今どきの住宅購入―検討時~購入時に生活者の志向どう変わる?

住宅購入は、多くの生活者にとって「人生で最も大きな買い物」のひとつだ。しかし近年、住宅市場は購入者にとって有利な環境とは言い難い状況にある。
国土交通省の不動産価格指数(2010年平均=100)によると、住宅市場全体の価格水準の動きを表す指標である住宅総合の値は令和6年11月から令和7年11月までの1年間で、141.3から147.3へ上昇した。なかでもマンション(区分所有)は207.2から223.5へと、住宅全体を上回る伸びを示している※1。
さらに首都圏の新築分譲マンション市場では、2025年の平均価格が9,182万円、東京23区では1億3,613万円に達している※2。
こうした価格上昇の中で、生活者はどのような選択をしているのだろうか。なお「新築」を志向しているのか、それとも価格を重視し「中古」へとシフトしているのか。とりわけ価格上昇が著しいマンションは、現在も住宅検討の主要な選択肢であり続けているのだろうか。
本コラムでは、毎月約50万人規模で、仕事や学校、結婚・出産、住宅ローン、子どもの独立といったライフイベントの変化を継続的に把握している大規模データベース「ライフスタイルパネル(以下、LSP)」を用いて分析を行う。住宅価格の上昇が続くなかでは、生活者が当初の希望をそのまま維持するとは限らず、比較や条件整理を通じて別の選択肢へと見直していく可能性がある。そうしたなかで、住宅選択の軸がどこまで一貫しているのか、その意思決定の実態を明らかにしていく。
分析対象は、2025年1月〜12月の調査において、ある月に住宅購入を「検討している」と回答し、同月またはその後の月に実際に住宅を「購入した」と回答した人(n=4,841)である。
対象とする住宅カテゴリは、「新築戸建て(注文)」「新築戸建て(建売)」「中古戸建て」「新築分譲マンション」「中古分譲マンション」の5分類とした。
目次
1. 最初に検討される住宅タイプや検討パターンは?
まず、住宅購入を検討する際に、生活者がどのような組み合わせで住宅を検討しているのかを確認する。
たとえば、「新築戸建て(注文)のみを検討する層」や「新築・中古を問わず戸建てのみを検討する層」、「戸建ては新築のみ、マンションは中古のみを検討する層」など、住宅の検討方法にはさまざまなパターンが考えられる。そこでこの章では、実際に住宅検討の初期段階でどの検討パターンが多いのかを見ていく(図表1)。
5つの住宅カテゴリの組み合わせは全31通り存在するが、その中で代表的な検討パターンとして確認されたのは、「新築戸建て(注文)のみ検討」が29.5%と最も多く、次いで「中古戸建てのみ検討」が17.6%、「中古分譲マンションのみ検討」が14.4%、「新築分譲マンションのみ検討」が12.0%、「新築戸建て(建売)のみ検討」が11.9%であった。
この結果から、複数の住宅カテゴリを同時に比較検討する人よりも、一つのカテゴリに絞って検討している人が多数派であることが分かる。
図表1

住宅購入者の多くは、検討の初期段階から、すでにある程度の方向性を持って行動している様子がうかがえる。一般に住宅購入というと、さまざまな物件を幅広く見比べるイメージがあるが、上位5つの検討パターンがいずれも「〜のみ検討」で占められている点からも、検討の入り口段階で自分なりの軸を定め、その軸に沿って物件を探している人が多いことが示唆される。
2. 検討した方向性は変わるのかー「新築-中古」「戸建て-マンション」の切り替えを追う
では、検討の初期段階で絞り込んだ住宅カテゴリは、そのまま購入時の選択にも反映されているのだろうか。この章では、検討時と購入時の差異について、「新築―中古」「戸建て―マンション」という2つの大きな軸から検証する。
2-1.新築か中古か
「新築のみ検討者」のうち、実際に新築を購入した割合は88.2%であり、中古を購入した割合は11.8%にとどまった。一方で、「中古のみ検討者」のうち、中古を購入した割合は76.9%、新築を購入した割合は23.1%であった(図表2)。
図表2

2-2.戸建てかマンションか
次に、戸建てかマンションかという軸で同様に確認する。
「戸建てのみ検討者」のうち、実際に戸建てを購入した割合は90.7%で、マンション購入は9.3%にとどまった。これに対し、「マンションのみ検討者」では、マンション購入が77.3%、戸建て購入が22.7%であった(図表3)。
図表3

これらの結果から、検討段階で定めた方向性は、一定程度、購入時の選択にも反映されやすいことが分かる。特に、新築のみを検討していた層や、戸建てのみを検討していた層では、その傾向が顕著である。
一方で、中古のみを検討していた層や、マンションのみを検討していた層では、購入時に当初とは異なる選択肢に移行する割合が相対的に高い。検討初期段階で一定の軸を持っていたとしても、それが必ずしも最後まで固定されるわけではないことが示唆される。
価格や立地、物件条件などを比較検討する過程で、当初の想定とは異なる選択に至ったケースも少なくなかったと考えられる。
3. 検討した方向性は変わるのかー細かなカテゴリ別に、検討時と購入の変化を追う
さらに、5つの住宅カテゴリ単位で、検討したカテゴリと実際の購入先との関係を確認すると、その違いはより具体的に見えてくる。(図表4)
図表4

初期段階での検討カテゴリが実際の購入にどの程度反映されるかは、カテゴリによって差がある。維持率が最も高いのは新築戸建て(注文)の82.9%で、次いで中古分譲マンションの74.0%、中古戸建ての65.2%、新築分譲マンションの63.0%、新築戸建て(建売)の53.7%と続く。同じ「〜のみ検討」層であっても、初期意向が購入まで一貫しやすいかどうかには、カテゴリごとに明確な開きがある。
移行パターンに目を向けると、戸建てでは近接カテゴリへのシフトが比較的はっきりしている。新築戸建て(建売)のみ検討層の約24%は新築戸建て(注文)へ、中古戸建てのみ検討層の約20%は新築戸建てへとそれぞれ移行しており、「建売から注文へ」「中古から新築へ」という隣接カテゴリ間での見直しが一定のパターンとして見られる。
一方、新築分譲マンションのみ検討層では、約6割が同カテゴリで購入している点は戸建てと大きく変わらないが、残りの約4割の移行先は特定の1カテゴリに集中していない。戸建てで見られたような明確な移行先が相対的に見えにくく、価格や立地、条件面を踏まえて選択肢がより広く分岐している可能性がある。
総じて見ると、住宅購入者は必ずしも大きく方針転換をしているわけではなく、当初の検討軸に近い選択肢の中で調整を行いながら最終判断に至っているケースが多いと考えられる。
ただし、新築分譲マンションのみ検討層のように、購入先がやや分散するカテゴリも存在しており、すべての住宅カテゴリで同様の選び直しが起きているわけではない点には留意が必要だ。
4. まとめ
今回の分析からは、一部のカテゴリでは購入時に別の選択肢へ移る動きも見られたが、住宅購入者の多くが検討の初期段階で一定の軸を持ち、その方向性を大きく変えずに購入に至っていることが分かった。
こうした結果を踏まえると、住宅購入を検討する人への情報提供を考えるうえでは、まず初期段階でどの住宅カテゴリが候補に入っているのかを捉えることが重要だといえる。そのうえで、当初の選択を維持しやすい層と、比較の中で選択を見直しやすい層とでは、求められる情報や比較材料が異なる可能性がある。今後は、そうした違いをさらに明らかにしていくことが重要な視点となるだろう。
※1 令和7年11月国土交通省不動産価格指数
令和6年11月国土交通省不動産価格指数
※2 株式会社不動産経済研究所
今回の分析は、以下のデータを用いて行いました。
ライフスタイルパネル
毎月約50万人から前月に起きたライフイベント情報を取得している大規模データベースです。毎月の仕事関連、学校関連、ライフイベント(結婚・出産、住宅ローン、子の独立、ペットなど)の変化等のデータをご提供。
ライフイベントの発生と合わせて、人生の節目の意思決定に関わる購買やサービス利用の実態を捉えることで、ライフイベントを軸にした生活者の分析や広告・販促プランニングなど、マーケティング戦略の立案から実行をサポート可能。
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