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アルファ世代が考える2030年未来の社会③~コロナ禍により、バーチャルよりもリアルを大切にしたくなったアルファ世代

インテージグループR&Dセンター*1が共同研究機関として参加している、産業能率大学の小々馬敦先生*2との研究プロジェクト「ミライ・スケッチ2030」。その中でインテージは、アルファ世代(現役小学生)の考えや思いを引き出すことや、アルファ世代に影響を与えている保護者の考えを伺うことで、アルファ世代をより深く知ることに挑戦しました。この挑戦について、全四回にわたって紹介していきます。(「ミライ・スケッチ2030」」については、「アルファ世代が考える2030年未来の社会①で詳しく説明しています。)

連載第三回となる今回のコラムでは、ぐんま国際アカデミー*3初等部の6年生4人とその保護者へのインタビューから見えてきた、アルファ世代にとっての「リアル」と「バーチャル」の今とミライについて考察します。

我々は、テックネイティブと呼ばれるアルファ世代は、「バーチャル」を好意的に捉えていると想像していました。しかし、第二回で紹介した、ワークショップで発想を膨らませて思い描いたミライを、インタビューで改めて「自分の将来の暮らし」として見つめ直してもらったときに出てきたのは、想像とは異なり、「やっぱりリアルで人と会って・・・」という話ばかりでした。
具体的にどのような声が聞かれたのか、実際にインタビューを行った、インテージクオリス リサーチ推進部の大野がお伝えします。

これぞテック“ネイティブ”、当たり前にタッチパネルを使い出すアルファ世代

まだ小学生であるテック“ネイティブ”たちにとって、デジタルデバイスはどういった存在なのでしょうか。
今回インタビューした4家庭では、共通して、①学校の授業や課題で使うためのPCやタブレット ②友達との連絡用のスマートフォン ③ゲーム機(主にNintendo Switch) の3点を保有していました。自分専用であるかどうかはご家庭によって異なるものの、我々と同じように日常生活になくてはならないツールとなっていました。

そんな彼らがデジタルデバイスを使い始めたのは幼稚園時代、つまり3~5歳の頃です。親が使っているスマートフォンを使いたいとねだり、YouTubeやゲームアプリを起動させたスマートフォンを渡すと、“自然”と使い出したということでした。さらに詳しく話を聞いていくと、親が使い方の説明をしなくても、“自然”とタップ/フリック/スワイプなどの操作を行い出したそうです。別のインタビューでも、小学校入学前のアルファ世代が、テレビのチャンネルを変えたくて、画面をタップしていたとの話を聞いたことがありました。そんな彼らが小学校に上がれば、タッチパネルが搭載されたデジタルデバイスを使いこなせないわけがありません。アルファ世代の視点だと、物心ついた時から身近にある“当たり前”の存在であると認識している様子です。

【イメージ画像(幼稚園児+タップ/フリック/スワイプ)】

テック“ネイティブ”だからこそ感じた、コロナ禍による不具合の多いバーチャル体験

デジタルデバイスとの距離感については、なんとなく肌感覚としてご理解いただける内容ではないかと思います。この、ある意味想像通りのテックネイティブなアルファ世代に、「自分たちが20歳になったとき、どんなことをしていそう?」と投げかけたときに、答えとして想像していたのは、ワークショップで彼らが思い描いていたような、「バーチャル」と「リアル」の間を自由に行き来している姿でしたが・・・、実際に返ってきたのは、「大学に通って授業を受けて」「アパートで独り暮らしをして食事を作って」「みんなでディズニーランドへ遊びに行って」など、新しいミライはどこに行ってしまったの?と不思議に思うような、「リアル」を中心としたミライでした。

一つ一つ深掘りしていくと、コロナ禍での急激なオンラインシフト時に生じた、様々なトラブルの影響が、背景にあることが見えてきました。今回インタビューしたアルファ世代は全員小学6年生。つまり、小学校入学時は通学、小学校中学年はコロナ禍によるリモート、現在は通学とリモートが半々という、急激な社会変化を体感した世代でした。「初めは楽に授業を受けられると思ったけど、友達に会えないし、だんだん辛くなってきた」「リアルなら、授業が終わった後に先生に質問に行けるのに、リモートだと、部屋が閉じてしまってできない」「回線が悪い人が必ず出て、授業が進まない」など、我々社会人と同様の不満を感じていたのです。

では、なぜコロナ禍の体験が、リアル中心のミライを考えてしまうことにつながるのでしょうか。そこには、はじめにご説明した、デジタルデバイスを使ったオンライン/バーチャル体験は物心ついた時から存在する当たり前“の存在である、と認識していることが大きく関係しています。ミレニアル世代以上の我々は、「リアルの場」「リアルでのコミュニケーション」が前提にあった中、急激なオンライン化に戸惑いました。一方、アルファ世代は、リアルの場以外にもゲームの中で新しい知り合いを作ったり、友達と待ち合わせたりと、「バーチャルの場」「バーチャルでのコミュニケーション」を“当たり前”のこととして楽しんできた世代です。遊びを通じて“当たり前”にできると思っていたことが、コロナ禍でバーチャル「だけ」になった途端、急激に不具合だらけになったと感じてしまったのです。

さらに “当たり前”と思っていたスムーズなオンライン接続すら上手くいかない状況を目の当たりにし、オンライン/バーチャル体験に絶対的な信頼を置くのではなく、「リアルな体験」の大切さを再認識するに至りました。その結果、2030年のミライでは、リアル中心の暮らしを思い描く傾向が強くなっていたのです。

【イメージ画像(オンライン学習)】

リアルを大切にしたいアルファ世代がスケッチした2030年のミライ

コロナ禍を経験したアルファ世代が描く2030年のミライは、リアルな体験への憧れや大切さを強く感じさせるものばかり。実例として、身近な「食事のミライ」「勉強のミライ」「趣味のミライ」について実際の発言を見ていこうと思います。

①食事のミライ

そもそもバーチャルな体験が難しい食事ですが、彼らの思い描くミライには「3Dプリンターによる調理」という話がよく出てきます。夜遅くや一人の時など、効率的に食事をしたい時に積極的に使いたい様です。ただし、それ以外の時は基本的に自身で調理したいと考えていました。「自分で作った方が美味しく感じられそう」「自分で作った方が新しい発見がありそう」「記念日など特別な日までハイテクにしたくない」など、自身で調理する方が、料理や食事の体験価値が豊かになると感じ、そこに価値を感じるようです。

【イメージ画像(3Dプリンター画像を薄く・実際の調理中画像を鮮明に)】

➁勉強のミライ

大学生になれば、より自由に学び方を選ぶことができるはずですが、「実際に人と触れ合いながら学んだ方が安心できるので、バーチャルによる授業は、一部の座学など限定的にして欲しい」、という気持ちが強く出る発言が目立ちました。「医療の道に進みたいので、人の命に係わる勉強はリアルが必須」「アナウンサーになるために進行の勉強は、オンラインでは意味がない」などです。さらには、教えを乞う先生についても、「知識と生身の人間の経験は別なので、AIやロボットだけから学ぶのは嫌」など、より人間らしいアナログな教育を望んでいる傾向が伺えました。

学びの中には、答えの決まった知識を記憶したり暗記したりするだけでなく、アナログな実体験を通じてしか身につけることが難しい、経験知とも呼ばれる学びがあることを、コロナ禍から彼らは理解しているようです。

【イメージ画像(バーチャル会議画像を薄く・実験やディスカッション中画像を鮮明に)】

③趣味のミライ

ワークショップでは、趣味の分野こそ、バーチャルによる様々な体験の拡張が話題に上がったのですが、やはりバーチャルよりもリアルな体験を重視する発言が目立ちました。「大好きなバスケはボールを扱う微妙な感覚が大切なので、バーチャルで再現できなさそう」「イラストを描く時に使っている鉛筆は力加減や速さで感情表現ができるが、それをバーチャルで再現できなさそう」という感覚フィードバックへの不安や、「ディズニーランドが好きなのだが、行くまでの道中も楽しいので、バーチャルだと楽しさが半減」などあえて不自由を楽しみたい気持ちも見え隠れしました。

【イメージ画像(バーチャルのスポーツ画像を薄く・リアルのスポーツ画像を鮮明に)】

アルファ世代の中でも違いがあるバーチャル体験への期待

この「ミライ・スケッチ2030」では、アルファ世代の中でもコロナ禍前と現在の小学校生活の両方を体験した小学6年生にインタビューしたことで、テックネイティブでありながら、オンライン/バーチャル体験に絶対的な信頼を置くのではなく、リアルな体験の価値を強く求める層がいることが明らかになりました。一方で、これから小学校に上がるアルファ世代は、コロナ禍前を知らないため、同様の傾向を示すとは限らず、寧ろオンライン/バーチャル体験に前向きな傾向を示すのではないかとも考えられます。

アルファ世代を理解する上で、デジタルデバイスを通じたオンライン/バーチャル体験との関わり方が大きなテーマの一つであることは間違いありません。しかし、「デジタルデバイスを使いこなせる」ことは共通していても、コロナ禍以前を知っているかどうかで、どんな未来を思い描くか、選択していくかには大きな差異が生まれてきそうです。こういった「アルファ世代の中での違い」を理解していくことが、彼らの気持ちを読み解き、アプローチしていく上でキーとなりそうです。

最後に、さらに一歩踏み込んで考察をしてみます。それはアルファ世代にとって、バーチャル体験とは、リアルの“延長線上”の体験であるという点です。どうしても、バーチャル体験というと、リアルの自分とは違う新たな人格、新たな見た目を想像される方も多いと思います。しかしテック“ネイティブ”なアルファ世代にとっては、「アバターは本当の人間じゃない。ホログラフィのように今の自分がそのままの姿でバーチャル化した方が、本当の人と話している気がする。」などの発言も出てくるくらい、バーチャルとリアルは別物ではない、“延長線上”の体験なのです。“延長線上”だからこそ、バーチャルがリアルを再現できないことに対する失望も大きくなっていくのだと考えられます。この感覚の違いを理解しておくと、さらに高い解像度でアルファ世代を理解することができるのではないでしょうか。

【イメージ画像(リアル+バーチャルが混ざり合っている、続いている)】

次回、連載最後となる第4回では、主催者の小々馬敦先生をお招きして、インテージメンバーとの対談形式でミライ・スケッチ2030を振り返ります。対談では、ミライ・スケッチ2030でメンバー同士の価値観の違いを理解することで生まれるモノやコトへの期待や実際の結果に関する講評を伺ったのち、今回の取り組みのアプローチの有効性についても議論を深めたいと考えています。


*1:インテージグループR&Dセンター
*2:産業能率大学経営学部マーケティング学科 小々馬ゼミ
*3:ぐんま国際アカデミー


【調査概要】
期間:2022年10月8日から2022年10月14日
対象者:α世代(2009年《小6/12歳》~2016年《小1/6歳》と定義)とその保護者 4組
※一般社団法人日本マーケティング・リサーチ協会 マーケティング・リサーチ綱領第17条に定められている通り、中学生以下の協力者は、保護者の同意・同伴を得た上で調査を実施しました調査方法:オンラインデプスインタビュー

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