオンライン調査を実施するうえでの心得を、全3回に分けて説明しています。
前回は、サンプル設計編として、海外モニターの属性やサンプルサイズの決め方についてご紹介しました。今回は、調査票作成時のポイントについてみていきます。
日本国内のオンライン調査と同様、海外でも有意義な調査を実施するうえで、調査票作成は大事な工程になります。オンライン調査で精度の高いデータ得るために調査票作成時に工夫や意識できることを5つご紹介します。

【工夫①】調査ボリュームの調整

日本の市場調査で使用される調査票は、世界で最も長いと調査業界で言われています。 日本人の多くはアンケートを真面目に、そして我慢強く回答するため、調査ボリュームはそこまで問題視されず、改善もされてきませんでした。反対に、海外のモニターは日本人ほど我慢強く調査に協力していただけない傾向があります。国内のオンライン調査と同様ですが、調査票が長いと大きく2つのリスクがあります。この影響は、日本国内よりも海外で顕著になります。

リスク(1)【途中脱落】

オンライン調査が普及している中で、モニターによっては毎日・毎週複数のアンケートを回答している場合があります。ボリュームの多いアンケートではどうしても疲れや飽きといった理由で途中離脱するリスクが高まり、サンプルの回収率にも影響を及ぼすことがあります。

リスク(2)【いい加減回答】

調査票が長くなるほど、回答者の疲労蓄積や集中力低下に繋がり、アンケートをとりあえず終わらせようという意識が働きます。その結果、特にアンケートの後半になるにつれて1問にかける時間は減り、回答者の想いがしっかり反映されない結果になるリスクがあります。

図表1は海外3カ国における質問数と回答傾向を検証した調査となりますが、30問を超えると徐々に回答精度の悪化や対象者の脱落が目立つようになります。もちろん調査ボリュームは少なければ少ないほどデータの精度はあがりますが、インテージではオンライン調査の質問数を30問以内(回答時間15分)に収めることを推奨しています。

図表1

【工夫②】適格条件の確認

調査によっては対象商品やサービスのユーザー、経験者等であることが条件として設けられることがありますが、どうしても本当に条件適格者なのか不安に感じることがあるかと思います。
そのような不安を軽減する方法として「トラップ設問」を用いることがあります。例えば図表2はある調査でiPhoneユーザーを回収した際に使用した設問となりますが、iPhoneユーザーであれば答えられる設問を入れて、なりすまし回答者を一定除外できるように対応しました。
このようなトラップ設問を駆使することで意図しているターゲットからしっかり評価を得ることができます。

図表2

【工夫③】自由回答聴取時のポイント

定量調査において、対象者の評価や考えを確認・深堀する手段として選択肢形式の設問以外にも、自由回答形式の聴取方法があります。

図表3では一般的な自由回答形式2つ載せています。左側のように、ブランドの浸透度を確認する手段として、何もヒントを与えない「純粋想起」の聴取方法があります。市場や生活者におけるブランド等の浸透度合を測る方法として有効的な手段であり、単語1つや短文で回答が済むので各国同じレベルの回答が見込まれます。

一方で右側のように、「購入理由」など回答内容を深堀したい長文(文章)回答の場合、オンラインアンケート上でも聴取することはできますが、調査員を介さないオンライン調査ではどうしても対象者に回答を委ねている分、依頼側が求めているような深い回答を得るのが難しくなります。 また、海外のモニターは時間をかけずに、簡潔に回答しようとする傾向があるため、一言しか回答を入力してこないなど、日本人以上に簡単且つ浅い回答が発生することがあります。そのため、オンライン調査の調査票では基本的に選択肢形式の設問を中心に構成し、自由回答形式で聴取する場合は短文形式に留めておくことをおすすめしています。

図表3

【工夫④】呈示物作成時のポイント

従来のオンライン調査では、アンケートをパソコンで回答することが主流でしたが、スマートフォンの普及により回答に使うデバイスも多様化しています。図表4の左側はオンライン調査の回答に使用したデバイスを国別で見たデータになりますが、近年アジアを中心にスマートフォンでの回答率が過半数を超えてきています。特にタイ・インドネシアではパソコンを持たずに、スマートフォンだけを保有している割合が高いこともあり、ほとんどの方がスマートフォンでアンケートを回答しています。
このような状況を踏まえて、図表4の右側にあるようにコンセプトといった呈示物をパワーポイントで作成される場合、弊社では「縦スライド」での作成を推奨しています。通常のパワーポイントのデフォルト形式「横スライド」で作成すると、調査画面に反映した際に横幅が自動調整され、使用しているデバイスによっては全体が小さく表示され、視認性が低下して評価に影響を及ぼすことがあります。そこで、最初から縦長スライドで作成することによって、横幅調整を最小限に抑えることができて、対象者にとっても負荷がかからない形で回答することができます。

図表4

【工夫⑤】翻訳時のポイント

海外調査ならではのプロセスとして「翻訳」があります。
翻訳では元となる言語が抱えている意味やニュアンスをしっかり捉え、現地生活者に伝わるような形で表現されているかが重要になります。ここでは過去にあった2つの事例を基に、翻訳時で注意すべきことをご紹介します。

図表5ーA

こちらは化粧品の調査で、調査票を英語から中国語に翻訳した際に起きた事例ですが、日本語で「洗練された」を意図したSophisticatedという単語を中国語に翻訳依頼すると、「精密な」を意味した現地語に翻訳されてしまいました。「精密な」という表現は機械や技術を表現する際に使用されるので、化粧品で使用する表現としては不適切になるということで見直して、「洗練された」に修正しました。
翻訳の依頼・チェックを行う際は、調査の対象となっているテーマ・カテゴリーを考慮しながら行うことで、現地生活者が理解できる相応しい表現に仕上げることができます。

図表5ーB

あるブランドイメージの設問で「品質が高い」と「上質感がある」という選択肢があり、それぞれ「High Quality」「Has a good quality feel」と翻訳したのですが、この2つの表現は英語圏の生活者視点で区別できない状態にありました。日本語のニュアンスを改めて考えると、「品質が高い」というのは商品・サービスそのものの品質が高いことを表していて、「上質感がある」というのは並のものと比較した上で品質が上等という、比較要素が含まれているため、
ここでは「上質感がある」の翻訳で使用されていた「good」という単語を比較要素が含まれる「superior」という表現に変更しました。
このように元となる言語が抱えている意味を改めて考えることで、より現地生活者も区別ができる、適切な表現に 辿り着くことができます。

図表5

以上、海外でオンライン調査をするうえでの調査票作成時の工夫と意識すると良いことをお伝えしました。
次回は、実査で得たデータのチェック方法についてご紹介します。

※定期的に実施しているi-college「初めてのグローバルリサーチ ~マーケット理解と生活者理解~」にて、海外調査のコツやポイントをご説明しています。次回は2022年5月26日(木)に開催予定です。海外調査を企画している方、これから海外調査を始める方など、ご興味・ご関心がありましたらぜひ合わせてご参加ください。内容の詳細・お申込は下記バナーからご確認ください。

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