男女で目的が違う?「菌活」にまつわる生活者の意識と市場トレンドとは
近年、腸内環境を整えることが健康や美容につながるとされ、「菌活」「腸活」といった腸内菌を意識した食や生活習慣を取り入れる人が増え、数多くの関連商品が発売されています。その実態を、販売データと、全国の20~69歳男女2261人に実施したアンケート調査から分析してみました。
目次
「菌活」ブームで関連市場はどう動いている?
ブームの実態を、まずは菌活アイテムの代表ともいえるヨーグルトと主な発酵系飲料の市場動向からみてみましょう。図表1は、ヨーグルト、ドリンクヨーグルト、乳酸菌飲料(殺菌しておらず要冷蔵…ヤクルト、ラブレなど)、乳酸飲料(殺菌してあり常温保存可能…カルピス、ビックルなど)においてバーコード登録されている商品数の推移です。
図表1
2011年には2,000種類に満たなかったこれらのカテゴリーの商品は、「菌活」という言葉が浸透してきた2015年には2,307種類と約1.2倍に増えました。直近の2019年は、2015年に比べヨーグルトと乳酸菌飲料は減りましたが、ドリンクヨーグルトはさらに1.3倍増え、乳酸飲料も増えており、全体としては2015年より約30種類増えています。
では実際、どれだけ売れているのか販売金額の推移をみてみましょう(図表2)。
ヨーグルトは2011年は約2,400億円でしたが堅調に推移し、甘酒ブームに火がつくなどさらに発酵食品が注目された2016年には2,954億円に達し、以降も2,500億円を上回る市場規模をキープしています。
目を引くのがドリンクヨーグルトの勢い。「菌活」が注目され始めた2012年から伸び続け、2016年には1300億円を超え、2011年に比べ市場規模は3倍近くに拡大。以降も同水準で推移しています。菌活ブームの中で、ヨーグルト以上に手軽に乳酸菌がとれるアイテムとして食習慣の中に定着している人たちも多いのかもしれません。
また、乳酸飲料は2014年まで乳酸菌飲料を下回っていましたが、2015年に発売された南アルプスの天然水&ヨーグリーナの爆発的な人気で市場規模が拡大し一気に乳酸菌飲料との差を縮め、2018年には600億円を超え互角の勝負となっています。
Key Point
・市場規模、ヨーグルトは2500億円を突破、ドリンクヨーグルトは3倍に
・ヒット商品で存在感増した乳酸飲料
「腸内環境」、意識している人はどれくらい?その理由とは?
ここからは、菌活ブームの中で生活者がどの程度腸内環境を意識したり、実際に対策しているかをアンケート結果からみていきましょう。
図表3
まず、日ごろどの程度腸内環境を意識しているのかを聞いたところ、「とても意識している」という人は1割未満ですが、「やや意識している」人と合わせると、52%と過半数の人が腸内環境を日ごろ意識しているという結果でした。
性・年代別に見ると、総じて男性より女性の方が意識している人の割合が大きい傾向があり、中でも、60代女性は「とても意識している」人が2割近く、「やや意識している」人と合わせると7割を超えています。
2人に1人以上が意識している腸内環境、どういった理由で気にかけているのでしょうか。選択肢から回答してもらった結果が図表4です。
図表4
全体では、「便秘の改善」「ダイエット/メタボの改善」がいずれも5割弱と2大理由となっています。次いで、「風邪/インフルエンザ予防」「美肌/肌質改善」がそれぞれ約3割、「便秘以外のお腹の症状の改善」「アンチエイジング」がそれぞれで約2割の回答がありました。また、「花粉症の改善」(14.7%)や「それ以外のアレルギー改善」(6.3%)よりも、「ストレス対策/抗うつ」(17.4%)を理由として選択した人が多い結果でした。
男女別にみてみると違いがあり、男性では「ダイエット/メタボの改善」が理由のトップ、これに「風邪/インフルエンザ予防」「便秘の改善」が続きます。一方女性では、「ダイエット/メタボの改善」は5割弱と男性とほぼ同じ割合の人が理由に挙げているもののそれ以上に、「便秘の改善」が6割超でトップ、2番目は「美肌/肌質改善」が5割の回答を集めました。この2つは女性が特に気にしている健康・美容テーマであることがわかります。
さらに、女性に絞ると、年代による傾向の違いがみえてきました。女性の上位4項目について年代別データをヒートマップ表示したものが図表5です。
図表5
「便秘の改善」は各年代で主な理由になっていますが、50-60代より20-40代での回答率が高く、また「美肌/肌質改善」「ダイエット/メタボの改善」は20-30代では他の年代より高いことがみてとれます。特に30代は上位3項目の回答率が他の年代より高いのが特徴的です。「便秘」を意識している人が7割超と多く、これを改善することが「美肌/肌質」「ダイエット/メタボ」の改善にもつながると考えている人が少なくないのかもしれません。
Key Point
・腸内環境、過半数が意識。最も高い60代女性では7割超
・意識の理由、男性は「ダイエット/メタボ改善」、女性は「便秘改善」、女性20-30代は「美肌/肌質改善」も
「菌活」、実際にどんなことをしている?
腸内環境を意識している人に、具体的にどんなことをしているのかを聞いてみました(図表6)。
図表6
主な対策のうち、過半数と最も多くの人が選んだのは「善玉菌の働きを助ける食べ物を食べる」。次いで、「善玉菌を食べ物やサプリで摂取する」「おなかを冷やさない」を、それぞれ3割強が実践していることがわかりました。「おなかを冷やさない」は女性では4割と男性より14ポイントも高く、男性より冷えを感じやすい女性は菌活とあわせて「温活」も積極的にしている様子がうかがえます。
Key Point
・菌活トップ3は「善玉菌の働きを助ける食べ物」「善玉菌を食べ物やサプリで摂取」「おなかを冷やさない」
・「おなかを冷やさない」は特に女性が実践
「菌活」の食材やサプリ、みんなが取り入れているものは?
では、プレバイオティクスとも呼ばれる「善玉菌の働きを助ける食べ物」としてどんなものをとっているのでしょうか(図表7)。
図表7
全体の約6割が取り入れている食材は「葉物野菜」「きのこ類」「根菜類」「豆類」、これに、「海藻類」「くだもの」が5割弱で続くという結果でした。男性より女性の方が取り入れている割合が高い食材が多く、特に、「きのこ類」では20ポイント近く、「海藻類」「はちみつ」は10ポイント以上、男性より高い結果でした。
続いて、プロバイオティクスとも呼ばれる「善玉菌の食べ物やサプリ」についてみてみましょう(図表8)。
図表8
やはり善玉菌といえばヨーグルト。取り入れている人は全体の9割近くで、「乳酸飲料/ヨーグルトドリンク」も6割の人が取り入れていました。ヨーグルトに続いたのは日本の伝統食材「納豆」で6割、「味噌」は5割という結果でした。「納豆」「味噌」とも女性の方が男性より取り入れている人が多く、「チーズ」も男性では4割ですが女性では過半数の人がとっていると回答しました。サプリメントに目を向けると、「善玉菌のサプリメント」は3割弱、酵素のサプリメントは1割程度の人が取り入れていることがわかりました。
Key Point
・「善玉菌の働きを助ける」人気食材は「葉物野菜」「きのこ類」「根菜類」「豆類」
・「善玉菌の食べ物やサプリ」の王道は「ヨーグルト」。「納豆」「味噌」「乳酸飲料/ヨーグルトドリンク」も上位。女性の過半数は「チーズ」
「悪玉菌」にはどんな対策をしている?
最後に、悪玉菌への対処についてみてみましょう(図表9)。
図表9
「悪玉菌を増やす食べ物を控える/食べ方に配慮する」と答えた人がしている主な対策は「肉類を食べる時は野菜を多くとる」「揚げ物/脂っこいものを控える」でそれぞれ6割、これに5割弱の回答を集めた「糖類/糖質を控える」が続きました。また、「外食/市販の弁当を控える」「食品添加物を避ける」という人もそれぞれ3割以上の人が実行していることがわかりました。
Key Point
・悪玉菌対策トップ3は、「肉を食べる時は野菜を多く」「揚げ物/脂っこいものを控える」「糖類/糖質を控える」
新型コロナウイルス感染の予防として、免疫力を高めることが重要であるという情報もあります。菌活を意識した食生活を取り入れてみてもよいかもしれません。
今回の分析は、下記の設計で実施したインテージの自主企画調査結果をもとに行いました。
使用したデータ
【SRI®(全国小売店パネル調査)】
国内小売店パネルNo1※1 のサンプル設計数とチェーンカバレッジを誇る、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、ホームセンター・ディスカウントストア、ドラッグストア、専門店など全国約4,000店舗より継続的に、日々の販売情報を収集している小売店販売データです。
※SRIでは、統計的な処理を行っており、調査モニター店舗を特定できる情報は一切公開しておりません
※1 2019年3月現在
【インテージのネットリサーチによる自主調査データ】
調査地域:日本全国
対象者条件:20~69 歳の男女
標本抽出方法:「マイティーモニター(弊社キューモニター+提携モニター)」より抽出しアンケート配信
ウェイトバック:性年代構成比を、2015年度実施国勢調査データをベースにウェイトバック
標本サイズ:n=2261
調査実施時期: 2020年1月17日~21日
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