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猛暑の夏に売れたものは?記録的な猛暑と新しい風景(前編) ~生活者スナップショット Vol.4

1. はじめに ~ 記録的猛暑に負けないために

本格的な秋が到来し、ホッとしている方も多いのではないでしょうか。
先月(9月)、気象庁が発表していた2023年夏の気象のまとめをどこかで目にした方も多かったのではないでしょうか。1898年から統計を開始した日本の「平均気温偏差」は今年、過去最高を記録して、かつて我々が経験したことのない記念碑的な夏だったようです。※1
気温の計測にあたっては、都市化の影響が小さく地域の偏りを考慮した15地点※2を選び、それらの観測値から平均気温偏差を算出しています。その結果、今年の日本の夏の平均気温偏差は「+1.76」となり、これまで最も高かった2010年の「+1.08」を大幅に上回ったものになっていました。ちなみに、統計開始以来の平均気温偏差のTop5を眺めてみると、今年がひときわ暑い夏だったことがわかるはずです。

【平均気温偏差のTop5】
[1位]2023年 1.76、[2位]2010年 1.08、[3位]2022年 0.91、
[4位]1994年 0.79、[5位]1978年 0.76

私自身、暑さ対策は、「暑い時間帯の外出や移動を極力避ける」に尽きると考えていて、勤務地の秋葉原(東京都千代田区)へ出勤する際は、朝6時台前半の電車に乗って出社をしていました。この時間帯だと、1時間弱電車に揺られても7時台には秋葉原に到着することができ、本格的な暑さを感じる前に会社に飛び込むことができました。通勤途中の電車内も、乗客はまだまだ少なく空いているため、空間的な暑苦しさを感じることもなくゆったりと通勤できることもメリットに感じていました。

みなさんは観測史上最も暑かった今年の夏をどのような工夫で乗り切りましたか?

2. 猛暑の夏を「売れたもの」から振り返る ~ お茶漬けが売れた夏 ~

ここからは、データ分析を担当した若手メンバー2名を交えてこの猛暑の夏に「売れたもの」のデータを眺めながら、その特徴や背景にある生活者の意識を読み解いていこうと思います。

生活者研究センター 田中宏昌(男性50代 社会人30年目:以下 田中):今年は本当に暑い夏でした・・・。最初に「売れたものは何だったのか?」という話をするとズバリ?

企画・分析5部 玉木隆士(男性20代 入社3年目:以下 玉木):6月から8月までの3か月間の購入金額のデータが昨年同時期と比較して大きく伸びたものをまとめて持ってきました。去年の夏から10%以上購入金額が増加したのは、「日焼け・日焼け止め」、「制汗剤(シート)」、「お茶漬けの素」、「キャンディ」となっていました。中でも特に「日焼け・日焼け止め」は前年から+21.8%と最も伸びていました。

図表1

カテゴリー別購入金額 対前年伸び率 ※6月~8月データ

田中:暑かったことはもちろんですが、コロナの感染症法上の分類が第5類に移行され、外出機会が一気に増えて日焼け対策が求められたのも理由として考えられますね。

玉木:その他にも暑さによる汗対策としての「制汗剤(シート)」もそうですし、実は「キャンディ」もその内訳、ブランドを詳しく見てみると「塩分補給系キャンディ」が売れていて、発汗に対する塩分補給を目的としてキャンディが売れていたことがわかりました。

田中:確かに、「汗をかいたら水分補給だけでなく、塩分も」という認識は幅広い年代でも定着してきましたね。それから、秘かにランクインしている「お茶漬けの素」も気になっています。

玉木:「お茶漬けの素」は暑さで食が細くなる夏にサラサラと手軽に食べることができる食べ物として人気があったようです。冷たくしたお茶で作ったり、温かいお茶で作って氷を浮かべて、など作り方もいろいろあるようです。「冷やし茶漬け」もTVCMや口コミなどを通じて広がっているようです。

ナレッジ&インサイト開発部 北形隆太郎(男性20代 入社1年目:以下 北形):お茶漬けですか・・・その手がありましたね!私は「そうめん(乾麺)」でこの夏を乗り切ってました。そうめんってザルや麵つゆ用の器など洗い物が増えて結構面倒くさいんです。お茶漬けなら・・・。

田中:食欲や消化機能が低下する夏場には、食べやすいメニューや求められる栄養素への変化が考えられますね。また、食欲がないと食べるものを準備する意欲も落ちるので、北形さんが言ってくれたように手間がかからないことも大きなポイントでしょう。その意味でもお茶漬けは味もさることながら、猛暑時にも愛される理由があるように映りますね。ぜひ、来年、試してみてください。ご飯を炊いたとき多めに炊いて冷凍していくと便利です。

玉木:私からもおすすめします。ランキングに話を戻すと、「マスク」については大幅に減少(-34%)しており、感染不安の軽減は暑さから「もういい加減マスクはしていられない」という心理も働いていそうです。実はこの夏は私もマスクをあきらめました。

田中:2位の制汗剤シートについては購入率や購入金額の推移を2019年から23年まで5年分を追ってくれた興味深いデータを持ってきてくれましたね。

図表2

形状別にみる制汗剤 購入率、購入者あたり金額の推移

玉木:ひと口に「制汗剤」といっても、「シート」、「スティック」、「パウダースプレー」とさまざまなタイプがあるんですが、スティックタイプとパウダースプレータイプはここ数年購入率には大きな変化がみられず、わずかに購入金額が伸びているという状況です。一方でシートタイプは21年から23年にかけて利用率が大きく伸びて、5年トレンドでみるとV字回復しています。購入金額もわずかですが増加傾向にあります。

田中:これも外出機会が増えていることと関係がありますか?

玉木:スティックタイプやパウダースプレータイプはお出かけ前に家で使うことが多い形状なのですが、シートタイプは持ち歩きにも向いていますし、「気になったときにもうひと拭き」といった使い方ができることも魅力なんだと思います。

北形:通勤や外出などで出歩いて汗をかいてしまうと、せっかく家で汗対策をしても落ちてしまうこともあります。そんなときにシートタイプだと「まさにもうひと拭き」が可能になります。私も持ち歩いています!

田中:私の場合は汗をかいても洗顔ソープやボディシートがせいぜいでした・・・。「汗をかいたから拭く」、ではなく、「汗を抑える」、という形で汗対策も進化しているんですね。制汗剤シート、今度試してみたいと思います。

玉木&北形:おすすめです!!

田中:先ほど玉木さんから「猛暑に負けてマスクを外した・・・」という告白がありました。一気にマスクの売り上げも減少しているようですが。

玉木:実はマスクについても性年代別に分析してみると面白い傾向が浮かび上がってきました。今年に入ってから男女ともに30~40代、50~60代において購入金額の減少が目立っています。特に50~60代の落ち込みは大きなものになっており前年比で7割程度になっています。5類への分類移行に伴う「中高齢層のマスク離れ」といってよいでしょう。
その一方で女性10~20代の落ち込みはそれほど大きくないこと(9割程度)が目を引きます。

図表3

性年代別 マスクの100人当り購入金額の推移

田中:感染に関しては警戒心も強かった高齢層は外出の際もマスクをちゃんとつけている印象がありましたが、GW以降、ずいぶんとマスクを外した方々を目にするようになりました。一方の若い人は男性も中高齢ほどの落ち込みはないですね。
このグラフが示すように、若い子たち、特に女性のマスクの着用は衛生行動、感染予防とは異なるところにその理由がある、と考えられているようです。コロナ禍中にもこの現象はテレビなどで特集が組まれて報道されていましたね。化粧の手間が省ける、マスクをしている自分の見た目が好き、コンプレックスだった鼻や口元が隠せる、人から褒められる、などなど、その理由はさまざまでした。若い世代は特に見た目を気にする年代でもあるため、今後もそうした理由からのマスクの着用は一定数続くとみています。

北形:私も大学時代にマスク姿を褒められたことがあって、外すのを躊躇った時期もありました(笑い)。

田中:おおお、ここにもいましたか。

3. むすびとして ~ 分析者&生活者視点での読み解き ~

暑かった2023年の夏。振り返ったとき、みなさまはどのような風景を思い出しますか?
日々、データを集計・分析していると、分析結果を通じてさまざまな事象が浮かび上がってきます。時に性別や年代別にみてみたり、ランキングにしてみたり、とあの手この手を尽くしてデータを読み込んでいきます。そうした読み込みの中にも発見や気づきがあるのですが、その一方で、今回のようにデータをテーブルの上に広げて、自分の実体験を踏まえながら、「あんなこと、こんなこと」を生活者視点で語り合ってみるのもいいものです。そうした会話は自分の体験や理解では及ばないふとした気づきをもたらしてくれたりもします。

カジュアルな対話の中にこぼれる本音に、「生活者インサイトのかけら」や「新しい市場の兆し」が見え隠れしたりもします。今回のやりとりの中でも、「猛暑で変わる食文化」や「マスクの提供価値」などにそうしたものを感じることができました。

次回は「猛暑シリーズ 第2弾」として、アンケート結果をもとに「日傘」や「ネックリング(冷やしておいて首に巻くもの)」など、2023年のヒット商品に着目しつつ、本編で登場した分析者のお二人をお招きしてスナップショットをお届けいたします。

今後も共にデータ分析を継続して、その変化、潮流をレポートしていきます。お楽しみに。

ではまた次回。

おわり


※1 ウェザーニュース「2023年の夏は過去最高を大きく上回る圧倒的な暑さ」
※2 観測している15地点
網走、根室、寿都、山形、石巻、伏木、飯田、銚子、境、浜田、彦根、宮崎、多度津、名瀬、石垣島


著者プロフィール

生活者研究センター センター長 田中 宏昌(たなか ひろまさ)プロフィール画像
生活者研究センター センター長 田中 宏昌(たなか ひろまさ)
1992年 電通リサーチ(株式会社電通の100%グループ会社 当時)に入社。
1994年より電通の大規模生活者データベースの立ち上げメンバーとして参画。
以後、2012年まで消費者研究センターや電通総研などの横断機能組織に駐在勤務する形で、広告コミュニケーションプランニングや商品・サービス開発の場面などで、データに基づく生活者理解をテーマとしてプロジェクトを支援してきた。
その間、消費財、耐久財、サービスなどさまざまな領域を担当。

2012年 楽天グループ(株)を経て、2013年 インテージへ。
2020年より現職。

思春期よりTVCMの映像やコピーに魅了され、TVCMだけを録画して繰り返し見るような子どもだった。
記憶に残る作品を選ぶとすれば「1983年 サントリーローヤル ランボオ編(広告代理店 電通)」と「2004年 ネスカフェ 谷川俊太郎 朝のリレー・空編(広告会社 マッキャンエリクソン)」を迷うことなくあげる。
趣味は自転車(ロードバイク、マウンテンバイク)、落語鑑賞など

1992年 電通リサーチ(株式会社電通の100%グループ会社 当時)に入社。
1994年より電通の大規模生活者データベースの立ち上げメンバーとして参画。
以後、2012年まで消費者研究センターや電通総研などの横断機能組織に駐在勤務する形で、広告コミュニケーションプランニングや商品・サービス開発の場面などで、データに基づく生活者理解をテーマとしてプロジェクトを支援してきた。
その間、消費財、耐久財、サービスなどさまざまな領域を担当。

2012年 楽天グループ(株)を経て、2013年 インテージへ。
2020年より現職。

思春期よりTVCMの映像やコピーに魅了され、TVCMだけを録画して繰り返し見るような子どもだった。
記憶に残る作品を選ぶとすれば「1983年 サントリーローヤル ランボオ編(広告代理店 電通)」と「2004年 ネスカフェ 谷川俊太郎 朝のリレー・空編(広告会社 マッキャンエリクソン)」を迷うことなくあげる。
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