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データから考える、CTV時代のテレビCMの効果的な活用

生活者の利用するメディアは変化し続けており、メディアを使ったマーケティングコミュニケーションにおいてはこの変化を理解することが不可欠です。インテージでは、お客様に生活者のメディア利用の変化をキャッチアップいただけるよう、定期的なオンラインセミナー(メディアトレンドセミナー)を実施しています。
この記事では、テレビ放送に着目して2023年12月12日に開催したメディアトレンドセミナー「ログデータから見る生活者のメディア利用トレンド(第3回)生活者はなぜテレビ番組を見ているのか ~CTV時代のテレビCMの効果的な活用~」の内容を再構成しながら、CTV時代のテレビCMの効果的な活用についてデータから考えます。

テレビ画面での動画配信視聴の普及

テレビについての近年の大きな変化と言えば、スマートテレビやストリーミングデバイス等でインターネットに結線されたテレビ、すなわちコネクテッドテレビ(CTV)の普及です。インテージの調査では、CTVの保有率は年々増加し、直近の2023年には42.3%に達しています。特にコロナ禍の2020年~2022年の増加が著しく、コロナ禍がCTVの普及を加速させたことがうかがえます。

図表1

家庭に1台以上ネット結線TVがある人

インターネットに接続されたテレビでは、従来のテレビ放送に加えて、インターネット経由での動画配信サービスを視聴できることが特徴です。スマートテレビ約200万台のデータを分析して、テレビ画面でテレビ放送、動画配信、その他(録画視聴やゲーム機の利用など)の視聴時間の推移を図表2に示しました。スマートテレビにおける動画配信の視聴量は年々増加し、2023年7-9月には30%にも達しています。一方でテレビ放送の視聴量はコロナ禍の始まった2020年1-3月に増加したものの、それ以降は再び減少傾向に戻り、2023年7-9月にはテレビ画面の利用時間の半分以下になりました。

図表2

スマートテレビの1日あたりの平均視聴時間

CTVの普及によってこのような変化が起こっていることは、単に動画配信に対しても広告出稿を検討することが必要になっただけではなく、テレビCMの使い方を変える必要があることも意味しています。セミナーでは、CTV時代のテレビCMの効果的な活用を3つの視点から議論しました。視聴者の高齢化、朝帯の視聴、そしてテレビ放送特有のイベント性です。

テレビ視聴者の高齢化を逆手に取る

一つ目の視点は、テレビ放送の視聴者の高齢化です。図表3に、日本人口全体とテレビ放送ヘビー層(1日あたり4時間以上視聴)の性年代別構成比を示しました。テレビ放送ヘビー層の構成比は、日本人口全体と比較してシニア層、女性に偏っていることが分かります。またこの傾向は、2016年から2023年にかけてさらに進行しています。動画配信サービスの普及によって、若年層のテレビ放送離れがより一層加速していることがうかがえるでしょう。

図表3

日本人口とテレビヘビー層の性年代別構成比

このようなテレビ視聴者の高齢化はテレビ業界の課題とされ、“コア視聴率(13歳~49歳の個人視聴率)”を重視した若年層向けの番組作りの必要性が叫ばれてきました。
確かにLTV(*Life Time Value、顧客がライフサイクルの全期間で企業にもたらす価値の総量)やブランドスイッチの観点からは若年層にリーチすることも重要ですが、テレビCMを適切に活用すれば、シニア層に届きやすいことをメリットにすることもできるでしょう。図表4に、お菓子と冷凍食品を例として購入金額の性年代別構成比を示しました。お菓子では35%以上、冷凍食品では40%以上の購入金額が女性50代~70代によって占められており、これはまさに図表3で示したテレビヘビー層と重なっています。

セミナーでは、シニア層をターゲットにしたメディアのハルメクを成功事例として、シニア層を活かしたテレビCMの活用を議論しました。またゲストスピーカーとしてご登壇いただいた、コピーライター/メディアコンサルタントの境治氏からは、“コア視聴率”から一定距離を取っていた放送局は、視聴率も放送収入も比較的落ち込みが小さい、というデータの紹介もありました。

図表4

お菓子と冷凍食品の購入金額構成比

朝のテレビ視聴の有効活用

CTV時代のテレビCMの効果的な活用の2つ目の視点は、朝のテレビ視聴です。図表5に、スマートテレビでのテレビ放送と動画配信の接触率を平休日、時間帯別に示しました。動画配信の接触率は夜と休日に高い傾向がありますが、平日の朝は低い値にとどまっています。

セミナーでは、忙しい時間に耳だけで接触しても記憶に残る広告クリエイティブなど、「朝に見られやすいこと」を想定したテレビCMの必要性を議論しました。

図表5

平休日時間帯別の放送・配信の接触率

テレビ放送のイベント性

CTV時代のテレビCMの効果的な活用の3つ目の視点は、テレビ放送のイベント性です。図表6に大型スポーツ大会の平均接触率を示しました。テレビ離れが叫ばれてはいるものの、ワールドカップは全国平均で20%以上、WBCは30%以上といったように、大型のスポーツ大会等では非常に多くの人に一度にリーチすることができます。さらに、こういった大きなイベントでは接触率に地域性が見られることも特徴です。岩手県出身の大谷選手が大活躍したWBCでは岩手県が、バスケットボールワールドカップではバスケットボールが盛んなことで知られる秋田県が、全国平均を大きく上回る接触率を記録しています。

セミナーでは、インテージが独自に行ったスポーツ協賛とテレビCMの効果を比較した調査を紹介しました。男性では若い層ほどスポーツ協賛が有効、女性では若い層ほどテレビCMが有効という結果がでており、ターゲット層に応じて使い分けが必要なことが分かります。

図表6

大型スポーツ大会の平均接触率

テレビ視聴データの高度化

セミナーの最後には、視聴者や広告効果をより深く、迅速に理解するためのデータ進化に伴うマーケティング活動の変化について議論しました。「スモールマス」という概念がテレビマーケティングにおいて初めて言及されて以来、従来の「テレビはざっくりとしたプランニングで十分」という考え方から、ターゲットの効率性や効果を高めるためのデータ活用が重要視されるように変化してきました。

一方で、番組制作の現場では、まだ「マス」を対象とし最大公約数を意識した制作が主流であることが課題に挙がりました。しかし、放送業界にとっても、動画配信の普及に伴い視聴者がさらに細分化していくことは、特定のニッチな層に向けた制作を行いやすくする変化でもあります。
そしてこの変化は、ターゲットに合わせたメディア選定や効果計測がさらに重要になることも意味しています。限られた時間の中で効率的にプランニングを行うためには、生活者のメディア利用動向を俯瞰する全体観と、自社のターゲットを深く知るための方法論が必要です。今後のセミナーでは、テレビ以外のメディアも含めて、プランニングに必要な生活者のメディア利用動向を発信していきたいと思います。

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