猛暑の夏に売れたものは?記録的な猛暑と新しい風景(後編)~生活者スナップショット Vol.4
目次
1.はじめに ~ 日傘をお供に暑さをしのぐ
先週、このコラムにも幾度か登場したこともある神奈川県川崎市多摩区にある生田緑地に「秋」を求めて遊びに行ってきました。この緑地には生きている植物化石とも呼ばれる「メタセコイア(ヒノキ科の落葉針葉樹)」という大木が林立するエリアがあります。「落葉新針葉樹」とあるだけに、春には湧き立つような新緑の葉をまとい、青い空に向かって天高く伸びる枝を見上げては、春の到来を楽しむことができます。冬には茶色の葉が絨毯のように大地を覆い、やがて土に還る。そうした1年のサイクルの中で、ほんのひと時の優しい茶緑に色変わりするメタセコイアもまた、季節の移ろいを感じられる良いシーズンです。
久しぶりの緑地は天気も恵まれ、10月とはいえ強い日差しがさす中、2人組の女の子が日傘をさして、立ち並ぶキッチンカーの間を行ったり来たりしながらランチ選びを楽しんでいました。
そういえば、この夏は日傘男子をこの緑地でもずいぶんと日傘男子を目にしたものです。
前回は購買履歴データを用いた分析を行いましたが、今回は「後編」として、WEBアンケートの結果から猛暑の夏を振り返ってみたいと思います。
2. 猛暑の夏を「WEBアンケート」から振り返る ~ コロナの波から日傘の波へ ~
ここからは、アンケートの企画立案から集計分析を担当したメンバーを交えて、前回同様にデータを眺めながら、その特徴や背景にある生活者の意識を読み解いていこうと思います。
生活者研究センター 田中宏昌(男性50代 社会人30年目:以下 田中):前回は購買履歴データの分析結果を眺めながら、猛暑の夏に売り上げを伸ばしていたお茶漬けの話で盛り上がりましたね。今回は購買履歴では捉えきれないモノやコトの動きをWEBアンケートで追ってくれた、ということで、そちらのデータを使って話をしていきましょう。
ナレッジ&インサイト開発部 北形隆太郎(男性20代 入社1年目:以下 北形):アンケートの質問項目から「今年から利用した人(新規利用者)」を横軸に、「新たに利用してみたい人(新規意向率)」を縦軸において、わかりやすいように4象限のマップにしてみました。暑さ対策、日差し対策と目的はいろいろありますが、突出していたのは「ネックリング」でした。
図表1
CBD本部 企画・分析5部 玉木(男性20代 入社3年目:以下 玉木):実は私もこの夏中、気になっていました。日傘同様に購入には至っていませんが、効果があるのかないのか、どのくらい効果がもつのか、など、検索してしまいました。口コミによればだいたい3時間くらいは持続するようなので気持ちもグラつきました。
北形:ネックリングは以前から細々と存在していましたが、この夏、一気にメジャーになりましたね。価格もそこそこ、繰り返し使えるということもあり、購入した方も多かったのではないでしょうか?ちなみに私も玉木さん同様に注目はしていましたが購入には至っておりません(笑)。
田中:夏休みのはじまった頃かな?いつもより遅い時間、会社に向かう電車に乗った時、これからお出かけするだろう4人家族が目の前のシートに座っていたんですが、全員が色とりどりのネックリングをしていたとき、「これはキテル!」と思いました。私は持ち歩きや水で濡らすとまた涼しくなる利便性からクールタオル派(水で濡らすとひんやり。バサバサと振ると冷たさが回復する)ですが、ネックリングの良さはTシャツの首周りが濡れない、という点でしょうね。クールタオルは・・・汗をかいたようにじんわりと濡れるので、使うシーンや着る服を選ばないといけない弱点があります。ネックリング、試してみたいと思います。ちなみに気になっていながら購入しなかった理由は?
玉木・北形:ネックリングをしている姿が・・・(笑)
田中:わかります・・・(笑)でも今後、おしゃれなデザインや色味のものが登場するかもしれませんよ。
北形:その時は。手を伸ばしてしまうかもしれません。でもその前に家で試す、というのはありそうですね。
北形:先程話題に出てきた「日傘」についてみていきましょう。アンケートの結果からも、ネックリングには及びませんが、「日傘」も新しく使い始めた人も多いですし、今後、利用してみたい、という人も多い、という結果になっていました。今年だけでなくポテンシャルも大です。そこで、男性の日焼け止め対策、あるいは暑さ対策への意識が高まっている、という潮流を示すデータも準備してみました。
まず、「日傘」や「日焼け止め」の利用率を男女別に見てみました。
「日傘」も「日焼け止め」も利用率は女性よりも少ないものの、利用者の中で今年から利用し始めた割合は、「日傘」は26%、対する女性は13%と約半数。「日焼け止め」の今年からの利用者は16%、対する女性は7%と半数以下となっており、今年の夏は男性が「日傘や日焼け止めに手を伸ばした夏」と言えそうです。
玉木:男性の日傘の利用率は、合計7.4%……。たしかに女性と比較するとまだまだ少ないですが、想像以上に多く感じました。たしかに社内でも、日傘を使っている男性の話を聞きますね。
図表2
北形:男性を10歳刻みの年代ごとに分けてみました。調査の企画段階では日傘ユーザーは男性若年層という話をしてきましたが、アンケート結果では若者だけなく高齢層もしっかりと日傘を利用していることが浮き彫りになりました。当初は左肩上がりのグラフになると思っていたら、U字型でした。
玉木:70代は利用者が多いだけでなく、新規利用者の割合も39%と10代(33%)を上回っていますね。ただ、目的に目を向けると若者は日焼け対策、高齢層は熱中症対策、と違いがありそうですね。
図表3
北形:まさに、「暑さ・熱中症への対策」について関心の有無を聞いてみると、男性では10代、70代が高く、日傘利用率と同じような「U字」型のグラフになっています。高齢層は熱中症という、それこそ「命の危険」を感じての対策として、日傘の利用を始めたのではないか、と考えられます。調べてみると埼玉県などでは自治体が男性中高齢層の「日傘」の利用を推奨するポスターを作製・配布して、その普及に力をいれています。そうした動きも合わさってジワジワと広がっているのかもしれません。
玉木:埼玉と言えば、猛暑関連のニュースでもたびたび登場する「熊谷」もあります。暑さ対策・熱中症対策は切実な課題なんでしょうね。
図表4
田中:持っている傘にも違いがありそうだよね。アウトドアメーカーの日傘は若者に人気のようです。国内大手メーカーの日傘は「めちゃくちゃ軽くて丈夫。そして、おしゃれ♪」と口コミで評判になって、店頭で見かけなくなってしまいました。私は以前からメインは雨傘として購入した晴雨兼用のものを持っているんですが、トレッキングなどで持っていくことを前提としているので、200g程度ととても軽く、持っていることを意識しませんし、デザインもユニセックスなので、日傘としても良いのかもしれませんね。チャレンジしてみようかな。
北形:日傘の効果や、田中さんが話をしてくれたようなアウトドアでも使えるようなものや男性でも抵抗なく使えるデザインのものが広く知られるようになると、利用者ももっと増えそうですね。
玉木:ちょっとググってみました。田中さん、これですか?
田中:おおお、それです。おすすめです!
玉木:オンラインサイト・・・完売です・・・(涙)
北形:インテージの「生活者360°Viewer」という分析方法を使って、「日焼け止め」を購入した男性のプロファイリングを行ってみました。日焼け止めを買った人ということで日傘も使っているかもしれません。
図表5
特徴的な部分を紹介すると、日焼け止めを購入している男性10~30代は、健康や美容への関心が高く、普段から運動することを心がけていたり、睡眠にも気を使っている、そうした人物像が浮かんできました。また、日常の買い物については品質・センス・デザインを大切にしているようです。おしゃれな日傘を選んでいそうです。そして、自分自身を向上させることに時間やお金を使う人、そうした人物像が描き出されました。スキンケアを意識していて日焼け止めを使っている玉木さんはあてはまっていますか?
玉木:「健康」への意識、運動や睡眠を大切にする部分など、「肌」だけじゃなく身体が健康であることが大切だと思っているところはあてはまっていると思います。それからなにかを買うとき、「デザイン」はけっこう気になるかな。
田中:こうしたプロファイリングを見たうえで、日傘の今後の普及、浸透を考えると「デザイン性」みたいなものがますます重要になってくるように感じるよね。デザインだけじゃなく機能性なんかも大切にしそう。
玉木:機能性、軽いとか、折りたたみやすいとか、小さくたためるとか、気になります。
田中:プロファイリング、当たってるね(笑)
3. むすびとして ~ 購買履歴と意識データの重なるところに新しい風景が立ち上がる ~
前回に引き続き、猛暑の夏を振り返ることをテーマにお届けしました。前編は購買履歴データからのアプローチ、今回の後編はWEBアンケートの結果とインテージが保有するアンケートデータをモニターIDベースでつないでダイナミックに活用したプロファイリング分析(生活者360°Viewer)を用いて、ネックリングや日傘など、購買履歴データでは掴みきれない夏の風景を切り取ってみました。
アンケート結果の読み解きもさることながら、分析者個人の体験を通じての会話の中に、年代や関心、体験の違いが生む視点や気づきの差異などを、リアリティをもって感じていただけたら、と思います。
みなさんは前編、後編を通じて、どのような気づきがありましたか。ご自身の経験や実感などを重ねながら読み解いてみるとまた異なった夏の景色が浮かんでくるかもしれませんね。
今後も共にデータ分析を継続して、その変化、潮流をレポートしていきます。お楽しみに。
ではまた次回。
おわり
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【生活者360°Viewer】
多面的で精緻なターゲット像を描き出すことにより、生活者理解に基づいた商品・サービス開発やコミュニケーション・プランニングを支援する分析サービスです。デモグラフィック属性や意識・価値観だけでなく、購買行動やメディア接触行動といったインテージの持つさまざまなパネルデータを横断・連携した15,000項目におよぶ膨大なデータから、各お客様企業のマーケティング課題に応じて柔軟にターゲット・セグメントを設定することが可能です。
※ さまざまなパネルデータを横断・連携するという性質上、出力結果のサンプルサイズはデータによって異なります。
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