猛暑の夏に売れるものは?~独自データで消費への影響に迫る~
年々その厳しさを増すように感じられる夏の暑さ。この暑さを乗り切るため、冷感グッズを新たに購入したり、涼しさを感じられるブールや屋内レジャーを検討したりしている人も多いのではないでしょうか。インテージでは、日本国内で展開している全国小売店パネル調査(SRI®)の販売データを元に、冷夏だった2009年夏と、記録的猛暑となった2010年夏を比較し、販売金額を伸ばしたカテゴリを振り返るとともに、特に販売金額を伸ばした「漬物」について、キッチンダイアリー®(食卓日記調査)のデータからその要因を分析しました。また、猛暑の消費への影響について、20~50代の男女を対象に意識調査を実施しました。
猛暑の夏には何が売れた?歴史的猛暑を振り返る
猛暑となると、一体どのようなものが売れるのでしょうか。ここ数年を振り返ると、2010年の夏が「観測史上最も暑い夏」として記録に残っています。この年は特に暑さが厳しく、その年の世相を表す漢字一字が「暑」だったほどの酷暑でした。一方、その前年の2009年は「久しぶりの涼しい夏」と呼ばれ、冷夏だったとされています。気象庁の発表では、8月の最高気温は2009年が30.1℃、2010年が33.5℃となっています。これらを踏まえ、冷夏の2009年と猛暑の2010年を比較し、どのようなカテゴリの販売金額が伸びたのか、まずはインテージが保有する全国小売店パネル調査(SRI)のデータで確認してみました。
すると、上位には「スポーツドリンク」、「日焼け止め」、「美容・健康ドリンク」、「制汗剤」、「アイスクリーム」などがあがり、いずれも1.2倍以上の伸び率に。食品では、暑さをクールダウンできる「アイスクリーム」(121%)のほか、食欲減退・夏バテへの効果を期待してか「漬物」(116%)、できるだけ火を使わず暑くても食べやすい「乾麺」(110%)などの販売金額が伸びており、飲料では、「スポーツドリンク」(128%)、「美容・健康ドリンク」(124%)といった「機能性飲料」のほか、「乳酸飲料」(111%)や「麦茶」(110%)なども販売金額が伸びています。また、日用雑貨では、「日焼け止め」(126%)や「制汗剤」(122%)といった日焼け・汗対策関連品の販売金額が伸びていることがわかりました。
これらのカテゴリは、猛暑の夏となれば伸張の可能性がありそうです。
※「香辛料」(130%)は「食べるラー油」ブームの影響、「ヨーグルト」(116%)はヨーグルトダイエットブームの影響でそれぞれ販売金額を大きく伸ばしています。
Key Point 1
2010年の猛暑時に販売金額を伸ばしたもの、上位は「機能性飲料」や「日焼け止め」「制汗剤」。猛暑の夏には、「食欲減退・夏バテ対策」「日焼け・汗対策」関連品は販売金額伸張の可能性あり。
漬物は夏に売れる!? その実態は
夏の定番「アイスクリーム」に続いて猛暑の夏に販売金額を大きく伸ばした「漬物」。食欲減退や夏バテ対策への期待などがその要因として考えられますが、この販売金額の伸びについて、あまり実感がないという人も多いかもしれません。そこでここからは、この「漬物」について、弊社が独自に保有する「キッチンダイアリー(京浜・京阪神・東海1,260世帯の食卓日記調査)」で、夏と漬物の関係性を確認してみます。
まずは、キッチンダイアリーでデータを取得している漬物の3分類(「浅漬け・塩漬け」「ぬか漬け」「甘酢漬け」)それぞれについて、どの月によく食べられているのか、食卓登場率の月次推移を見てみます。すると、漬物の種類ごとに明らかな傾向の違いがあり、3分類の中で最も食卓登場率の高い「浅漬け・塩漬け」は夏と冬に食卓登場率の山がきているのがわかります。二番目に食卓登場率の高い「ぬか漬け」は、夏場は冬に比べて2倍強の食卓登場率となっており、一方で「甘酢漬け」は年間を通して食卓登場率が比較的低いものの、夏に比べると冬場に食卓登場率が高くなっています。
漬物の中でも特に夏場によく食べられている「野菜のぬか漬け」。「ぬか漬け」というと、栄養の面では気になりつつも、ぬか床の管理が難しさなどから、なかなか手を出せないという人も多いのではないでしょうか。また、若い人の中には「子どもの頃に実家で漬けていた」など懐かしさを感じる人もいるかもしれません。そこで、実際に「ぬか漬け」を食べているのはどの年代の人たちなのか、年代別の傾向を確認してみます。すると、20-30代、40-50代では年間を通してTI値が20を上回ることはなく、40-50代で夏場にやや食卓登場率が高まるものの総じてなだらかなのに対し、60-70代では、年間通して食卓登場率が高く、季節変動も大きいことがわかります。
古くから親しまれ(一説には、その起源は縄文時代にまでさかのぼるとも)食卓に欠かせない存在となっていったお漬物。食の多様化や家事の時短意識の高まりなどの影響もあってか、若年層では食卓に登場する機会があまり多くないようですが、熟年世帯においては引き続き定番として食卓に登場、夏場の漬物伸張を後押ししているようです。
Key Point 2
「漬物」は食卓登場率の季節変動が大きい。夏場に特に食卓登場率が高くなるのは「ぬか漬け」で、冬場に比べて2倍程度にも。年代別に見ると、夏の「ぬか漬け」伸張は熟年世帯が後押し。
猛暑が消費行動に与える影響は?
ここまで、「猛暑」で売れたものを振り返り、さらに「漬物」にフォーカスして、その食卓登場実態を見てきましたが、食以外にも、夏を乗り切るための工夫は多くあります。そこで最後に、「猛暑」と聞いて買いたくなるものや、行きたくなる場所について探ってみました。
その結果、猛暑と聞いて購入したくなるものは「アイス・かき氷」(64.2%)、「素麺・そば・うどん・冷やし中華」(46.3%)、「汗ふきシート・ボディシート」(36.8%)、「シートタイプ以外の制汗剤」(32.5%)などが上位にあがり、2010年猛暑時の小売店パネル調査のデータと同様の結果となりました。また、昨今の冷感グッズや暑さ対策家電の充実化を反映してか、「冷感効果のある寝具」(22.9%)、「扇風機・冷風機」(20.6%)なども上位にランクインしました。
行きたい場所については、「ショッピングモール・複合施設」(27.5%)が最も高く、次いで「プール」(24.1%)、「海」(22.1%)、「避暑地・高原」(20.4%)などが続きました。夏というと「プール」「海」といった行楽を思い浮かべがちですが、猛暑となると、冷房の効いた屋内施設で快適に過ごしたい、という現実的な気持ちが上位にあがり、興味深い結果です。
Key Point 3
猛暑と聞いて買いたくなるもの1位は「アイス・かき氷」。食品飲料以外では、冷感グッズや暑さ対策家電も上位に。行きたくなる場所は「ショッピングモール・複合施設」が「プール」「海」をおさえて1位に。夏の暑さは、飲食料品、日用雑貨、家電などの需要が拡大、個人消費にも大きく影響か。
今回の分析は、弊社独自に保有するSRI(全国小売店パネル調査)、キッチンダイアリーのデータ、および下記の設計で実施したインテージの自主企画調査結果をもとに行いました。
【SRI®(全国小売店パネル調査)】
スーパーマーケット、コンビニエンスストア、ホームセンター・ディスカウントストア、ドラッグストア、専門店など全国約4,000店舗より収集している小売店販売データです。このデータからは、「いつ」「どこで」「何が」「いくらで販売された」のかが分かります。
【キッチンダイアリー®】
京浜、京阪神、東海地区1,260世帯のパネルモニターによる食卓実態動向のトラッキングサービス。毎日の食卓で食材がどのように調理され、どんな家族に、どんなメニューで食べられているのかについてのデータ収集を継続的に行ない、京浜、京阪神、東海地区での食卓実態動向を明らかにしている。
調査手法 インターネット調査
調査地域:全国
対象者条件:20-59 歳の男女
標本抽出方法:弊社「マイティモニター®」より抽出しアンケート配信
ウェイトバック:性年代構成比を2015年度実施国勢調査結果にあわせてウェイトバック
標本サイズ:1600s
調査実施時期:2017年6月7日(水)~2017年6月8日(木)
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