
コロナ禍の「第4次韓流ブーム」以降、韓国コスメ市場は順調に拡大を続けています。最近では、ドラッグストアの店頭でも多くの韓国ブランドの商品が並ぶようになり、韓国コスメは私たちの日常により深く浸透してきました。
もはや一過性のブームにとどまらず、定番アイテムとして定着しつつある韓国コスメ。現在、その人気はどの程度「定番」として根付いているのでしょうか。本記事では、直近の市場動向をもとに、韓国コスメの現状と定着の度合いを掘り下げていきます 。
まずは、現在の韓国コスメ市場の動きを確認していきます。
インテージSLIのデータをもとに 市場規模の推移を見ると、韓国コスメ市場は直近3年で約1.7倍に成長しており、今なお拡大を続けています。中でも、スキンケアカテゴリーが直近3年間で約2倍と大きく拡大しており、韓国コスメ市場の成長をけん引しています。
図表1
続いて、韓国コスメの購入状況の変化を購入率・購入者あたりの購入金額の視点で見てみます。購入率は女性全体のうち韓国コスメを購入した人の割合、購入金額は購入者一人あたりの韓国コスメの購入金額を示しています。
図表2
韓国コスメ全体、ひいてはスキンケアカテゴリーにおいて、購入率・購入者あたり金額の拡大傾向がみられ 、購入者数の拡がりだけでなく、複数商品を購買する、もしくはより高い単価の商品を購入するといったかたちで、韓国コスメに対するユーザー関与がより高まっているといえます。
この市場規模拡大の背景として、店頭での展開がひとつの要因として挙げられます。下記は、ドラッグストア全店における韓国コスメの販売店の割合(販売店率)、および販売店1店あたりの韓国コスメの平均販売金額(販売店あたり金額) について、直近3年間での年平均成長率(CAGR)を散布図で示したものです。
図表3
ドラッグストアにおいては、特に販売店あたりの金額がこの直近で大きく増加しており、店頭での韓国コスメ売場が拡充されていることを示しています。
このことから、ドラッグストアにおいて韓国コスメが“特設コーナー”ではなく、“常設の定番棚”としての地位を確立しつつあると推測できそうです。
続いて、韓国コスメがどの年代まで浸透しているのか、年代別でデータを見ていきます。
韓国コスメ購入者のボリュームゾーンは依然として20代が中心ですが、特に注目すべきは40-50代での伸長です。直近3年間で各年代ともに拡大傾向にありますが、特に40-50代で規模の増加率が高く、勢いが感じられます。
図表4
ここまで見てきたように、韓国コスメ市場は中高年層も取り込みながら規模を拡大しています。では、実際に韓国コスメはどの程度「定着」しているのでしょうか。ここでは、継続購入という観点からその実態を見ていきます。
今回の分析では、「直近何年連続して韓国コスメを購入していたか?」という切り口で韓国コスメ購入者を分類し、中でも韓国コスメを直近3年間連続して購入しているユーザーを「定着ユーザー」として定義します。
図表5
推移を見ていくと、韓国コスメ全体の定着ユーザー率は前年から増加傾向にあり、女性全体のうち約9%を占めています。カテゴリー別で見ると、ベースメイクでは横ばい傾向ですが、スキンケア・ポイントメイクでは定着ユーザー率は増加傾向にあり、 韓国コスメをリピートするユーザーが着実に増えていることが読み取れます。
続いて、韓国コスメ全体、および直近で規模が伸長している韓国コスメのスキンケア の定着ユーザー(直近3年連続購入者) にフォーカスして、どのようなユーザーが定着の傾向にあるのかを見ていきます。
まず、定着ユーザーの年齢構成を確認すると、韓国コスメ全体およびスキンケアの定着ユーザーともに、10〜20代の若年層が全体の約半数を占めており、化粧品の購入者全体と比較して、若い世代による支持が目立ちます。
図表6
次に、韓国コスメ以外も含めた化粧品全体の年間購入金額に注目し、年間で多額 の化粧品を購入する層がどの程度いるかを比較して見てみます。
定着ユーザーは化粧品購入者全体と比較して化粧品の年間金額が高い傾向にあり、美容への関心が高く、スキンケアやコスメに一定の投資を惜しまないような美容感度の高い層に支持されていることを示唆しています。
図表7
最後に視点を変え、定着ユーザーの美容意識・行動特性から特徴を深掘りします。
ここでは各美容意識・美容行動の項目ごとに、「あてはまる」「ややあてはまる」いずれかを回答した人の割合を比較して見ていきます。
図表8
韓国コスメ計・スキンケアの購入者全体と定着ユーザーを比較すると、「口コミサイトをよくチェックしている」や「自分に合う方法・商品を積極的に探している」といった、美容感度に関する意識が高く出ています。それに関連して、近年の化粧品トレンドである成分志向も特徴として見られるほか、より美容に手をかけたいという意識も高く出ており、美容に関する探究心が強い傾向が表れています。
図表9
さらに、スキンケアの定着ユーザーに絞りスキンケアの購買意識を見てみると、「評判がよいものを使いたい」「高くてもよい商品を使いたい」といった評判や質を重視する項目が高く見られました。また、「使い慣れたものが安心」という保守的な意識が低く、積極的に新しい商品を取り入れる層であることが伺えます。
また、メーカー・ブランドを揃えたいという意識は低い一方、安ければ良いという意識も比較的低い傾向が見られ、メーカーやブランドに固執せず、「評判や機能性が高く、自分に合うこと」を重視して商品を選択していることが考えられます。
こうした定着ユーザーの行動特性を踏まえると、彼らにとって「韓国コスメであること」は必須条件ではなく、結果として選んだ商品が韓国コスメだったというケースが多いと推測されます。
韓国コスメの定着ユーザーは美容に対する意識が高く、自分に合うものを能動的に選ぶユーザーであることから、「韓国コスメ」という表面的な要素を超え、商品そのものの魅力でユーザーに選ばれていると言えるのではないでしょうか。
ここまで見てきた通り、韓国コスメは日本市場において一過性のブームを超え、確実に定番として根付き始めています。スキンケアを中心に依然として市場規模を拡大しており、中高年層も含めてユーザー層を広げているだけでなく、定着ユーザーを着実に増やしている状況です。韓国コスメの定着ユーザーは美容への関心が高く、口コミや機能性を重視して自分に合う商品を能動的に探しているような層であることから、単に「韓国コスメだから選ぶ」ではなく、商品力で選ばれていると考えられます。
しかし裏を返せば、韓国コスメの定着ユーザーは「韓国コスメ」というカテゴリーにとらわれず、純粋に質の良いものを見極めて選ぶ層です。 企業としては、こうした美容感度の高い層のニーズを捉え、新たな価値を提案することで、今後も市場開拓の余地が十分に残されているとも言えるでしょう。
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