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前回予告したように、具体的にマーケティングの気づきにどのようにアプローチするかに、繋げていくことにする。ここまで様々な例を挙げながら、表現情報からどのように気づきアプローチを行うかを述べてきた。簡略なフレームで整理すれば、まずは言語情報と非言語情報ということで整理ができる。その中を少し詳細にすれば、書き言語であることもあれば話し言語もあるし、発語されない無言や沈黙ということもある。とはいえそれぞれ言語情報は、シニフィアン(意味するもの)とシニフィエ(意味されるもの)に区分しておくことができる。
シニフィアンは主として意味することを指し、指示表出ということになる。それに対してシニフィエは意味されることを指し、自己表出という側面を強く持つ。加えて、シニフィエは意味ということでいえば、多重性、重属性ということになり、拡大や拡張が激しくなり、解釈の自由度がどんどんあがっていくことになる。
それに対して、非言語情報というフレームがある。同じ情報を対象化していたとしても非言語情報の方が、意味されるものが一義化しやすい面もある。いわゆる「一目瞭然」ということになる。可視化情報のもつ特徴ではあるが、気づきの重層化や多様性に広がっていく特徴もあることになる。
これらの簡略のフレームに、マーケティング情報をプロットしていくことになる。
今回からは実際にこのステップとフレームに従って、具体的にマーケティングテーマ、生活者情報を載せていくことにする。もちろんステップを踏んで情報と、そこから抽出することになる気づきと課題は重層化していくことになる。
今回のテーマは仮に「サブウェイの未来」を設定してみた。サブウェイという世界的なサンドイッチチェーンにフォーカスをあててみることにする。たまたまワタミが買収をして、重要な成長エンジンとして位置づけ、投資をするということが話題になっているからである。「話題になっている」とはいっても、ネットのニュースなどで話題になっているだけにすぎないし、ネットの仕組み上これに類型化されたニュース、情報が次々とレコメンドされてくる。ということで、サブウェイというビジネスは大きな話題になっているように感じるが、実際の生活ではほとんど重要視されることでもないのかもしれない。その意味でできるだけ一次データ、二次データをつかってみる。だからこそ気づきアプローチにとっては面白い例題とステップ&フローになる。
あるネットニュースを拾ってみると、このサブウェイのことを「顧客の健康志向に応えるため、新鮮な野菜や多様のパン、ソースが選べるカスタマイズ可能なメニューが特徴である」と紹介してある。これは情報の整理のフレームでいえば言語情報のシニフィエにあたるものになる。新鮮な野菜や多様なパンが選べることが特徴ということになっているが、新鮮な野菜や多様なパンというシニフィエ(意味されるもの)は、重層的な解釈を生みだすことになってしまう。これにはどうしても、本来このシニフィエを生みだしたことになるシニフィアンが確定されていなくてはならない。あるいは、このシニフィエに対応することになる可視化情報が不可欠だということになる。
その意味で、まずこのステップでは空白にしておくことで、本来の気づきづくりのステップにはいることができる。
たとえばこの「新鮮な野菜や多様なパンが選べることでカスタマイズできる」というシニフィエに対応する、あるいはその価値を発生させることになるシニフィアンはどのように構築されているものであろう。サブウェイのサンドイッチという商品やビジネスが持っているシニフィアンは、一体どのようなものであるのか。この空白をできる限り丁寧に埋めていく必要がある。まず一義的にいえることは、サブウェイ、つまり潜水艦の形をしたパンを切ってサンドイッチにするということがそのシニフィアンの土台である。だからサブウェイというチェーンなのである。
パンの持つ形状こそが、サブウェイというもののシニフィアンそのものということである。その間に新鮮な野菜を挟んでいるということは、このサブウェイというシニフィアンの第2ステップの形成要素ということになる。あるいはこのこと自身がサブウェイのシニフィアンそのものになり、価値そのものを生みだしているということになる。
その視点でいえば、どれを取ってもファーストフードの1つだということで一括したとしても、たとえばマクドナルド、ケンタッキーフライドチキンも、そのよって立つシニフィアンが決定的に違ったものになっているといえる。これは生活者の中における価値そのものが決定的に違ったものであることを意味しているといっていい。つまり、マックやKFCというものと、サブウェイいうものは、根本的に相入れることのない(つまりトレードオフされない)ものということになる。つまり、競争条件の上には全く乗っていないということになる。
このサブウェイの持つシニフィアンを突きつめていけば、そこに浮上してくるのは仮説的にいえば、ドトールのミラノサンドの群に相似になっているのだ。これは非言語情報で比較していくよりも、可視化情報で考えた方が明らかだということができる。あるいは別の意味で差異があることはわかっているが、たとえばスターバックスのサンドイッチと相似いうこともできる。日本人のたった一人も、サブウェイという言語から、あのパンの形状を一義的に想像している人はまずいない。その点ではサブウェイという言語のシニフィアンの拡張のシニフィエから、この形状のサンドイッチの一群を類似として想定することはできないかもしれない。
とはいえ、サブウェイとドトールとスタバのサブウェイ(潜水艦)型のサンドイッチはほぼ類似型の群に乗り、類似化した価値を生みだしているのかもしれない。
ここからさらにステップとフローを積みあげていくことこそが、マーケティングの気づきの第一歩である。次回以降さらにワークショップのように進んでいこう。
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