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若者の健康への取り組み意識を「実践」につなぐヒント

本コラムは2025年の夏にインテージのインターンプログラムに参加してくれた関西学院大学 人間福祉学部 社会起業学科 森藤ちひろゼミ 佐藤優羽さん(3回生)と取り組んだ共同研究をもとにお届けします。佐藤さんは、生活者の健康意識が向上し、質の高い食生活を希求するようになることで、「安心・安全な国産の農作物」や「地産地消」といった点に目が向けられ、国内の農作物の消費が活発化するという“Good cycle”の創出を構想・研究しています。

本コラムでは、若者の健康意識と現状実践している取り組みに着目し、若者の健康意識の向上からの“Good cycle”の創出について考えてみます。

1. 若者における心と身体のケア意識

若者は身体の健康にどの程度気を遣っているのでしょうか?性年代で比較してみました。男女ともに20代が身体の健康への配慮が60%前後と最も低く、その後、年齢を重ねるごとにスコアが増え、70代で最も高くなっています(図表1)。加齢により身体の不調を感じたり、実際に病気を経験することで健康への関心が変化していくと考えられますが、若者は健康に対しての不安や不調が上の年代層ほど多くないため、「自分事」と捉えている人が少ないことが推測されます。

図表1

さらに心の健康への配慮に目を向けると、身体の健康への配慮と同様に20代で底打ちした配慮意識は年齢を重ねるごとに増加していきます(図表2)。仕事や家庭などを持つことにより心労などが増え、心の健康にもより自覚的になっていくと考えられます。

図表2

心身共に健康への意識が低い10代後半から20代は、進学や就職などライフスタイルも大きく変化する時期です。特に大学生になると授業やサークル活動、アルバイトなど「自分の裁量」で過ごす時間が増え、ひとり暮らしを始めるなど、自身の行動による健康への影響度が高まる時期ともいえます。
自分の裁量で行動ができるようになった早いタイミングかつ、仕事や家庭を持つ前に、睡眠や食事などの健康に直結する要素への意識や行動を高め、自己の心身の状態に自覚的であることは、その後の健康的な人生のスタートを切るためには重要なことだと考えられます。

2. 今後の取り組み意向の弱さにみられる「自分事」としての希薄性

ここからは心身ともに健康への取り組み意識が低調だった20代を中心に、健康に対する取り組みの実践と今後の意向について見ていきましょう。インテージの過去の自主調査「ウェルビーイングと食の関係を考える ~生活者スナップショット Vol.6(2024.3.5)」から 、心も身体も健康であり幸福である状態をあらわす「Well-being」には食が重要な役割を担っていることがわかっています。そこで、食を中心に、健康のための取り組みの実践状況と今後の意向を聞きました。

男性20代の身体の健康のための取り組みとして「野菜を多くとれる食事」が最も多く挙げられていました。食に着目すると「栄養バランスに気を使う」、「カロリーに気をつかった食生活」が並び、「できるだけ国産」や「産地直送 」といった食材の調達にまつわるものも挙がっていました。また「睡眠・休養を十分に」、「ウォーキングなど軽めの運動」と休息や運動なども重視していました。
一方で今後の意向はやや低調で 、「ストレスをためないように」だけが実践と同レベルとなっており、ストレス対策への関心の高さが伺える結果となっていました。今後の意向が低調だった背景として、現在、ある程度実践している人は「今の取り組みで十分」という考えがあり、現在、実践していない人は「やらなくても自分はまだ大丈夫だろう・・・」といった考えがありそうです。健康に対する適度な危機意識を醸成し、自分事として捉え、将来への備えとして実践に向かわせるためには現状におけるリスクの理解と取り組みによる改善効果を根気強く深めていく施策の必要性を感じます。(図表3)

図表3

女性20代では男性より実践する取り組みは多くなっていました。中でも「睡眠や休養を十分に」や「ストレスをためないように」は3割を越え、「糖分に気をつかった食生活」、「野菜を多くとれる食事」、「カロリーに気をつかった食事」、「栄養バランスに気をつかった食事」など食生活に関するものが多く挙げられていました。糖分やカロリーといった言葉の裏には健康だけでなく、‘キレイ・カワイイ自分’への希求が見え隠れします。これらの想いは女性若者が健康行動を始めるための動機づけとして効果的な要素になると考えられます。 (図表4)

図表4

男女ともに20代が「ストレス」に対して今後の取り組み意向が高かったことは注目すべきポイントだと考えられます。若者の特性として「空気を読む(KY)」や「失敗を嫌う(失敗回避)」といったキーワードが取り上げられますが、そうした反作用として、日々の暮らしの中で大きなストレスを感じているのかも知れません。また、全体的に取り組み意向が低い点も課題として映ります。 現状に油断することなく適度な運動や休息、さらには健康的な食生活を送ることが、心身の健康へとつながることを理解することが健康への関心を高め、取り組みの実践につながるものと考えます。
次章ではアンケート内の自由記述に着目して、若者が健康への関心を高め、行動を始めるきっかけとなることがらを探っていきたいと思います。

3. 若者の健康意識や行動が変化するポイント

若者において健康への取り組みに関する意向の低さを自分事化の希薄さに理由があると仮定してみましたが、健康に気をつけている人が取り組みを始めた、あるいは続けている理由に関する自由記述に意識を変えるヒントを求めてみましょう。18~22歳に絞って回答を読み解いたところ、①現状に基づく外部、②現状に基づく内部要因、さらには③将来を見据えた内部要因の大きく3つに分かれていました。代表的な記述とともにそれぞれを見ていきましょう。

若者に健康行動を促す動機や要因①:現状に基づく外部要因

親や家族など身近な人が生活習慣病に罹患したため、危機感を感じた
ひとり暮らしを始め、健康を意識するようになった

身近な人が健康でなくなり、生活が変化したことを目の当たりにすることで、自分事として捉えるきっかけとなったと考えられます。また、進学や就職などによって生活が大きく変化し、食生活や睡眠などを自分自身で律しなくてはならない環境になることも、健康行動に繋がると推察されます。

若者に健康行動を促す動機や要因②:現状に基づく内部要因

・自らの体調に変化を感じた
・今の生活に健康が不可欠だから

若者は、比較的身体の不調を感じにくいものの、不摂生な生活が継続すると体調不良を及ぼし、睡眠や食生活といった健康行動について考えるきっかけとなることもしばしばあるようです。
一方で、

・後先を考えずに今を生き、楽しむ

といった発言もみられました。このような 楽観的な健康観を抱く若者に対して、年齢に関わらず病気に罹患する可能性があること、健康を失えば当たり前の「今」も失いかねないことを根気強く訴求することによって、健康への意識を見つめ直し、健康志向を高めるきっかけを創ることもできるのではないでしょうか。

若者に健康行動を促す動機や要因③:将来を見据えた内部要因

・長生きするため
・将来の病気を予防するため

健康への取り組み意識が加齢によって増加することを考えると、今から将来を見据え、なんらかの健康行動に取り組んでいる若者層は、今後も健康への取り組みを継続するものと考えられます。こうした人々に対しては将来的な財産となる健康づくりに向けた正しい情報を中長期的に提供することが芽生えた意識を行動に変えるきっかけになると考えます。

自由記述から見出したこれらの3つの動機やきっかけを学びとして、若者の健康への取り組み意識を身近にするための工夫を考えていくことは効果的と考えます。大学生を例にとれば、ひとり暮らしの始まる大学入学時のオリエンテーション期間中に食生活などを中心とした健康意識を高めるためのプログラムを開催することや、入学時に留まらず4~5月など生活の変わりやすい時期に合わせて開催することも有効と考えます。これらは①②であげた現状の暮らしから立ち上がる動機に作用すると思われます。

4. 健康に関する情報入手先と信頼する情報

本章では若者の健康への関心を高め、健康行動のきっかけとなる効果的な手立てを探るため、「健康に関する情報の入手先 」に着目して有効な手立てを探していきたいと思います。

男性20代の情報入手先は「YouTube」が最も高く、次いで「テレビ番組(民放)」、「X」、「家族・親戚」と続きます。動画やSNSは他の年代層より重要な接点となっているようです。また、テレビも一定の存在感を保っていることがわかります。そして、「家族・親類」や「友人・知人」といった身近な人からの情報も大切な情報経路と捉えられていました。信頼している情報入手先としては「テレビ番組(民放・HNK)」や「家族・親類」、「友人・知人」、さらにはデジタル系の「YouTube」や「X」が高くなっていました。(図表5)

図表5

女性20代では「Instagram」が際立って高く、健康に関する有用な情報入手先となっているようです。次いで「X」、「家族・親類」「YouTube」、「テレビ番組(民放・NHK)」と続きます。「Instagram」 やテレビ番組のスコアの高さは男性との顕著な差となっています。また、信頼している情報については「家族・親類」が「Instagram」とともにトップに立ちました。「健康」といった情報については家族など身近な人からの情報を頼りにしているようです。他に「テレビ番組(NHK・民放)」、「X」が続いており、テレビへの信頼も高くなっています。また「通っている病院の医者や看護師」、「管理栄養士など健康に精通した専門家」からの情報も男性より高く、専門的な意見も大切にしている様子が浮かんできました。(図表6)

図表6

こうした結果から若者に対する健康行動を促すために有効なコミュニケーション施策として、「動画・SNSコンテンツ×専門家」というフォーマットが考えられます。若者が情報に触れる機会が多いショート動画やSNSを医師や看護師、栄養管理士などの専門家が積極的に活用することによって情報の波及浸透と信頼醸成の双方を実現できるのではないでしょうか。専門家の発信もショート動画やキャラクターの起用などにより、わかりやすく親しみを持ってもらいやすい素材を準備することも効果的だと思われます。

5. むすびとして

若者 は心身的な不調を高齢層ほどには経験していないため、「健康」への関心や取り組みが弱くなっていました。しかしながら、家族や友人など周囲の人が健康に不調をきたしたりする場面に遭遇することにより、健康の大切さを「自分事」として認識する姿が浮かんできました。また、具体的な健康への取り組みとしては「食」に関するものを挙げる人が多かったことから、日常の生活の中で改善でき、継続できるものを念頭に置いていることも分かりました。
そのため、将来的にも心身ともに健康的な生活を送り、健康を他に代えがたい財産として安心して生きて行けるように、今後は若者に対して 健康に対する日々の取り組みの重要性や、食生活の改善工夫による効果・効能などの理解を深めてもらうことが重要となると考えます。その際、SNSや動画といったメディアに加えて、学校での教育も認知向上、理解促進に効果的だと思われます。授業を通じて、心身ともに健康であるために「食」がもたらす効果・効能や具体的な取り組み事例~安心・安全な食材の調達や、栄養バランスを考えたメニュー~などの学習機会を提供 することにより、その魅力や効能を伝えることができるはずです。また、産地直送とつながる「地産地消」といった近年の若者が高い関心を寄せる環境配慮といった価値観にもフィットするものと考えます。心身の健康への関心にプラスして、地域支援や地球環境への貢献が加わることで、より関心を持ちやすいものになると考えます。

6. 振り返り

生活者研究センター 田中宏昌(以下 田中):自分自身も加齢による衰えや不調を感じることで自分の身体や健康に関心が高まった実感があります。

関西学院大学 佐藤優羽(以下佐藤):若い人たちも「本当は身体に良くない」ってわかっているけど、欲求の方が勝ってしまい・・・という部分も大きいと思います。自分自身もこってりしたラーメン、夜更かしなど、身体に良くないと思いつつ・・・という行動が溢れています。

田中:とはいえ、佐藤さんが健康や健康への取り組みに関心を持つようになったきっかけは?

佐藤:ずっと野球をやってきた中で、筋トレで身体を作ったり、ケガをした際に身体の状態に関心を持つようになりました。それから、モチベーションやストレスみたいな部分から心の健康にも関心を持つようになりました。

田中:身近なところから健康を自分事化していったわけですね。佐藤さんが考える“Good cycle構想”はこの研究を通じて変化がありましたか。

佐藤:課題と可能性がより明確になったと思います。課題はやはり若者の健康への関心と取り組み意識の弱さです。その一方で、自分事化する「スイッチ」もすこしだけ見えたように思います。家族や友人など身近な人の苦労を間近に見たことや「自分自身が病気やケガをして」というまさに自分事として降りかかってきたとき、あらためて健康の大切さが身に染みた、との声が多く上がっていました。降りかかってからではなく、その前に、という点でも学校の授業での情報提供は効果的なのではと思いました。

田中:SDGsへの取り組み意識の醸成なども学校教育の効果は大きかったですよね。

佐藤:若者の健康意識が高まることで、安心・安全な食への関心も高まり、国内の農産物・農業への関心へとつながるのではないか、と考えています。そして、やがては国内農業の支援、さらには自らが国内農業の未来を拓くという意思で一次産業に就労するといったマインドが生まれるのでは、という絵を描きました。

田中:“Good cycle”構想がさらに大きくなりましたね。佐藤さんのこれからの探究を楽しみにしています。ぜひ、また、お話をしましょう。

著者プロフィール

佐藤 優羽(さとう ゆうわ)プロフィール画像
佐藤 優羽(さとう ゆうわ)
関西学院大学 人間福祉学部 社会起業学科3年生 森藤ちひろゼミ所属。
農業を営む祖父を持ち、日本の農業の衰退とその復興に関心を抱く。復興への策として自身が農業に従事するのではなく、国内の農産物が誇る「安心・安全」や「多様性」を生活者の健康への関心と繋ぐことによって農家・農業に潤いが満たされる夢を構想している。
趣味はゴルフ。特技は野球。

関西学院大学 人間福祉学部 社会起業学科3年生 森藤ちひろゼミ所属。
農業を営む祖父を持ち、日本の農業の衰退とその復興に関心を抱く。復興への策として自身が農業に従事するのではなく、国内の農産物が誇る「安心・安全」や「多様性」を生活者の健康への関心と繋ぐことによって農家・農業に潤いが満たされる夢を構想している。
趣味はゴルフ。特技は野球。

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