arrow-leftarrow-rightarrow-smallarrow-topblankclosedownloadeventfbfilehamberger-lineicon_crownicon_lighticon_noteindex-title-newindex-title-rankingmailmessagepickupreport-bannerreportsearchtimetw

人を動かすテレビの力 ~変化するテレビCMの「使い方」~

テレビの効果についての見解は、広告主によって様々です。
「テレビCMの効果はブラックボックスだ。費用対効果が透明にならないと投資できない。出稿を減らしている」という声がある一方で、「テレビCMでのリーチには破壊力があり、コミュニケーション上外すことはできない。リーチ数を考えるとむしろ安い」という声もあります。

テレビに関するデータは、IoT 機器の普及により徐々に集まり始めており、効果を検証できる環境が整いつつあります。そのデータを利用することで、テレビCMが効く商材・効かない商材を明確化したり、「ブランド認知」や「購買へのリーセンシー効果(直前に見た広告が購買に影響を与える効果)」といった目的に応じたクリエイティブやフライトパターンの使い分けを進めたりするなど、テレビCMを科学的に活用する広告主が増えています。

テレビCMの取引に利用する指標は、世帯視聴率から個人視聴率へと移り変わる途中ではありますが、いまだ世帯視聴のGRPで価格が決まることが多いのが現状です。このため、自社の商品ターゲットにあたる個人のテレビ視聴実態をよく知り、世帯視聴と比較した際に、広告を届けたいターゲットの含有率が相対的に高い広告枠を見つけ出せると、お得にテレビCMを利用することができます。

RTB(リアルタイムビッティング)が進んだWebの世界だけでなく、テレビの世界でも、データを駆使してテレビの効果をよく知り、戦略的に利用している広告主が、テレビCMの通貨と効果のギャップを突くことで、競合他社より優位に立てる世界になりつつあるのです。

本稿では、最近のテレビCMやテレビ番組の活用傾向と、その効果を可視化した事例を紹介します。

テレビCMを取りまく変化

長らくテレビCMはその圧倒的なリーチ力から、広告主のブランド認知向上を主目的に利用されてきました。
商習慣上も、小売のバイヤーとの商談において「ブランド認知」とみなせるGRPが商品の取り扱いを検討する目安となっていたことが、現在でも商品の売上に影響を与えています。

しかしながら、いま、広告主のテレビCMの使い方に変化の兆しが見られています。米国では、テレビCM はブランドイメージを構築していくBrand-Building型ではなく、視聴者に行動を起こさせるCall-To-Action 型の比率が増えると予想されています。 これは、日本でも同様の傾向になるでしょう。その主な理由を3つ、紹介します。

1つ目は、生活者の消費行動が変化し、購買をはじめとしたアクションまでの動線が短くなっていることです。
ネット通販はいつでもその場で購入することが可能ですし、スマホアプリならインストールでアクションが完了します。
金融・アパレルなどあらゆる業態でダイレクト販売が増加しています。こういった業態は、ブランド認知→来店→購買という回りくどいステップは必要ないため、テレビCMはアクションの獲得を狙って打たれることが多くなっています。
また、小売りの店頭はすぐには変えられませんが、サイトのインターフェースはテレビの話題に応じてすぐに変えられるため、テレビの効果を最大限に活用することができます。

2つ目は費用対効果の透明化が挙げられます。インターネット広告ではあたりまえだった考え方が、データが整備されてきたテレビCMにも適用されるようになってきています。
テレビCMでのブランド育成の費用対効果を数字で表すことは難しいですが、どれだけ行動を起こさせたかということであれば効果を検証しやすく、「どうせ投資するなら効果が説明できることにコストをかける」、という考え方の広告主が増えつつあります。
さらに、ひとつの商品のライフサイクルが短くなっていることも一因としてあります。じっくりブランドを育てていくのではなく、多産で短期間に売り切るビジネスモデルが増加しているため、短期で回収が見込める獲得型のテレビCMが好まれます。また、ダイレクト販売の業態であれば、売上が自社で即時に把握できるため、テレビCMの費用対効果の検証はさらにしやすい環境となっています。

Media6-0.jpg

3つ目は、ネット結線されたテレビが増えることによって、テレビCMでアドレサブルなターゲティングが実現しつつあること。日本ではまだ本格的な活用に至っていませんが、国外では高所得層が住んでいるところにだけ高級車のTVCMを流すといった事例が出てきています。
One to Oneでのコミュニケーションは、購買ファネル上、購買により近いところにいるターゲットを狙えるため、アクションに結びつきやすくなっています。ファンを増やすコミュニケーションなどを通してブランド育成をしていくことも当然考えられますが、獲得型広告のほうがより高い効果を得られます。

テレビ露出がアクションに与える効果

ここで、テレビでの露出とアクションを関連付けた事例を紹介しましょう。なお、ここでの「アクション」は購買だけではありません。検索、来街をはじめ、あらゆるアクションが計測可能になりつつあることも最近のマーケティング上の特筆すべき進化です。

●テレビCMがスマホアプリ利用に与える影響

スマホアプリは、自社でインストール数、アクティブユーザー数を把握できるので、マーケティング施策の効果が計りやすくなっています。
図表1は、あるアプリのテレビCM接触台数とアプリ利用者数を並べたものです。インテージのMedia Gauge TVのデータからテレビCMに接触した延べ台数を算出し、i-SSPのデータからアプリ利用者数を算出しています。

図表1

Media6-1.png

このアプリは2017年9月と2018年4月以降でテレビCMのクリエイティブを大きく変えています。アプリ利用者数を見ると、後者のほうが圧倒的に増加しているのがわかります。この間にそもそものアプリサービスが改良されたということもありますが、前者のテレビCMではアプリ利用者数増加への効果は見られず、後者のテレビCMではその効果がはっきりわかります。後者のクリエイティブで伝えているメッセージがアクションに効果を与えたと言えます。

同様に、現在テレビCMが非常に多いスマホゲームはアプリ起動やインストール数などで、コールセンターがある損保や通販事業者なども問い合わせ数などで効果測定することが可能です。

●テレビ番組が購買行動に与える影響

テレビCMだけでなく、テレビ番組でもテレビの力を実感することができます。とあるコンビニチェーンのPB商品ランキングが番組で特集されたとき、放送後の消費者の購買状況に顕著な変化が見られました(図表2)。

図表2

Media6-2.png

インテージのSCI(全国消費者パネル調査)で放送後のデータを確認すると、対象商品の購買数が全国的に大幅に増加していることが確認できます。
全国チェーンでなく地方であっても、地場小売りのPOSデータやIDPOSデータと、スマートテレビ視聴ログのようなローカル局も分析可能な視聴データを使うことで、同様の効果検証が可能です。

テレビと購買の効果を明瞭に確認するには、放送された内容や商材、データの適切な取り扱いなど注意すべき点は多々あり、多少専門的な知識は必要となりますが、最近はAI等を利用しての自動化ツールも進化しており、ハードルは下がりつつあります。

テレビ局は、購買データでしっかりと媒体価値を証明することができれば、営業活動に説得力をもたせることができます。また、通販会社は、日常的にインフォマーシャルをローカル局でテスト出稿し、購買と紐づけて効果を確認し、全国展開に向けてクリエイティブの調整を行っています。地方でもデータやツール等の環境が整いつつある今が、エリア内の他局と差別化を進めるチャンスなのではないでしょうか。

●テレビ番組が人の移動に与える影響

位置情報データを使えば人の移動も把握することができます。エリア紹介番組の放送があったとき、当該エリアの来街者は増えるかどうかを、ドコモ・インサイトマーケティング社が提供しているモバイル空間統計で集計してみました(図表3)。

図表3

Media6-3.png

放映後、両エリアとも来街が増加していることが確認できます。人口が少ないエリアほどわかりやすい結果が出ており、都市圏で地方都市を特集するといった企画の効果のほうが高い傾向が見られます。

テレビを効果的に活用していくために

いま、あらゆる場面でデータ収集・活用が進み、様々なアクションの計測が可能になりつつあります。テレビ周りもデータ整備が進むことによって、その影響力が再認識されつつあります。
広告主は、どんな商材で、人をどう動かしたいときに、どんなクリエイティブで、どこの枠に出稿するのが最適かを適切に把握することで、テレビの力を最大限に活用することができます。テレビ局も、出稿を促進するためのデータインフラの構築が必須です。

データ整備・活用が進んでいるのはテレビやネット広告だけでなく、店頭メディアやOOHなども同様です。今までなんとなく、ブランド認知にはこれ、獲得にはこれといった棲み分けができていたメディア区分ですが、これからは広告費だけでなく販促費も一体にし、テレビから店頭までのコミュニケーショントータルで、いかに効果的にアクションに結びつけられるかを考え、プランニングしていくことが求められます。この環境は、圧倒的に人を動かす力をもつテレビにとってはチャンスです。テレビの価値をデータで再定義することで、媒体価値をさらに向上させることが期待されます。


今回の分析にはMedia Gauge TVとSCI、i-SSP®、モバイル空間統計を用いました。

Media Gauge TV】日本全国を調査対象に、月あたり61万台のスマートテレビと58万台の録画機から収集された視聴ログデータです。(最新の台数情報はこちら)膨大なサンプルサイズで収集されているため、市区町村レベルの分析でも一定のサンプルサイズを確保でき、視聴傾向の詳細なエリア差を把握することができます。また、全国CMマスタと繋げることで、テレビCMの接触状況(どの局で、いつ、どのようなテレビCMが、どれだか視聴されたか)を捉えることもできます。

都道府県ごとのエリアマーケティングや、テレビCMのプランニング・バイイングにご活用いただけます。

SCI(全国個人消費者パネル調査)
全国15歳~79歳の男女52,500人のパネルモニターによる食品(生鮮・惣菜・弁当などを除く)・飲料・日用雑貨品・医薬品に関する消費者市場動向のトラッキングサービスです。 このデータからは、「いつ」「どこで」「誰が」「何を」「いくらで買った」のかがわかります。消費者の顔を詳細に捉え、消費者を起点としたブランドマーケティングや店頭マーケティングにご活用いただけます。

i-SSP®(インテージシングルソースパネル)
インテージの主力サービスであるSCI(全国個人消費者パネル調査)を基盤に、同一対象者から新たにパソコン・スマホ・タブレット端末からのウェブサイト閲覧やテレビ視聴情報に関して収集したデータです。当データにより、テレビ・パソコン・スマホ・タブレット端末それぞれの利用傾向や接触率はもちろん、同一対象者から収集している購買データとあわせて分析することで、消費行動と情報接触の関係性や、広告の効果を明らかにすることが可能となります。

モバイル空間統計
ドコモの携帯電話ネットワークのしくみを利用して作成される、人口統計情報を提供するサービスです。 ドコモの携帯電話ネットワークは、基地局エリア毎に所在する携帯電話を周期的に把握しています。この仕組みを利用して携帯電話の台数を集計し、ドコモの普及率を加味することで人口を推計することができます。本サービスにより、地域の人口分布や、性別・年齢層別・居住地エリア別の人口構成などを知ることができます。

※「モバイル空間統計」は株式会社NTTドコモの登録商標です。


※この記事はMarkeZine36号に掲載された寄稿記事(『人を動かすテレビの力』)を再構成したものです。


転載・引用について

本レポートの著作権は、株式会社インテージが保有します。本レポートの内容を転載・引用する場合には、「インテージ調べ」と明記してご利用ください。お問い合わせはこちら

【転載・引用に関する注意事項】
以下の行為は禁止いたします。
・本レポートの一部または全部を改変すること
・本レポートの一部または全部を販売・出版すること
・出所を明記せずに転載・引用を行うこと
・公序良俗に反する利用や違法行為につながる可能性がある利用を行うこと

※転載・引用されたことにより、利用者または第三者に損害その他トラブルが発生した場合、当社は一切その責任を負いません。
※この利用ルールは、著作権法上認められている引用などの利用について、制限するものではありません。