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手近なものまでオンラインで買う人達は普段どのようにECサイトに触れているのか? ~オンライン行動ログから浮かぶ施策のヒント~

スマホを使っている時に商品の広告が出てきて、そのままECサイトに飛んで“ポチる”。そんな経験をしたことがある方も多いのではないでしょうか。
デジタル化が進む今、情報接触から購入までをすべてオンラインで完結させるといった行動は珍しくなくなりました。また、その行動を捉えるオンライン上の行動ログデータも収集できるようになっています。

この記事では、リアル店舗で買われることが多い手近な日用消費財※1までECサイトで買う、ECサイトでの買い物が生活に浸透しているような人に着目します。その人たちの生活者像を、オンライン上の行動ログデータを用いて描くことを通して、こうしたデータのマーケティング活用について考察します。

日用消費財のオンライン購入実態

はじめに、インテージのシングルソースパネル®、i-SSP®の購買ログデータを用いて、日用消費財をオンラインで購入している人がどれくらいいるのかを見てみましょう(図表1)。2017年10月~12月の3ヶ月間で日用消費財をオンラインで購入したことがある人の割合は、インターネット利用人口の34.3%という結果でした。ほぼ3人に1人が3ヶ月に1回以上、オンラインで日用消費財を買っている、ということになります。

これまではリアル店舗で買うのが当たり前だった日用消費財。そこにオンライン購入はどのくらい食い込んできているのでしょうか?普段の日用消費財の買い物金額のうち、オンライン購入が占める割合を分布で見てみました。オンラインで日用消費財を買う人のうち、特に多かったのはオンライン購入金額の割合が5~10%の人たちでした。

図表120180918_1.png

10%というとまだまだ一部の印象を受けますが、今後、日用消費財の大部分をオンラインで買う未来は来るのでしょうか?“今、すでに“日用消費財の多くをオンラインで買っている人たちと、”まだ、あまり“買っていない人の違いから考えてみましょう。

図表1の分布でちょうど真ん中にあたる中央値(13.3%)よりもオンライン購入の割合が高かった人たちをHigh層、低かった人たちをLow層とします。High層は手近な日用消費財までオンラインで買う人達、Low層はときどき買う人達と捉えることもできます。それぞれの層で商品カテゴリー毎のオンライン購入率を並べてみました(図表2)。High層とLow層の違いが顕著に表れたカテゴリーは「紙製品」「乳飲料」「アルコール飲料」でした。

紙製品のような低価格な日用雑貨や、乳飲料のような日持ちしない食品をオンライン購入する人が増えてくると、日用消費財購入のオンライン化はさらに進んでいくと言えそうです。

図表220180918_2.png

「手近なものまでオンラインで買う人たち」のサイト視聴行動

「手近なものまでオンラインで購入する」High層は、やはりECサイトを見る機会も多いのでしょうか。
大規模な生活者モニターひとりひとりに対し、購買ログデータとメディア接触ログデータをシングルソースで捉えているインテージのi-SSPデータを用いて、日用消費財のオンライン購入とECサイト利用の関係を追ってみましょう。

図表3はHigh層のEC利用時間です。High層は平均で1週間に100分以上もECサイトを利用していました。日用消費財の買い物をオンラインで行うような人は、やはり普段からECサイトをよく見ているようです。スマホとパソコンそれぞれの利用時間を見ると、パソコンで見る時間の方が長いことがわかります。
では、それぞれ、どのような時に見ているのでしょうか。

図表320180918_3.png

図表4はHigh層のスマホとパソコンそれぞれの、時間帯別のECサイト利用率です。どの時間帯においてもパソコンでの利用率が高く、利用のピークとなる時間帯が異なることがわかります。
パソコンでのECサイト利用は時間帯による違いが大きく、21時から22時頃に利用が集中する様子が見られます。一方のスマホは時間帯による違いが小さく、正午と21時に小さなピークが見られるものの、いつでも使われている傾向が見られます。

パソコンは多くの情報を処理できる操作性に優れたデバイスです。仕事から帰って一段落した夜の余暇時間にじっくりと買い物を楽しむ生活者像が想像できます。一方で、スマホは短時間で効率的に情報を扱えるデバイスです。通勤時間や夜寝る前、お昼休みといったスキマ時間に手軽にさくっとスマホでネットショッピングを楽しむ情景も浮かんできます。

図表420180918_4.png

続いて、High層がよく使うECサイトを見てみましょう。図表5は主要ECサイトを『週平均5分以上』利用する人の割合と、併用の割合が高いサイトの組み合わせです。High層の主要ECサイトの利用率は軒並み高く、Lohacoやネットスーパーの利用率は全体の3倍以上と高くなっていました。また、High層の1/3以上にあたる約36%の人が楽天とAmazonを併用していました。同じ商品をサイト間で比べるのか、商品によって使い分けるのか。ECサイト利用が生活に浸透している様子がみてとれます。

図表520180918_5.png

同じ様に日用消費財をオンラインで購入しないNone層が「どの時間帯に、どれだけ、どのECサイトを使うのか」、といった情報を掘り下げていくと、ECは使っているけれど、今は日用消費財までは買っていないといった潜在的なユーザーに対し、どのサイトで日用消費財のECオンライン購入を訴求すればいいのかという検討に繋げることができるでしょう。

ECサイト訪問前にはどのようなサイトを見ている?

ECサイトへの訪問を促すのに適した、相性の良いサービスにはどのようなものがあるのでしょうか。
ECサイトの利用が多かった、パソコンのログデータを紐解いて、どのようなサイトからECサイトに流入したのかを見てみましょう。図表6はHigh層がECサイトを見る直前、どのサイトに接触していたかをあらわしています。

図表620180918_6.png

ポータルからECサイトへ移るケースが最も多く5割強、次いで他のECサイト(約16%)、企業・法人サイト(約8%)の順に多いという結果となりました。ポータル上の広告やリンクから遷移したり、ポータルで得た情報を基にURLのウインドウに直接検索ワードを打ち込むというケースが特に多いようです。また、他のECサイトで見た商品の情報を別のECサイトで調べたり、企業サイトからECサイトに流入する様子が浮かび上がってきます。
他にも、直前だけでなくその前にどういう経路をたどってきたかや、ECサイト利用後にどこに移ったかなどといったオンライン上の動線を詳細に捉えていくことで、複数のサイトにまたがった施策の設計に繋げることができるでしょう。

オンライン行動~購買ログデータでカスタマージャーニーを描く

この記事では、購買とメディア接触のシングルソースデータを用いて、日用消費財のオンライン購入者のオンライン行動を捉えた結果をご紹介しました。

このようなデータで生活者をターゲティングし、その人達が「どういうデバイスで、いつ、どのようなサイトを経由しながら情報にふれているのか」、といったオンライン行動をログで捉えて理解することで、「ターゲットの気持ちや行動を動かす上でどのようなメディアでアプローチすればいいか」、という施策のヒントを得ることができます。

さらに価値観データを掛け合わせると、もっと深く生活者を理解し、気持ちをくすぐる施策を検討することもできます。たとえば、先行研究では、パソコンで情報をよく検索し、購入する『オンライン購買志向が強い人』は価格に敏感であることや、スマホを活用しながら『リアル店舗購買とオンライン購買をつかいわける人』はイノベーター性向が強く、ショッピングに楽しさを求める傾向にあることなどがわかっています。
それぞれがよく見ているメディアでどのような訴求をするとよいのか、想像しやすいのではないでしょうか。(詳しくは、Nakano & Kondo, 2018※2を参照ください。)ここまでの情報があれば、ターゲットとなる生活者の気持ちになって、どのようなメディアでどのように気持ちを動かすか、といったカスタマージャーニーを詳細に描くこともできます。

前述のとおり、現状では日用消費財をオンラインで買う人は少なく、買っていても全購入量の10%程度と一部にとどまる人が大半ですが、今後、ECサイトへと誘導するオンライン上の接点が質・量ともに上がっていくことで、日用消費財をネットで買う人の割合が増えていくことが想定されます。
こうした生活者の動きを知るGalleryでは今後も追っていきます。

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※1 この記事では日用雑貨品を食品、飲料、日用雑貨品、化粧品、医薬品(ただし、食品は生鮮・惣菜・弁当を除く)として分析を行っています。

※2 Nakano, S., & Kondo, F. N. (2018). Customer segmentation with purchase channels and media touchpoints using single source panel data. Journal of Retailing and Consumer Services、 41、 pp.142-152.
https://doi.org/10.1016/j.jretconser.2017.11.012

 

今回の分析には、i-SSPを用いました。i-SSPとは、インテージの主力サービスであるSCI®(全国個人消費者パネル調査)を基盤に、同一対象者から新たにパソコン・スマホ・タブレット端末からのウェブサイト閲覧やテレビ視聴情報に関して収集したデータです。当データにより、テレビ・パソコン・スマホ・タブレット端末それぞれの利用傾向や接触率はもちろん、同一対象者から収集している購買データとあわせて分析することで、消費行動と情報接触の関係性や、広告の効果を明らかにすることが可能となります。

※i-SSP®(読み方:アイエスエスピー)/シングルソースパネル®は株式会社インテージの登録商標です。


※この記事はMarkeZine32号に掲載された寄稿記事(『日用消費財のオンライン購買の実態と将来』)を再構成したものです。


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