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新しい暮らしの風景 ~「日々健康」であること~

1.はじめに

新型コロナが生み出した新しい風景において、「マスクのある風景」は最もシンボリックなものだったのではないでしょうか。「だった」と書いたのは他でもなく、ソメイヨシノが花開き、見慣れた街の冬の景色を一変させるように、もうすぐ「マスクのない風景」が眼前にあらわれるような気配を感じているからです。

文部科学省は2023年4月から児童・生徒や教職員にマスクの着用を求めないことを決めました。「卒業式」は前倒しで適用し、生徒や教職員はマスクなしを基本としました。政府はマスクの着用を巡って、3月13日から屋内や屋外を問わず、「個人の判断に委ねる」という新しい指針を決定・発表しました。この決定を受けて文科省は、4月1日から学校の教育活動ではマスクの着用を求めないことに決めました。※1

3月に入り、卒業式のニュースがさまざまなメディアで報道されていますが、一足早く春の到来を告げる河津桜のように「マスクのない卒業式」もチラホラもあらわれているようです。現在は周囲の様子を伺いつつ、恐る恐るの一歩のようですが、もうすぐ街中に溢れる真新しいソメイヨシノの花のようにマスクのない満開の笑顔を眺めたい。そう願っています。

2. 晴れゆく感染不安と高まる行動意欲

定点調査で追い続けてきた新型コロナの感染拡大不安をはじめとしたさまざまな「不安」を見ていきましょう。
2月の新型コロナの新規感染者数を振り返ると、全国計の平均で25,000人程度になっており、第8波ピーク時(1月6日、25万人)と比較すると10分の1程度に収まってきています。また、ここ1週間程度を見てみると15,000人程度と減少モードにあります。

そのような動きを反映して、1月上旬の第8波の感染ピークを過ぎた頃から、感染不安は急速に減少トレンドとなり、直近では42%と調査開始以降、最小のスコアになっています。また、行動不安に目を転じると「飲食店での食事」や「国内旅行」はもちろんのこと、「テーマパークや繁華街、人の集まる場所」への外出、いわゆる不特定多数の人と出会う場所への外出など、すべての項目が大きく減少しています(図表1)。

図表1

【長期推移】晴れない不安:感染拡大、外出や行動について

ではいつものように、「節約意識」や「暮らし向きの回復予想」はどのような動きをみせているか、を見ていきましょう。 「家計の節約を心がけている:節約意識」に関しては先月よりも上昇して7割弱(66%)の人が節約を心がけていると回答しています。半年程度の長期トレンドでみても、ジワリジワリと上昇しているようです。また、22年7月から今後の暮らし向きの回復への期待を計測していく形に質問を変更した「暮らし向きの回復予想」については、4割弱(36%)の人が「回復していかない(回復していくと思わない計)」と回答しています(図表2)。

図表2

【長期推移】晴れない不安:感染拡大、暮らしについて

4月を前に春闘や定期昇給、さらには新入社員の給与の話題について、新聞やテレビなどでも目にすることが多くなりました。大手自動車メーカーでは組合側の増額要求に対して「満額回答」も出ているようです。また、正規、非正規(パート・アルバイトなど)を問わず、給与の引き上げを決定した大手アパレル企業も話題となっていました。その一方で、中小企業などでは給与増額の動きはなかなか進まない、というニュースも見聞きします。回復に向かう行動意欲はレジャーなどへの消費につながっています。また、すぐ先には「お花見」や「ゴールデンウィーク(GW)」といったイベントが控えています。給与の動きとともに、行動意欲さらには消費意欲がどのような形で世の中の動きに表れてくるのか、注目したいですね。

3. 日々、健康で美しく。重大疾患もセルフメディケーションの時代へ

コロナ禍を経て、生活者の健康意識や取り組みはどのように変化してきたのか、その様子を弊社の「健食サプリ・ヘルスケアフーズレポート2022」の結果をもとに振り返ってみましょう。

コロナインパクトによって、「(健康について)以前よりも気にするようになったことがある、新たに気にするようになったことがある」と回答した人は、2020年からの過去3年、大きく変化することなく55~57%付近を推移しています。コロナを契機とした健康意識の高まりは「感染不安」による後押しの時期を過ぎて、定着したと言えるでしょう(図表3)。

図表3

コロナ下における健康意識の変化

では次に、以前よりも気にするようになった健康に関する事柄(ヘルスベネフィット)についてみていきましょう。
約4人に1人が「健康維持・増進(23%)」を挙げています。次いで「疲労回復(19%)」、少し開いて「風邪などの感染病予防・改善(16%)」、「栄養バランス(15%)」と続いています。大きな疾病対策というよりは「まずは日々の健康を維持したい、抵抗力・免疫力を強化したい」、といった気持ちが強いように映ります。そのためにも「日々の疲れを残さず、栄養バランスの良い食事をとって」、といったように、毎日の暮らしの中でできる取り組みや工夫に力点を置いている様子も浮き上がってきます(図表4)。

図表4

以前より気にするようになったヘルスベネフィット

新型コロナの上陸当初(2020年前半)は得体の知れないウィルスへの恐怖や不安から健康や免疫力強化といったマインドが一気に高まりましたが、現在は「対コロナ」ではなく、「心身の健康レベルを一段上げて、病気にかかりにくい身体を手にしたい」というマインドにシフトしているようです。

次に「今後利用したい、増やしたいと思うサプリのヘルスベネフィット」についてみてみましょう。 2022年8月のデータをみると、「ガン予防・改善」に関するサプリの利用意向が前年より大きく伸びていることがわかります。昨今ではガンにおいても予防につながるさまざまなサプリが販売されてきており、生活者の関心も高まっています。

日本人の死亡理由でトップを占めるガン※2については、その関心もまたひとしおなのではないでしょうか。そこには「サプリで予防ができるなら」という期待があるように映ります。また、ゲノム(DNA)を利用したガンをはじめとしたさまざまな病気の罹患リスクの検査判定が、高齢層だけなく若い人にも密かに人気という話もあります。「罹る前に自分の身体を知り、対策を」といったセルフディフェンスのマインドが高まっていると言えそうです(図表5)。

図表5

今後利用したい、増やしたいと思うサプリのヘルスベネフィット

最後に、現時点の各ヘルスベネフィットに対するサプリの購入実態と今後の購入意向(来年1年で購入したい金額)から市場の成長性=伸びしろを推計した結果をお届けしましょう。

「日々の健康」を大切にしていることを裏付けるように、「健康維持・増進」を筆頭に、「減量、体脂肪の抑制」や「筋肉強化」、「血中脂質の(コレステロール)の抑制」などの伸びしろが大きいという推計になりました。また、「美肌・肌ケア」や「痩身(スタイル良く、スリムになる)」といった「美しさ」を求める機運も変わらず根強いことがわかります。

そして、先ほどのサプリの活用で注目した「ガン予防・改善」に関する市場も大きな可能性を持っていることが推計されています。また、昨今では高齢者のみならず若年層でも発症しうることが注目されている「認知症予防」も大きな成長性を有すると推計されました。これらの結果からは、ガンや認知症といった重い疾患についても、サプリ等が「予防・改善」に対する手段として期待され、利用されつつあることが浮き彫りになってきました。
今後は心身共に健康であることはもちろん、ガンや認知症といった元来生活者が大きな不安を抱いていたであろう重い疾患に対しても「発症してから病院へではなく」、積極的に予防・改善等に時間やお金を投資していく、そういった時代になってきているのかもしれませんね(図表6)。

図表6

注目のヘルスベネフィット

4. むすびとして

新型コロナによって、「健康」への意識や取り組みもまた大きなインパクトを受けました。振り返ると上陸当初のそれは「健康」への意識・関心というよりは、「コロナにはかからないように・・・」という「新型コロナ感染予防」という意識だったようにも映ります。ほどなくして単なる発熱であっても病院を受診しにくい状態や、救急搬送であっても診察を受け入れてもらえないような状況を目の当たりにすることにより、病院にかからないために風邪なども含めて、「より健康的で病気にならない状態」を手に入れる「健康と免疫力強化」に向かったのでは、と考えています。また、スポーツクラブなどでの運動も「3密回避」などにより自粛の波が押し寄せ、自宅などで手軽に行えるエクササイズなどもYouTubeなどの無料動画をはじめとして注目が高まりました。サプリ摂取などを含めた「セルフメディケーション」の考え方の拡がりです。

先日、「サステナブル・ブランド2023 東京丸の内」というSDGsに関するカンファレンスに登壇してきましたが、SDGsの17のゴールの中でも「3.すべての人に健康と福祉を」に比重をシフトして、「Well-being」を主題としたセッションが多くなっていることを実感しました。※3

マスクの下に隠れていた笑顔が溢れる。笑顔がこぼれた人だけでなく、その笑顔を眺める人にも心の充足=Well-beingが降りそそぐのだと思います。新しい暮らしの風景を楽しみに待ちたいと思います。

おわり

※1 卒業式におけるマスクの取扱いに関する基本的な考え方について(通知)(2023.2.10)

※2 厚生労働省 WEBサイト
性別にみた死因順位(第10位まで)別死亡数・死亡率(人口10万対)・構成割合

※3 第7回サステナブル・ブランド国際会議 2023 東京・丸の内(2023.2.14~2.15)
登壇セッション「ウェルビーイングが欠かせないDEI&“B”」


この記事で紹介した「健食サプリ・ヘルスケアフーズレポート2022」のサンプルレポートをこちらからダウンロードいただけます。


生活者研究センター概要

インテージの生活者理解の拠点として2020年8月3日に誕生。
長きにわたり蓄積している生活者の消費行動やメディアへの接触行動、さらには生活意識・価値観データなど膨大な情報を連携・横断して用いるとともに、社内の各領域におけるスペシャリストの知見を織り合わせることにより、生活者をより深く理解し、生活者を起点とする情報を発信・提供することを目的として設立された。また、お客様への直接的な貢献を目的として、共同研究や具体的なプロジェクトへの参画などにも積極的に取り組んでいく予定。


著者プロフィール

生活者研究センター センター長 田中 宏昌(たなか ひろまさ)プロフィール画像
生活者研究センター センター長 田中 宏昌(たなか ひろまさ)
1992年 広告代理店系の調査会社に入社。1994年より親会社の広告代理店における生活者データベースの立ち上げメンバーとして参加。以後、2012年まで、広告代理店の消費者研究や広告コミュニケーションプランニングセクションに駐在勤務する形で、広告コミュニケーションプランニングや商品・サービス開発の場面などで、データに基づく生活者理解をテーマとしてプロジェクトを支援してきた。その間、消費財、耐久財、サービスなどさまざまな領域を担当。
思春期よりTVCMの映像やコピーに魅了され、TVCMだけを録画して繰り返し見るような子どもだった。記憶に残る作品を選ぶとすれば「1983年 サントリーローヤル ランボオ編(広告代理店 電通)」と「2004年 ネスカフェ 谷川俊太郎 朝のリレー・空編(広告会社 マッキャンエリクソン)」を迷うことなくあげる。趣味は自転車(ロードバイク、マウンテンバイク)、落語鑑賞など

1992年 広告代理店系の調査会社に入社。1994年より親会社の広告代理店における生活者データベースの立ち上げメンバーとして参加。以後、2012年まで、広告代理店の消費者研究や広告コミュニケーションプランニングセクションに駐在勤務する形で、広告コミュニケーションプランニングや商品・サービス開発の場面などで、データに基づく生活者理解をテーマとしてプロジェクトを支援してきた。その間、消費財、耐久財、サービスなどさまざまな領域を担当。
思春期よりTVCMの映像やコピーに魅了され、TVCMだけを録画して繰り返し見るような子どもだった。記憶に残る作品を選ぶとすれば「1983年 サントリーローヤル ランボオ編(広告代理店 電通)」と「2004年 ネスカフェ 谷川俊太郎 朝のリレー・空編(広告会社 マッキャンエリクソン)」を迷うことなくあげる。趣味は自転車(ロードバイク、マウンテンバイク)、落語鑑賞など

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