イマドキ女子のリアルをスマホ事情から探るーライフログデータが示す、メディアの未来#3
年々増えるスマホ利用者。2017年のスマホ利用率は74%(15~69歳)に達しました。(図表1)
図表1
スマホアプリにも常に新しいトレンドが生まれ、最近流行しているショート音楽動画SNSの「Tik Tok」はテレビ番組の企画で使われているのをよく見かけるようになりました。このようなトレンドの火付け役となることが多い、女子高生・女子大生・新社会人である“イマドキ女子”はどのようにスマホを使っているのでしょうか。
イマドキ女子のスマホ利用
はじめに、少し前の調査になりますが、17年7月にインテージで若者研究の一環として行った、女子高生・女子大生・新社会人である“イマドキ女子”のスマホ利用に関するインタビューの一部をご紹介します。
この内容にカルチャーショックを受ける方も少なくないのではないでしょうか。
図表2はインテージのメディア視聴ログデータ、i-SSP®(インテージシングルソースパネル®)で捉えた、年代別の各デバイスの1日あたり平均利用時間(18年6月)です。
図表2
50代男性、60代男女はテレビの利用時間が一番長いものの、それ以外の年代はスマホの利用時間が一番長く、年代問わずスマホが身近なものとなっていることが確認できます。
ただ、スマホ利用の中身となるとやはりスマホネイティブ(スマホが普及している環境で生まれ育った世代)はひと味違うということが前述のインタビューからうかがえます。
若者は、変化に敏感で受け入れやすいという特性からニーズ変化の予兆となりやすい層です。また、「お客様」エントリー層である彼・彼女らは将来の顧客候補であり、競合他社より先に心をつかんで囲い込みたい存在です。そのため、商品・サービス開発やコミュニケーション・販促活動において重要な層となります。
一方で、メーカー・広告代理店・メディア、様々な企業の広告・宣伝部門の方から「ウチも若年層に向けてWebでのコミュニケーションに力をいれたいが、知見もなくイマイチ…」「イマドキの若者の気持ちがわからない」といった悩みをよく耳にします。移り気な若者の実態を捉え、彼・彼女らにメッセージを届けるのはなかなか難しいのが実情のようです。
どうしたら若者にメッセージを届けられるのか、データからヒントを探ってみましょう。今回は、若者のなかでも、より流行や時代の空気への感度が高い15~24歳の若年女性「イマドキ女子」に着目してみました。彼女たちはマーケティング活動の重要ターゲットであると同時に、デジタル化が進む今後に向けての示唆も与えてくれるはずです。
図表3は、i-SSPのデータを用いてイマドキ女子のテレビとスマホの利用時間を時間帯ごとに示したものです。比較対象として、性年代計(TOTAL)の利用状況もあわせてみています。
どちらも、ほとんどの時間帯で、スマホの利用時間がテレビを大きく上回っています。TOTALでは在宅率の高い19~22時台のプライムタイムにテレビの視聴がスマホの利用時間を上回り逆転しますが、イマドキ女子は同じくプライムタイムにテレビ視聴のピークを迎えるもののTOTALほどの大きな山にはならず、この時間帯においてもテレビ視聴時間の1.5~2倍とスマホの利用時間の方が長くなっています。
よく言われることですが、この結果からも、イマドキ女子にはプライムタイムですらテレビCMを中心としたコミュニケーションだけでは届きにくくなっている、ということがわかります。
図表3
イマドキ女子は家に帰ってからもやっぱりSNS
プライムタイムは、言葉の通り一日のうちテレビ視聴が最も多くなりやすい大事な時間帯と言われてきました。スマホの利用状況を見てもそれは同様で、テレビに限らずメディアを通じて企業がメッセージを届ける絶好の時間帯と言えます。では、イマドキ女子にプライムタイムにメッセージを届けるにはテレビの他に何が有効なのでしょうか。スマホで彼女たちが何をしているのか、イマドキ女子のスマホ利用ピークである22時台について、i-SSPのデータで確認してみましょう。
まず、イマドキ女子が22時台に利用しているアプリのジャンルを利用時間の構成比で確認したところ、SNS20.4%(TOTAL9.2%)、写真・ビデオ16.5%(TOTAL10.9%)、ゲーム14.4%(TOTAL19.7%)がTOP3で、特にSNS、写真・ビデオの割合がTOTALと比較して高くなっていました。具体的なアプリとしては、TOPはLINE、2位Choromeブラウザ、3位Twitterとお馴染みのアプリが並んでいます。また、TOTALとの差が大きく、イマドキ女子に特徴的なアプリとして、pixiv、niconico(ニコニコ動画/ニコニコ生放送)、Twitter、Yahoo!乗換案内、Instagram、メルカリといったところが挙がってきます。(図表4)
イマドキ女子は、プライムタイムにもやはりSNSを、特に特徴的なところでTwitter・Instagramを利用していました。これらがイマドキ女子にメッセージを届けやすい媒体のようです。
図表4
イマドキ女子へのメッセージの届け方
ここで、冒頭に出てきたイマドキ女子のインタビューの続きを紹介します。
実は、企業のスマホでのコミュニケーションについて、「Twitterのアカウントは複数使い分け、企業のキャンペーンは普段使っていないアカウントでエントリーする」「広告は全然見ない」「データ通信量が気になる。フィードで勝手に動画流れると嫌だ」「Cookieで追いかけられるのは嫌だ」という声が多数あがっていました。一方で、「SHARPのような企業っぽくないアカウントがいい。ボットじゃなく人が動かしている感じが」というポジティブな声もありました。
彼女たちは想像以上に広告に対してシビアなようです。SNSでのコミュニケーションを通して企業のメッセージを受け取ってもらうためには、届け方が非常に大事だと言えるでしょう。
図表5は前章でイマドキ女子が特徴的に利用していると挙げたTwitterとInstagramを利用するときの理由です。Twitterは、「知人とのコミュニケーション」「知りたい情報を探すため」「新しい情報を得るため」に、Instagramは「時間つぶしにちょうどいい」「楽しいから」「新しい情報を得るため」に利用されています。
図表5
当然、彼女たちは広告を見るためにSNSを利用しているのではありません。世界観を壊さない、知人と共有できるような楽しめるコミュニケーションを企業は意識しなければなりません。
イマドキ女子に楽しんでもらい心をつかむためには、図表6のような分析を行い、よりリアルにイマドキ女子の好みを理解していくことが有効でしょう。「Values(価値観)」と「Behavior(行動)」の狭間にある 「Taste(志向、嗜好、感性)」をビジュアルを含め確認することで、 “直感的”かつ“より具体的”にターゲット像を描くことができます。
図表6
ここで大事なのは、可能な限り行動をファクトデータでおさえること。加えて、意識や価値観といったものも解釈して多面的に若者像を捉えることで初めて、この時代のコミュニケーションは上手くいくのではないでしょうか。
もちろん、一度理解したからと安心はできません。例えば、女子高校生のFacebookの月間の利用率は16年の25.9%から下がり続け、18年には5.3%となっています。Instagramは、利用率はさほど変わりないものの、1日あたりの利用時間が16年に5.4分だったものが18年には14.4分と3倍近く伸びています。やはり若者は流行に敏感で変化を好むもののようです。
今後も知るGalleryでは、行動ログデータの収集によって「今」をとらえ続けつつ、意識・価値観といった多面的アプローチを通して、イマドキの若者を正確かついち早くとらえられるよう、継続的に注視していきます。
今回の分析には、i-SSPを用いました。i-SSPとは、インテージの主力サービスであるSCI®(全国個人消費者パネル調査)を基盤に、同一対象者から新たにパソコン・スマホ・タブレット端末からのウェブサイト閲覧やテレビ視聴情報に関して収集したデータです。当データにより、テレビ・パソコン・スマホ・タブレット端末それぞれの利用傾向や接触率はもちろん、同一対象者から収集している購買データとあわせて分析することで、消費行動と情報接触の関係性や、広告の効果を明らかにすることが可能となります。
また、調査対象者のうち約2万人のライフスタイル、オフラインメディア利用、メディア利用意識等をデータベース化したi-SSP Media Profiler、約5万人のTaste(志向、嗜好、感性)を、ビジュアルを含めデータベース化したPsycho-Grapherと合わせて分析することで、ターゲットのさらなる理解やコミュニケーションの検討に繋げることが可能です。
※ i-SSP®(読み方:アイエスエスピー)/シングルソースパネル®は株式会社インテージの登録商標です。
※この記事はMarkeZine33号に掲載された寄稿記事(『イマドキ女子とのコミュニケーションのヒント』)を再構成したものです。
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