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データからみる令和の米騒動 ~コメ離れと備蓄米購入者プロファイリング~

生活者の毎日の暮らしを支える「主食」。日本人にとってその代表格はやはり「ご飯」です。
炊き立ての白米、手軽な丼もの、ハレの日のお寿司まで、ご飯は多くの家庭の“当たり前”として食卓に並んできました。

しかし2024年頃から続く物価上昇の波は、お米にも影響を及ぼしています。スーパーマーケットでは品薄が続き、政府による備蓄米の放出が行われるなど、かつての平成の米騒動を思い出させるような状況が生じました。
品薄が解消された後も「以前のような価格に戻った実感があまりない」という声は多く、生活者の不安や負担感は今なお続いているように感じられます。
そこで今回は、インテージが保有する複数のデータをもとに、この“令和の米騒動”によって、生活者の行動や食卓がどのように変化したのかを読み解いていきます。

食卓で2回に1回は「ご飯」が並ぶ日本

まず、日本人の食卓において、ご飯がどれほど重要な存在であるのかを改めて確認しましょう。 キッチンダイアリー®のデータ(京浜・京阪神・東海エリア)を見ると、2019年〜2024年のいずれの年も、1,000食卓あたりの米類(白米・寿司・丼)出現回数は500を超えています。これは、2回に1回は食卓にご飯が並ぶことを示しています。

図表1

1,000食卓あたりの米類(米・寿司・丼計)出現回数推移

食文化が多様化し、パンや麺類、シリアルなどの選択肢が増えた現在でも、ご飯は高い出現頻度を保ち続けています。それだけ日本人の生活の中心に、ご飯が根付いていると言えるでしょう。

個人的にも、実家では朝夕の食卓にご飯が並ぶのが当たり前で、特に祖父母はほとんど麺類を食べず、毎食ご飯を食べていました。1人暮らしになってからも、無洗米の手軽さや満腹感から、ご飯は常にストックしてあり、1日の中で食べない日の方が少ないように思います。こうしたことは、多くの生活者にも共通しているのではないでしょうか。
では、この「日本人の暮らしに欠かせないご飯」が、価格高騰や品薄を経てどのように変化したのでしょうか。小売店販売ログデータにも触れながら確認していきましょう。

お米の価格は何倍になった?

令和の米騒動を振り返るにあたり、インテージのSRI+®の個数単価推移をみていきます。
図表2は2023年1月の5kgのお米における個数単価を100%としたときの2025年までの推移です。

図表2

2023年1月の個数単価を基準にした際の単価推移(5Kg)

2023年の秋頃までほぼ横ばいだったお米の価格は、2024年頃からじわじわと値上げが始まり、2024年の夏頃より大きく上昇。翌2025年2月頃の価格は2023年1月のおよそ倍となり、その後に訪れるピーク時には250%に近い値まで上昇をしていました。
主食の商品は習慣的かつ高頻度で購入するため、価格上昇はダイレクトに家計に響きます。さらにこの期間は、食品全体で値上げが続いていた時期とも重なり、生活者の心理的な負担も増していたと推察されます。
こうした状況は、日々の食卓にどのような変化をもたらしたのでしょうか。ふたたびキッチンダイアリーのデータを注目していきましょう。

図表3

1,000食卓あたりの米類(米・寿司・丼計)出現回数 食場面別 月別前年比(%)

食卓におけるお米類の出現回数前年比を見ると、お米の価格が特に高騰していた2025年春〜初夏にかけて、ご飯の出現は前年より減少しています。
食場面別でみると、特に昼食は前年減少の影響がみられ、手軽に食べるシーンも多いことから他主食との代替もしやすかったことがうかがえます。一方夕食は複数人で食事をすることも多く、また、おかずの品目数などからもご飯類は中々食卓から外せなさそうです。
店頭における品薄の影響も考えられますが、お米以外の商品においても物価の上昇がみられた2025年において、価格が倍以上になっている主食への支出は大きなものだと推察できます。
お米は買えても、食卓への出現回数を抑えて節約をしたり、他主食に代替することでお腹を満たしたり、生活者の経済状況はやや困難であったことは日々のニュースからも伺えました。

このような「お米が手に取りづらい状況」は生活者の食卓にどのように影響を与えたのでしょうか。ご飯以外の主食にも視点を移して確認していきます。

米騒動でコメ離れは起きたのか

では続いて、キッチンダイアリーにて他の主食の前年比推移を見てみましょう。
図表4は主食カテゴリーにおいて、ご飯類以外の「パン」「麺・パスタ」「その他主食(シリアルや粉ものなど)」の出現回数の前年比です

図表4

お米類以外の1,000食卓あたりの出現回数別前年比(%)

お米の前年比割合が減少していた2月~6月にかけて、「麺・パスタ」・「その他主食(シリアルや粉ものなど)」が前年よりも多く出現していることが分かります。

お米の品薄・価格高騰に加え、今年は猛暑の影響もあり、冷たい麺類の需要が上昇したことは他の知るギャラリー記事(猛暑で消費行動はどう変化した? インテージが読み解く2025年夏 ~食品市場編~)でも指摘されていましたが、ご飯の出現が減った時期とこれら主食の出現回数割合が上昇した時期がリンクしていることからも、米騒動による影響も要因の一つとして十分考えられるでしょう。

さらにこのデータを属性データと掛け合わせ、どのような世帯の方がこれらの主食を前年に比べて食べるようになったのかを見てみました。

図表5

属性別1,000食卓あたりの主食大分類別出現回数 前年比(%)

「麺・パスタ」「その他主食」において、米価格が高騰した4~5月のタイミングで子どもあり世帯・子どもなし世帯のどちらでも前年比は上昇していますが、特に子どもあり世帯のほうが高く伸長しています。
食べ盛りのお子さんがいるご家庭は、家庭の支出に占める主食の割合が高くなるため、このような状況では代替の主食の出現が増えることは想像しやすいです。
食卓のデータを覗いてみると、お米の価格上昇が生じた時期に他主食の利用が高まったといえるのではないでしょうか。

備蓄米を買った人はどんな人?

2025年2月、政府より備蓄米の放出について発表がされました。
私も今年の夏頃に、普段お米を見かけないコンビニエンスストアやデパートの地下食品売り場で、シンプルなパッケージのお米(備蓄米)を見かけたのを印象的に記憶しています。
一時ニュースでも大きく取り扱われていた備蓄米。放出された備蓄米は果たしてどのような人に届いたのでしょうか。

「備蓄米を買った人」のイメージをみるために、インテージが保有するさまざまなデータソースを1つに統合した生活者360°Viewer を用い、備蓄米を購入した生活者の属性・生活価値観を全体との差から特徴として抽出したものを図表6としてまとめています。

図表6

生活者360°Viewerによる備蓄米購入者イメージ

性年代としては既婚の女性、子どもも含め同居家族が複数いる40~70代女性が多く出現しているようです。家族や自身の健康を気にしつつも、お金の使い方の部分では安さを重視。とはいえ価格高騰の中でもお米を購入することからも、習慣(規則正しい生活)への意識を感じます。また、外食は控えめでありつつも、旬のものに対するこだわりも見えることから、食事を中心に生活の様々な要素を大切にしたい様子もうかがえます。

データからは、家族の健康や習慣を大切にしつつも、家計を考えて安価な備蓄米を購入する姿が見えました。備蓄米の放出によって、ニュースではさまざまな声も聞こえましたが、必要としている人に届けられたという点においては、その効果はあったのかもしれません。

さいごに

これまでのデータでも示してきた通り、生活そのものを支える主食の大切さを重視し、しっかり検討しているからこそ、生活者は他主食へのスイッチや、安価で手に入りやすい備蓄米を選択しているように見えました。
家族や健康、習慣や家計といったさまざまな要素を天秤にかけ、高騰しているさまざまな商品の中から、慎重な選択を重ねて、私たちの生活は成り立っていることを改めて実感できます。
物価高の影響は続いていく気配がありますが、不透明な先行きの中でもデータもうまく活用しながらよりよい選択をしていきたいですね。

本記事「データからみる米騒動」は、他データソースも取り上げながら、記事を公開する予定です。今回は生活者の属性を軸に深堀りしていきましたが、次回はSRI+を用いて、この1年どのようにお米が販売されていたのかを振り返ります。ぜひご覧ください。


今回の分析は、以下のデータを用いて行いました。
※今回のレポートでは、インテージ独自調査にて集計用のお米の商品リストを作成し、それを元に集計した結果で分析しております。

【SRI+®(全国小売店パネル調査)】
国内小売店パネルNo.1※1 のサンプル設計数とチェーンカバレッジを誇る、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、ホームセンター・ディスカウントストア、ドラッグストア、専門店など全国約6,000店舗より継続的に、日々の販売情報を収集している小売店販売データです。
※ SRI+では、統計的な処理を行っており、調査モニター店舗を特定できる情報は一切公開しておりません
※1 2025年6月現在

【SCI®(全国消費者パネル調査)】
全国15歳~79歳の男女70,000人の消費者から継続的に収集している日々の買い物データです。食品、飲料、日用雑貨品、化粧品、医薬品、タバコなど、バーコードが付与された商品について、「誰が・いつ・どこで・何を・いくつ・いくらで、購入したのか」という消費者の購買状況を知ることができます。
※SCIでは、統計的な処理を行っており、調査モニター個人を特定できる情報は一切公開しておりません

【キッチンダイアリー®】
1,260世帯の食卓・調理の状況を食場面(朝食・昼食・夕食)ごとに継続的に捉えたデータです。商品開発のヒントとして、また、流通向けの販促提案情報としてご活用いただけます。

著者プロフィール

脇田 光(ワキタ ヒカル)プロフィール画像
脇田 光(ワキタ ヒカル)
株式会社インテージ データマネジメント事業本部 リテールデータマネジメント部

2016年大学卒業後出版社の営業を経験、その後ネットリサーチを主力とした調査会社で集計業務に従事し、
2022年2月にインテージに入社。パネル調査「i-SSP(インテージシングルソースパネル)」でメディア操作ログのデータ管理を担当後、
2025年7月からリテールデータマネジメント部に所属し、小売店POSデータの管理を担当。

株式会社インテージ データマネジメント事業本部 リテールデータマネジメント部

2016年大学卒業後出版社の営業を経験、その後ネットリサーチを主力とした調査会社で集計業務に従事し、
2022年2月にインテージに入社。パネル調査「i-SSP(インテージシングルソースパネル)」でメディア操作ログのデータ管理を担当後、
2025年7月からリテールデータマネジメント部に所属し、小売店POSデータの管理を担当。

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(*パネルデータ:「SRI+」「SCI」「SLI」「キッチンダイアリー」「Car-kit」「MAT-kit」「Media Gauge」「i-SSP」など)

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