arrow-leftarrow-rightarrow-smallarrow-topblankclosedownloadeventfbfilehamberger-lineicon_crownicon_lighticon_noteindex-title-newindex-title-rankingmailmessagepickupreport-bannerreportsearchtimetw

有料動画アプリユーザーに見る新しい日常

この記事は、インテージが生活者理解の拠点として立ち上げた、生活者研究センターのセンター長 田中宏昌による「Withコロナの新しい日常」に関するコラムの第15弾です。

1.はじめに

長引くコロナ禍で在宅時間が増え、動画コンテンツサービスの視聴が増えています。
図表1は主力の有料動画配信サービスのスマホアプリの利用状況をコロナ禍前と比較した結果です。各サービス共に利用率・利用時間ともにコロナ前の水準を上回っています。また、「コロナ禍におけるテレビ視聴行動 おうち時間の増加でテレビの見かたはどう変わった?」でご紹介した様に、スマートテレビでの動画アプリ視聴も進んでいます。

図表1

有料動画配信アプリの利用者は、コロナ下のやや窮屈な日常においても「多少支出を増やしてでも、豊かに楽しく」を実践している生活者と言えます。そこで、今回はこの有料動画配信アプリのユーザー像に注目してみました。「positive&proactive」に暮らしをシフトする生活者の姿はきっと様々なビジネスのヒントにつながるように思います。

2.いつでも楽しいものを手の中で

在宅・家中時間の増加にともない、有料・無料を問わずインターネットを介した動画視聴の機会が増えています。大手動画配信サービス(A社)はコロナ禍において魅力的なオリジナルコンテンツをリリースし、大々的な広告出稿を重ねることで大幅に会員を増やしています。コロナ禍において「A社」の動画配信サービスを見始めた人で現在も見続けている人はどのような人でしょうか?「生活者360°Viewer」を用いて「A社定着ユーザー」を描写してみました。

まずは、ユーザーの属性や生活意識から見えるヒトトナリ(図表2)から、マーケティングのヒントを読み解いてみます。

図表2

【視点1】属性・生活意識 から見えるヒトトナリ
20 代が4割のボリュームを占める。アパートやマンションに暮らし、約半数の人が既婚。本人年収やお小遣いは非利用者よりも少しだけ多くなっている。
家族との時間や余暇の時間を大切にしており、テレビやDVD、映画、さらには読書などを楽しんでいる。エネルギーチャージとしてゴロ寝も大切な時間。
新しいことや変化を楽しめるタイプで、社会の変化に対して能動的に適応していく気質も強い。ワクワク・ドキドキを求め、時にはパーッと騒ぐことも好き。

【視点1】のヒトトナリから読み解くサービス利用の背景
余暇の時間や趣味を大切にしており、時間やお金もそれなりに自由に使える余裕がありそうです。映画をはじめとした動画コンテンツについても「視聴の価値あり!」と判断すれば有料でも躊躇なく購入・契約を選択していそうです。家族との関係を大切にしていることから、趣味や余暇活動の選択には「家族と一緒に楽しめる」がキーワードになっていそうです。その点「A社」はオリジナルを含めた魅力的なコンテンツが楽しめるという点やコンテンツのジャンルも幅広く話題性のあるアニメも充実していることから、家族と一緒にさまざまなコンテンツを楽しんでいる姿が浮かんできます。

コロナ下であれ、自分が、そして家族が楽しめることを、常にアンテナを張り巡らし積極的に見つけ、少しでも楽しい時間を過ごす。動画視聴だけなく新しい商品・サービスやそうした発見や工夫を暮らしの中に取り入れていそうです。

次に、消費や食・健康といった、日常生活に関する意識や実態から同様の読み解きをしてみます。(図表3)

図表3

【視点2】消費意識& 行動・食や健康意識などから見えるヒトトナリ
新しいサービスのチェックは欠かさず積極的に試し、快適な暮らしを演出できるもの、時間の節約につながるものには多少の支出も気にしない一方で、クーポンをネットでチェックして利用するなど、「お得情報」はしっかり活用する。テレビや雑誌で取り上げられたものを食べたい、産直に弱いなど、食べることが大好きだが、肥満や高血圧に悩み、ダイエットが関心事。

【視点2】のヒトトナリから読み解くサービス利用の背景
「心地よい暮らし」を貪欲に求めるところから、有料動画サービスはうってつけのサービスです。いつでも好きなときに好きなコンテンツを家でも屋外でも楽しめるのですから。ジャンルも幅広いため、自分の興味や趣味にマッチしたものから、夫や妻、お子様の好みに合わせて、とチョイスしている風景が浮かびます。映画やドキュメンタリーだけなく、グルメや料理番組、あるいはエクササイズやダイエットなどのHow toものもごひいきかもしれません。このコロナ下、家中エクササイズが盛り上がりましたが、この人たちも一人や二人、お気に入りのトレーナーがいるかもしれませんね。

3.新しい日常の読み解きからチャンスを

今回見えてきた有料動画配信サービス「A社」定着ユーザーの人物像。実は、以前「センター員もりもとの生活者研究記録 【Vol.1】フードデリバリーアプリ」で紹介したフードデリバリーサービスユーザーと共通する志向や暮らしぶりが映しだされています。新しいツールやサービスを活用して「多少支出を増やしてでも、豊かに楽しく」を実践する生活者層には共通したアプローチが考えられそうです。

膨大なファクトデータに基づき生活者の暮らしをより活き活きとイメージし、描き切る。浮かび上がる風景の中に自社の商品やサービスが提供する価値を重ねていく。先読みの難しい時代においても「新しい日常」を生きる生活者の細密描写からビジネスやコミュニケーションのヒントやチャンスが見出せるものと信じています。


※この記事はMarkeZine66号に掲載された寄稿記事(『食とエンタメに見る新しい日常』)を再構成したものです。


生活者研究センター概要

インテージの生活者理解の拠点として2020年8月3日に誕生。
長きにわたり蓄積している生活者の消費行動やメディアへの接触行動、さらには生活意識・価値観データなど膨大な情報を連携・横断して用いるとともに、社内の各領域におけるスペシャリストの知見を織り合わせることにより、生活者をより深く理解し、生活者を起点とする情報を発信・提供することを目的として設立された。また、お客様への直接的な貢献を目的として、共同研究や具体的なプロジェクトへの参画などにも積極的に取り組んでいく予定。


著者プロフィール

生活者研究センター センター長 田中 宏昌(たなか ひろまさ)プロフィール画像
生活者研究センター センター長 田中 宏昌(たなか ひろまさ)
1992年 広告代理店系の調査会社に入社。1994年より親会社の広告代理店における生活者データベースの立ち上げメンバーとして参加。以後、2012年まで、広告代理店の消費者研究や広告コミュニケーションプランニングセクションに駐在勤務する形で、広告コミュニケーションプランニングや商品・サービス開発の場面などで、データに基づく生活者理解をテーマとしてプロジェクトを支援してきた。その間、消費財、耐久財、サービスなどさまざまな領域を担当。
思春期よりTVCMの映像やコピーに魅了され、TVCMだけを録画して繰り返し見るような子どもだった。記憶に残る作品を選ぶとすれば「1983年 サントリーローヤル ランボオ編(広告代理店 電通)」と「2004年 ネスカフェ 谷川俊太郎 朝のリレー・空編(広告会社 マッキャンエリクソン)」を迷うことなくあげる。趣味は自転車(ロードバイク、マウンテンバイク)、落語鑑賞など

1992年 広告代理店系の調査会社に入社。1994年より親会社の広告代理店における生活者データベースの立ち上げメンバーとして参加。以後、2012年まで、広告代理店の消費者研究や広告コミュニケーションプランニングセクションに駐在勤務する形で、広告コミュニケーションプランニングや商品・サービス開発の場面などで、データに基づく生活者理解をテーマとしてプロジェクトを支援してきた。その間、消費財、耐久財、サービスなどさまざまな領域を担当。
思春期よりTVCMの映像やコピーに魅了され、TVCMだけを録画して繰り返し見るような子どもだった。記憶に残る作品を選ぶとすれば「1983年 サントリーローヤル ランボオ編(広告代理店 電通)」と「2004年 ネスカフェ 谷川俊太郎 朝のリレー・空編(広告会社 マッキャンエリクソン)」を迷うことなくあげる。趣味は自転車(ロードバイク、マウンテンバイク)、落語鑑賞など

転載・引用について

◆本レポートの著作権は、株式会社インテージが保有します。
 下記の禁止事項・注意点を確認の上、転載・引用の際は出典を明記ください 。
「出典:インテージ 「知るギャラリー」●年●月●日公開記事」

◆禁止事項:
・内容の一部または全部の改変
・内容の一部または全部の販売・出版
・公序良俗に反する利用や違法行為につながる利用
・企業・商品・サービスの宣伝・販促を目的としたパネルデータ(*)の転載・引用
(*パネルデータ:「SRI+」「SCI」「SLI」「キッチンダイアリー」「Car-kit」「MAT-kit」「Media Gauge」「i-SSP」など)

◆その他注意点:
・本レポートを利用することにより生じたいかなるトラブル、損失、損害等について、当社は一切の責任を負いません
・この利用ルールは、著作権法上認められている引用などの利用について、制限するものではありません

◆転載・引用についてのお問い合わせはこちら