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実務で解説 生活者中心で考えるマーケティングフレーム~第1回 生活者のパーセプションを変化させる

マーケティングに関する情報は、日々さまざまな人から発信され、更新され続けています。マーケティング活動に必要な情報を取得するマーケティング・リサーチも進化し続けており、新しい技術や手法などに視点を置いた情報発信も少なくありません。

一方で、生活者に製品やサービスの価値を届けることがマーケターの使命だとすると、生活者を無視してマーケティングを考えることは出来ず、むしろ生活者を中心に考えることが常に求められます。

本連載は、一般的なマーケティングフレームを、生活者の意識や行動と結びつけて捉えなおそうという試みです。STPや4Pなど、マーケティングフレームは比較的シンプルで、理解が難しいものは多くないと思います。ただ、実務で活用しようとすると、分からないことが出て来たり、手ごたえが無かったり、といった経験のある方はいらっしゃるのではないかと思います。理解はできても実務での活用が難しく感じられる要因の一つは、マーケティングフレームを生活者の意識や行動と紐づけて考えられていないことかもしれません。

生活者の意識や行動を理解することは、マーケティング・リサーチの役割です。
生活者を中心に、マーケティングフレームとマーケティング・リサーチを紐づけて考えることで、読者のみなさまのマーケティング活動が、より効果的に、より高い価値を生活者にお届けできるようになれば、という想いで、本連載をお届けします。

1.生活者のパーセプションが形成されるモデル

第1回で解説するフレームは「真実の瞬間(Moment of truth)」です。 FMOT(First moment of truth)、SMOT(Second moment of truth)という言葉は聞かれたことのある方もいらっしゃると思います。FMOTは店頭に関わること、SMOTは製品に関わることのように、覚えている方もいらっしゃるかもしれません。

この連載では 「真実の瞬間(Moment of truth)」を、生活者が市場を作る必要不可欠な行動と捉えています。

ここでいう市場というのは概念で、どこかに市場という塊がある訳ではありません。金額ベースの市場であれば、生活者一人ひとりの「お金を支払う」という行動が市場を創り出します。「お金を支払う」という生活者の行動無くして市場が形成されることはあり得ず、それをFMOTと呼びます。
数量ベースの市場であれば、生活者一人ひとりの「製品を使用する」という行動が市場を創り出します。例えば、ペットボトルの水を1日平均1L飲んでいた生活者が、1日平均2L飲むようになれば、数量ベースの市場は倍増します。「製品を使用する」という生活者の行動無くして市場が形成されることはあり得ず、それをSMOTと呼びます。

このフレームでビジネスを捉えると、生活者の行動を変えることが、ビジネスを伸長させることになります。生活者は「お金を支払う」という行動を起こす前には購入の判断を行い、「製品を使用する」という行動を起こした後には体験の評価を行います。購入の判断が自社にとってポジティブで、かつ、体験の評価がポジティブであれば、ビジネスは伸長すると考えられます。この観点で、FMOT、SMOTは、以下のように定義することも出来ます。

FMOT:製品やサービスの購入を判断する瞬間
SMOT:製品やサービスの使用体験を評価する瞬間

このように解釈すると、生活者の購買行動は、判断と評価の連続であると考えることが出来ます。FMOTでは、数ある製品やサービスから購入するものを選択し、対価を支払うという行動を行います。コンビニの棚から1本のお茶を選んで、レジでお金を支払うのも購入の判断になります。また、SMOTでは、購入した製品やサービスが良かったのか悪かったのか、好きなのか嫌いなのか、の評価を行います。この評価は、意識的に行う場合もあると思いますし、無意識に近い状態で行うかもしれません。1本のお茶を飲んで、おいしいと思うのも、使用経験の評価になります。

この判断と評価を繰り返すことで、生活者の中には「パーセプション」が形成されます。このお茶が好きだ、あのお茶はおいしくないなどの声もパーセプションになります。ある商品にポジティブなパーセプションが形成されれば、次の購入機会が訪れた時に、その商品の選ばれる確率は前回よりも上がるでしょうし、逆にネガティブであれば選ばれる確率は下がると考えられます。

2.ブランディング効果を評価するブランドトラッキング調査

ブランディングの目的は、生活者を中心に捉えると、『自社ブランドに対してポジティブなパーセプションを形成すること』と定義しても良いかもしれません。パーセプションを変化させる手段を出来る限りシンプルに考えると、FMOTでの判断に影響を与えようとするコミュニケーションと、SMOTでの評価に影響を与えようとするイノベーションに分けることが出来ると思います。

実務において、このパーセプションの変化を計測し、ブランディングの効果を評価するためのリサーチがブランドトラッキング調査です。

パーセプションの変化を説明するモデルとして、ケラー氏の提唱する『顧客ベースのブランドエクイティ』があります。シンプルに解釈すると、顧客との関係性は、セイリエンス⇒パフォーマンス・イメージ⇒ジャッジ・フィール⇒レゾナンス順に形成されるというものです(図1)。

図1

それぞれの言葉の意味を出来るだけ直観的に理解しようとすると、以下のように書くことが出来ると思います。

セイリエンス:そのブランドが何なのか?
                                                     ・・・お茶なのか、洗剤なのか、など
パフォーマンス・イメージ:そのブランドが何をするのか?
                                                    ・・・のどを潤すのか、汚れを落とすのか、
                                                    ・・・新しさがあるのか、古臭いのか、など
ジャッジ・フィール:そのブランドをどう思うのか?
                                                    ・・・良いのか、悪いのか
                                                    ・・・好きなのか、嫌いなのか、など
レゾナンス:そのブランドとどのような関係なのか?
                                                     ・・・相棒なのか、友達なのか、など

パーセプションがこのように変化するのであれば、ブランドトラッキング調査は、それを捉えるように設計すれば良いと考えられます。

3.生活者中心のブランドトラッキング調査

図1の考え方に沿ってブランドトラッキング調査を実施すると、図2のようなアウトプットが出せます。これは、ウェットティッシュを題材に、ブランド認知者に対してブランド・イメージを聴取した結果を想定しています。

図2

n数と書かれている数字がブランド認知者数です。 この場合、ブランドAが最も良く知られており、ブランドCが最も知られていないブランドになります。

パーセプションの形成は、各項目のトータルで評価することが出来ます。

例えばブランドBは「レゾナンス」以外のどのトータルもブランドA、Cよりも高く、パーセプションの形成が出来ていると解釈することが出来ます。「パフォーマンス」については『柔らかい』、「イメージ」については『高級』や『やさしい』といったパーセプションが競合よりも強く形成されていると考えられます。特に『高級』イメージは3ブランドの中で最も高いことから、『高級』で『柔らかい』ウェットティッシュを求める生活者に対しては、ポジティブなパーセプションが形成されていると考えられ、FMOTで選ばれる確率が他ブランドよりも高い可能性があります。

一方でブランドCは「レゾナンス」のトータルは高いものの、その他のトータルはブランドA、Bよりも低い傾向があります。この結果からは、ブランドCが生活者との関係性は築けているものの、「パフォーマンス」や「イメージ」が薄いことから、具体的な価値が認識されていないことが危惧されます。ウェットティッシュという、比較的機能的なカテゴリーであることを鑑みると、具体的な価値を生活者に再認識してもらうことが、ブランディングの観点では課題であると考えられます。

4.まとめ

既存のマーケティングフレームを生活者中心に捉えなおすことで、マーケティング・リサーチが、より直接的にマーケティング活動に繋がることを、今回はブランディングをテーマに書かせて頂きました。『顧客ベースのブランドエクイティ』をモデルに調査を設計することで、マーケティング活動の目的である「パーセプション」の形成が評価でき、今後の課題も見つけ出すことが出来ます。

本連載では、今後も、様々なマーケティングフレームをテーマに、マーケティング・リサーチを実際のマーケティング活動に頂けるように発信をさせて頂きたいと思います。

※)調査結果は、調査設計や分析手法によって大きく左右されます。本記事でご紹介したブランドトラッキング調査にご興味のある方がいらっしゃいましたら、こちらよりお問い合わせ頂くか、営業担当までご連絡ください。

第2回はSTPをテーマに4月19日に公開予定です。お楽しみに。


参考文献
コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント 第12版 | Philip Kotler, Kevin Lane Keller, 恩藏 直人, 月谷 真紀

著者プロフィール

平井 公一 株式会社インテージ  カスタマー・ビジネス・ドライブ本部  プリンシパル・コンサルタントプロフィール画像
平井 公一 株式会社インテージ カスタマー・ビジネス・ドライブ本部 プリンシパル・コンサルタント
大阪府立大学大学院工学研究科修了後、1995年P&G入社。研究開発本部で、新ブランドの立ち上げ、既存商品のリニューアルなど、消費者理解をベースにした幅広い商品開発を経験。2010年(株)インテージに入社し、2013年にはインテージ・シンガポールPTE.LTD.取締役に就任。大手PB商品企画・開発会社マーケティング部長を経て、2016年(株)インテージコンサルティング(現、インテージ)に加入。 日用消費財、耐久消費財、流通・サービスなど、幅広い業界で、生活者起点のマーケティング活動を支援。

大阪府立大学大学院工学研究科修了後、1995年P&G入社。研究開発本部で、新ブランドの立ち上げ、既存商品のリニューアルなど、消費者理解をベースにした幅広い商品開発を経験。2010年(株)インテージに入社し、2013年にはインテージ・シンガポールPTE.LTD.取締役に就任。大手PB商品企画・開発会社マーケティング部長を経て、2016年(株)インテージコンサルティング(現、インテージ)に加入。 日用消費財、耐久消費財、流通・サービスなど、幅広い業界で、生活者起点のマーケティング活動を支援。

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